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今時のバンパイア

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第十一章

「今日はこの格好でいくわ」
「礼服で行かれますか」
「そのお姿で」
「吸血鬼の話をしてたらこの格好で飛びたくなったわ」
 だからだというのだ。
「それでよ。じゃあいいわね」
「ご主人様の思われるままに」
「そうされて下さい」
 蝙蝠達は今は主の言葉に従うだけだった、そのうえで。
 桃香は自分で部屋の窓を開けた、そして黄色い満月を見て楽しげな笑みを浮かべ宙に出た、そうして蝙蝠達を連れて夜空を飛んだ。
 その次の日にだ、桃香は禎丞に大学のキャンバスの中でこう言ったのだった。
「今度の日曜私の家に来ない?」
「えっ、それってまさかな」
「そうよ、そのまさかよ」
 くすりと笑っての言葉だった。
「私のお父さんとお母さんに紹介していいわよね」
「いいのかよ、本当に」
「来て、それであんたのお家にもね」
「ああ、来てくれるんだな」
「これだけは駄目なの」
 ふとこんなことも漏らした。
「人のお家には一回読んでもらわないと入られないのよ」
「あれっ、何かそれってな」
「吸血鬼みたいっていうのね」
「それまさか」
「違うわよ、入られるけれど抵抗があるのよ」
 精神的にというのだ、これは本当のことだ。
「どうしてもね」
「結構シャイなんだな」
「そうかもね、自分ではシャイとか思わないけれど」
 首を少し左に捻って述べる。
「私はね」
「じゃあまずは俺がそっちの家に行ってか」
「それで私があんたの家に行ってね」
「そうするか」
「ええ、それじゃあね」
「今度の日曜何処で待ち合わせしようか」
「通天閣の下でどう?」
 桃香が言った待ち合わせの候補地はそこだった。
「そこでね」
「あそか、まさかその足で串カツ食いに行くとかはないよな」
「ちゃんとお料理用意しておくから」
「大蒜使ったのだよな」
「パエリアね。それでいいわよね」
「ああ、楽しみにしてるよ」
 禎丞もパエリアと聞いて笑顔で返す。
「それそっちの親父さんとお袋さんと一緒にな」
「食べましょう」
「ああ、それにしてもパエリアだとな」
「トマトも入れてね」
「あと大蒜もだよな」
「絶対に欠かさないわよ」
 禎丞に笑顔で応える、桃香にとってこの二つはそうしたものだった。
「この二つがないとパエリアじゃないでしょ」
「それパスタとかの時も言うよな」
「イタリアとかスペインの料理の時はね」
 絶対にだというのだ、やはり。
「そうするわよ」
「そうか、じゃあ楽しみにしておくな」
「そうしておいてね」
 サングラスをかけたままだが禎丞に笑顔を向けて言う、だがここで。 
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