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幸せな犬

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第五章

 彼等に対してあらためてこう尋ねたのです。
「街は凄く楽しいよ。それでも?」
「楽しいだろうけれどね」
「それでもね」
 タロ達はどうかと言うのです。
「僕達ここで充分だから」
「充分満足してるよ」
「幸せ過ぎる程だからね」
「だからいいよ」
「街に行かなくても」
 こうそれぞれ言ったのです。
「兄弟一緒にいられてるし」
「牛さんや豚さん達もいてね」
「オーナーさん達優しいし」
「とてものどかで綺麗な場所だし」
「御飯も美味しいから」
「街は色々な人やものがあって美味しいものも沢山あるのに?」
 烏さんは驚きを隠せないままタロ達にまた尋ねました。
「それでもなの?」
「だってここで満足してるから」
「この牧場でね」
 タロ達は何も不平も不満もない顔でまた烏さんに答えます。
「それで街に行きたいとかは」
「特に」
「ううん、そうなんだ」
 烏さんは目を丸くさせて言いました。
「ここでいいんだ」
「そうだよ」
「ここに一生いたいよ」
「確かにね」 
 烏さんはタロ達の話を聞いたうえで牧場、彼等が満足しているその場所を見回しました。そこは彼等の言う通りに。
 とても綺麗で落ち着いた場所です、それで言うのでした。
「いい場所だね。君達の言う通りかもね」
「うん、それに兄弟離れ離れじゃないし」
「一緒だからね」
「そうだね、僕にしてもね」
 このことは烏さんにも心当たりがあります、それで言うことは。
「いつも兄弟の皆と楽しくやってるよ」
「烏さんもだね」
「そうなのね」
「そうだよ、いつも皆と一緒に色々な場所に行って色々なものを食べて」
 そうしてだというのです。
「楽しくやってるよ。兄弟一緒っていうのはね」
「いいよね、とても」
「幸せなことだよね」
「そうだね。確かに君達は凄く幸せだよ」
 皮肉抜きに素直に思ったことでした。
「じゃあこれからもなんだね」
「ここで幸せに生きていたいね」
「ずっとね」
「そういうことだね。街に行かなくても」
 牧場の中にいて、烏さんも言います。
「幸せだよね」
「僕達はそう思ってるよ」 
 タロが烏さんに返しました、そして。
 タロ達は烏さんとお話してからも皆で牧場で楽しく過ごしました。街のことをお話してから暫くしてです、烏さんはまたタロのところに来ました。
 タロは牧場の隅で今も兄弟達と一緒にいて寝ています、そのタロのところに来てそのうえで尋ねたのです。
「今も幸せだね」
「さっきお昼食べてね」
 勿論兄弟で一緒にです。
「満腹しててね」
「何を食べたのかな」
「オーナーが焼いてくれた牛肉だよ」
 それを食べたというのです。
「凄く美味しかったよ」
「そうなんだ」
「物凄く満足してるよ」
「そう、よかったね」
「烏さんも食べたかな」
「森の方で木の実をね」
 それを食べたというのです、牧場から離れた場所に見せるその森を見ながらの言葉です。
「一杯食べたよ」
「じゃあ烏さんも幸せだよね」
「うん、僕も幸せだよ」
「だよね。皆と一緒に優しい牛さんやオーナー達に囲まれてね」
「落ち着いた場所にいられて」
「それで美味しいものをお腹一杯食べられたらね」
「それで凄く幸せだよ」
「その通りだね」
 烏さんも言いました。
「じゃあ僕もね」
「烏さんもだよね」
「ここに兄弟を呼んでいいかな」
 こうタロに尋ねたのです。
「そうしてね」
「いいよ、じゃあ皆で今はね」
「ここで昼寝をしてね」
「楽しくね」
 タロはここでもこの言葉を出しました。
「凄そうね」
「そうしようね」
 こうお話をしてそうしてでした。
 烏さんは自分の兄弟も呼んでそのうえでタロ達と一緒にお昼寝をしました、牧場の牛さんや豚さん、鶏さん達もです。皆のどかな牧場で幸せに過ごしたのでした、何時までも何時までも。


幸せな犬   完


                 2013・2・20 
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