幸せな犬
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第四章
ある日その烏さんが来ました、そしてでした。
タロ達の前に降り立ってです。この話をしたのです。
「多分タロさんからお話を聞いたと思うけれど」
「うん、皆に話したよ」
タロもこう烏さんに答えます。
「ちゃんとね」
「それなら話は早いね。どう思うかな」
烏さんはタロ達に顔を身体を正面に向けて右の翼を上げて尋ねました。
「街のことは」
「いい場所みたいだね」
「何か楽しそう」
「美味しいものも一杯あって」
「ここと全然違うみたい」
これがタロ達の返事でした。
「ハンバーグとかッグフードとか凄く興味あるし」
「それってどんなのかしら」
「そのことも気になるし」
「一体どんな場所なのかね」
「凄く興味あるよ」
「そうだろうね。街は凄くいい場所だよ」
烏さんもタロ達の言葉を受けて言います。
「もう楽しくて仕方がない場所なんだ。それでね」
「それで?」
「それでっていうと?」
「行ってみたいとか思わない?」
こうタロ達に言ってきました。
「街にね」
「街に?」
「そこに?」
「そう、行ってみたいかな」
タロ達にさらに尋ねます。
「どうかな、その辺りは」
「確かに楽しそうだよね」
「美味しいものも一杯あるみたいだし」
「建物も一杯あって」
「人も沢山いるみたいだけれど」
「ここにいてもあれじゃない。毎日この広いだけの牧場にいてね」
烏さんは右手を上げたり下に動かしたりしながら話してきます。
「牛さんや鶏さん達の見守りするだけだよね」
「それで寝て御飯食べてね」
「そうしてるよ」
「街は違うんだ。そうした色々な場所がある街の中を歩いてね」
それでだというのです。
「皆が楽しく過ごしてるね」
「それで変わった食べ物が一杯あって」
「そうした場所よね」
「こことは全然違って楽しいから」
烏さんはさらにお話します。
「凄くね」
「ううん、そうなんだ」
「そんなに楽しいんだ」
「行ってみたいとか思わないかい?」
烏さんは誘う様に笑ってタロ達に尋ねました。
「そうね」
「街に?」
「そこに?」
「そう、どうかな」
こう尋ねるのでした、そのうえでタロ達の返事を待ちます。
烏さんはタロ達が行きたいと答えると思っていました。その際はオーナーさん達におねだりをすればどうかと言ってみるつもりでした、ですが。
タロも兄弟達もです、笑ってこう烏さんに答えたのです。
「別にいいよ」
「ここでいいから」
「街に行くつもりはないな」
「牧場で充分よ」
「あれっ、いいの!?」
烏さんはタロ達の予想しなかった返事に驚きました、そして。
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