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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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一部:超絶美少女幼年期
  二十九話:氷の館に入ります

「さあ!カギは、あきました!いきましょう!」

 外は寒いので、たまにはモモが攻撃する隙を与えながらもサクサク魔物を倒してあっという間に氷の館に着き、覚えたばかりの盗賊のカギの技法を使って、固く閉ざされていたはずの扉をあっさり開きます。

 名前からして、曲がった金属製の棒でも使って、カチャカチャ……カチリ!よし!みたいなのを想像してたんですが。
 ファンタジーらしく、魔法的ななにかでカギの構造を把握して、魔力的ななにかで動かして開くようで。
 別作品(ⅡとⅢ)のアバカムみたいに、あからさまに呪文唱えて魔法使う感じではないんですけど。

 これなら、傍目にはカギ破ってるとはわからないね!
 ホントに、うっかり普及させたら大変な技術ですよ!
 良かった、覚えたのが私で!

 でも、ってことは、例えばまた前世の世界に転生したとしても、使えないってことだよね。
 まさか魔法やら魔力やら、持ち越せないだろうし。
 残念、残念。

「ドーラ……。大丈夫、よね……?」

 ベラが、何かを感知したようです。

 信じるって決めたんでしょ?大丈夫、大丈夫!
 私と、自分を、信じなよ!

「だいじょうぶです!さんにんでたたかうのも、なれてきましたから!すこしくらい、あいてが、つよくても!」

 語るに落ちるような真似は、しませんがね!

「……そうね!そのために、来たんだものね!よーし、行きましょうか!」

 何かを吹っ切った様子のベラが、先に立って氷の館に入って行きます。

 ちょ、何故、ここにきて前に出る?
 直ちに死ぬということは無いだろうから、まあいいけど。

「ザイルは、どっちかしら……って、きゃー!?」

 勢いよく踏み込んだベラが、凍った床、というより氷の床に思いっきり足を滑らせてすっ転び、そのまま前に滑っていきます。

 うん、そうなるだろうと思った。
 下手に先回りして止めるより、体で覚えたほうがちゃんと学習するだろうから、敢えて止めなかったけど。

「ああああー!いやあああ……!!」

 滑って行く先にあった落とし穴に悲鳴を上げながら落ちていく、ベラ。

 ゲームで知ってたけど、現実で見ると、なかなかえげつない構造だよね!
 目の前に、見えてるのに回避できない落とし穴!
 落ちたら痛いしね!
 打ち所が悪ければ、死ぬしね!!

 ……大丈夫か、ベラ?

「モモ、いきますよ!まものもでるだろうし、ベラさんをひとりには、できません!」
「ニャッ!」

 やっぱり事前に教えて受け身くらい取れるようにするべきだったかと少々反省しつつ、ベラを追いかけて氷の館に踏み込みます。

「ベラさーん!いま、いきますから!よけてて、くださいねー!」

 転ばないように、スケートをするようにバランスを取りつつ、氷の床を滑って落とし穴に向かいながら、階下のベラに呼びかけます。

 避けてもらわないと、上に落ちることになるからね!
 気でも失ってたら、それもできないが!

「え?え?そんなこと、言われても!きゃ、きゃー!滑って、上手く……!!」

 あー、そっか。
 滑るから、慣れてなくて、焦ってて、元々そそっかしいベラなら、そんな急にうまいこと動けない?

 なんて考えつつ、今さら踏みとどまることもできないので、諦めて潔く落ちていく私。

「きゃーー!!」

 焦って足をもつれさせ、階下でもまたすっ転んでた、ベラの上に。





「いたたた……」
「ごめんなさい、ベラさん」

 私、反省中。
 とりあえず、ベラにホイミはかけました。

 ベラの上に落ちた私と、猫科らしくしなやかに着地しようとしたところを私が受け止めたモモは、全くの無事。

「いいのよ、仕方ないわ。元々、私が先走ったのがいけないんだし」

 それは、そうなんですが。
 ベラが落ちた後、ベラの態勢が整うまで待ってたら、実際に魔物関連で危険だったから、すぐ来ないわけにはいかなかったんですが。

 事前に、止めようと思えば止められたからなあ……。
 快く許してくれてるだけに、申し訳ない。

「ドーラもモモも、私よりも小さいし。逆じゃなくて、良かったわ。私が潰しちゃったら、それこそ悪いもんね!」

 ああ……!
 良い子だ、ベラ!

 最初にちょっと虐めてごめんね、私、頑張るから!
 ポワン様と、ベラのために!

 こんなに良い子のベラと、あんなに素敵なポワン様を困らせるだなんて、ホントに困ったヤツですよ、ザイルは!

 色々と、落とし前を付けさせねばなりますまい!!

「……ドーラ?大丈夫?ホントに、気にしなくていいのよ?」

 決意を固めた私を、ベラが心配そうに見てきますが。

「わたしは、だいじょうぶです!わたし、がんばりますから!ぜったいに、フルートを、とりかえしましょうね!!」

 そう……ベラは、なにも心配することは無い!
 この私が本気になったからには、二度と安易な悪さをする気など起きないよう、きっちりと、教育し直してやる!
 妖精の村の、平和のために!
 主に、ポワン様とベラの、平和のために!!

「……なんだかわからないけど、やる気ね!よーし、行きましょう!」

 急に振り切れた私の思考に、さしものベラの勘もついてこられないようですね!
 でも大丈夫、問題無い!
 お姉さんに、全て任せておきなさい!

「……って、きゃー!?」

 勢いよく歩き出そうとしてまたすっ転んでる、ベラ。

 とりあえず、バランスの取り方から教えてあげよう!



「あしで、ふんばろうとするから、いけないんですよ?すべるのは、しかたないから、さからわないで。からだで、バランスを、とるんです!」
「えっと、こ、こう?」
「そうそう!その、ちょうしです!」

 おっかなびっくり、氷の床を歩く、というか滑るベラの手を取って、優しく導く私。

 その周りをモモがすいすいと、楽しそうに滑ってます。

 ……この子も私の説明を聞いて学習したように、見えるんですけど。
 ベラほど酷くはないとは言え、最初はここまでスムーズでは無かったし。
 どこまで賢いの、この子??

「うえにあがるまえに、すこし、れんしゅうしたほうが、いいですね!ためしに、このへやのたからばこを、めざしてみましょう!」

 宝箱の中身も回収できて、一石二鳥だしね!
 たいした物では無いだろうけど、まあ、ついでですよ!

「そうね!このままじゃ、まともに戦えないもんね!よーし、頑張るわよ!」

 ベラともあろう者が宝箱の件にも突っ込まず、練習に夢中です。
 まあ、人家と洞窟で散々見てきたし、ここは悪の巣窟だし。今さらか。



 元々動くのは得意なだけあって、落ち着いて、慣れてしまえば、ベラもあっという間に上達し。
 すぐに宝箱にたどり着いて、戦闘に支障が無い程度には動けるようになったのを確認して、上階に戻ります。

「ちょっと時間がかかっちゃったけど、ようやく進めるわね!よーし、今度こそ!行くわよ!」

 ベラが、燃えてますが。

「はい!いきましょう!」

 当然、私も燃えてます!
 ベラを痛い目に遭わせ、ポワン様に心労をかけた落とし前を!
 確実に、付けてやる!

「ニャー!!」

 モモも負けじと、声を張ります。

 うん、頑張ろうね!
 悪い子には、お仕置きだよね!! 
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