久遠の神話
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第四十八話 会食その十四
四人でアメリカ領事館に行く。建物は上城が見ても世界一の大国の建物に相応しいと言えるものだった。
入る手続きは工藤が行った。それが済むとすぐにだった。
スペンサー、アメリカ空軍の軍服を着た彼がやって来た。彼は工藤と握手をしてから上城達に顔を向けてこう言った。
「貴方達が」
「はい、工藤さんの友人になります」
大石が答える。
「私もこちらの彼も」
「はじめまして」
上城は微笑み自分の名を名乗った。それに大石もスペンサーも応える。
スペンサーはそれが終わってからこう四人に言った。
「親睦を深めるのは食事の席でということで」
「そのメニューは」
「今日は休日でお昼なので」
スペンサーはここまでは工藤の予想通りのことを言った。
「バイキングになります」
「そうですか」
上城は内心工藤さんの言った通りだ、と思いながらも口でははじめて知ったといった様に言葉を返した。
「バイキングですか」
「料理は海軍のコックが作っているので美味しいですよ」
「海軍の人がですか」
「空軍もいいのですが」
スペンサーは笑って自分の所属の軍の名前を出した。
「ここにいるのは海軍でして」
「それでなんですか」
「はい、海軍のコック達が作っています」
「コックっていいますと」
「給養員だ」
工藤がいぶかしむ上城に述べた。
「言葉が違うだけだ」
「意味は同じなんですね」
「そうだ、そう思ってくれ」
「わかりました」
「ついでに言うがアメリカ軍と自衛隊では職種が違ってきている」
「といいますと」
「海軍では日本にはない士官室というマークもある」
工藤はアメリカ軍のこのマークについても話す。
「前に海軍の艦艇には士官室という場所があると話したと思うが」
「そういえばそんなお話もしてくれましたね」
「士官が集まる場所だがな」
そこで会議をしたり食事を摂る。そして当直任務にも就くのだ。
「そこで士官の世話をする職種だ」
「そういうのもあるんですね」
「日本では士が持ち回りでやるがだ」
「アメリカじゃ職種なんですか」
「そうだ。それになっているのだ」
「ううん、士官の人のお世話がお仕事ですか」
「昔で言う従兵か」
士官には従兵がつくものだった。彼等が士官の靴を磨いたりその服を洗濯してアイロンをかけていたのである。
「それがある」
「ううん、軍隊によって違うんですね」
「細かいところはかなり違っている」
工藤はこう上城に話す。
「そのことはわかっておいてくれ」
「わかりました、そうなんですね」
「そのことも覚えておいてくれると嬉しい」
「わかりました」
「では」
スペンサーは二人の話が終わったのを見届けて四人にあらためて声をかけた。
「食堂にどうぞ」
「はい、それでは」
「お願いします」
「海軍の料理はやはり絶品です」
こう言って笑顔を見せるスペンサーだった。
「空軍よりもいいと思います」
「では楽しみにさせてもらいます」
大石は微笑んでスペンサーのその言葉に応えた。
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