勇者番長ダイバンチョウ
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第1話 番とバンチョウ
前書き
今までアニメでやっていた勇者シリーズなどを参考にして書きました。
が、内容はかなり違っちゃったりしてる危険性があります。
まぁ、気楽にご覧になって下さい。
宇宙は広い。その広大な宇宙には我々地球人の他に数多くの生命体が生息している可能性がある。しかし、その生命体に未だ地球人は巡り合ったと言う記録がない。
だが、もし出会えたとしたら。
そして、その生命体がとても悪質な生命体だったとしたら。
そんな人々の不安など全く気にする事なく、宇宙は存在していた。
無限に広がる大宇宙の中、一筋の光が放たれた矢の様に走っていた。
その光は迷うことなく目的の場所に向かい一直線に飛んで行っている。
(もうすぐ見える。太陽系の中でも一際美しいと言われた青い星)
光が目指している場所。それは我々人類が住んでいる星でもあった。
その光がやってくる目的は、それは決して、私達人類に有益な存在とは言い難い目的を持ってやってきたのであった。
(あの星を、絶対俺の縄張りにしてやる! 宇宙一の番長になる為の布石として!)
不吉な事を言いながらも、その光は真っ直ぐに降りて行った。
青く輝く美しい星。太陽系第三番惑星。地球へと……
***
都会と田舎町の合作と思われる町【番町】へんちくりんな名前から多くの人々は本来の名前で呼ばず、何故か皆【ばんちょう】と発音しているのである。
そんな番町の裏通りにて、二人の学生を取り囲むようにして睨みつけている数人のチンピラが見えていた。
二人の背丈から見るにどちらも中学生に見える。
「だからさっきも言ってるだろう? 俺達にちょっとで良いからお前等の小遣いを分けてくれってよぉ」
「早くしないと痛い目見る事んなるぜぇ」
腕をボキボキと鳴らしながらチンピラ達が執拗に迫ってくる。一方で、中学生達はどうする事も出来ずガタガタ震えているだけであった。
声も出せる筈がない。此処は人通りの少ない裏通り。必死に叫んだって誰も来てくれる筈がないのだ。ましてや、相手はチンピラとは言えヤクザだ。下手に介入したらそれこそ命の保障がないのだ。
言ってしまえばこの二人は運が悪かったのである。
二人の顔が真っ青になっていく。この世の終わりとも見て取れる顔をしていた。正にそんな瞬間であった。
突如、目の前に居たチンピラの内一人が突然横にすっ飛んで行ったのだ。
奇妙な跳び方であった。まるで横から何かに蹴り飛ばされたかの様に。
他のチンピラ達もその光景に驚きチンピラが吹き飛んだのとは反対の方向を見る。
其処には一人の学生が立っていた。ダボダボの学生ズボンを履き、その下ははだしでゲタを粋に履き慣らし、学生服は今時珍しい長ランを羽織っただけであり白いシャツが下から見られる。
鋭い眼光に渋い顔つきをしたいかつい感じであった。何よりも、その男の背丈がチンピラ達よりも頭一つ分大きい。多分180センチ近くはある。
今は誰も被らないような唾の欠けた学生帽を被り、口元には何故か魚の骨が咥えられている。更に言うと、その学生の右手には箸が握られており、左手には並々ご飯の盛られた茶碗が持たれている。
「誰だてめぇ!」
「俺達を天下の極悪組と知ってて喧嘩売ってんのかてめぇ!」
当然こんな事をされたのだからチンピラ達とて黙ってられる筈がない。忽ちその学生に対しメンチをきり始めた。しかし、背丈が小さいせいか余り迫力がない。
それに対し、学生の方はそんなチンピラ達のことなどガン無視しながら飯を頬張っていた。
「ふがふがふがが……ふがもがが」
「いや、そう言うのは食いながら言うもんじゃねぇから!」
「兄貴ぃ、何なんですかぁこいつ? 只の馬鹿なんじゃねぇんですかぁ?」
どうも拍子抜け感が否めない感じであった。喧嘩を売ってきたと言うのに、当の本人に至っては食事に夢中なのだから。
そうこうしていると、学生が飯を食い終わり口元についていたご飯粒を一粒ずつ口元に運びながら目下に居るチンピラ達を睨んだ。
「ったく、白昼から堂々と学生相手にカツアゲたぁ、最近のヤクザってのは品が落ちたんじゃねぇのか?」
「なんだとてめぇ!」
「そんなてめぇらのひん曲がった根性。この俺が叩き直してやる! この【轟番(とどろき ばん)】がよぉ!」
「上等じゃねぇか! あべこべにてめぇを袋にしてやるよぉ!」
震える中学生達を他所に、轟番と名乗る学生と数人のチンピラ達の激闘は開始された。いや、それは激闘と言うには程遠い光景だったと言える。
初めに殴りかかってきたチンピラAに対し、顔面に向かい強烈なゲタキックをお見舞いし地に伏せさせる。続いて襲い掛かってきたチンピラBに対してはカウンター宜しく野太い腕を利用したパンチ一発で軽く沈黙。残ったチンピラCにいたっては青ざめた顔をしながら懐から光物を取り出してちらつかせだした。
が、そんな物を見ても番は眉一つ動かさない。因みに光物と言うのは俗に言う刃物系列である。
「本来なら素手で倒す予定だったが、てめぇらがそれを使うってんならこっちも容赦しねぇ」
「な、何すんだよ? こっちは本物のドスだぞ! 切れるんだぞ!」
「ドスがどうした? そっちがドスならこっちはこれで良い」
番が背中に手を回す。すると、其処から現れたのは一本の木刀であった。
柄の部分には達筆で【一意専心】と書かれている。何所にでもある様な極普通の木刀であった。
「この木刀でてめぇの捻じ曲がった根性を修正してやるよ」
「な、舐めた事抜かしてんじゃねえええええええ!」
ドスを小脇に抱えて猛然と突進してきたチンピラC。そんなチンピラの前に映っていたのは、木刀を頭上に振り上げている番の姿であった。そして、そのまま物凄い勢いで木刀は振り下ろされた。
それからの記憶は殆どない。何故なら、その後チンピラCに向かい放たれた木刀の一撃で全てが決まったのだから。
目の前にはドスを持ちながら泡を吹き、脳天には巨大なたんこぶが出来上がっているチンピラの姿が映っている。そんなチンピラ達を前にしながらも、番は悠然と木刀を締まい、中学生達を見た。
「大丈夫だったか? 中学生」
「は、はい! 有り難う御座います」
「なに、良いって事よ。これからも何か困った事があったらこの町の番長の俺に頼みに来な」
自信満々に自分を指差す番。そんな番を見て目を輝かせている中学生達。
だが、その途端、今度は番の顔が真っ青になりだした。
「やべぇ! 良く考えたら俺今遅刻しそうだったんだ! 急がないと本当に遅刻だあああああああ!」
そんな事を叫びながら番は猛ダッシュで裏道を走り出した。どうやらこの道は番の通う学校の近道ルートだったらしい。しかし、其処を通っていた際に例のカツアゲに遭遇してしまい、そのまま喧嘩をして今に至った。と言う事らしい。
番も不運と言えば不運であった。
***
宇宙から飛来したその光は現在番町の上空を飛行していた。一般市民からは絶対見えないその光は悠然と町の上を遊覧飛行している。
【噂通りの綺麗な星だな。気に入ったぜ。後はこの星のリーダーに会って……】
言葉を発していた最中であった。突如その光が徐々に弱まっていくのが見える。その事態に光の主は焦りだした。
【やべぇ、この世界の大気は俺の体に会わねぇみたいだ! どうする? このままじゃ俺消滅しちまうよぉ!】
オロオロしだしながら下の町に降り立つ。光が降り立ったのは一軒の家であった。
1階建ての少し古臭い家屋であり、その隣には掘っ立て同然の様な車庫がある。其処には軽トラックが一台と巨大なデコトラックが一台止められていた。
【もうこうなりゃ何でも構わねぇ! これで良いか】
光はそう言うと、目の前にあった軽トラックの中へと飛び込んでいった。数秒間その光と同じ発光を軽トラックが放っていたが、その発光もやがて収まり、何時もの光景となった。
その光景を見ていた者は、誰一人として居ない。
***
「だからさぁ、さっきも言ってるだろう? 近道をしてたら偶々中学生がカツアゲされてて、それを助けたせいで遅刻しちまったんだよぉ!」
場面が変わり、此処は番の通う高校の校門前である。その校門には分厚い鉄柵が敷かれてしまい、現在番は学校に入れない状態となっていた。
そして、そんな番と向かい合うように一人の少年が立っていた。番よりは背丈は小さいが決してガリと言う訳ではない。鋭い眼光に四角い眼鏡を掛けた如何にも堅物な少年であった。
「何度も言わせるな。どんな理由があろうと校則は校則だ。轟番、貴様は遅刻したのだ! ガタガタ言わずに素直に生徒手帳を出せ」
「そんな物持ってる訳ねぇだろ! 朝急いで来たんだから忘れちまったよ」
「貴様、それでも学生か? 生徒手帳を持って来るのは常識だろうが!」
目の前で怒号を張り上げる少年にたじたじな番。どうやら番は彼が苦手なようだ。
「な、なぁ……今回だけは見逃してくれないかぁ峰ぇ」
「そんな猫撫で声で頼んだって駄目だ! この【峰守(みね まもる)】の目の黒い内はどんな校則違反も見逃さん! 分かったら大人しく生徒手帳を取って来い!」
「ケチ!」
「何とでも言え!」
背中を向けてボソリと愚痴る番に対し、冷静に返す。すると、更に大声を番は張り上げた。
「ドケチで堅物でKYで脳みそ年齢55歳で時代遅れで甲斐性無しな峰守!」
「何だと貴様あああああああああああ!」
番の言葉に激怒した守が鉄柵を飛び越えて番を追いかけようとしだす。が、その直後、今度は守もまた青ざめる。そして、振り返ると、其処には全く別の生徒会員が立っており、不気味な笑みを浮かべていた。
「峰守。生徒会員である貴様がエスケープとは見下げ果てたな」
「い、嫌僕は……」
「言い訳は無用だ。大人しく生徒手帳を出せ!」
「ぐぅ……覚えていろよ。轟番めぇ……」
愚痴りながらも生徒手帳を差し出す守であった。
***
峰守のせいで学校に入れなかった番は愚痴りながらも家路を歩いていた。
折角間に合う時間で学校へ向っていたと言うのにヤクザを相手してしまったが為に結局遅刻してしまったのだ。
その上急いでいた為に生徒手帳を忘れてしまったのでこうして取りに行く羽目となったのだが、正直わざわざ家にまで帰ってから学校に向うのは面倒臭い。だったらこのまま今日は家でのんびりしている方が良いだろう。
そう思いながらも家が目の前に見えて来た。
「やれやれ、これからどうすっかなぁ? 家に帰ってもやる事何もないからなぁ」
ブツブツと言いながらも家の中に入ろうと車庫の前を通った。正にその時であった。
【見つけたぞ。お前がこの星のリーダーだな?】
「あん? 何だ!」
何所からともなく声が聞こえてきた。声のした方を見る。其処には自宅に止められている軽トラしかない。
「まさか、親父の軽トラが喋った……訳ないかぁ! だって軽トラだもんなぁ。きっと空耳だ空耳」
人が居ないのに声がする筈がない。そんなの常識だ。お馬鹿で定評のある轟でさえそう言う事は理解しているつもりだ。
そんな訳でさっさと家に入ろうとする。
【こぉらぁ! 俺を無視してんじゃねぇ!】
「ま、また聞こえてきた! 誰だ? 出て来い!」
【出て来て欲しいってんなら出て来てやるぜ!】
売り言葉に買い言葉を返しあう両者。すると、突如誰も乗っていない軽トラのライトが点灯しだし、急アクセルを吹かして番の目の前に陣取る。
「な、何で誰も乗ってない軽トラが動くんだぁ?」
その光景に番は大層驚かされる。そして、更に驚きの光景が展開した。
何と、目の前で軽トラが変形し始めたのだ。
絶対有り得ないと思わしき変形機構で変形をし、瞬く間にその姿は3メートル位の巨人に変貌してしまった。
【宇宙を股に駆ける喧嘩屋。バンチョー星人、只今参上!】
「ば、バンチョー星人だぁ!?」
【おいてめぇ、この俺とこの星を賭けてタイマン勝負をしやがれ】
いきなりであった。突如自宅の軽トラが喋りだしたかと思ったらそれが巨人になり、更には喧嘩を吹っ掛けられてしまったのだから。
「い、いきなり何言い出すんだてめぇは?」
【俺は今まで幾多の宇宙を渡り歩き、その度に星星のリーダーとタイマン勝負をして勝ってきたんだ。そして、この星は俺の第100勝目を飾る星と今日決めた! だからこの俺と勝負をしろ!】
「いきなり出て来て何抜かしてんだ? まぁ良い。丁度俺も暇してた所だ。てめぇのその捻じ曲がった根性。この俺が叩き直してやらぁ! そして、家の軽トラを取り返してやるよぉ!」
互いに啖呵を切り合い、いざ喧嘩を始めようとした正にその時であった。
突如近くで凄まじい爆発が起こる。何事かと思い爆発のした方を両者は見た。
其処にはバンチョー星人と名乗る巨人とほぼ同じ位の巨人が複数町に降り立って暴れまわっているのだ。
「何だ? お前の仲間か?」
【違う、あれはゴクアク星人! この宇宙近辺で暴れまわってるならず者集団だ! あいつ等。この星は俺が最初に目をつけたってのに後から来て横取りする気だなぁ! そうはさせるか】
勝手な事をダラダラと言った挙句、一人で突撃していくバンチョー星人。その後を番も追い掛けるも人間と3メートル級の巨人とでは歩幅が違うので忽ち差が開いてしまう。
そんな事お構いなしにバンチョー星人は複数の巨人達の前に現れた。
【やいやい、ゴクアク星人共! この星はたった今からこの俺、バンチョー星人の縄張りだ! 好き勝手するのはこの俺が許さねぇぞコノヤロー!】
名乗り向上を上げる。するとゴクアク星人と呼ばれる複数の巨人達が揃ってバンチョー星人の方を向いた。
【何だ。誰かと思えば宇宙の暴れ者バンチョー星人か。それにしても何だそのボロッちぃ体は? お前まさかそんなオンボロに乗り移ったのか? 本当にてめぇらバンチョー星人は頭が悪い馬鹿の集まりだぜ】
【るせぇ! 俺だって好きでこんなオンボロトラックに乗り移った訳じゃねぇんだよ! 只仕方なく乗り移っただけでぃ!】
勝手に乗り移っておきながら酷い言い様であった。
【まぁ良い。俺達の邪魔するってんならまずはてめぇからスクラップにしてやるよぉ!】
【上等だぁゴラァ!】
勇猛果敢に突撃するバンチョー星人。だが、複数の巨人達の一斉攻撃を受けてあっさり跳ね返されてしまった。
地面に激突し、辺りに衝撃が走る。
【く、くそぉ……こんなオンボロボディじゃなけりゃ。あんな奴等一撃で倒せるってのによぉ】
「おいてめぇ、人ん家の軽トラ盗んどいて何好き勝手抜かしてんだ!」
【お、お前……】
見れば、倒れたバンチョー星人の近くにようやくたどり着いた番が居た。
多少息が荒れてるが元気の様だ。流石は番町の番長である。
「大体、ご大層な啖呵を切った割りにはボロ負けしてんじゃねぇか! もっと気合入れやがれ!」
【うるせぇ! こんな体じゃなけりゃ今頃あんな奴等全員のしてるところなんだよ!】
「どうだかな? もしかしてお前、本当は喧嘩弱いんじゃねぇの?」
【あんだとこの野郎! 俺は喧嘩最強のバンチョー星人だぞ! 今まで99回戦って99回勝ってるんだ! 俺が弱い筈がねぇ!】
「だったら今すぐあんな奴等倒しちまえよ!」
忽ち番とバンチョー星人との言い争いが勃発してしまった。しかし、ゴクアク星人達にはそんな事お構いなしの如く砲撃を再開しだす。
背中から一斉砲撃を受けたバンチョー星人が再び倒れ込む。その場所に番が居る事など気にせずに。
「うおわぁぁ! 馬鹿、来るなぁぁ! 死ぬ、俺が死んじまうぅぅ!」
急いでその場から逃げようとしたが、時既に遅しであった。哀れ、轟番はバンチョー星人の巨体に下敷きとなってしまったのだ。
そして、倒れた拍子に沈黙してしまったバンチョー星人。
【死んだか? 馬鹿な奴だぜ。俺達に楯突くからこうなる……ん?】
ゴクアク星人達は言葉を止めた。見ると、ゆっくりとだがバンチョー星人が起き上がっているのだ。
【何? まだ起き上がれるのか】
【しぶとい奴だ。あんなオンボロボディの分際で】
【時間の無駄だ。最大出力で一気に片付けるぞ】
ゴクアク星人全員が構えを見せる。
そんな時、バンチョー星人は起き上がりゴクアク星人達の方を向いた。
【あ、あれ? 俺……どうなっちまったんだ?】
バンチョー星人の口から聞こえてきたのはバンチョー星人の声ではなかった。そう、其処から聞こえてきたのは番の声だったのだ。
【ってか、これあのバンチョー星人とか抜かしてる野郎の体じゃねぇか! 何で俺があの野郎の体に?】
(ったく、危うくお前をぺしゃんこにしちまう所だったぜ)
【その声、バンチョー星人!】
今度はバンチョー星人の声が頭の中に直接入り込んで来た。益々訳が分からなくなってしまった。
【どう言う事だよ。今の俺どうなってんだよ?】
(どうやらこの星じゃ俺一人の力は本来の力の10パーセントにも満たないらしい。今更で俺も恥ずかしい話なんだが、あいつらをぶちのめすのに手を貸して貰えねぇか)
【ったく、散々人に喧嘩売っといてそりゃねぇだろうが! 自分で撒いた種は自分で刈り取るのが常識だろ?】
(俺だってそうしたいさ。だけど、このままじゃこの星が奴等の手に渡っちまう。それだけは嫌なんだよ!)
バンチョー星人の切実な願いであった。そして、それは番もまた同じであった。
星がどうこうと言うのは別にどうでも良い。だが、生まれ育ったこの町を好き勝手されるのは冗談ではなかった。
【しょうがねぇ。この町をあんな奴等に渡す気はねぇしな。さっきの事は水に流してやる。一緒に戦うぞ、バンチョウ!】
(ば、バンチョウ?)
【あぁ、どうもバンチョー星人ってのが呼び難くてなぁ。それに、そっちの方が俺としちゃしっくり来るからよ】
(そうか、まぁ良い。宜しく頼むぞ、番!)
【任せておけ、バンチョウ!】
会話を一区切りし、番は一歩前に踏み出した。それに呼応し巨人も足を一歩前に踏み出す。
目の前ではゴクアク星人達が何時でも攻撃出来るようにスタンバイしている。
【やい、ゴクアク星人! てめぇらのその捻じ曲がった根性、この番町の番長のバンチョウ様が直々に叩き直してやるぜぃ!】
【番町の番長のバンチョウ? 何だいきなり】
【さっきの攻撃のせいで頭がいかれたのか?】
【つくづく面倒臭い奴だな】
どうやら悪党には理解に苦しむ名乗り向上だったらしい。まぁ、一般市民でもその名乗り向上を理解するのは難しいだろうが。
【えぇい、面倒だ! さっさとぶっ壊せ! どうせあんなオンボロ。すぐにスクラップだ!】
【バンチョウを舐めるんじゃねぇ!】
動きがさっきとは全く別人の如しであった。
一瞬の内にゴクアク星人Aの目の前まで接近したのだ。それに全てのゴクアク星人が度肝を抜かれる。
そして、一瞬の内に目の前に居たゴクアク星人Aのドテッ腹にバンチョウの右拳が貫通していたのだ。
【な、何だこいつ! 動きも、スピードも、パワーもさっきとは桁が違うぞ!】
【当たり前だ! 俺はこの町の番長、轟番様! そして、こいつはこの星の番長、バンチョウ様だ! その捻じ曲がった根性の隅にでも刻み込んで置けぇ!】
沈黙したゴクアク星人Aを放り捨て、続いて右隣に居たゴクアク星人Bに対し勢いの付いた右回し蹴りを叩き込んだ。即頭部にヒットしたそれが決め手となりゴクアク星人Bもまた糸の切れた人形の様に地面に倒れ伏してしまった。
残るは一匹だけだ。そう思い振り返った瞬間、突如目の前が閃光に包まれた。
【ゲゲゲッ! こ、これでどうだ! そんなオンボロボディなんて一発で粉々だぜぃ!】
最大出力で放ったそれが激しい爆煙を巻き上げる。これならば幾ら何でも、そう思っていた刹那、黒煙の中から無傷なバンチョウが姿を現した。
【う、嘘だろぉ!? 何でそんなオンボロなのに堅いんだよぉ!】
【舐めるんじゃねぇぞ! 男の熱い魂が宿ったこの鋼鉄の体がそんな豆鉄砲で砕ける訳ねぇだろうが!】
【た、魂?】
【そう、男の動力源は熱い血潮と魂だ! この二つがある限り、この轟番も、そしてバンチョウも無敵なんだよぉ!】
意味不明な説明にゴクアク星人Cは困惑しまくりであった。そんな困惑するゴクアク星人Cに対し、バンチョウは目前にまで迫った。
【ひ、ひぃぃ!】
【てめぇみたいな卑怯者にゃ拳も蹴りも使わねぇ。てめぇ如きにゃこれで充分だぁっ!!】
怒号と同時にバンチョウの堅いヘッドがゴクアク星人の眉間にヒットした。
猛烈な頭突き攻撃だ。まるで巨大隕石を諸に食らったかの様な衝撃を受けたゴクアク星人は、そのまま数歩下がった後、地面に倒れ伏してしまった。
回りにはもう戦闘できるゴクアク星人は居ない。
バンチョウの完全勝利であった。
【見たかゴクアク星人! これが無敵のバンチョウ様の実力でいぃ!】
自信満々に腕を振り回し、バンチョウは勝利宣言をした。そして、この戦いこそ、後に勇者番長と呼ばれる偉大な勇者の初陣と、長きに渡る壮絶な戦いの幕開けとなったのである。
つづく……
後書き
次回予告
番
「宇宙から飛来したバンチョー星人と協力して今日から異星人相手に大喧嘩の始まりかぁ。こりゃ毎日喧嘩三昧で良いじゃねぇか。
何て思ってたら今日のより更にでかくて強いのがきやがった! だったらこっちもでかくなってやらぁ!」
次回、勇者番長ダイバンチョウ
【漢だ! 根性だ! ダイバンチョウだぁっ!】
四六四九!!
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