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銀色の魔法少女

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第二十三話 その後の話 なのは、刃、女神

side なのは

 ジュエルシードに関わる事件が終わりを告げて以降、シグルドさんとは会っていない。

 何度か街を探してはみたけれど、見つからなかった。

 クロノ君達が現在も捜索中だけど、成果はなし。

 そうして、レイさんの目的やシグルドさんの正体といった幾つかの謎を残して、私にいつもの日常が戻ってきた。

 アリサちゃんやすずかちゃん、遼ちゃんがいるいつもの日々。

 ……そう言えば、いつも何かと近寄ってくるあの人、管理局員を目指すことになったみたい。

 「次はあいつを打ち負かしてやる!」と意気込んではいたけれど、クロノ君に何か言われてすごいへこんでいたの。

 けれど、次の日には復活して、いつも通り私たちに近寄ってくる。

 …………正直、もうちょっと平和でいたかったの。



side 刃

「うりゃあああああああああああああああ!」

 俺は力いっぱいベイオットを振り下ろす。

 目の前にいるのは、あいつ擬似的に再現したプログラム。

 俺は学校が終わるといつも、アースラの中でそいつとの戦闘に明け暮れていた。

 原因は少し前に遡る。



「次はあいつを打ち負かしてやる!」

 俺の邪魔をしただけではないく、なのはに毒牙をかけようと虎視眈々と狙っているあいつ。

「いや、それは無理なんじゃないか」

「なんでだよ!?」

 横にいたクロノが丁寧に説明してくれた。

「レイジングハートとベイオットに記録されていた彼の戦闘データを見る限り、彼は対人戦闘に特化したベルカ式の魔法の使い手だと推測できる」

「ああ、それがどうした?」

「ベルカ式のもっとも特異な点はなんだ?」

「そりゃもちろんカードリッジ……」

 そこまで言われて俺は気がつく。

「そう、彼は一度もカードリッジシステムを使用していない」

 つまり一度も全力を出していないことになる。

「それに今の君は僕でも倒せる、彼に勝つにはもっと腕を上げることだ」

 クロノの言うことはもっともだ。

 魔法の技術も、知識も、経験も、クロノの方が圧倒的に上。

 だから俺は、訓練に明け暮れた。



 そいつは俺の剣を弾くと、空いている足で蹴りつけてきた。

「この!」

 俺は咄嗟にシールドで防ぐ。

 奴は反動を利用して後ろに下がると、あの構えをした。

 前に俺を落とした、牙突。

 そいつの姿が掻き消え、一瞬で俺の前に現れる。

 こいつの牙突にシールドが効かないのは体験済み。

 だから俺は剣で弾く。

 けど、あやつの攻撃はそれでは終わらなかった。

「な!?」
 
 気がつくとあいつに左手にエアが握られていた。

 そしてそのまま俺の体を貫く。

『You Loss』

 少しの痛みを残してあいつも風景も消える。

 また、負けた。

「いや、今のはよくやったと思うよ」

 両手に飲み物を持って、クロノが入ってくる。

「最初は一方的にやられるだけだったのに、最近はちゃんとついていけてる、これならすぐにアレにも勝てるようになる」

 そう言って片方を俺に渡す。

「ああ、絶対に勝つ!」

「……なあ、どうしてそこまであいつにこだわるんだ?」

 クロノが不思議そうに聞いてくる。

 そう言えばクロノにはわけを言ってなかったな。

「あいつは、俺のハーレム計画の最大の障害だからさ!」

「ぶほぅ!?」

 クロノが飲んでいたジュースを吹き出す。

「き、君はそんな理由で必死に訓練しているのか!?」

「ああもちろんだ! ハーレム、それは男の最大の夢!」

 俺は力強く立ち上がる。

 クロノが訝しげな目で見ているけど関係ない!

 俺はいつか、ハーレム王になるんだ!



side 女神

 時は少し遡って、レイの敗戦直後。

「バカな、ありえない……」

 ゼウスが力なく呟く。

「わしの、わしが選んだレイが負けたじゃと」

 彼は未だに画面を食いるように見つめている。

 すると彼の目の前に別の画面が現れた。

『You Loss』

 私たちもそれには驚いた。

 「なんじゃこれは」と彼が無事だったらそう言っていただろう。

 けれど、それは言葉を放つ暇もなく、起こった。

 ゼウスの体が光り輝いたかと思うと、そこにいた老人は消え、一柱の赤ちゃんがいるのみだった。

「あら、これが弱体化なのね」

 アフロディーテが面白そうに彼に触る。

「本当になんの力も感じない、ゼウスの権能まで奪っちゃうなんて、すごいシステムだったのね、これ」

 そう言ってこちらを見つめる。

「知らんし<`Д´>」

 本当に知らないのだから仕方ない。

 けれどあいつはそう思ってないようで、ジロジロとこちらを見てから元の席に座った。

「で、どうするの? 今日は解散?」

「……戦闘は終了、多分、次までは時間があるから、解散」

 次というのはA'sのことだろう。

「そうね、あいつも空白期に騒動は起こさないでしょ、『ハヤテを俺の嫁にするんだ!』って張り切っていたしね」

 あいつというのは彼女の転生者だろう。

 まったく、うちのやつを除いて、みんなそんなのばっかだ!

 …………まあ、私も全力で勧めてたけど。

「じゃあ解散」

 彼女がそう言って、皆席を立つ。

 しかし、私は知らなかった。

 二ヶ月もしないうちに、次の脱落者が出ることに。 
 

 
後書き
注意、

エアは戦利品として、遼が持ち帰りました。 
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