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銀色の魔法少女

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第二十一話 決着 中編

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「フェイトちゃん!」

 なのはが彼女に近づいていく。

「急ごう、あの子も戦ってる」

「うん!」

 フェイトにそう言えわれ、なのはは遼がいる方に向き直る。

「クロノ君、アリシアちゃんをお願い!」

 そう言うと二人は飛び立つ。

「おい! 俺を置いていくな!」

 そう言って刃もついていこうとするが、

「ダメだ! これ以上行っても邪魔になるだけだ、だから僕と君は武装班とともにこれからテスタロッサのアジトに突入する」

「はぁ!? なんで今なんだ!」

「確かにアリシアは停止したが、他にも危険な兵器を隠し持っているかもしれない、だから先にそちらを制圧するんだ」

「いや、確かにそうだけど……」

「グチグチ言ってないでさっさと来る! ……それに、あちらにいる偽物も確保する必要があるんだ、正直局員だけじゃ不安すぎる」

「ああもう! わかったよ!」

 刃は乱暴に自分の頭をかく。

「さっさととっ捕まえて、なのはにいいとこ見せてやる!」




「まったく、ゴキブリよりうざい奴だ」

 レイは忌々しげに遼を見下す。

 レイは様々な攻撃を遼に放つが、その全てをアルフが防ぎ、また遼が回避したため、状況は膠着状態に陥っていた。

「それは主の方ではないか? いや、その醜悪な精神は虫にも劣るか」

 遼は相変わらず、レイを挑発し続ける。

「言ってろ! そんな奴にお前は殺されるんだ!」

 レイはもう一度、天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を放つ。

 しかし、もうそれは遼には当たらない。

 クリムとユーノの治療により、骨が軽くくっつき、痛みも引き始めていた。

 全力を取り戻しつつある遼には、かすりもしない。

 それがレイを焦らせる。

(なんで、なんで当たらない! 向こうは重症で俺は無傷、圧倒的なはずなのにアイツに当たる気が全くしない!)

 レイは気がついてなかった。

 確かに、天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)はスターライトブレイカーを超える凶悪な魔法だった。

 けれど、それを繰り出すために一定の動作をして、更に一直線にしか破壊を生まないことを遼は見抜いていた。

 だから、レイが構えた時には回避の準備は出来ており。

 レイが放った時には既に避けている。

 さらにもう一つ、遼にも予想外の要因が、それを手助けしていた。

 回復しつつあるとは言え、遼は重症。

 何度か怪我の痛みに気を取られ、当たりそうになった。

 けれど、その度に視界が灰色になり、世界が遅くなる。

(ん~、交通事故とかでこういう体験をした人がいるのは聞いたことがあるけど、こんなに連続するのは流石におかしいな、……それに、これになる度に頭が痛い)

 それが御神流奥義之歩法神速と呼べる一歩手前のものだという事を遼は知るよしもなかった。

 それが技とも知らずに悩む遼に、後ろから声がかけられる。

「シグルドさん!」

 遼は振り向く。

 そこには高速で近づいてくるなのはとフェイトの姿があった。

「フェイト!? フェイト、フェイト~!!」

 フェイトに気づいたアルフがフェイトに抱きつく。

「なのは、それにフェイト、……もう良いのか?」

 アルフの頭を撫でながら、フェイトは答える。

「はい、私は、自分の手で決着をつけたい」

「……そうか、なら良い」

「あの~?」

 二人が真剣な面持ちで話す中、なのはが遼に声をかける。

「どうしたのじゃ?」

「なんでユーノ君お顔真っ赤にして、シグルドさんに抱きかかえられてるの?」

 なのはがそう言うので、フェイトもユーノの顔を覗き込む。

 確かにユーノ顔は真っ赤に染まっており、変な汗もかいている。

「ああ、ちょっとこやつには仕事を頼んでおってな、それ故に動けぬから我がこうして抱えておるのじゃ「あ!?」、ん? どうしたのじゃフェイト?」

 先入観からかなのはには見えなかったそれが、フェイトには見えた。

 ユーノの頭の所に、遼の胸が押し付けられている。

『シグルドさん! む、胸がこの子に当たってます!』

『……おお! 本当だ、全く気がつかなかった!』

 遼は自分の今の状態をやっと正しく認識する。

「すまぬなユーノ、もう良い、十分なできじゃ」

 そう言ってユーノを解放する。

 ユーノはやっと解放されて、安堵のため息をつく。

 けれど、すぐに遼の状態を思い出す。

『ちょっと、まだ骨がくっついた程度しか回復できてないけど本当にいいのかい?』

『よい、奴程度の塵芥にはこの程度で十分じゃ』

 そう言って遼はレイに向き直る。

「すまぬな、雑談は終わりじゃ」

「は、遺言の間違いだろ」

 レイはずっと遼たちが話終わるのを待っていた。

 その隙をついてもよけられる事はわかっていたし、何よりフェイトを傷つけたくなかった。

「フェイト、君まで俺の邪魔をするのか?」

 レイが悲しそうにフェイトを見つめる。

「レイ、あなたは私の大切な兄妹、けど、私は何も知らなかった……、だから、教えて欲しい、どうして、母さんを殺したの? どうして、こんな酷いことをするの?」

「…………教えたら、手伝ってくれるのか?」

 その問にフェイトは首を横に振る。

「いいえ、全てを知った上で、あなたを止めます」

「………………そう、じゃあ仕方ないね」

 レイはエアをフェイトに向ける。

「死なない程度に魔法をぶつけて、戦闘不能になったところを回収することにするよ」

「そんなこと、させません!」

 レイとフェイトが睨み合う。

「主ら、我らのことを忘れてはおらぬか?」

 すっと、フェイトの右に遼、

「私、シグルドさんとフェイトちゃんとお友達になりたいの、だから、こんな所で負けるわけにはいかないの!」

 左になのは、

「あたしも、全力でサポートするよ!」「僕だって!」

 後ろにアルフとユーノが並び立つ。

 その光景に、フェイトは胸が熱くなる。

 フェイトは精一杯の感謝の気持ちを込めて、こう言った。



                 「うん、みんないこう」
 
 
 

 
後書き
後編はちょっと遅れますが、今日中には投稿します。 
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