MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~
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015
「おおっ。中々似合うじゃないですか」
着替えを終えて更衣室から出てきたハジメを見てファムが感想を口にする。
ファムから手渡された黒の軍服を見にまとい、銀色の鉄仮面を頭に被るハジメ。その姿はまるでSFロボットアニメの主人公と敵対する敵軍の軍人(それもかなり重要な立場の)のようである。
……どう見ても主人公の格好ではない。
「はぁ……。そう、ですか……?」
ハジメは鉄仮面を被った頭を傾げて戸惑った声を出す。これだけで今彼が仮面の奥でどんな表情をしているか容易に想像できるだろう。
「それでファムさん? 何で僕がこんな格好をしないといけないんですか?」
「その理由でしたらリンドブルムに向かいながら説明します。こっちへ」
こうしている間にも北の空では軍とゴーレムとの戦いが始まろうとしているのだ。ハジメとファムはリンドブルムへと向かって走りだし、その途中でファムが事情を説明する。
「まず最初に軍の上層部はハジメさん……じゃなかった、イレブン・ブレット少将を復隊させるのと同時に、その名前を大々的に世間に広めることに決めたんですよ。ほら、伝説の英雄となれば軍全体の士気も上がりますし、他の惑星国家の牽制にも使えますから」
「それがどうしてこんな格好をすることに? あと『伝説の英雄の名を受け継いだ』ってどういう意味ですか?」
ファムは自分の後ろを走るハジメの質問に頷くと説明を続けた。
「私達、軍の人間は貴方が本物のイレブン・ブレット少将だと理解していますが、一般の人達にはそれが分からないんですよ。だから『二百年前のイレブン・ブレット少将』と同じ名前と階級の別人ってことにした方が手っとり早いということに。そしてその格好はハジメさんの安全を守るための予防策です」
「僕の、安全?」
ファムはそう言うが、このコスプレみたいな格好がどうしたら自分の安全に繋がるのか、ハジメには理解できなかった。
「そうです。イレブン少将の大々的に世間に広めるということはその姿をメディアにさらすということ。もし素顔を世間に公表したらイレブン少将、どうなると思います?」
「さ、さあ……」
「マスターギアを操れるサイコヘルムのパイロット……。それの素顔を分かったら各惑星国家はどうあってもイレブン少将を手に入れようとするでしょうね。拉致同然のスカウトは可愛いくらいで、最悪暗殺されて死体を研究用のサンプルのされたりするでしょうね」
「ええっ!? そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿な、じゃありません。貴方、イレブン少将にはそれだけの価値があるんです。ですからイレブン少将、作戦中はいつもその格好でいてくださいね?」
「は、はい……」
そこまで話したところでハジメとファムはリンドブルムが停泊しているドックに辿り着き、二人はドックの入口の前で止まる。
「あと、作戦中の貴方は『ニノマエ・ハジメ』ではなく『イレブン・ブレット少将』ですから、できるだけ将官らしく振る舞ってください。私もできるだけフォローしますから」
そういえば先程からファムが自分のことを「イレブン少将」と呼んでいたことに気づいたハジメは「分かりました」といって頷く。
「よろしい。それじゃあ早く行きましょう。皆も集まっているでしょうから」
「皆? 皆って誰ですか?」
「イレブン少将が知っている人達ですよ。ほら、入って」
ファムがドックの入り口を開くとそこには確かに彼女の言う通りハジメが知る四人の軍人、ソルダとフィーユとコロネル大佐、そして先日の模擬戦の対戦相手であったエイストの姿があった。
「……え? ソルダさんにフィーユさん、コロネル大佐に……シヤン大尉まで? ど、どういうことですか?」
突然の出来事にハジメが混乱していると、頭に狼の耳を生やしたコロネル大佐が前に出て敬礼をする。
「お待ちしておりました、艦長」
「コロネル大佐……えと、何で貴女達がここに?」
「はっ。自分、コロネル・ルー大佐以下五名。上層部からの命により本日より特別遊撃隊に異動し、イレブン・ブレット少将の補佐を務めることになりました」
敬礼をしたまま答えるコロネル大佐にハジメは首を傾げる。
「補佐? コロネル大佐達が? それに特別遊撃隊って?」
「そうです。イレブン少将はいまだに記憶を失っており、軍の仕事に不馴れなご様子。そのため上層部はイレブン少将を隊長とした特別遊撃隊を結成し、自分達五名を任務を円滑に遂行するための補佐とすることにしたのです。
まず自分、コロネル・ルーは作戦の立案や他の部隊との交渉等の補佐を担当します。
次に横にいるルナール・ファム少尉はイレブン少将の体調管理とカウンセラーを担当。
ラパン・フィーユ少尉はリンドブルムの操縦の補佐、
ティーグル・ソルダ少尉はブリッジの通信、リンドブルムの防衛行動の補佐、
最後にシヤン・エイスト大尉はアンダーギアによるイレブン少将の補佐、あるいはリンドブルムの護衛を担当します」
「なるほど」
コロネル大佐の説明にハジメは納得して頷いた。
確かに自分はサイクロプスとリンドブルムに乗っての戦闘は得意だが、それ以外はまったくの素人だから専門家であるコロネル大佐達がいてくれると頼もしいとハジメは思う。それにサイクロプスに乗って戦闘に出たとき留守となったリンドブルムを守ってくれるというのもありがたかった。
「分かりました。僕も皆が補佐してくれると助かります。これからよろしくお願いします」
「はっ。全力で補佐を務めさせていただきます」
と、再びハジメに敬礼をして返事をするコロネル大佐。
「こちらこそ。また一緒ですね。ハ……イレブン少将」
危うくハジメの名前を呼びそうになり、慌てて言い直すフィーユ。
「こうして共に行動できること、光栄に思います」
コロネル大佐と同じように敬礼をして僅かに頬を赤くして答えるソルダ。
「ふん! この未来の英雄である俺様がいるんだ。大船に乗ったつもりでいな」
両手をくみ胸を張って言い放つエイスト。
「イレブン少将。挨拶はこれくらいにして早く行きませんと」
横に立つファムにささやかれてハジメは自分達に出動命令が出ていることを思い出す。
「そうだった。皆、早くリンドブルムへ。急いで出動します」
ハジメはそう言うと急いでリンドブルムの中へ乗り込み、残った五人も後ろに続いていく。そしてハジメ達がリンドブルムのブリッジに辿り着くと、事前に基地と連絡をとっていたフィーユがハジメに報告する。
「イレブン少将、準備は整っています。いつでも発進できますよ」
「分かりました。リンドブルム、発進!」
『………!』
主の命を受けた鋼鉄の黒龍は、自らの体内に主とその部下達を乗せて空へと飛び立った。
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