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万華鏡

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第三十五話 厳島神社その八

「そういう人達と比べたら」
「清盛さんはずっといいのね」
「だって。源氏って」
 その頼朝の源氏はどうかというと。
「しょっちゅうね、身内で殺し合ってたから」
「そういえばそうね」
「義経さんだってそうだったでしょ」
「ええ」
 彼だけではない、源氏の身内同士の争いは。
「他にもあったわよね」
「範頼さんもだし」
 頼朝のもう一人の弟で義経と共に平家を追討した、頼朝はこのもう一人の弟さえも粛清してしまっているのだ。
「その前からね」
「何か因縁が凄いわね」
「義朝さんの頃からね」
 父の代からだというのだ。
「もう親子兄弟で殺し合って」
「何か凄いわね」
「結局それで最後は誰もいなくなったのよ」
 義朝の父為美の血筋、即ち源氏の嫡流は絶えてしまった。そして最後に残った者は誰もいなかったのだ。
「あの家はね」
「何か凄いわね」
「それでね」
 里香はさらに話す。
「平家は身内では争わなかったのよ」
「そうだったの、平家はなの」
「そう、確かに保元の乱では争ったけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「それ以降はなかったのよ」
「平家は身内では殺し合わなかったのね」
「そうなの、それに清盛はね」
 清盛の話が続く、今五人はその清盛も歩いた場所を歩いている。ここは毛利元就が歩いた場所でもある。
「義経も殺さなかったし」
「けれどお父さんは殺したわよね」
「義朝さんね」
「そう、あの人はね」
 殺したというのだ。
「そうしたけれど」
「息子は殺さなかったの」
「そうしたの、頼朝さんもね」
 その彼もだというのだ。
「殺さなかったし」
「何で殺さなかったの?」
「義理のお母さんに止められたの」
 子供を殺すな、実際に清盛は彼も慕い弟達の実母でもあるこの人物にそう言われ文まで書かれている。
「それでなの」
「殺さなかったのね、頼朝さんも」
「義経さんもね、義経さんのお母さんを側室にして許したの」
「側室ってお妾さんよね」
「そうよ」
「そんなのにするのは酷いんじゃないの?」
「けれど義経さんは助けたわよ」
 このことは事実だというのだ。
「側室になれば助けてやるって言ってね」
「約束は守ったのね」
「そう、清盛さんは子供の命は奪わなかったわ」
「じゃあいい人なのかしら」
「下の人にも優しかったらしいわ」
 このことは史実にある。
「言葉遣いも穏やかで」
「何か偉そうってイメージだったけれど」
「実際は違ったのよ、一族も家臣も凄く大事にしてね」
「漫画とかと全然違うわね」
 琴乃は歩きながら腕を組んで述べた。
「本当に」
「そう、けれど源氏は違って」
「特に頼朝さんよね」
「人質の子供を殺したりね」
 しかも自分が攻めさせた相手のだ。
「義経さんの子供も湖に沈めたり」
「そんなこともしてたの」
「とにかく身内で殺し合っていたのよ」
 それが源氏だというのだ。
「私も頼朝さん嫌いだけれど」
「それを抜いてもなのね」
「そう、平家より酷いのよ源氏は」
 この話を赤と白の社の中で話す、奇しくもそこは源氏の赤と平家の白の二つの色で彩られている。神社の色だ。 
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