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銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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第二百五十話 邂逅

帝国暦 489年 4月 10日  フェザーン   ギルベルト・ファルマー



商談が終わった。自由惑星同盟-最近はこの呼び方にも慣れたが最初のころは反乱軍と言いそうになって何度も言葉につかえた-出身の商人との取引は何のトラブルもなく終了した。

帝国と同盟の間では現在戦闘は行われていない、そして両国とも国内は平穏な状態に有る。同盟では主戦派によるクーデタが未遂で終わり現政権の基盤は強まった。そして帝国は国内の社会改革により経済は活性化しつつある。特に辺境星域への開発は商人にとって旨味の多い事業だ。多くの商人が期待を寄せている。フェザーンは同盟の占領下に有るとはいえ経済環境は決して悪くない。

フェザーン・インターナショナル・ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら
先日、フェザーンで行われた世論調査について考えた。無差別に二万人をネットで選んでの調査だ。一つはこのまま帝国が同盟によるフェザーン占領を認めるかについてだが回答者の九十三パーセントがそれは有りえないと答えた。ま、当然と言えるだろう。

二つ目はフェザーンの返還が平和裏に行われるか、それとも戦争になるかについての調査だったが四十八パーセントが戦争にならない、三十七パーセントが戦争になると答えた。残りの十五パーセントは分からないだった。

最後の質問はフェザーンの返還の時期についてだったが五年以内に行われると回答した人間が十七パーセント、五年から十年以内と答えたのが三十四パーセント、十年以上と回答したのが四十九パーセントになった。

面白いアンケートだ。フェザーン人は帝国は内政を重視し戦争は避けたいのだろうと見ているようだ。実際に過去の帝国でもそういう時代が無かったわけではない。名君マクシミリアン・ヨーゼフ二世陛下の時代は内政を重視し外征は行わなかった。改革を優先するのであれば戦争を誘発しかねないフェザーン返還は直ぐには取り掛からないだろうと見ている。何と言っても戦争は金がかかる、そして改革も金がかかる。

もっともフェザーンがこのまま同盟領になるとも考えていない。まあこの辺りは当然と言って良いだろう。だが戦争になるかどうかは別れた。戦争にならないが四十八パーセント、戦争になるが三十七パーセント。一見するとフェザーン人は戦争にならないと判断しているように見える。

確かにここ最近の帝国と同盟は多少の軋轢が有っても協調体制を取っている。戦争にならないと答えた人間が半数近いのはその所為だろう。しかし分からないと答えた十五パーセントをどうカウントするか……。

判断できない、戦争にならないとは言えない、そう捉えるなら戦争の可能性を否定していない事になる。その場合戦争になると考える人間は五十パーセントを超える事になる。それに戦争にならないと判断した四十八パーセントには希望も有るのではないだろうか。フェザーンを戦場にしたくないと言う希望が……。

戦争になるとすれば同盟ではなく帝国から仕掛ける形で始まるだろう。現在の帝国と同盟の軍事力を比較すれば同盟から仕掛けることは先ず無い。となれば帝国軍が難攻不落と言われるイゼルローン要塞を攻略するよりフェザーン攻略に向かうのは当然だ、フェザーン奪回の名分からもそうなる。フェザーン人にとってはフェザーンが戦場になるのは考えたくない事だろう。自らは血を流さず、痛みも感じずただ血を吸い上げる……。

「それがフェザーンだからな」
思わず口に出た。苦笑を浮かべコーヒーを一口飲む。うーむ、今一つだな……。このホテルはフェザーンでも最も格式の高いホテルのはずだがこのコーヒーは今一つだ。名門の名に奢ったか……。そう思う自分にまた苦笑した。自分はかなりフェザーン人らしくなってきたようだ。名より実を重んじる。

フェザーンの返還が五年以内に行われると回答した人間が十七パーセント、五年から十年以内と答えたのが三十四パーセント、十年以上と回答したのが四十九パーセントか……。

これはまた面白い数字だ。先の戦争の可能性についての回答と合わせて考えるとフェザーン人が何を考えているのかが分かる。十年以上と回答した人間が四十九パーセント、戦争は回避できると答えた人間が四十八パーセント、ほぼ同じ数字だ。そして五年から十年以内に返還と答えた人間が三十四パーセント、戦争は回避できないと答えた人間が三十七パーセント、最後に五年以内に返還と考えた人間が十七パーセント、分からないと答えた人間が十五パーセント……。微妙に数字が似通っている。もし、この回答者が重なっているとしたらどうだろう。

フェザーン返還に十年以上かかるという事は帝国の国内改革は一段落するまで十年以上かかると判断しているのだろう。十年以上の時間が有れば自由惑星同盟の軍事力は再建されているはずだ。つまり十年後にはフェザーンを無理に保持しなくても同盟は帝国との対峙が可能だと見ているようだ。

さらに帝国の改革が進んでいるならば帝国と同盟の共存は可能だと見ているのだろう。フェザーンを無理に保持する事で帝国との緊張を招く必要は無い、同盟は帝国にフェザーンを返還し協調関係を維持する。帝国も交渉でフェザーンを取り戻せるなら無理に戦争に持ちこむ事は無いだろう。そしてフェザーンは中立を取り戻し繁栄し続けるというわけだ。薔薇色の未来だな、思わず笑いが漏れた。

極めて楽観的な未来ではある。フェザーン人の約半数がそう考えているのだとすればフェザーン人というのは楽観的と見るべきなのか、それとも半数しかそう考えていないとすれば悲観的と見るべきなのか……。なかなか悩ましい数字ではある。

誰かに見られている? 首筋の辺りにチリチリと嫌な感じがした。コーヒーを飲むふりをしてさりげなく周囲を窺う。ラウンジに人は多いがおかしな人間は視界には確認できなかった。気のせいか?

コーヒーカップをテーブルに置き、ポケットから手鏡を取り出す。フェザーンに来てからは必需品だ。髪を整えるような仕草をしつつ背後を窺う、……やはりおかしな人間はいない。
「気のせいか……」

フェザーン返還が五年から十年以内に行われると答えた人間が三十四パーセント、そして戦争は回避できないと答えた人間が三十七パーセント……。五年から十年なら同盟軍の再建は途中だろう。その状態でフェザーンを返還できるだろうか?

難しいだろう、返還すれば帝国軍がフェザーン回廊から大挙来襲しかねない。再建途中の軍では厳しい戦いになる。同盟としてはフェザーンを保持しなんとか均衡を保ちたいと考えるに違いない。つまりフェザーンの返還は難しいと言う事になる。

一方の帝国だが五年から十年で改革が一段落しているとすればかなり余裕が有るはずだ。弱小の同盟を叩く良い機会だろう。ヴァレンシュタインがそれを見逃すとは思えない。フェザーン人が考えたのはその辺りだろう。

確かに私もそう思う。しかし可能性はもう一つあるようだ。改革が一段落していない場合だ。それにもかかわらず帝国がフェザーンの返還を望んだとすれば帝国は国内に深刻なトラブルを抱えている可能性が有る。国内の不満を逸らすために外に対して強く出る、良くある事だ。この場合中途半端に引く事は出来ない、行き着くところは戦争だろう……。

最後にフェザーンの返還の時期が五年以内と回答した人間が十七パーセント、戦争が起きるか分からないと答えた人間が十五パーセント。五年以内なら改革は始まったばかりだろう。回答者は帝国は改革の実を上げる事よりもフェザーン奪回を優先すると見ている。つまりかなり早い時点で帝国はフェザーン奪回にかかると見ているのだ。

戦争になるか分からないと回答したのはそれが原因だろう。同盟軍は殆ど再建出来ていない状況だ、その状況で帝国と戦争が出来るだろうか? 到底できない、となれば返還するしかない、しかしフェザーンを返還すれば帝国軍が同盟領に攻め込んでくる可能性が有る……。

帝国がフェザーンの返還だけで満足するか、同盟領への侵攻を意図するか、また同盟はそれをどのように読み取るか……。それによって戦争か交渉かが決まる。それが分からないという回答ではないのか……。

「さて、どうなるかな……」
帝国は今社会改革を行っている。そして帝国、同盟間は平穏な状態に有り帝国は戦争よりも交渉を優先しているように見える。実際先日放送された結婚式を見ても帝国は平和攻勢を同盟に対してかけているようだ。

それを思えば帝国がフェザーン返還に動くのは十年後ではないかと考えたくなるのは確かだ。しかしあの男がそれを許すかな。同盟が戦力を整えるのを黙って待つか……。ちょっと考えられんな。あの男はそれを許すほど甘くは無い。そして帝国の内部では権力争いなどによる足の引っ張り合いは無い……、となるとフェザーン返還は早い時点で起きるだろうな。

コーヒーも飲み終わった、そろそろ帰るか……。席を立ち料金を払おうとカウンターに向かう。
「話せるか」
聞き覚えのある声が背後から聞こえた。大きな声ではない、何処か周囲を憚る声だが雷鳴のように響いた。振り返りそうになるのを必死に押し留める。
「十五分後、五百七号室」

背後から一人の男が私を追い抜いて行く。見覚えのある後ろ姿だ、やはりあの男か……。となると先程の視線は彼か……。壁にかかっている時計を見た、午後三時二十三分。予定変更だ、あと五分で五百七号室へ行かなくては……。

支払いを済ませエレベータに向かう。落ち着け、時間は有る、ゆっくりとさりげなく歩くんだ。周囲の不審を買うような行動はとるんじゃない。彼が一人とは限らない、気を付けるんだ、そして何故接触してきたのか……。仲間になれという事か、それとも裏切り者として糾弾に来たか、細心の注意が必要だ……。

部屋に着いたのは三時二十七分だった。部屋の中を確認する、特におかしなところは無い、商談に使った時のままだ。接触してきたのは偶然か……、あらかじめこちらをマークしていたわけではないらしい、いや油断するな、未だ分からない……。

ホルスターからブラスターを取り出しエネルギーパックを確認する。問題ない、射撃モードを捕獲用に切り替えてブラスターをホルスターに戻した。三時三十二分、残り六分、椅子を移動させる。終わった時、残り時間は三分になっていた。深呼吸をすると今動かした椅子に座り来訪者を待った。

トントンという音が聞こえたのは三時三十七分だった。ブラスターを右手に構え足音を殺してドアに近づく。ドアスコープからは男が一人だけ見えた。俯いていて顔は良く見えない、罠か? ロックを静かに解除すると急いでドアから離れ部屋に戻った。来訪者から死角になる場所に身を置き息を潜めて待ち受ける。

ドアの開く音が聞こえた。ゆっくりと歩いて来る気配がする。どうやら向こうも警戒しているらしい。相手が見えた、やはりこいつか……。彼が私を見た。困惑が顔に浮かんでいる。
「生きていたのだな、フレーゲル男爵……」
「……久しぶりだな、ラートブルフ男爵」

ラートブルフ男爵が私のブラスターを見た、そして私を見る。
「念のためだ、悪く思うな」
「……誤解しないでくれ、ただ懐かしく思っただけだ」
「それでもだ、そっちの椅子に座ってくれ」

ラートブルフ男爵が渋々といった表情で椅子に座る、ドアに近い方の椅子だ、彼からは背後になるからドアは見えない。そして私は彼の正面に座った、ここなら常にドアを視認出来るし万一の場合はラートブルフ男爵を人質にも取れる。もっとも人質として役に立つかどうかは疑問だ。

「……死んだと思っていた」
「……死んださ、フレーゲル男爵は死んだ。ここにいるのはフェザーン商人、ギルベルト・ファルマーだ」
そのままお互い黙り込んだ。

「……妙な名前だ、何が有った?」
「……伯父に殺されるところをヴァレンシュタインに助けられた」
「助けられた?」
「ああ、助けられたのだ。もう三年になるか……」

納得のいかない表情をしているラートブルフ男爵に三年前の事を話した。ミッターマイヤー少将を殺そうとしたこと、ミューゼル、いやローエングラム伯が邪魔した事。対立している時に伯父がヴァレンシュタインとともに現れた事、そして伯父が私を殺そうとした事……。

「その後私は密かにフェザーンに落とされた。伯父上が懇意にしていた商人に預けられ商人として育てられたのだ。そして今が有る」
「……そうか、そんな事が……」
ラートブルフ男爵が首を振っている。想像もつかなかった、そんなところだろう。

「何故私に気付いた?」
髪型を変えた、表情も以前に比べれば別人のように柔らかくなった。近づけば分かるかもしれない、しかし遠目では分からないはずだ。そしてラートブルフ男爵は昔と変わっていない。彼が私に近づいたのなら分かったはずだ。

ラートブルフ男爵が笑みを浮かべた。
「声だ。卿の声を聞いたように思った。それで周りを探した。随分変わってしまったので分からなかった」
「……」
声か……、確かに声は変えられない。

「ようやく卿を見つけたが確証が持てなかった。でも卿がコーヒーを飲む振りをして周りを確認した事、手鏡で後ろを確認したことで卿だと思った。周囲に隠し事が有る、その事で怯えている、そうだろう」
そう言うとラートブルフ男爵はゆっくりと胸ポケットに手を入れた。ブラスターを持つ手に力が入る。彼が取り出したのは手鏡だった。思わず苦笑が漏れた、ラートブルフ男爵も笑っている。皆考える事は同じか……。

「卿に謝らなければならないと思っている」
笑いを収めたラートブルフ男爵が生真面目な表情で話し始めた。
「謝るとは?」
「……前の内戦でフロイライン達を誘拐したグループの一人が私だ」
「……」

「あの時はあれが正しいと思った。だが結局はブラウンシュバイク公を、リッテンハイム侯を死に追いやる事になってしまった。戦いを避けようとした公達の方が正しかった……」
「……済んだ事だ」

俯いているラートブルフ男爵を見て思った。今になって考えてみれば領地替えが上手くいかなかったのは必然だったのかもしれないと……。あの策は内乱を防ぐことよりブラウンシュバイク、リッテンハイムの両家を救う事に主眼が有った。

他の貴族達にしてみれば今まで協力してきた自分達を切り捨てるのかと憤懣を持っただろう。彼らが伯父上達を内乱に引き摺り込んだのもその憤懣が理由だったはずだ。……せめて貴族の半分でも救う策を考えていれば結果は違ったかもしれない……。

「卿は何故内乱に参加しなかった、いや、責めているのではない、ただ疑問に思ったのだ」
「参加しようと思った、だがヴァレンシュタインに止められたのだ」
「ヴァレンシュタインに……」
驚いたのだろう、まじまじと私を見ている。

「内乱に加われば今度こそ死ぬことになる。伯父上を苦しめるなと……」
「そうか」
「TV電話で伯父上と話をした」
「……それで」
「伯父上は私をヘル・ファルマーと呼んだよ」
「そうか……、ヘル・ファルマーと呼んだか……」

湿っぽい空気が漂った。ラートブルフ男爵は俯いている。もしかすると罪悪感に身をつまされているのかもしれない。話題を変えた方が良いだろう。
「卿は今何をしている。帝国への帰還を考えているのか」

私の問いかけにラートブルフ男爵が表情を消した。
「いや、ヴァレンシュタインのために働いている。不満分子の動向を探る役だ」
「……」
私の沈黙を非難と受け取ったのか、彼が自嘲を浮かべた。
「報酬は貴族としての帰還だ、領地も貰える。そのために以前の仲間を探っているのだ……、笑ってくれて良いぞ」
今度は声を出して笑った。低く厭な笑い声だ。

「……笑わんよ、生きるというのは容易な事じゃない」
「貴族として殺してくれと頼んだ、だが受け入れられなかった」
「……」
呟く様な声だ、掛ける言葉が無い。

「仲間を探る事で仲間の暴発を防げるかもしれないとヴァレンシュタインに言われた。私をスパイにするための言葉だとは分かっている。それでもその言葉に縋らざるを得なかった。貴族として生きるために……」
「そうか……」

貴族として生きるか……、昔はそれが誇りだった。貴族こそ帝国の選良であると疑いもなく思っていた。だが今なら分かる、貴族とはなんと不自由な事か……。貴族としての誇り、誇りではなく呪縛だろう。私は運よくその呪縛から逃れる事が出来た、ラートブルフ男爵は逃れられずにもがいている。

「そんな顔をするな、フレーゲル男爵」
「……」
「ヴァレンシュタインは悪い上司じゃない」
「そうか」

ラートブルフ男爵が笑みを浮かべている。何処か痛々しいような笑みだ。見ているのは辛かったが視線を逸らせば彼はさらに苦しむだろう。こちらも笑みを浮かべて彼を見た。

「先日、このフェザーンで反乱軍の高等弁務官、艦隊司令官が拘束される事件が有っただろう」
「本国のクーデターに関与していたという奴だな」
ラートブルフ男爵が頷いた。

「そのクーデターにランズベルク伯が絡んでいたようだ」
「まさか……」
私の言葉にラートブルフ男爵が笑みを浮かべた。何処か禍々しい笑みだ、昔はこんな笑顔をする男ではなかった……。そう思うと胸が痛んだ。

「それだけじゃない、他の人間には知らせることなく動いていた。どうやら周りを疑っているらしい。かなり用心深くなっている」
「……馬鹿な」
「本当だ」

どういう事だ。下手な詩を作っているだけの男だったはずだ。他人を疑う? 育ちの良いボンボンだったはずだ。それが謀略家としての顔を見せている……。ラートブル男爵がこちらを見ている。深刻な表情だ、彼もおかしいと思っているようだ。

「誰か裏にいるという事か」
「多分、そうだと思う。誘拐事件も彼が仕切った。誰かが彼の背後にいる……」
誰だ? フェザーン? いやルビンスキーか? 或いは同盟か……。
「それで、今はそれを探っているのか?」

「いや、それは止められている」
その言葉にホッとした。近づくには危険すぎる、死を覚悟する必要が有るだろう。ラートブルフ男爵が笑い声を上げた。私がホッとした表情を見せたことが可笑しかったらしい。

「正直彼の背後を探れと言われると思ったよ、所詮は消耗品だ。だがそうじゃなかった。キスリング少将、彼は私の上司なのだが、彼がその必要は無いと……。ヴァレンシュタインが止めたそうだ」
「ヴァレンシュタインが……」

「ああ、無茶をさせるなと釘をさされたらしい」
「そうか」
相変わらず甘い男だ、だが悪くない。それが有るから私もこうして生きている。そう思うと自然と笑い声が出た。ラートブル男爵も笑っている。

「そろそろ失礼させてもらうよ、ヘル・ファルマー。会えて良かった」
「私もだ、ラートブルフ男爵」
「いつか、帝国に戻れたら、卿と酒を飲みたいな」
「ああ、その時は訪ねていく」
席を立ち、彼がドアに向かって歩きだした……。

ランズベルク伯アルフレッドか……。一体背後に誰が付いているのか……、調べる必要が無いという事は見当は付いているという事か……。嫌な予感がする、ラートブルフ男爵はもしかするとスパイだとばれているのかもしれない。だとするとかなり危険だ。一度ヴァレンシュタインと話してみるか……。



 
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