銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
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第二百四十九話 権利と義務
帝国暦 489年 3月 28日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「今日は小官とクレメンツ提督が謁見に立ち会います。おそらくこちらに戻るのは夕刻になるでしょう」
メルカッツが細い眼を和ませている。がっしりした体をグレーのマントが覆っている。ミュッケンベルガーもグレーのマントだったが、やっぱり渋い親父はグレーが良く似合う。
「御苦労様です、メルカッツ副司令長官。クレメンツ提督にも雑作をかけますね」
謁見の立会いなどメルカッツやクレメンツにとっては必ずしも有難いことではあるまい。それでもビッテンフェルトやアイゼナッハが立ち会うよりはましだ。あの二人が謁見に立ち会うときには俺もハラハラする。せめてもの救いはフリードリヒ四世が連中を面白がっている事だ。意外にゲテモノ好きだ。
「いやいや、以前に比べれば謁見もかなり楽になりました」
「確かに、そうですね」
穏やかに答えるメルカッツに俺は頷いた。内戦により多くの貴族が滅んだ。それによって詰まらない、わけの分からない謁見を望む貴族も減った。謁見は以前よりは各段に楽になりつつある。メルカッツの言葉は嘘ではない。
もっとも問題が無いわけじゃない。以前は謁見に立ち会うのは宇宙艦隊からは俺とラインハルト、メルカッツだけだったのだが内乱終結後は各艦隊司令官も務める資格を得た。そしてラムスドルフとオフレッサーが死んだ。つまり謁見に立ち会う武官が宇宙艦隊の司令官ばかりになってしまった。
軍の中でも宇宙艦隊の影響力が強くなりすぎるのではないかと心配しているのは俺だけではあるまい。エーレンベルクもシュタインホフも頭を痛めているはずだ。また、艦隊司令官の中には立会いを望まない者もいる。このあたりをどうするか……。
何となく原作に近い感じだな、軍部の、しかも宇宙艦隊の影響力が大きすぎる。行き着くところは武断主義か……、しかもその頂点が俺とはうんざりだな。このあたりは十分に注意しないといかん。武力を使って事を解決するのは本来下策なのだ。
「司令長官の今日の御予定は?」
「今日は一日宇宙艦隊司令部にいる予定です。この後、ブラッケ民生尚書、リヒター自治尚書が来ることになっています」
メルカッツが細い目をさらに細めた。
「ほう、察するところ辺境星域の開発についてですかな。閣下こそご苦労様です。あまり無理はなさらぬように願いますぞ」
「……気をつけますよ、副司令長官」
メルカッツが心配そうな顔をしている。
あー、いかんな。宇宙艦隊の中には俺が辺境星域の開発に関与、いや責任者になる事に顔を顰めている人間が多い。体力的な問題もあるがテロの標的になりやすいと言うのだ。特にケスラー、クレメンツ、メックリンガーが強く心配している。あの三人は地球教のことを知っているからな。何度か俺にも忠告に来た。
ただ、今日の話は辺境星域の開発についてではないだろう。もっと別な事だと俺は睨んでいる。リヒテンラーデ侯から先日、話が有った。あの爺がきちんと二人に説明すれば良いものを……。まあ気持ちは分からないでもない。リヒテンラーデ侯が何を言っても連中は素直には取れないだろう。それに爺様なりに考える所は有るようだ……。
でもな、俺は軍のナンバー・スリーなんだ。民生省と自治省のトップが雁首揃えて会いに来るって拙いだろう……。一度あの爺さんにきちんと言わなければならんな。このままだと軍の、いや宇宙艦隊の影響力が強くなりすぎるってな。全く、なんで俺がこんな心配しなくちゃならんのか……。
帝国暦 489年 3月 28日 オーディン 宇宙艦隊司令部 オイゲン・リヒター
目の前のヴァレンシュタイン司令長官がA4サイズの資料を読んでいる。それほど分厚いものではない、二十枚程度の資料だ。読みながら時折小首を傾げるようなしぐさをする。小首を傾げている時は何かを考えているのだろう、そのページを読み終えるのが多少遅い。
司令長官が資料を読み終え会議卓の上に資料を置いた。そして小首を傾げ右手の中指で軽く会議卓を叩きだした。
「閣下は如何思われますか」
「さて……」
目の前の青年は穏やかな表情で小首を傾げている。反応は良くもないが悪くもない、そんなところか……。そしてそんな彼を私とブラッケが見ている。新領土占領統治研究室の中に有る小さな会議室は静けさに満ちていた。司令長官の指が立てるトントンという軽い音だけが小さな会議室に響く。
会議卓の上には資料が置かれている。表紙には何も書かれていない、というより何も書けない。資料の中身は今後の帝国の政治体制について記述されているのだ。現在の皇帝による君主制専制政治、これでは皇帝の資質によって帝国の政治は左右されかねない。それをいかにして防ぎ国家を安定させるかがこの資料の眼目だ。
「議会政治の導入ですか……」
「そうです、帝国臣民の意見を取り入れ同時に皇帝の暴政を防ぐ……。そのためには議会政治を導入するしかありません。それによって帝国臣民に暴君と戦うだけの制度と見識と力を与えなければ……」
司令長官の呟きにブラッケが熱い口調で話しかけている。何としても議会政治を導入しなければと思っているのだろう、私も同じ想いだ。今は良い、皇帝は明らかに開明的な政策をとり国政を変えようとしている。そしてヴァレンシュタイン司令長官もそれを望んでいる。
だがこの二人が居なくなったら……、例えば百年後はどうか? 今のままでは暴君による暴政を止めるだけの人材がいるかどうか、そして暴政を食い止める制度もない……。このままでは帝国は皇帝の暴政に翻弄されることになるだろう。場合によっては帝国の存続そのものにまで影響が出かねない。
この二人が居る間に帝国の政治体制を揺るぎないものにしなければならない。皇帝の悪政などで帝国が揺らぐような事が有ってはならないのだ。それに対抗できるだけの人材と制度を作らなければ……。
議会政治の導入には抵抗が強いだろう。何と言っても帝国の政治制度には無かった制度なのだ。そして反乱軍である自由惑星同盟が用いている制度でもある。今帝国は同盟を圧倒し征服しようとしている。何故敗者の政治制度を採り入れなければならないのか、当然反発が出るに違いない。
その想いは分からないでもない、大体同盟が今劣勢にあるのも民主共和政が原因でもあるのだ。しかし今後の事を考えれば、何らかの形で帝国臣民を政治に関与させる必要が有る。今までのように統治され搾取されるだけの存在ではならない。
政治に関与させることで帝国臣民の政治的識見を高め、皇帝の暴政を食い止めるだけの力を与える……。幸い司令長官は平民の権利の拡大には積極的だ。帝国に憲法を作ることも考えている。議会政治の重要性、必要性も理解してくれるだろう……。
もっとも我々は議員内閣制を導入しようとは考えていない。議員内閣制では行政府が立法府の影響を受けやすく、不安定な状況になる事が多々ある。同盟を見ればその事がどれだけ危険か分かる。行政府が立法府から過度に干渉を受けるのは避けなければならない。
であるから行政府と立法府を完全に分離させるべきだと考えている。議会には立法権及び皇帝立法案に対する拒否権、弾劾裁判権、皇帝指名人事の承認権、予算案に対する発議権、承認権を与える。
弾劾裁判権は議会の三分の二以上の賛成が有れば皇帝を廃立できる権利だ。皇帝指名人事の承認権も皇帝が明らかに不適当と思われた人事を行う事が無いように議会がチェックする権利だ。これらによって帝国が暴君の暴政にさらされることが無いようにする。
行政府のトップは皇帝とし、皇帝は帝国宰相または国務尚書の輔弼により帝国の行政を行う。皇帝は立法権、行政権、軍指揮権、そして議員立法案に対する拒否権を権利として持つ……。
司令長官がまた資料を手に取ってパラパラとページをめくる。手を停めて或るページに視線を当てた。
「二十年後には議会を開く、当初は男子に対してのみ参政権を与える。三十年後には女子にも与える、ですか……」
「地方自治体ではもっと早く、十年を目処に議会を開こうと考えています。男女区別なく与え、此処で女子には政治に参加することを学んでもらうのです」
ブラッケの言葉に司令長官が微かに頷いている。
司令長官がブラッケに視線を向けた。
「リヒテンラーデ侯にはお見せしましたか?」
「はい」
「それで、侯は何と?」
司令長官の問いかけにブラッケの表情が渋いものになった。おそらく私も同様だろう。
「ならぬと……」
「ならぬ、ですか……。他には」
「いえ、何も」
司令長官が苦笑を漏らした。そして視線を資料に向ける。
司令長官が資料を手にしながら呟くように“ならぬ、か……。もう少し言いようが有るだろうに”と口に出した。そしてまた苦笑を浮かべる。ブラッケは面白くなさそうだ、此処は私が話した方が良いだろう。
「ヴァレンシュタイン司令長官、リヒテンラーデ侯は貴族です。こう言ってはなんですが旧勢力の方だと言って良いでしょう。内政の改革の必要性は認めても国体の改革には必ずしも積極的ではないように思えます」
「……」
司令長官は苦笑を浮かべたままだ。
「閣下は如何思われますか」
「さて……」
「……先程も同じお答えでした。そろそろ本心をお聞かせ願いたいのですが」
ますます司令長官の苦笑が大きくなった。
「そうですね……。リヒテンラーデ侯がどのような考えで否定したのかは分かりません。ただ、単純な感情論で反対したわけではないと思いますよ。それほど狭量な人ではない」
「そうでしょうか」
ブラッケが思いっきり疑い深そうな声を出した。司令長官がまた苦笑を洩らす。
「二人とも侯に対して不満を持っているようですが私もこの案には賛成できませんね。少々、いやかなり無理があると思います」
「……」
ブラッケに視線を向けると彼は渋い表情をしている。私も自分が渋い表情をしているのが分かる。ヴァレンシュタイン司令長官は議会導入には無理があると考えている。思いもかけなかった反応だ。司令長官は平民達の権利の拡大の必要性を認めていたはずだ。それなのに議会政治の導入には反対している……。
司令長官が手元の資料に目を落とした。彼の顔にもう苦笑は無い。
「狙いはよく分かります。しかし……、足が地についていないというか……、少し焦っているように見えますね」
焦っている? ブラッケと顔を見合わせた。彼も訝しげな表情をしている。ブラッケが口を開いた。
「焦っている、ですか……」
「ええ、リヒテンラーデ侯も私と同じ事を考えたのかもしれない。だとすれば反対せざるを得ないでしょうね。あの人は帝国の危機を見過ごす様な人ではありませんから……」
帝国の危機を見過ごすような人ではない……、その言葉に大袈裟なと反発したかったが言葉にする事は出来なかった。リヒテンラーデ侯が帝国の危機を見過ごす様な人でないなら司令長官もそれは同様だ。私達の思い描く政治体制には致命的ともいえる欠陥が存在することになる。
「権利というのは与えるのは容易ですが剥奪するのは難しい、それだけに権利を与えるのには慎重にならなければならない。その事は分かりますね」
「それは分かります。しかしこの場合は……」
言い募るブラッケの肘を突いて口を封じると司令長官がクスリと笑った。
「三十年後には帝国臣民全てに参政権が与えられる。となると当然ですが統一後の同盟市民にも参政権は与えられる、そうですね」
司令長官が確認するかのように問いかけてきた。ブラッケが一瞬私に視線を向けてから答えた。
「そうです、三十年後には宇宙は統一されます。その時には彼らにも参政権を与えます。彼らは同盟で議会政治による統治を実施してきました。その彼らに参政権を与えなければ帝国に対して不満を持つでしょう。百億を超える人間に不満を持たせるのは危険です、新帝国の統治は安定しません。ですから……」
「三十年後には帝国臣民全てに参政権を与える、そういうことですね」
「そうです」
話しを遮られたせいだろう、少し不満げにブラッケが答えた。司令長官がそんなブラッケを可笑しそうに見ている。わざとだな、意外と性格が悪い。
「権利には義務が伴います。参政権を与える事によって国政への参加を権利として与えた……。ではこの場合の義務とは何でしょう」
司令長官がブラッケと私を交互に見た。義務か……、納税? 或いは兵役だろうか? しかし話の流れから言えば……。
「……暴政の阻止でしょうか」
私の言葉に司令長官が微かに笑みを浮かべた。苦笑か?
「まあ、それも有るでしょう。……私が考える義務とは帝国臣民として帝国の安定と繁栄に尽力する事、そんなところですね」
なるほど、一般的な概念としての義務か……。先程の笑みは苦笑だな……、思わずこちらも苦笑が漏れた。ブラッケも苦笑している。
「極めて当たり前のことではありますが、帝国が与えた権利を行使し義務を果たすには帝国人としての自覚とそれに対する誇りが必要です。新領土となった旧同盟領の人間達にそれがあると思いますか? 併合後直ぐに同盟市民から帝国臣民に意識が変わると……」
「……三十年の間、帝国を見ているのです。帝国が変化した事は理解できると思いますが……」
ブラッケが渋い表情で歯切れ悪く答えたが司令長官がそれを否定した。
「帝国を理解するのと帝国人になるのは別問題ですよ、ブラッケ民生尚書」
司令長官は顔を顰めている。ブラッケの言葉が気に入らなかったらしい、おそらく甘いと見ているのだろう。確かに私もブラッケも司令長官が指摘した点については考えていなかった。甘いと見られても仕方ない、リヒテンラーデ侯も同じ事を考えたのだろうか。
「帝国臣民としての義務を果たす意思のない人間が選挙に立候補する。そして同じように帝国臣民としての義務を果たす意思のない人間が代表者を選ぶ……。碌でもない結果になりますよ。政府を、陛下を常に敵視した行動、極論すれば反帝国活動をする人間が議員として帝国の統治に関わる事になる。人口比率から考えるなら議員全体の三分の一がそういう人間で占められるんです。帝国の危機、過言ではないでしょう」
厳しい言葉だ、言葉だけではない口調も視線も厳しいものになっている。私もブラッケも反論する事が出来ない。
「自分達の選んだ代表が反帝国活動をしているとなれば旧同盟市民は何時までたっても旧同盟市民のままです、決して帝国臣民にはならない。帝国は同盟を滅ぼし銀河を統一する事は出来ても統治には失敗したことになる。それでは何の意味もない」
司令長官が溜息を吐いた。焦っていたのだろうか……。改革を進めるにつれ帝国臣民は改革を支持し協力してくれるようになっている。だから参政権を与えれば同盟市民も協力をしてくれると甘く見てしまったのだろうか……。
足が地についていない……、司令長官の言葉を思い出した。私もブラッケも改革を急ぐあまり同盟を占領するという事を、同盟市民の感情を軽視した。司令長官やリヒテンラーデ侯から見れば私達は改革を行なう事のみに囚われ国家の危機を見過ごした愚か者に過ぎないだろう。
「では、我々はどうすればよろしいのでしょう。帝国臣民の声を政治に反映させる、皇帝による暴政を阻止する、そのためには議会政治を取り入れる事が必要だと思ったのですが……」
我ながら声が暗い、ノロノロとした口調になった。隣にいるブラッケも肩を落としている。先程までの意気込みは何処にもない。
「議会政治そのものを否定する必要は無いでしょう。問題は人ですね、議員を誰がどのようにして選ぶか……。帝国臣民としての義務を果たす人間を選ばなくてはならない、そこをどうするかでしょう」
「なるほど」
諦めるのは早い、司令長官は議会政治の導入を否定してはいない。問題は人か……。選挙では駄目だという事だな、それにかわる選出方法を考えなくてはならない……。
帝国暦 489年 3月 28日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
意気込んで来たかと思えば落ち込んだか……、まあ気持ちは分かるがな。皇帝の権力乱用を抑えるために議会制民主主義を取り入れる。悪い発想じゃない、二人が考えたのはアメリカの大統領制に近いだろう。皇帝は終身の大統領で血統によって選出されると考えれば極めて似ている。
しかし併合直後の旧同盟市民に選挙で議員を選ばせるなど無謀にも程が有るだろう。外国人に参政権を与えるようなものだ。しかもこの場合、ちょっと前まで戦争していた国の人間に参政権を与える事になる。足が地についていないよ。理念が先走ってる。
この二人は帝国に生まれた、だから帝国の歴史には詳しい。皇帝の暴政がどれだけの悲劇を生み出すか良く知っているし、それが起きる事を恐れている。問題はこの二人が議会制民主主義について良く知らない事だ。そして良く知らないくせに過度に期待している。
制度については知っているだろう、だがその制度の運用の難しさを、欠点を知っているとは言えない。議会制民主主義の欠点と言えば衆愚政治に陥り易い、大衆に迎合し易い等を皆が挙げるだろう。だが俺は問題の本質はそこではないと考えている。
俺の考える議会制民主主義の欠点、それは主権者である国民が聡明で常に理性的な判断を下さないと議会制民主主義は機能しないという事だと思っている。そして責任の所在が極めて曖昧なのだ。
支持率を気にし、選挙で落ちる事を恐れる政治家にとっては主権者がどう考えるかは最重要関心事だ。主権者である国民が愚かで感情的な判断をすれば政治家もそれに引きずられる事になる。そして人間というのは個人では理性的に振舞えても大衆になれば無責任に行動しがちだ。つまり国民主権による議会制民主主義というのは極めて脆弱なシステムだと言える。あるいは人類はそれを運用できるほど成熟していないと言うべきか。
帝国は皇帝主権による専制政治によって国が統治されている。つまり皇帝が悪政を布けば皇帝を殺害する事で帝国は悪政を食い止めた。流血帝アウグスト二世がその例だ。彼は自分の命で悪政の責任を取った、いや取らされたと言える。責任の所在が明確なのだ。主権者である皇帝が暴君でなければ、名君でなくともごく平凡な人間であれば帝国はそれなりに機能した。良くも悪くも責任は皇帝に有る。では同盟はどうなのだろう……。
イゼルローン要塞攻略後、帝国領侵攻により大敗を喫した。サンフォード政権は総辞職する事で責任を取った。あの時、主権者である同盟市民は出兵を否定しなかった。むしろそれを望み後押しした。あの時点で帝国領へ大規模出兵など無謀以外の何物でも無かったはずだ。主権者である同盟市民はそれに対する責任を取っただろうか?
戦争により家族を失ったと言うかもしれない。しかし出兵を支持したことは間違いだったと言っただろうか? 政府、軍を責めて終わりではなかったか。戦争をした事が悪かったのではない、戦争の仕方が悪かったのだと……。自分達が戦争を支持した事についての反省など欠片もしなかっただろう。責任の所在が極めて曖昧だと言うのは此処なのだ。
君主制専制政治も議会制民主政治も主権者が馬鹿では機能しない事では同じだ。違いは主権者が一人か多数かの違いでしかない。であれば主権者に責任を取らせやすい君主制専制政治と責任を取らせ辛い議会制民主政治、どちらが政治体制として優れているのだろう。
いずれこの二人には俺の懸念を伝えねばならないだろう。その上で帝国の統治体制をどうするか考えてもらう。まあ今日は此処までだな。本当は俺が細かく指示を出した方が早いのだろうがそれでは駄目だ。俺が目立つのは拙いしこの二人には色々と考える事で成長してもらわないと……。リヒテンラーデ侯が“ならぬ”としか言わないのもそれが理由だろう。改革者で終わって欲しくないと思っているのだろうが前途多難だな……。
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