ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
二十三話:イタズラな妖精さん
パパンだけでなくサンチョにもしっかりご挨拶を済ませて帰ったらしい、未来の『私』の退散後。
私が、何をしていたかと言うと。
妖精さんの捜索……では無くて。
チートの書の、熟読。
今更そんな都合のいい話は、無いとは思うけど!
『私』たちが見落としてる何かが、あるかもしれないし!と、地の章を読み込み。
奴隷ライフには持ち込めないだろうから(敵に見られるリスクを考えれば、後で戻ってくるのだとしても、やっぱり隠して、置いていくしかない)、無くても修業できるように、海の章を暗記する勢いで何度も読み返し。
まだそんなの必要無いピチピチの六歳とは言え、これも体で覚えたほうが早かろう!ということで、読書漬けで若干くたびれた顔と体に、空の章の美容法を実践。
紫外線対策は、早くからやっとくに越したことないしね!
あの陶器肌は、こうやって作られたのね!
とか、勉強の合間の適度な気分転換としても重宝しつつ。
やっぱり抜け道は見当たらない事実に、打ち拉がれ。
それでも、落ち込んでる暇は無いんです!
時間は限られてるし、落ち込む以外に、出来ることがあるんだから!
ただ、抜け道は無かったけど、ひとつ気になることが。
ゲーム通りの行動を取った時が、一番被害が少ない。
むしろ、ゲームの時よりも、少ないことになってる。
『私』がこんなことに気付かないわけが無いのに、なにも言ってなかった。
現実だから?
私が女だったみたいな、イレギュラーが発生するの?
なんで、教えてくれなかったの?
なにか、意味があるの?
……考えても、今はわからない。
他にいい方法も見付けられない以上、私は『私』たちを信じて、書かれている中の最良の選択を。
ゲーム通りの行動を取ることに、決めた。
そうして微妙に腹を決めつつ、必要な知識を頭に叩き込み続けていたある日の朝。
サンチョが、言いました。
「お嬢様。お嬢様は、まな板をどこかに隠したりは、しませんよね?」
……来た!
妖精さん出現フラグ!
これがあるから、なんも無いうちから積極的に探す必要は無いと思ってたんだよね!
「しりません」
「そうですか。そうですよね……。ああ勿論、お嬢様がそんなイタズラをなさるなんて、思ってはいませんから。なにか事情があって、動かしたりされたのなら、と思いまして。知らないならいいんです、もう一度、よく探してみますから」
厳密には知ってるんだけど犯人では無いし、下手に在処を教えたら逆に疑われそうだよね!
隠されてる場所が、場所だけに!
とかなんとか思いつつ、顔を洗って歯を磨いて身だしなみを整えて、まな板が無いのに器用にサンチョが準備してくれていた朝食を摂り、また歯を磨いてお出かけの準備を整えて、今日は妖精さんの捜索に出発です!
モモも、当然一緒です!
最低限、お散歩に連れ出したりはしてたけど、勉強優先で、あんまり構ってあげて無かったからねえ……。
それでも忍耐強く、近くで見ててくれたけど!
今日は捜索ついでに、いっぱい遊んであげるからね!
モモも私も若干ウキウキと浮かれながら、意気揚々とお外に出ます。
ゲーム通りなら妖精さんの居場所はわかってるわけだけど、折角なので、妖精事件の被害者の皆さんを見て回りましょうかね!
そんなわけで、のんびりとお散歩して村内を見て回りながら、探すとも無く妖精さんを探し回る私とモモ(モモが目的を理解してるかは不明。言ってないし)。
「やっぱり、まださむいから、おはなは、さいてないねー?」
「ミャー」
誰の目があるとも知れないので、一応口調は子供仕様です。
油断してると、この前みたいなことがあるし!
滅多に無いだろうけど!
「いたずらっこのようせいさんが、いるかもしれないんですよー?モモも、さがしてくださいねー?」
「ニャー」
妖精さんに食い尽くされた空のお鍋も、見せてもらいました!
冤罪のじいさんにしろ妖精さんにしろ、ひとりで食べられる量には見えなかったけど……。
……あの鍋を満たす量だったとも、限らないよね!
モモが私の服の裾をくわえて、軽く引っ張ります。
「ミャー!」
「……え?みつけたんですか?ようせいさん?」
「ニャー!」
しまった、不用意なこと言うんじゃ無かった。
もうちょっと、のんびりお散歩してから行こうと思ってたのに!
この子の賢さを、侮ってたわー。
……まあ、いいか!
「モモは、すごいですねー!ついていくから、つれていってください!」
「ニャッ!」
キリッとした顔で、先導して走っていくモモ。
時々立ち止まっては振り返り、私がついてきているか確認するのも忘れません。
……お散歩は大部分、モモのためでもあったからね!
モモが楽しそうなら、先に進んでも問題無いね!
自信満々に宿屋の地下の酒場に踏み込んで行くモモを、追いかけます。
「おや、ドーラちゃん。なにか、用かい?お使いかな?」
「ばーてんさん、こんにちは。きょうは、ちがうんです。モモといっしょに、ようせいさんをさがしに」
カウンターに乗っかって足をブラブラさせてた透けてる少女が、ピクリと反応します。
気付かないフリ、気付かないフリ。
「ははは、妖精さんかい。それは、いいね。折角来たんだから、ミルクでも飲んでいくかい?モモちゃんも」
「いいんですか?」
「子供が、遠慮なんかするもんじゃないよ。パパスさんとサンチョさんには、お世話になってるしね」
「ありがとうございます!いただきます!」
「よし、ちょっと待ってな。……ほら、どうぞ」
「ありがとうございます!ほら、モモも。おれいを、いって?」
「ミャア!」
「ドーラちゃんも、モモちゃんも、いい子だね。ごちそうのし甲斐もあるってもんだよ」
「いいこ、ですか?えーと。かうんたーにのったりするのは、わるいこ、ですか?」
またピクリと反応する、透けてる人。
だけでなく、なんか呟いてます。
「え。まさか。私のこと、見えてる?」
気付かないフリ、気付かないフリ。
「なんだい?ドーラちゃんは、カウンターに乗ってみたいのかい?」
「ううん、ちがいます。わるいこ、って、なにをするのか、よくわからなくて」
「そういうことか。うん、それは、悪い子だね。だから、やってはいけないよ」
「わかりました。わるいこなら、えらいひとにみつかったら、おこられちゃいますか?」
「偉い人?偉くなくても、怒られるだろうけど。例えば、どういう人だい?」
「たとえば?……じょおうさま、とか?」
首を傾げて、言ってみるドーラちゃん。
「ちょっと!見えてるんでしょ、アナタ!ていうか、なんで女王様とか、知ってるのよ!」
聞こえないフリ、聞こえないフリ。
あくまでバーテンさんに、問いかけます。
「じょおうさまとか、そんちょうさんとか。えらいひとも、おこりますか?」
「妙なことを聞くねえ。それは勿論、怒るだろうね。この村の村長さんならパパスさんだから、お父さんにも、怒られちゃうね!」
「そうですか。じゃあ、やっぱり、やったらダメですね!かうんたーに、のるとか!」
「したいわけじゃ、無いんだろ?」
「はい!そんなことする、わるいこ、とも、おはなししたくありません!」
カウンターに乗った状態で人に頼み事しようとするのは、どうかと思うのよ、正直。
妖精の常識的にどうなのか、知らないけどさ。
「……わかったわよ!下りればいいんでしょ!」
なんで、若干切れ気味なんですかね?
なんか間違ったこと言った?私。
しかも、言った相手はバーテンさんですし。
「俺は仕事があるから、ちょっと離れるけど。飲み終わったら、そのままグラスは置いといていいからね。パパスさんたちに、よろしくね」
「はい!ありがとうございました!」
なんかの作業のために奥に引っ込んでいくバーテンさんを、見送ります。
透けてる人が、焦れたように話しかけてきます。
「ねえ、誰もいなくなったから、もういいでしょ?私もカウンターから下りたし、お願いだから話を聞いてよ。見えてるんでしょ?」
「まないた……おなべ……らくがき……」
君の悪事は、それだけでは無かろう!
「だから、悪かったわよ!だって仕方ないじゃない!誰も、私に気が付いてくれないんだから!」
透けてる人、半泣き。
謝る人が違うだろうとか、だからってイタズラする必要は無かろうとか、まだまだいじりどころはあるけど、いい加減可哀想だし、もういいか。
鍋ごと盗み食いとか、主婦目線だと割と洒落にならなそうだけどね!
透けてる人に向き直り、真面目に問いかけます。
「おねがいにきて、イタズラをしてたら、ダメだとおもいますよ?」
「はい……反省してます……」
「なら、いいです。おはなしは、なんですか?」
「それは……。ここだとまた人が戻ってくるかもしれないし、落ち着かないわ。この村に、地下室のある家があったでしょ?そこで待ってるから!そこで、お話ししましょう!」
ぶっちゃけ自宅だから、それでいいですけど。
他所のお宅だったら、場合によってはそう簡単にいかないと思うんだが、これは妖精さん故の世間知らずっぷりを見せつけてるの?
いいですけど、どうでも。
「わかりました!」
あんまり引っ張る話でも無いんで、それでオッケーです!
さっさと、地下室で落ち合うとしましょう!
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