ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
二十二話:同じだけど、同じでは無い私たち
「ええッッ!!結局、ヘンリーは!?ヘンリーは、どうなるの!?ルート回避、できるの!?」
「いやー、そういうのは、やっぱさ?自分で、経験してこそじゃん?死ぬような話じゃ、ないんだしさー」
「そうだけど!ある意味、ラスボスみたいなもんでしょ、ヤツは!ある意味、最重要事項じゃん!!」
女子トーク、絶賛継続中。
「だからさー。私がどうでも、あなたがその通りにする必要も、無いんだからさ?聞く意味、無くない?」
「そうだけど!だけど!!」
「……ホントに、聞きたいの?」
「……!」
食い下がる私に、不意に声のトーンを変えてくる、『私』。
「回避不能だったとして?その絶望を背負って、この先十年間を、生きていくわけ?あー、私コリンズ産むのかー……石化解けたら、目の前にクソガキがいるんだ……鬱だ死のう。とか、思っちゃうわけなの?実際そうなるかも、わからないのに?」
「……だから!そこも含めて、教えてくれればいいじゃない!!」
「えー。どーしよっかなー」
「お願い!頼みます!!」
「うーん……そこまで言うなら……」
「ホント!?」
「やっぱやめた」
「……(イラッ)」
くッッ……!
ダメだ、勝てるわけが無いッッ……!
私も前世のアドバンテージが他人よりはあるとは言え、コイツは今の私から更に十年プラスもしかして石化の八年(これも教えてくれなかった)と、解放後の若干の経験を積んでるんだから……!
「……どうしても、ダメなの?」
もう無理だろうとは思いつつも上目遣いで聞いてみると、『私』が、きゅんとした表情で目を瞠ります。
「……やだ、可愛いっ……!そ、そんな目で見たってっっ!!…………ダメなもんは、ダメー。」
ちッ、やっぱダメか!
媚びて損した!!
「……でも、いいもの見せてもらったから、これだけ。ちゃんと考えて選んだ結果なら、ちゃんと幸せになれるよ。あなたがそんなに嫌なことなら、ちゃんと避けられるから」
ええッッ!それは!
実質、回避可能宣言じゃないですか!?
……なんか含みのある言い方なのが気になるけど!!
良かった、媚びといて!
ありがとう、お姉様!!
見るからにほっとしてる私を微笑ましそうに見つつ、『私』が立ち上がります。
「さて。名残惜しいけど、私もやることがあるし。そろそろ、行こうかな」
「え?もう、行っちゃうの?」
私自身とは言え、前世の知識を完全に共有してる、完全に自分の前を歩いてる年上の女性と話すのは、結構……すごく、楽しかったのに。
もう、行っちゃうんだ。
もう、会えないんだ……。
って、なにこの暗い気分は。
おかしくね?自分相手に。
思ったより落ち込んでる自分にちょっと驚きつつ俯いた私の頭を、『私』が苦笑しながら撫でます。
「あーあ。妙に演技力が高い割には、こういうとこ、すぐ顔に出るんだよね。外から見たら、ホントよくわかるわ。ごめんね、出来ればずっと、一緒にいてあげたいけど」
「……こっちこそ、ごめん。大丈夫だよ、中身は子供じゃ無いんだから。知ってるでしょ?」
「うん、知ってる。だけど、体はやっぱり、子供なんだよ。心は、体に引っ張られるから。これからどんなことがあるかも知ってるから、大人として、ホントは守ってあげたいけど。だけど、それは」
「うん。出来ないよね」
ゲームでも、村からは出られなかったし。
出られたとしても、『私』が……この人が、私と一緒に行動できる、理由が無い。
それに、そこまでやったら、流石に破綻するんじゃないだろうか。
過去と未来の私たちが情報交換するのは、前世の記憶を持ってる私であれば、当然起こり得る事態だった。
未来の私の一方的な介入でなく、初めからそうなる筈だっただけのこと。
それによって細かいところは変わっても、大きな流れが変わることは無かった。
でも、未来の私が、そのまま過去の世界に介入し続けることは、しなかったのか出来なかったのかはともかく、これまでの私たちが、恐らくやってこなかったこと。
それはきっと、当然起こり得た事態を、超える。
そこまでしてしまった後にこの人が、元の時間の流れに戻れるかもわからないし。
私のために、この人の世界を、棄てさせるわけにはいかない。
「大丈夫。あなただって、自分の力でやってきたんだから。私だって、出来る」
「うん。それは、疑って無いよ。でもね」
『私』が私を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめます。
「辛かったら、泣いてもいいんだからね。子供なんだから」
「……泣かないよ」
中身は、大人なんだから。
「うん。今は、その時じゃないね」
今、は。
中身は大人の、私でも。
いつか泣きたくなる時が、来るの?
「……泣かないよ」
そんな時が来ても。
そんな資格は、無いと思うから。
「そうかもね。あなたは、私だけど。完全に同じでは、無いから。でも、覚えておいて。私が、そう言ったってこと」
「……うん」
「それじゃ、ホントに。もう、行くね?」
「うん」
最後にもう一度、強く抱きしめてくれた後に、私を下ろして。
「あ、忘れるとこだった!ゴールドオーブ!これと、替えてくれる?」
思い出したように光るオーブを差し出してくる、『私』。
……ヲイヲイ!
そっちサイドの最重要事項を忘れて帰りそうになるって、どういうことよ!
「ちょ、おま。それ、忘れて帰ったら、どうなったの?」
「もっかい、やり直しだね!ゲーム仕様だと、ここまでのやり取り、消えるんじゃね?そっちだけ」
「ちょ……!」
あのちょっと感動的なやり取りを、なに食わぬ顔でやり直すわけなの?
なに、そのコント!
……ていうか、やり直してるんじゃないの?コイツ。
「やだなー、ドーラちゃん!そんな、胡散臭いものを見る目で見ないでよ!同じ、私同士じゃない!」
そうだった!
え?私もこんなんなるの?
現状やりそうではあるけど、十年以上経ってもその辺、残念仕様のままなの??
……気を付けよう!
可能な限り!!
「折角だから、パパンの顔見てから帰ろっかなー?どうせ、信じてはくれないし!私のモチベーション維持のために!」
うん、もう好きにしたらいいよ。
生温かい目になりつつも、パパンを失ったこの人に、それをやめろとも言えないし。
「パパンなら、書斎ですよ……」
「知ってるー!」
「ですよねー……」
「じゃ、ちょっと行ってくるわ!そのまま帰るから、見送りはいいからね!寂しそうなドーラちゃんに見送られると、後ろ髪引かれちゃうし!」
「了解でーす……。じゃ、お元気で」
「うん、ドーラちゃんも元気でね!負けるなよ!色々!」
「ありがとうございます……」
「モモも、元気でね!未来で、また会おうね!私基準だと、すぐだけど!」
「ウニャーン……」
最初の別れ際のちょっと感傷的な気分はどこへやら、すっかり生温かい目で、モモを撫で回して立ち去る外見完璧、中身は残念なイケメン美女を見送る私。
……ハッ。
これもまさか、ヤツの策略?
計算通り!ってヤツ?
やっぱり未来の自分には敵わないんだろうかと思いつつ、残念な部分は出来るだけ踏襲しないようにしようと、かなり今更な決意を固めるドーラちゃんなのでした。
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