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八条学園怪異譚

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第三十六話 美術館にその五

「古典も読み漢詩や和歌も詠んだし西洋の書にも目を通しておった」
「本当にインテリだったんですね」
「軍人さんでも」
「武士だったからのう」
 軍人であるがその前にこう考えられていたというのだ。
「だからじゃよ」
「武士、ですか」
「文武両道だったんですね」
「日下部さんもな。あの人も教養がある」 
 当時の軍人に相応しくだというのだ。
「特にあの人は美術が好きでのう」
「ううん、雅な人だったんですね」
「美術がお好きって」
「そうじゃ、だから美術館に行くのならな」
 その場合は、というのだ。
「案内してもらうといいやもな」
「わかりました、それじゃあ」
「今日の夜は」
「何なら後で話をしてみればどうじゃ」
 思い立ったらすぐにだっというのだ。
「それでどうじゃ」
「そうですね、美術館は今日にでも行くつもりですし」
「それなら」
 二人もぬらりひょんの提案に頷いた、そしてだった。
 部活の前の掃除に本格的に戻る、ぬらりひょんはその二人を手伝いながら彼女達にこう言ったのだった。
「しかし。部活の前の掃除か」
「はじめるには綺麗な状態でって」
「うちの部活のやり方です」
「各自持ち回りでやっておるのう、この部活は」
「はい、一年の私達から顧問の先生まで」
「順番でお掃除はしています」
 部活の前の掃除は、というのだ。
「それで終わった時のお掃除は皆で」
「そうなっています」
「顧問の先生も掃除をすることはよいことじゃ」
 ぬらりひょんはそこに見るべきものを見出していた。先輩達だけではないところに。
「それはな」
「うちの先生の方針なんですよ」
 聖花がこの辺りの事情を話す。
「人に教える立場だとまず自分がやらないと」
「よい考えじゃ」
「そうですよね、やっぱり」
「学校の教師の中には生徒に剣道の稽古をさせて自分はその横で卓球部の女子と遊ぶ様な輩もおる」
 生徒に練習をさせて自分は、だ。こうした教師もいるのだ。
「生徒集会で顧問をしている部活の生徒を正座させて聞かせて自分は立っている様な輩がな」
「あの、集会で正座って」
「話聞けないですよ」
 二人はぬらりひょんの話を聞いて即座に眉を顰めさせて返した。
「正座してたら足が痺れて話を聞くどころじゃないですよ」
「それじゃあ何の意味もないですよ」
「そうしたことがわからんのじゃよ」
 高校生でもわかる理屈だ、そうしたこともわからない人間でも普通に教師をやっていられるのが戦後日本の素晴らしいところであろう、こうした教師がよく暴力事件を起こしたり北朝鮮を賛美したりしているのだ。
「そうした教師はのう」
「頭おかしいですね、絶対」
「というかそんな先生いて欲しくないです」
 二人はその話を聞いてこう返した。
「話を聞けないんなら集会出る意味ないですよ」
「っていうか何で正座させたんですか」
「剣道部だからじゃ」
 剣道をしている人間が誰でも人格者とは限らない、ましてや学校の教師という職業は人格障害者が多い職業の一つだ、その閉鎖的でストレスの溜まる環境と日教組という異常なまでに偏向した歪な組織のせいで。
「だから正座じゃ」
「確かに剣道って正座しますけれどね」
 愛実も顔を顰めさせて言う。 
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