| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある星の力を使いし者

作者:wawa
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第76話

麻生が常盤台の生徒達を相手にしている時、上条と土御門は死ぬ気で校庭の中央にある、ポール籠の根元まで辿り着いた。

「よーしカミやん。
 オレはこれからポール籠を順番に調べてくる。」

「俺はなんか手伝える事とかないのかよ?」

「あったらとっくに押し付けてるぜい。
 良いから待機しててくれにゃー。
 「速記原典(ショートハンド)」を見つけてからがカミやんの出番ですたい。」

周りに聞こえないように打ち合わせをする。
その間どうしよう?、と上条は思う。
とりあえずカムフラージュの為に地面に落ちていた白組の玉を拾うが、競技に参加してしまうと、もぐりの自分が結果を変えてしまいそうで、いまいち乗り気にならない。
土御門は籠を支える金属製のポールの下で、わざと玉を籠に入れない軌道でポンポン投げつつ、その表面を下から上へと丹念に観察している。
ポールの高さは三メートルにも達する。
首を巡らせて一本調べるだけでも大変だ。
土御門は元々オリアナが使っていた単語帳のページの有無はもちろん、ポールを支柱に変な文字が刻まれていないか、地面の金属スタンド部分に妙なマークが描かれてないかなど、様々な角度から調べているらしい。

「土御門。」

「外れだカミやん、これじゃない。」

彼は首を横に振ると、地面から白組の玉を回収しつつ、次のポールへ向かう。
隣にある二本目、三本目のポール籠も調べていくが、結果は芳しくないらしい。
それを見ている上条は、時間だけがじりじりと経過していくような錯覚を感じる。
残りは七本。
上条も土御門の後に続こうとした所で、横合いから、キラッ、と白い閃光が弾けた。

「うわっ!?」

慌てて右手をかざすと同時に、丸い光の砲弾が真っ直ぐ飛んできた。
それは上条の右手に触れると同時、バシン!!、と軽い音を立てて吹き飛ばされる。
少し離れた所に、常盤台中学の少女がポカンと口を開けているのが見えたが、上条は相手をしない。
下手に注目される訳にはいかないのだ。
なので、隣でビビッて動けなくなっている男子生徒を肘でつついて適当に褒め、コイツのおかげという事にする。

「カミやん、四本目も違う、次だ。」

ムキになった常盤台中学の少女がその男子生徒を集中砲火しているのを尻目に、土御門と上条は五本目のポールへ向かう。
と、目の前で人の壁が揺らいだ。
上部の籠だけを見て玉を投げていた男子生徒の一団が、後方から押されて将棋倒しを起こしたのだ。
彼らは一つの塊となって、五本目のポール籠に激突した。
ゴン!という金属音と共に、ポール籠が振動する。
もしもオリアナが五本目のポール籠に、迎撃術式「速記原典(ショートハンド)」が仕掛けられていたら、間違いなく犠牲が増える。
魔術に耐性のない人間なら、死に至る危険性もある迎撃魔術。

「クソッ!!」

土御門は慌てて集団に向かって走る。
上条もその後を追おうとしたが、ふとその足の動きを止めた。
ぐらり、と五本目のポール籠が大きく揺れる。
五本目のポール籠が横に倒れていき、隣にあった六本目のポール籠に激突する。
六本目のポール籠も揺れて、倒れていく。
金属製のポール籠が倒れていく先に、常盤台中学の女の子が立っていた。
両手で紅組の玉を持ったままの少女、ポカンとしたまま、目の前にゆっくりと向かってくる重さ三〇キロ超の鈍器を眺めていた。
まるで、突然やってきた事態に頭が追いついていないように。
上条はそこへ向かって走るが、五本目のポール籠で将棋倒しを起こした男子生徒達が限りなく邪魔だ。

「ちっくしょう!土御門ッ!!」

上条は叫ぶと、五本目に向かっていた土御門の背中を踏んで一気に将棋倒しのエリアを飛び越える。
高く跳んだ上条は、空中でバランスを崩したが、そのまま女の子のランニング状の体操服の首の後ろを掴む。
ろくに受け身を取らずに地面へ激突し、しかしその勢いを使って女の子を横方向へと強引に引っ張って移動させて、倒れてくるポール籠の軌道から逃した。
その時、少し離れた所で、能力による炎弾が爆発した。
倒れつつあった六本目のポール籠が、爆風に煽られて上条達の方へと進路を変える。
金属バットの数十倍もの重量が勢い良く襲いかかってくる。

(くそ、避けた先に起動修正してくるんじゃねぇよ!!)

地面に倒れ込んだ直後の不安定な姿勢では、続けて飛ぶ事など不可能だ。
上条はせめてこの女の子だけでも逃がそうと腕を伸ばした時だった。
勢い良く落ちていたポール籠がいきなり空中でピタリ、と停止したのだ。
上条はすぐさま周りを見回す。
こんな能力が飛び交う中でこんな事が出来る人は限られてくる。
すると、生徒の人混みの間から麻生がこちらに向かって手を突き出しているのが見えた。

「恭介。」

上条は思わずその男の名前を呟く。
次の瞬間、ゴォン!!という轟音と共に、六本目のポール籠が真横に跳ねた。
オレンジ色の光源に弾かれたポール籠は真っ二つに引き千切られ、地面を何回も跳ねて、何十メートルも滑っていく。
周りの生徒達は思わず身を屈めたが、数秒も待たずに再び戦乱状態へと戻っていく。
超電磁砲(レールガン)
音速の三倍もの速度で弾丸を撃ち出す
ふらふらと振り返った上条当麻が見たのは、銀色のコインを親指で弾いて全身からバチバチ火花を散らしている常盤台中学のエース、御坂美琴の姿だった。
目が合う。
えへへ、と上条は力なく笑う。

「ったく・・・アンタ達はそーこーまーでーしーてー私に罰ゲームを喰らわせたいって言うのかしらーん!?」

と同時に、美琴は迷わず雷撃の槍を次々と放ってきた。

「う、うおおっ!!
 こ、こんな大規模なとばっちりを受ける前に逃げて逃げてそこの女の子!
 ここは俺が食い止めるから君はさあ早くーっ!!」

上条はやたらめったらに右手を振って雷撃の槍を弾き飛ばす。
その背後ではさっき助けた女の子が、ありがとうございましたそしてごめんなさい、と叫びつつペコリと行儀良く頭を下げて、物凄い速度で戦線離脱していく。
上条は振り返らず、そして静かな声で言った。

「ふう、あれだけ元気いっぱいなら、とりあえずは大丈夫そうダゼ。」

「アンタ、人様の競技で潜ってナニ格好つけてんのよ。」

喧騒の中、みことはおでこに手を当てつつ、ぐったりと脱力する。
そのまま、手近の七本目のポール籠に、小さな手をつけて寄りかかろうとしていた。

「ストップ!待て御坂!!」

「な、何よ?」

美琴は思わず手を引く。
上条は美琴の顔を見ないで、そのまま七本目のポールを観察している。
御坂美琴が手をつこうとしていた高さの位置に、何かがある。
板ガムぐらいの大きさの・・・長方形の厚紙だ。
ここからでは読めないが、何か細かい文字が書いてあるような気がする。

(単語帳のページ!?
 まさか「速記原典(ショートハンド)」の正体ってこれの事だったのか!!)

上条の背筋に冷気が突き抜ける。
嫌な予感が一気に身体中を駆け巡り、彼の身体を硬直させる。

(そういう事か・・・・土御門は迎撃術式に特別な「速記原典(ショートハンド)」を使ったって言ってたけど、そうじゃねぇ。
 オリアナの単語帳のページ、あれが一枚一枚全部「速記原典(ショートハンド)」なんじゃねーのか!?)

まずい、と上条は思う。
上条と美琴の距離は、およそ一メートル五〇センチほど。
近いと言えば近いが、手を伸ばして届く範囲ではない。
上条は何とかして美琴をその場から離れさせようと説得する。

「良いか、御坂。
 訳は後で話すから、そこから離れるんだ。」

「はぁ?アンタいきなり何言ってんの?」

案の定とでも言うべきか、美琴は眉をひそめる。

「あのね、今のアンタが人に命令できる立場な訳?
 アンタ、何でこんなとこにいるの?
 あいつも一緒じゃない所を見ると、もしかして本当に妨害にきたわけ?
 なんかポールも倒れちゃってまともに競技が進むかも分からない状況になっちゃってるし、ちゃんと説明してほしんだけど。」

「後で説明するから、だからそこから離れてくれ!!
 そのままじゃあ、お前が危険なんだ!!」

「な、何よ・・・・・わ、分かったわよ、離れればいいんでしょ、離れれば。」

上条の必死の説得が届いたのか、少し戸惑いながらも上条の方に近づいてくる。
それを見た上条は安堵して、近くにいるであろう土御門を呼ぶ。

「土御門、こっちだ!
 七本目のポール籠に・・・・」

叫びかけた所で、ふと上条の台詞が中断される。
七本目のポール籠の支柱にセロハンテープで張り付けられている厚紙を見たからだ。
そこには「野義中学校備品」と書かれているだけだった。
土御門は、このポール籠はよそからの借り物ではないか、と言っていた。
これは紛失しないようにするための、名札のようなものなのだ。

(違った!?
 じゃあ本物の「速記原典(ショートハンド)」はどこに!?)

上条は慌てて周囲を見回す。
その時、ピッ!と笛の音が響き渡った。
校内放送のスピーカーから、それまで流れていた競技用の行進曲がピタリと止まる。

「まったく、上条当麻。
 貴様は此処で何をしているの?
 まぁ、とりあえず訳は後で聞くとして、今は大人しく向こうへ行ってなさい。
 この分だと、麻生も一緒にいるみたいだし、そいつも連れて行くこと。」

運営委員の吹寄制理が、怪訝そうな顔でこちらを見ている。

「聞こえていない?
 これ以上あたしにカルシウムを食べさせる気?」

彼女はそう言って右手を近くにある八本目のポール籠を掴もうとする。
そして、上条は見てしまった。
その八本目のポール籠に一枚の厚紙が張り付けてある事を。
上条は、七本目のポールと同じく、単なる名札のようなものだと信じたかったが
そこには青い文字で、何かの英文が筆記体で書かれているように見えた。

「吹よ」

上条は咄嗟に制理の名前を叫ぼうとした。
だが、それよりも早く彼女の手がその厚紙に触れそうになった。
最悪の事態を思い浮かべた時だった。
制理の右手の手首を後ろから掴んで、厚紙に触れる直前で停止させた。
制理は怪訝そうな顔をしながら後ろを振り向くと、そこには麻生が立っていた。

「やっぱり、貴様も此処にいたのね。
 というより、どうしてあたしの手首を掴んでいるの?」

制理の問いかけに麻生は自分より後方の方を指さす。
制理はその方へ視線を向けると、何人かの同じ運営委員がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

「お前は俺達の相手をしているより、この事態を何とかする方が良くないか?」

「うっ・・・・そんなの分かっているわよ!!
 元はと言えば、貴様らが此処にいるのが悪いんでしょうが!!
 とりあえず、貴様らは向こうに行っている事!!
 後で、理由とか聞かせてもらうわよ!!」

「分かったから、さっさと行け。」

言われなくても分かっているわよ!!、と終始怒りながらも他の運営委員の所まで走って行く。
麻生は八本目に張り付いている「速記原典(ショートハンド)」を手に取る。
パキン、という軽く何かが砕ける音と共に紙に書かれている文字が消えていった。
麻生が触れる事で麻生自身に迎撃術式が発動したが、能力で無効化にしたのだ。
それを見た上条はようやく本当の安堵の表情を浮かべた。

「恭介、助かったぜ。
 お前が居なかったらどうなっていたか。」

「そんな事よりさっさと此処を離れるぞ。
 教師達もこっちに向かっている。
 見つかったら色々面倒だ。」

麻生の言葉に同意して、上条と麻生は土御門と合流する。
そして、麻生の能力で屈折率を変化させ、三人の姿を見えなくさせて校庭から離れていく。
一人、ポツンと取り残された美琴はバチバチ、と前髪から電気を散らせていた。

「説明するとか言って、何も説明してないじゃない、あいつらは!!!」

周りの生徒達は美琴の出す電気に巻き込まれないように離れていく。
すると、その美琴に一人の常盤台の生徒が駆け寄ってくる。

「御坂さん、此処に麻生さんがいらっしゃいませんでしたか?」

その生徒とは婚后光子だ。

「さっきまで居たんだけど、どこかに行っちゃったわよ。」

「うう~、そうですか。」

「何かあったの?」

少し残念そうにする婚后の顔を見て美琴は聞いてくる。

「いえ、さっきまで数人の生徒達で麻生さんの相手をしていたのですわ。
 ですが、どれだけ能力を放っても麻生さんに当たる直前に弾かれたり、消滅したりと原因不明の現象が起こったのですわ。
 それでも、引く訳にはいかず戦っていたのですけれど、ポール籠が倒れた瞬間に突如砂塵が吹き荒れて、晴れてみると既に麻生さんがいなかったのです。
 それで手分けして探していたのですけれど、逃げられてしまいましたわ。」

残念そうな顔をしながら婚后は説明する。
婚后の説明を聞いた美琴は首を傾げながら思った。

(あいつは本当に何をしに来たのかしら?
 今度会ったら絶対に聞きだしてやるわ。)






「いやぁ~、キョウやんのおかげで何とか一人も巻き込まずに済んだにゃ~。」

「さて、後は自分達でやれ。
 俺が手伝えるのはここまでだ。」

「いやはや、充分ですたい。
 また何かあったら頼むぜい。」

「出来る事なら俺を巻き込まずに事件を解決してくれ。」

そう言って麻生は上条と土御門から離れて行った。
これからどうしようか、と麻生は考えた。
特に向かう所もない。
いつも通り適当にブラブラするか、という考えに行き当たった。
しかし、道には生徒や父兄がごった返してそれどころではなかった。
電光掲示板を見ると、どうやらこれからリレーの予選が始まるらしい。
優勝候補が件並み揃うらしく、一日目の目玉種目らしい。
溢れんばかりの人の多さにうっとおしいそうな顔をする麻生。
すると、そこに自立バスが見えた。
麻生はバス停の停車ボタンを押して、そのバスに乗り込む。
中には誰もいなく、一番後ろの席に座り込む。
麻生は一応、マナーなどの常識を守る方だ。
だが、さっきの競技で疲れたので誰もいない事を確認すると後頭部の座席に寝転がる。
麻生以外に乗り込む人もいないのでバスは走りだす。
車体番号5154457(・・・・・・・)のバスは次のバス停に向かって走り出すのだった。 
 

 
後書き
とあるの原作を読んでいると、どんどん妄想が広がっていくこの頃(笑)
おそらくですが、この小説200話は確実に行くと思います。
長くなりそうですがお付き合いください。

感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧