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私立アインクラッド学園

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第一部 剣技
  第4話 キリトの災難

 
前書き
ユージオ君が出てきます^^

 

 
 放課後。リズの待つ鍛冶室に到着。
 リズの後ろ姿が見える。花に水やりをしていた。

「ふふふんふ~ん、ふんふ~ん」

 なにやらリズベットさんは、ご機嫌よく鼻歌なんて唄っていらっしゃるご様子。
 俺は、リズの背に声を掛けてみることにした。

「……おーい、リズ?」
「ひゃいっ!?」

 リズが変な奇声──否、悲鳴を上げながら、ゆっくりとこちらを振り返る。その顔は羞恥に赤く染まっていた。

「キ、キリト……! あ、あんたねえ……いたならいたって言いなさいよ」
「いた」
「今言っても遅いわよ!」
「なんか理不尽じゃないか……?」

 俺が苦笑いを浮かべると、リズベットははあ、と溜め息を吐いてから言った。

「……で、何か用?」
「うわー、そっちから呼び出しておいてよく言うぜ」
「そ、それもそうだったわね……」
「『それもそうだったわね……』じゃなくて、『それがそう』なんだけど」
「あんまり要らんこと言ってたら、うっかり剣をへし折っちゃうわよ」
「やめろ!?」

 リズは少し落ち着いたようだ。「ちょっと待ってなさい」と言い、部屋の奥から白い剣を持ってきた。その剣を俺に差し出す。

「こんな感じでいいのかしら?」
「ああ、さすがリズだな」
「そ、そうでもないわよ」

 リズの頬が、再び赤い色味を帯びた。さきほどよりは淡い色合いだ。
 この白い剣は、前にリズが俺に鍛えてくれた剣だ。
 固有名詞は«ダークリパルサー»。意味は«暗闇を払うもの»。リズがつけてくれたのだが──それもまたシリカ同様別の話だ。
 リズはいつの間にか、ガラスのように、いや、氷のように透き通った片手直剣──固有名詞«青薔薇(あおばら)の剣»を重そうに抱えていた。
 彼女が小さく呟く。

「……にしてもあいつ、遅いわねぇ」

 リズの言う«あいつ»は、恐らく青薔薇の剣の所持者──俺の相棒、寮のルームメートのことだろう。

「ああ、あいつか。あいつなら、今にそこの扉を開けて駆け込んでくるだろ」

 俺が閉じている鍛冶室の扉──引き戸を指して言った途端。

「リズ、遅くなってごめん!」

 1人の少年──青薔薇の剣の所持者が、扉をものすごい勢いで引き、叫んだ。
 柔らかそうなアッシュブラウンの髪。どこか女性的で、線の細めな、優しそうな目鼻立ち。
 少年の濃いグリーンの瞳と目が合った。俺は軽く手を振り、少年の名を呼んだ。

「やあ、ユージオくん」
「……キリト。君も来てたんだね」
「リズに研磨して貰った剣を取りに来たんだよ」

 俺は白い剣を指を中心にクルクルと回した。
 ユージオ。農家に生まれた父親が育った村では、どうやら貴族にしか苗字を名乗ることが許されていなかったらしく、その息子であるユージオには苗字がない。
 以前は、幼なじみである俺が、ソードスキルなどの剣技についてアレコレ教えていた。どうやらユージオは剣士としての才能があったらしく、どんどん上達していった。今彼と剣を交えても、俺が勝つ可能性は低いと思う。
 そんなユージオの剣の腕前は、もちろん学年トップクラスだ。一緒に依頼に行ったこともある。
 こんなところで剣振り回したりしたら危ないだろ、とユージオが言ったその時、リズが声を荒らげて叫んだ。

「ユージオ! あんた……さっさとこの剣、受け取りなさいよ……っ」

 未だにリズは青薔薇の剣を抱えていた。
 ──あの剣、めちゃくちゃ重いのに。
 いくら毎日のようにハンマーを振るっている彼女とはいえ、普通の女の子に持てる重さではない。これだけ持っていられたことも、大したものだ。さすが、アスナの親友。
 ユージオは「その辺に置いといてくれればいいのに……」とボソボソ呟き、軽々と青薔薇の剣を受け取った。いったいこの華奢な風貌のどこから、こんな力が出てくるのだろうか。
 ユージオは鞘に収めた剣を腰に吊るすと、俺の方を向いて言った。

「あのさ、キリト」
「どうした?」
「今度の依頼、僕と一緒に組まない?」

 リズが微笑みながら俺の顔を覗き込む。俺は俺なりの笑顔を浮かべ、ユージオに返事をした。

「ああ、いいよ。断る理由もないし」
「討伐系なんだけど、大丈夫?」
「お前が受注できる依頼なんだろ? 師匠としては、まだ負けてやるつもりはないんだけどなぁ」

 ユージオがニッコリと笑う。

「そっか。じゃあ、キマリだね。アスナも呼ぶ?」
「ユージオが呼びたいって言うんだったら、声掛けてくるけど」
「キリト、お前誘いたいんだろ?」
「おまッ、ちょ、バッ……!」

 リズがニヤニヤしながら俺を見ていた。

「へぇ~、ほぉ~、ふぅ~ん」
「リズ! 誤解しないでくれ! ──ユージオ、お前がヘンなこと言うから……!!」
「ヘンなことって? 僕はただ、アスナがすごい戦力になりそうだなぁと思って言っただけなんだけど」
「うぐ……ユージオお前、いつからそんな言い方覚えたんだよ」
「「そんなって?」」

 リズとユージオの声が重なった。
 そこで、聞き覚えのある女性の声がする。

「リズー! 遊びに来たよー……あっ、キリト君」

 タイミング悪く──あるいはよすぎか──アスナが鍛冶室に遊びに来た。

「……どうしたの? みんなでお喋り? わたしもまぜてよー。どんな話をしてたの?」
「全っ然いいわよアスナ! あのねぇ、今キリトの」
「と、特になにも話してないぞアスナ!!」

 俺はリズの言葉を遮った。

「え、でも……リズ、キリト君がどうかしたの? もしかして、またリズに迷惑かけちゃった……?」
「えっとね……」
「アアアスナ!!」

 再びリズの声を遮る為、俺は裏返った声で言った。

「……どうしたの、キリト君? そんなに興奮して」
「興奮はちょっと語弊があるかな……っと、今度の依頼、一緒に行かないか」
「え……」

 アスナが驚きに目を見開いた。恐らく、俺から誘うのは初めてだったからだろう。

「ふ、2人でってわけじゃなくて! その……ユージオも一緒なんだけど」

 アスナは何故か一瞬残念そうな顔をすると、即座にふふんと笑みを浮かべた。

「もちろんいいわよ。君がどうしてもって言うなら」
「いや、どうしてもといいますか」
「違うの? じゃあ、わたし行かない」
「……どうしてもです」

 次の瞬間、アスナはぱっと(ほころ)ぶ花のように微笑んだ。

「だったら、仕方ないわね。一緒に行くわよ」

 リズとユージオが両端から俺を肘で小突いてくる。そして2人揃って言う。

「「よかったじゃーん」」
「やめろ!!」
「えっ……やめてほしいの? やっぱり嫌になっちゃった……?」

 アスナが悲しそうに聞いてきた。2人の声は小さくて、アスナには届かなかったらしい。余計な誤解を招いてしまった。

「ち、違う!! そんなわけないだろ……」
「ふふ、そんなに否定してくれるんだ」

 アスナがくすっと笑う。

「いや、えっと……」
「あら、違うの?」
「違くないです……。お、俺、今ものすごく眠いんだ。早く寝ないと死にそう!! てなわけで、寮の部屋に帰るよ! ま、また明日!」
「あ、キリト行っちゃった……。僕も帰るよ。部屋でキリトをからかってあげよっと」
「ユージオ、ほどほどにしなさいよー?」
「リズ、ユージオ君、一体何の話をしてるの?」
「「さあー?」」

 
 

 
後書き
その後、寮のキリト&ユージオの部屋にて。

ユージオ「キリト、布団にくるまって逃げようとするのやめようよ…」
キリト「桐ヶ谷和人は寝ています。ゴカ~」
ユ「アスナのこと、意識しすぎだって」
キ「何の話かな!」
ユ「起きてんじゃん…」
キ「あ……寝言です」
ユ「寝言って、そんなにハッキリ返事するものだったんだね…」
キ「ゴカ~」
ユ「あ、ほんとに寝ちゃった…」

なんかすっごい長くなってしまいました…。

読んで下さり、ありがとうございました^^

 
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