銀色の魔法少女
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第十五話 暗雲
side 遼
少し前からなのはが学校をしばらく休むことになった。
おそらく、彼女は管理局に協力することにしたのだろう。
彼女が自分から決めたことに、私がとやかく言う筋合いはない。
……ない、けど、なのはに会えないのは寂しかった。
「………………………………もぐ」
私は一人、カロリメイトを食べる。
あれからクリムの観測によると、三つほど回収されたらしい。
管理局側が二つ、フェイト側が一つ。
それから全然ジュエルシードの回収はされていない。
クリムの予想によると、どうやら海に落ちているらしい。
私たちが回収した三つも海に落ちてたし、そうかもしれない。
「あ、いたいた!」「探したよ~」
屋上にアリサとすずかが現れる。
「もう、急にどっか行っちゃうんだから…………、って何よそれ!?」
「わぁ、遼ちゃん、もうこんなに食べたの?」
私は二人の視線の先を追う。
「…………うわお」
そこには、大量に積まれたカロリメイトの空箱があった。
どうやら、無心で食べているうちにこんなに積み上がったらしい。
「まったく……、なのはがいなくて寂しいのはわかるけど、少しは私たちを頼りなさいよね!」
アリサ…………。
「そうだよ遼ちゃん、私たち友達なんだからね」
すずか…………。
二人の優しさに、思わず泣きそうになる。
「ごめん」
「分かればいいのよ、分かれば」
「うん、じゃあ一緒にご飯……、あ、でも遼ちゃんもうお腹いっぱいだよね?」
「ううん、まだ、大丈夫」
自分でも不思議なほど、私は満腹ではなかった。
「そういえばさ、いない、で思い出したけど、最近あいつも見かけないよね」
「あいつ? ……、ああ紅生君だよね、そう言えば見かけないような……」
紅生? 記憶の中を探るも、まったく思い出せない。
「ほらあいつよ、いつもスプレーで撃退してる」
「ああ……」
一発で思い出した。
「なのはが休む少し前からもう見かけないわよね、まあ、静かなのはいいことだけど」
「うん、確かにその頃から見かけないけど、その前から少し変じゃなかった?」
「変?」
「いつもなら、私たちを見かけるとすぐに飛んでくるのに、『それどころじゃない、それどころじゃないんだ!』って言ってどこかに、行ったり」
「ああ、そう言えば『くそ! なんでジュエルなんとかが見つからない!』とか言ってたかしら」
「……ぐふっ!」
思わず吹き出しそうになる。
あいつもジュエルシードを集めていたのか。全然知らなかった。
「まあいいのよ、あいつのことは、それより昨日大きな犬を拾ったのよ」
「犬?」
「そう犬、なんか大きくて、頭に綺麗な宝石がついてるの」
? なんかどこかで見たような……、と言うか私、明らかに知ってる?
「それで、赤い毛並みで、すっごくふわふわなの」
検索終了、多分、あの犬だ。
「二人共、今日よかったらうちに来ない?」
「……うん、行く」「行くよー」
「………………(ぷい)」
こちらを見るなり、すぐにどこかを向く犬。
うん、やっぱりあんたか。
しかし、変装の効果もあってか私には分かっても、犬は私がわからないようだ。
……仕方ない。今はグリムゲルデも使えないから、念話で聞き出すか。
side アルフ
今日、アリサが友達を連れてきた。
しかし、その中にあの白い奴はいなかった。
管理局にこのことを伝えられないなら、あいつを止められない。
いや、管理局でもあいつを止められるかどうか……。
そう思った時だった。
『ほう、なかなか異な所におるな、使い魔よ』
『あんた! 一体どこから……?」
何回も、私たちをの邪魔をした黒い奴。
どこからか、そいつが念話で話しかけてきた。
『なあに、暇つぶしがてら散歩などをしていたら、主を見つけただけじゃよ、けどどうした、ずいぶんと酷い有様じゃが……』
あいつじゃなかったのは驚いたけど、この際なんでもいい!
『なあ、頼める筋合いじゃないのは分かっているけど、頼む! フェイトを助けてくれないか!』
『了解した』
『…………は!?』
思わぬ即答に、私のほうが面をくらう。
『? どうした、 助けて欲しいのじゃろう』
『いや、そうだけど、少しは疑わないのかい?』
『なぁに、主の様子を見ればただ事じゃないのはわかる、……それに、目の前にいる者を助けないという選択肢は、我にはない』
『…………よくわからないけど、恩にきるよ』
とりあえず、これで管理局に話が行けば、フェイトは――。
『まあ、我一人で何ができるか分からぬが、なんとかなるじゃろう』
『え! あんた、管理局のやつじゃないのかい!?』
『? ふむ、なのはは管理局に協力しているようじゃが、我はそんな気はない、むしろ、奴らに目をつけられると困る部類の者じゃ』
しまった! いつもフェイトの邪魔をしてくるから、てっきり管理局側だと思っていたのに……、いや、でもこいつから白いやつに話がいけばあるいは……。
『なあ、どうにかして、あの、確か高町なのはに連絡は取れないのかい?』
『……多少強引な方法にはなるが、取れないことはない』
『なら、頼む! 私も協力するから少しでも早く、管理局に伝えてくれ!』
『このままじゃ、フェイトが、いいやそれだけじゃない、あんたら全員死んじまうってな』
後書き
いつの間にかいない刃君。
あ、大丈夫、まだ彼は登場予定ですので死んではいません。
ええ、死んではいません。
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