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銀色の魔法少女

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第十四話 時空管理局 後編

side 遼

 まずいことになった、本当にまずいことになった!

 唐突だけど現在、私は時空管理局の時空航行船『アースラ』の中にいた。

 ロストロギアのクリムを所持している私は、管理局に目をつけられる可能性が高い。

 最悪、クリムを封印されかねない。

 最初、私は隙を見て逃げるつもりだった。

 間違ったのはその後。

 なのはのことが心配になり、怪我がないか彼女に近づいた。

 バリアジャケットが所々破損していたが、どうやら無傷のようだった。

 その後、執務官が話しかけてきた。

 本当はここで逃げる予定だった。

 けど、いつの間にかなのはがバリアジャケットの裾を掴んでいた………………。

 一人と一匹じゃ不安なのだろう。

 私にはその捨てられる寸前の子猫見たいな彼女を置いて、一人で逃げることはできなかった。

「君たちも窮屈だろう、バリアジャケットとデバイス、解除しても平気だよ」

「はい、そうですね」

 なのはは言われた通りに普段の学生服に戻る。

「我は素顔を晒したくない故に、デバイスのみ戻すとしよう」

 とりあえずノートゥングのみ待機モードに戻す。

「そうか、まあ人それぞれ事情というものがあるだろうから、深くは聞かないが」

 そう言って、ユーノを見つめる。

「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

「はい、そう言えばずっとこの姿だったので忘れてました」

 ………………………え?

 驚く私を他所にユーノの体が輝き出す。

 輪郭がフェレットモドキのそれから、徐々に人間の子供のそれに変わってゆく。

「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりになるのかな?」

 人間版ユーノ? いや、フェレットモードから元に戻った人間のユーノがそうなのはに話しかけるが、当のなのははとても驚いた様子でユーノを見つめていた。

「えと、その、えと、ふ、ふえええええええええええええええええええええ!?」

 訂正、とても混乱した様子でユーノを見ていた。

「お主、人間じゃったのか」

 言葉にならないなのはの代りに私が尋ねる。

「うん、ジュエルシードを回収していた時に怪我をしちゃって、その時なのはに拾われて……、あれ?」

 何やら考え始めるユーノ。

「ああーー、ごめん! 最初からフェレットだった!」

「だよね! びっくりした……」

「……話は済んだようだが艦長を待たせてるんだ、できれば早めに話を聞きたいんだが」

「「すいません」」



 場所は変わって和室、どこからどう見ても和室。

 壁には数々の盆栽、何故か室内なのに傘までさしてある。

 私たちは入口からユーノ、なのは、私の順で座っている。

 目の前にはクロノと、その上司の女性。

 内心、クリムのことがバレないか不安で仕方がない。

 さっきまで元気だったクリムも私の不安が伝わっているのか、何も話さなくなった。

「さて、そっちの二人がジュエルシードを集める理由は分かったのだけど、あなたはどうしてなのかしら?」

 急にこちらに話がふられた。

「そんなの決まっておろう、降りかかる火の子は払いのけるまで、我の故郷に危険な物がばらまかれたとあってはおちおち寝てもいられぬから、集めていたのだよ」

「……では、あなた自身はジュエルシードを必要としていないわけですね」

「まあの」

 そう言えばそうだった。

 集めることだけを考えて、集め終わった後のことをすっかり忘れていた。

 そもそも、ジュエルシードの数が21個というのも今知ったし、どれだけ自分が前のめりに、悪く言うと盲目的に集めていたのか思い知る。

「それじゃあ、あなたが集めたジュエルシード、できれば私に渡して欲しいのだけど」

「……まあ、致し方あるまい」

 ノートゥングの中から、私が集めた八つのジュエルシードを全て取り出す。

「わぁ、すごい……、私なんて三つなのに」

 なのはがしゅんと落ち込む。

「そう落ち込むな、こちらには優秀なレーダーがいただけの話、主の実力が我に劣っているわけではないぞ」

 まあ、実際魔力量じゃ惨敗だし。

「そう、なのかな……」

 今度は私の話を聞いたクロノが私に質問してくる。

「優秀なレーダーがいると言ったが、まだ他に協力者がいるのか?」

「……しまった、口が滑ったか」

 中々優秀な執務官だ。おちおち慰めることもできやしない。

「ふぇ? でも私シグルドさん以外の人見たことないの」

「当然じゃ、あれは今は人には見えぬ」

 とりあえず、少しぼかして伝えることにした。

「? 人には見えないとはどういうことだ?」

「さあの、これ以上は言えぬな」

 流石にこれ以上失言するのは避けたい。

「……まあ、いい」

 それからしばらく、なのはたちとクロノたちで自分たちが今後どうするかについて話し合われた。



side なのは

 私たちはアースラからさっきまでいた公園まで戻ってきた。

 右には人間版ユーノ君、左にはシグルドさんがいた。

「ねえ、シグルドさんはどうするの?」

 私は彼に尋ねる。

「我は、……そうじゃの、恐く今までどおり、全て集め終わるまで勝手に回収するのみじゃな」

「ふぇ!? そんなことしちゃっていいの!?」

「いや、ダメじゃろうな」

 そう言って笑う彼だけど、私は全然笑えないの。

「個数からいって、残り最高で九つ、まあ、あ奴らもいくつかは集めてるじゃろうし、実際はこれ以下かのう、それくらいならなんとかなるわ」

「で、でも、そんなことをしてたらクロノ君に捕まっちゃうと思うのだけど」

「恐く、そうなるじゃろうな」

「じゃあ、何で?」

 私がそう聞くと、シグルドさんは真剣な声でこう答えた。

「我は元より管理局に手を貸すつもりなど毛頭ない、ただ、我が思うように動くのみよ」

 言い終わると、彼の姿が徐々に消え始める。

「ふぇ! え、えええ!?」

「そう驚くな、ただ我の反応をなくす魔法じゃ、実際に消えているわけではない」

「そ、そうなの?」

 すると突然、ユーノ君がシグルドさんを観察し始めた。

「すごい、魔力を全然感じない、一体どうやって……」

「それは秘密じゃ」

 彼がそう言うと、完全に消えて、私たちには見えなくなった。



side クロノ

「く、エイミー反応は?」

「だめ、どの計器にも反応なし! 完全に消えちゃった……」

 ありえない。こんなことは初めてだ。

「普通の魔法じゃ考えられない、ということは――」

「ロストロギアを使用している可能性がありそうね」
 
 奥から母さんがやってくる。

「アースラにいた時にも一応分析はしていたのよね?」

「もちろんですよ! けど、全然できなくて、性別から体重に至るまで全て分かりませんでした」

「なるほど、だから彼は私たちに好意的ではなかったのね」

 そう、ロストロギアを所持しているとなれば、当然管理局が動くのは確実だった。

「クロノ、暇があったらでいいから彼が持っているロストロギアについて調査お願いできるかしら?」

「任せてください、すぐに、とは言えませんが、必ず特定してみせます」

 もし、闇の書のような危険なロストロギアなら、すぐにでも封印してやる。

 そう僕は心に誓った。 
 

 
後書き
ジュエルシード:
なのは&管理局 12個
フェイト    3個
遼       0個

残り      6個 
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