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遊戯王GX ~Unknown・Our Heresy~

作者:狂愛花
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第6話 廃寮 現れるイレギュラー

 
前書き
こんにちは、狂愛花です!

この小説は、後半まで主人公設定などキャラクターの設定を投稿しないので、その辺りはご了承ください。

今回の話は、タイタンの話です。

でも、主人公はタイタンと戦いません。

その理由は本編でどうぞ! 

 
side 三人称

夜。

誰もが眠る、闇の時間。

星が瞬くそんな夜に、レッド寮の食堂から微かな光が零れ出ている。

その食堂では、十代たちが怪談話を披露し合っていた。

事の切っ掛けは、眠気が来ない十代が翔と隼人、そしてイエロー寮にいる直哉と雪鷹の2人を誘い、何かしようと言ったところ雪鷹が怪談やろうぜと言ったのが始まりだ。

雪鷹の言葉に十代は目を輝かせながら賛同し、翔と隼人は怖いから嫌だと互いに抱き合いぶるぶると震え、直哉は別に構わないと言って結果やる事になった。

嫌だといていた翔は、泉に浮かぶカードの都市伝説を披露した。

案外、満更でもないようだ。

その怪談の内容は、この島の何処かにあると言われている泉。

その泉には、自分の一番欲しいカードの絵柄が浮かび上がってくる。

その浮かび上がったカードを取ろうと泉に手を伸ばした時、泉の中から手が伸び、伸ばした手を引っ張られ泉の中へと消えてしまうというものだった。

翔の怪談を聞いて、隼人は怖がり震え、十代は面白そうだとワクワクしており、直哉と雪鷹はあほらしいと大きな欠伸をしていた。

そして、次は雪鷹の番となった。

雪鷹は机に置かれていたカードの上から1枚引いてそのカードを机に表側で出した。

これは、十代が怖い話を持っていないと言う翔と隼人のために考案したルールだ。

怪談話を行う人は、山札からカードを1枚引き、引いたカードがモンスターなら、そのモンスターのレベルにあった怖い話を披露する。

因みに、魔法や罠を引いた場合、怪談話を披露せずに次の人の番に代わる。

雪鷹が引いたのはモンスターカード。

そのレベルは4つ星だった。

雪鷹はフゥと息を吐き、ゆっくりと語り出した。

「これは、友達に聞いた話なんだけど、ある所にA子さんという女性がいて、ある日A子さんが部屋で友人と電話をしていると、隣の部屋から「ぎゃぁ!!!」という叫び声が聞こえてきたんだ」

突然叫び声を上げた雪鷹に全員がビクッと肩を震わせた。

「突然の叫び声に驚き、A子さんはちょっとごめんと友達に断りを入れてから電話を切り、声の聞こえた部屋に急いで向かいました。部屋に入ると、その部屋のど真ん中にあるソファーの上で、A子さんの彼氏が、ガクガクガクガク! て震えているんですよ。「どうしたの?」ってA子さんが聞くと、彼氏は震えながら、「俺・・・・見ちゃったよ・・・・目が合っちゃったよ・・・・」って言ってるんですよ。話を聞いてみると、彼氏、この部屋で椅子に座って本読んでたんですね。そこでトイレに向かおうと椅子から立ち上がると、ふと、足元から視線を感じたんですね。何かなって視線を落としてみると、黒い紐みたいな物が椅子の下から出てたんですよ。なんだろうって椅子の下を覗いてみると、椅子の下に、人の頭みたいな物があったんですね。もっとよく見ようとして目を凝らした時に、その頭がムクッ! て動いたんです。その瞬間彼の目と椅子の下にいた者の目が合い、恐ろしくなった彼氏は悲鳴を上げ、今に至るらしいんです」

話しの間に入れてくるジェスチャーと擬音が話のリアルさをより引き出している。

その所為で、翔と隼人はガクガクと互いに強く抱き合いながら大きく震えていた。

先程まで笑っていた十代でさえ額に汗を浮かべている。

「その時A子さんは、あ、またか。て思ったんです。そう思うのも、彼氏がそう言う物が見える人で、そう言う事を自慢してるような人だったんですよ。この時も、私を驚かそうとしてるだけなんだろうなって思ったんですけど、まじまじと見た彼の様子が、明らかに演技と思えないほど怯えてるんですよ。すると、彼氏が、A子さんに「なぁ、お前、この椅子の下ちょっと見てくれないか?」ってお願いしてきたんですよ。「え、嫌だよ」「なぁ、頼むよ! お前そういうの大丈夫だって言ってたじゃん! なぁ、頼むよ助けてくれよ!」A子さん、それだけは絶対したくなかったんですけど、目の前で目に涙を溜め怯えきっている彼氏を見て、わかったって承諾したんですよ。そして、ゆっくりと椅子の下を覗き込む・・・・・・」

雪鷹は机に両手をつき、椅子の下を覗き込んでいるようなポーズをとった。

その姿に翔と隼人の恐怖が倍増していった。

食堂内に沈黙が流れる。

その沈黙が2人の恐怖をさらに増して行く。

誰かが固唾をのむ音が響く。

「「うん、大丈夫何も無いよ」A子さんが彼氏に伝えると、彼はホッと息を吐き椅子からピョンと飛び降りて入口の方にタタタッと移動して行きました。「私ちょっと友達と電話してるからそれ終わったら、一緒に外に食べに行こう?」そういってA子さん、自分の部屋に戻って行って友達と電話の続きし始めたんです。「ごめんねさっきは」「ううん、別にいいけど、A子大丈夫?」「うん、大丈夫。それよりさぁ、B事だけど、アイツ・・・・多分もう生きて無いと思う」A子さんのいうBって言うのは、A子さんの前の彼氏の事で、その彼氏、山で鉄砲水かなにかに巻き込まれて行方不明になってるたんですよ。でも、A子さんがもう生きてないって言うのは、さっき、椅子の下を見た時、彼氏には何も無いって言ってたんですけど、実は、椅子の下でずぶ濡れになってこっちを見てるBの姿を、A子さん、見てしまっていたんですね」

「「「ヒィィィィィィィィ!!!!」」」

語り終えた雪鷹の顔を、揺らめく蝋燭の火が妖しく輝かせる。

そんな状態で雪鷹はニヤリと不気味な笑みを十代たちに見せた。

そんな雪鷹に恐怖し、十代たちの悲鳴が食堂内に響き渡った。

「これで俺の話は終わりだ。どうだった?」

あからさまに怖がってきた十代たちに、雪鷹はわざとらしく感想を訊ねた。

「滅茶苦茶に怖かったッスよ!!」

震える身体を抱きしめながら翔は涙目で雪鷹に怒鳴る。

そんな翔の状態に雪鷹は機嫌を良くして愉快そうに答えた。

「この程度じゃ、まだ怖いなんて言わないよ♪」

雪鷹の笑みに翔と隼人は別の意味で恐怖した。

レベル4でこれなら、レベル12ならどんな話になるのだろうと、十代と直哉は考えた。

「おやおや、何をやってるのですかにゃ?」

そんな事をやっていると、食堂の奥から黒髪の長髪に眼鏡をかけている長身の男性が現れた。

彼はこのレッド寮の寮長、大徳寺。

デュエルアカデミアで錬金術の授業を任されている。

その授業になると、雪鷹と直哉は通常の授業よりもやる気を出しているようだ。

その大徳寺の腕の中では、彼がペットとして飼っている虎縞でポッチャリとした体形の猫、ファラオを抱いている。

ファラオは眠たそうに大きな欠伸をした。

「あ! 大徳寺先生! 今、怪談やってるんだ! 先生もどうだ?」

大徳寺の姿を見て、十代は大徳寺を怪談に誘う。

「では、お言葉に甘えて・・・・」

そう言って大徳寺は、机に置いてあるカードの山札からカードを1枚引いた。

そして、大徳寺が引いたモンスターのレベルは。

「出た! F(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)!! 最高レベルの12!!」

レベル12のモンスターだった。

十代はF・G・Dを引いた大徳寺がどんな怪談を話すのかとワクワクしていた。

それとは逆に、どんな怖い話が飛び出すのかと翔と隼人はビクビクしていた。

そんな十代たちを直哉と雪鷹は呆れた表情で見ていた。

「それでは、とっておきの話を教えてあげるのにゃ」

そう言って大徳寺は語りだした。

この島では昔、ブルー寮として使われていた廃寮があって、その廃寮では何人もの生徒が行方不明となっているという。

しかも、その寮では闇のゲームに関する研究が行われていたらしいというものだった。

「くれぐれも、その廃寮には近づかないでくださいね?」

意味ありげな笑みを浮かべ、大徳寺は食堂の奥に戻って行った。

大徳寺の話しを聞いていた十代が突然立ち上がり叫ぶように言った。

「その廃寮に行ってみようぜ!!」

side out


side 直哉

「その廃寮に行ってみようぜ!!」

十代の言葉に俺と雪鷹はやっぱりと言いたげに溜息をついた。

「えぇ!? 駄目ですよ! 大徳寺先生が行くなって言ったじゃないですか!!」

「そうなんだな。こ、怖いんだな・・・・」

十代の言葉に翔は異論を唱え、隼人はブルブルと震えていた。

「大丈夫だって! 闇のデュエルなんてあるわけないだろ! なぁ、直哉と雪鷹も行くだろ?」

2人の意見を半分強引に押し切り、十代は俺たちに話を振ってきた。

翔たちが行きたくないと言いたげな眼差しを俺たちに向けてくる。

「行くだけ行ってみるか」

俺は面倒臭そうに頭を掻きながら了承した。

それを見て2人の顔が青ざめて行くのが分かった。

俺の答えを聞いた十代は雪鷹はどうすると聞いてきた。

そんな十代に雪鷹は無言で頷いて答えた。

その答えを見た十代は早速行こうと食堂を勢いよく飛び出して行った。

退路を断たれた翔と隼人は真っ青な表情を浮かべながら、廃寮へと向かう十代の後をトボトボと追って行った。

そんな3人の後を俺たちは嬉しそうな表情を浮かべて追って行った。




「あった! 廃寮ってあれじゃないか?」

森の中を彷徨っていると、遂に目的の廃寮を見つけた。

十代の指さす方には、あちらこちらがボロボロに朽ちた立派だったと思われる建物が建っていた。

廃寮の発する雰囲気に十代は目を輝かせ、翔と隼人はガクガクと身体を震わせていた。

「さっそく入ってみようぜ!」

十代は立ち入り禁止の文字が貼られているロープを跨ぎ、廃寮の中に入ろうとした時だった。

「貴方たちそこで何してるの!」

突然の声に十代たちはビックリし、声の方へと視線を向けた。

そこには、一輪の薔薇を手に持った明日香が鬼の様な形相で立っていた。

「なんだよ明日香か、驚かすなよ」

明日香の姿を見て、十代は安心したようにホッと息を吐いた。

しかし、そんな十代の態度に明日香の眉間に皺が寄る。

「ここでは何人もの生徒が行方不明になっているのよ?」

明日香が忠告しながら歩み寄ってくる。

「そんな迷信信じないさ」

明日香の忠告を十代はただの迷信だと笑い飛ばした。

そんな十代の態度に業を煮やした明日香は、十代を怒鳴りつけた。

「真面目に聞きなさい!!」

明日香の怒号に十代たちは目を見開いて驚愕した。

いつになく食ってかかる明日香の態度に、十代の顔も真剣なものに変わる。

「なんだよ、今日はいつになく食ってかかるじゃないか」

明日香の態度を不審に思った十代は、明日香にそう訊ねた。

訊ねられた明日香は、表情を歪ませ、重々しくその口を開いた。

「この寮では、私の兄も行方不明になってるの」

「え!?」

明日香の口から放たれたその言葉に、十代たちは声を上げ驚愕した。

明日香は、兄が居なくなった時の事を思い出しているのか、悲しそうな表情を浮かべ廃寮を見つめている。

そして、明日香は持っていた薔薇を廃寮の入り口にそっと供えた。

「わかったら、さっさと自分たちの寮に戻りなさい」

薔薇を供え終えた明日香は、ブルー寮へと向かいながら十代たちにそう告げて去って行った。

そんな明日香の背中を、十代たちは無言で見送った。

「アニキ、明日香さんもああ言ってるし、もう帰ろうよ」

明日香の姿が見えなくなると、翔は十代にそう言った。

「・・・・なぁ」

明日香が去っていった方を見ながら十代が徐に口を開いた。

「俺たちで明日香の兄ちゃんの手掛かり探そうぜ!」

「「えぇ!?」」

十代の提案に翔と隼人は驚愕した。

「俺も十代に賛成だ」

その言葉を待っていましたと言いたげな笑みを浮かべながら俺は十代に賛同した。

俺の隣では、雪鷹が俺同様に賛同を現すように挙手していた。

「・・・・わかったッス! 僕も一緒に行くッス!」

「おれ、俺も一緒に行くんだな!」

俺たち3人を見て、翔たちは意を決したようだ。

これで決まりだ。

俺たちはロープを跨ぎ廃寮の中へと入って行った。






廃寮の中は外同様にあちらこちらが朽ち、天井近くには蜘蛛の巣が張り巡らされ、足を踏み出すと足元から埃が舞い上がった。

すごい荒み具合だ。

「すげ~広いな! 皆でここに引っ越そうぜ!」

「絶対に嫌っス!!」

廃寮内の広さに十代の冗談とも本心とも捉えられる事を言う。

それを翔は全力で拒否した。

その皆には俺と雪鷹も含まれているのだろうか?

「ん? なんだこれ?」

そう言って十代は足元に落ちていた物を拾い上げた。

どうやら写真の様だ。

「何すかそれ?」

「何なんだな?」

翔と隼人が十代の持つ写真を覗き込む。

「10・・・・JOIN? なんだこれ?」

俺たちも写真を除きこんだ。

そこには、ブルーの上級生用の制服を着た黒髪の男性が、カメラに向かってウインクしている画が映っていた。

その写真の裏には、綺麗な文字で数字とアルファベットが書き込まれていた。

「ん? これって・・・・エトワール・サイバー?」

十代が写真が落ちていた床に再び視線を向けると、そこには明日香が使用していた融合モンスター、エトワール・サイバーのカードが落ちていた。

十代が拾い上げたカードを翔たちが覗きこもうとした時だった。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「ッ!?」

廃寮内にけたたましい女の悲鳴が轟く。

その悲鳴に俺たちは声の聞こえた方に顔を向けた。

「今のって!」

「明日香さんの声っス!!」

「急ぐぞ!」

俺たちは悲鳴の聞こえた方へ向って走って行った。

足音が寮内に木霊する。

すると、向かう先に光が見えた。

その光に俺たちは躊躇なく駆け込んで行った。

光を抜けると、俺たちは広い空間に出た。

髑髏や悪魔を象った像に囲まれている円形状の空間。

まるで地獄に来たような感覚に陥ってしまいそうだ。

そんな事を考えていると、部屋に何者かの声が木霊した。

「フフフ、待っていたぞ。遊城十代・・・・」

「誰だ!?」

十代は声のした方に顔を向けた。

そこには、黒のハットに黒のトレンチコートといった全身黒ずくめに、白銀の仮面で顔を隠した大男が仁王立ちしていた。

その姿に俺は心の中で来たと叫んだ。

彼の独特の声を一度生で聞きたいと俺はどれ程思った事かと心の中で少し観世音に感謝した。

隣をチラッと見ると、雪鷹も嬉しいのか、目を輝かせていた。

「遊城十代・・・見ろ・・・・」

深く低く唸るような声が部屋に木霊し、男は自分の後ろを指差した。

そこには、1つの棺桶が立てかけられていた。

その棺桶の中には、表情を歪めたまま眠る明日香の姿があった。

「明日香!!」

明日香の姿を見て十代が叫ぶ。

「この女を助けたければ、私とデュエルをしろ。しかし、ただのデュエルではない。闇のデュエルだ」

「闇のデュエルだと!? お前は何者だ!!」

十代の声が部屋中に響き渡る。

敵意剥き出しの十代を見て、男はニヤリと笑った。

「私の名は、タイタン。闇のデュエルスト、タイタン!!」

タイタンと名乗る男の声が部屋中に響き渡る。

状況とは裏腹に、俺はタイタンの声を聞いて感度を覚えていた。

「面白れぇ! その挑戦、受けてたつぜ!!」

そう言って十代は、何処から出したのかデュエルディスク左腕に装着して部屋の中央へと歩み寄って行った。

「アニキ」

「十代」

タイタンの挑戦を受けた十代を翔たちは心配そうに見つめる。

そんな翔たちに向かって、十代はVサインを見せて大丈夫とアピールした。

そんな時だった。

「ッ!」

俺は異様な気配を感じ、後ろを振り返った。

しかし、当たり前の如くそこには誰もいなかった。

「雪鷹」

小声で雪鷹の名を呼びながら、俺は雪鷹の方に視線を向けた。

雪鷹も気配を感じ取ったのか、険しい表情を浮かべ、鋭い目つきで闇の中を睨みつけていた。

チラッと翔たちに視線を向けると、十代たちの方に気を取られ、俺たちには目もくれていない。

それを確認すると、俺は雪鷹の肩を叩き、ジェスチャーで気配を辿ろうと伝えた。

雪鷹は翔たちの方をチラッと見てから首を縦に振った。

それを確認すると、俺たちは翔たちからゆっくりと離れ、闇の中へと消えて行った。

side out


Side 三人称

翔たちから離れた直哉と雪鷹は、あの時感じた気配の主を探して、廃寮の中を散策していた。

「雪鷹、さっき感じた気配。お前はどう思う?」

ペンライトで廃寮の中を照らしながら、直哉は雪鷹に訊ねた。

「どうって?」

「俺たちはこの世界に来て、異様なまでに気配に敏感になった。そこいらの人間や動物なら、気配を感じるなんて造作もない。でも、さっき感じた気配は、なんだか邪悪な感じがした」

直哉は歩みを止め、表情を少し歪めてそう言った。

立ち止まった直哉の方を見ながら、雪鷹も歩みを止めた。

「それは俺も感じた。もしかしたら、俺たちの想定していた事が現実になったのかもしれないな」

ガラスが割れた窓から外を見ながら、雪鷹はそう言った。

「“イレギュラー”」

バサバサバサ!!

直哉の呟きと同時に、外の森から鳥がけたたましく羽撃きながら空へと飛んで行った。

突然の事に、2人はビックリして窓の外を見ていた。

そんな時だった。

「ッ!」

「ッ!」

先程感じた気配を2人は再び感じ取った。

「雪鷹!」

「分かってる!」

気配の主を逃がさないように、2人は気配を感じた方に走って行った。

廃寮内に2人の足跡が響き渡る。

気配を追って、2人は上へ下へと縦横無尽に走り回った。

そして、2人はとある部屋へとたどり着いた。

「ハァ、ハァ、気配はここで消えた。」

「ハァ、ハァ、そうだな。この部屋の何処かに、気配の主が居るはずだ」

息を切らせながら2人は辿りついた部屋の中を見渡す。

しかし、部屋の中には誰も居らず、荒れ果てた光景が広がっていた。

「兎に角、この部屋を探ってみよう」

「あぁ」

息を整え、2人は部屋の中へと足を踏み入れた。

その時。

「待っていましたよ」

「ッ!?」

「ッ!?」

突然聞こえてきた声に2人は驚き、声の主を探した。

すると、部屋の扉がバタンと勢いよく閉まった。

扉が閉まった事に2人はしまったというような表情を浮かべ扉を見た。

「フフフ、初めまして、かな?」

部屋の中央から先程聞こえた声が聞こえ、2人は部屋の中央に目を向けた。

そこには漆黒の修道服を纏った者が立っていた。

その顔は闇に包まれていて見えない。

「何者だ」

突然現れた修道士に、直哉は敵意をむき出しにしながら訊ねた。

一見穏やかな口調に聞こえるが、修道士が纏っている気配は、先程感じた邪悪なものそのものだった。

訊ねられた修道士は、クスクスと嘲笑うかのような笑みを浮かべ、闇の中から2人を見ていた。

「私に名はない。ただ、私はお前たちに差し向けられた刺客とだけ言っておきましょう」

そう言いながら修道士は左腕を突き出した。

すると、突き出した左腕に、部屋のあちこちにあった影が集まって行き、その腕に、漆黒よりも深い闇色のデュエルディスクが現れた。

デュエルディスクの出現に、雪鷹は忍ばせていたデュエルディスクを左腕に装着しようとした。

しかし、その行動を直哉が制した。

「直哉?」

直哉の行動に雪鷹は疑問符を浮かべる。

「悪い、雪鷹。こいつは俺にやらせてくれないか?」

直哉の言葉に、雪鷹は何故という表情を浮かべた。

「何、対した理由じゃない。ただ、久々に大暴れしたいだけだ」

そう言いながら直哉は強引に雪鷹のディスクを奪い、自分の左腕に装着した。

そんな直哉に雪鷹は呆れたように溜息を吐きながら後ろに下がった。

「ホォ、最初の犠牲は貴方ですか?」

直哉を見て修道士は蔑んだように笑った。

「フン! そういうの、負けフラグって言うんだぜ?」

そんな修道士を直哉は皮肉交じりに挑発した。

その表情は見えないが、挑発された修道士は眉を顰めているようだ。

「・・・・・・その言葉、後悔させてあげます!」

「あぁ! させてみな!」

『デュエル!!』




修道士 LP4000

手札5枚

フィールド0枚


直哉 LP4000

手札5枚

フィールド0枚




「私のターンドロー!」

先行を取った修道士はデッキからカードを勢いよくドローした。

「私は、《終末の騎士》を攻撃表示で召喚!」

暗い部屋に光が溢れ、その光の中からボロボロの甲冑を纏い、ゴーグルをつけた放浪騎士が姿を現した。




終末の騎士
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1200
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る事ができる。




「終末の騎士の効果発動! デッキから闇属性モンスター1体を墓地に送ります! 私は、《ネクロ・ガードナー》を墓地に送ります。私はこれでターンエンドです」




修道士 LP4000

手札4枚

フィールド モンスター1《終末の騎士》
      魔法・罠 セット0




「俺のターン、ドロー! 俺は、《おろかな埋葬》を発動! デッキより《ゼータ・レティキュラント》を墓地に送る!」




おろかな埋葬
通常魔法(制限カード)
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。




「そして、俺はモンスターをセットし、カードを1枚セットしてターンエンド」




直哉 LP4000

手札3枚

フィールド モンスター セット1
      魔法・罠 セット1




「レティキュラントという事は、除外デッキですか。しかし、このデッキには無意味! 私のターン! ドロー!」

直哉が墓地に送ったカードを見て、修道士は不敵な笑みを浮かべた。

「私は手札の《D.D.クロウ》を墓地へ捨て、貴方の墓地のゼータ・レティキュラントをゲームから除外します!」

「何!?」

直哉は目を見開き驚いた。

修道士の墓地が光り輝き、その輝きの中から翼を羽撃かせた半透明の烏が勢いよく飛び出してきた。

飛び出してきた烏は、直哉の墓地目掛け一直線に飛んで行った。

そして、直哉の墓地からカードを1枚奪い取り、次元の狭間へと消えて行った。

「チッ! D.D.クロウをいれてるなんて!」

「フフフ、言ったでしょう? 私は刺客だと。貴方たちのデッキは全て、把握済みですよ」

闇の中で修道士の目がギラリと妖しく光る。

調査済みという言葉に、直哉の額に汗が滲む。

「さらに私は、終末の騎士をリリースし、《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚!」

終末の騎士が光の粒子となって消えて行き、大地より渦を描くように闇が舞い上がる。

螺旋する闇の中で、赤い光がギラリと輝く。

闇を振り払い、深紅の瞳をギラつかせ、黒紫の鎧を纏った巨体がその姿を現す。




邪帝ガイウス
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2400/守1000
このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上に存在するカード1枚を除外する。
除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。




「罠発動! 《奈落の落とし穴》! ガイウスをゲームから除外する!」




奈落の落とし穴
通常罠(準制限カード)
相手が攻撃力1500以上のモンスターを
召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動できる。
その攻撃力1500以上のモンスターを破壊しゲームから除外する。




ガイウスの足元に、底の見えない漆黒の穴が現れ、ガイウスを奈落へと引きずり込んでいった。

「チッ! ですが、アドバンス召喚に成功したガイウスの効果は発動します! セットモンスターを除外します!」

ガイウスを飲み込んだ穴が徐々に閉じて行く。

そんな閉じかけの穴の中から、紫色の炎が飛び出してきた。

飛び出した紫炎の球体は、火の粉を撒き散らしながら直哉のセットモンスターを焼き尽くした。

伏せられたカードが表になり、隠れていたモンスター《異次元の女戦士》が悲鳴を轟かせながら光となって行った。

「フフフ、ゼータ・レティキュラントが墓地に居ないので、私のモンスターを除外してもトークンは召喚されませんよ」

そう言って修道士は嘲笑った。

そんな修道士の言葉に、直哉は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「攻撃できるモンスターが居なくなってしまったので、私はこれでターンエンドです」




修道士 LP4000
手札2枚
フィールド モンスター0
魔法・罠セット0




フードの中で修道士は余裕の表情を浮かべた。

「俺のターン、ドロー!」

直哉は苦渋の表情を浮かべながらカードをドローする。

ドローしたカードと手札を確認しながら、直哉は修道士の方に視線を向けた。

「俺は、魔法カード《手札断殺》を発動! 互いのプレイヤーは手札を2枚選択し墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする。俺の手札は3枚。アンタの手札は丁度2枚。よって効果発動!」

直哉は手札のカードから端の2枚を抜き取り墓地に送る。

修道士はチッと舌打ちをうち、手札2枚を墓地に送った。

そして、2人はデッキからカードを2枚ドローする。

2人は手札に来た新しいカードを確認する。

2人の顔に笑みが浮かぶ。

「俺は《終末の騎士》を召喚!」

直哉の場に現れたのは、最初に修道士が召喚したゴーグルを掛けた放浪騎士だった。

終末の騎士の召喚に、修道士はホォ、と感心したような声を上げた。

「終末の騎士の効果発動! 俺は、デッキからゼータ・レティキュラントを墓地に送る。バトル! 終末の騎士でダイレクトアタック!」

黒い髪を靡かせ、終末の騎士は鞘から抜き去ったサーベルで修道士を斬りつけた。

「グゥ!」


修道士 LP4000→2600


「この瞬間! 手札より《冥府の使者ゴーズ》を特殊召喚する!」

闇が渦巻き、修道士のフィールドに、冥府より出でし、漆黒の剣士ゴーズが姿を現した。

そして、その隣にはカイエンが佇み、2体の冥府の使者は鋭い眼光で直哉を睨みつけていた。

「チッ! カードを2枚セットし、ターンエンド」




直哉 LP4000
手札0枚
フィールド モンスター《終末の騎士》
      魔法・罠セット2




ゴーズの登場に、直哉の額に汗が滲む。

「私のターン、ドロー! 私は魔法カード《闇の誘惑》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、手札から闇属性モンスターを除外する」

修道士はデッキからカードを2枚引き、手札のカードを1枚抜き取り、そのカードを懐にしまった。

「そして私は、《ダーク・クルセイダー》を召喚!」

修道士のフィールドに、また新たな闇の住人が姿を現した。

漆黒の鎧を纏い、血のように紅いマントと髪を靡かせ、黒の大剣を大地に突き刺した髑髏の仮面が直哉を睨みつける。




ダーク・クルセイダー
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1600/守 200
手札から闇属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
このカードの攻撃力は400ポイントアップする。




「ダーク・クルセイダーの効果発動! 手札から闇属性モンスター1体を墓地に送り、ダーク・クルセイダーの攻撃力を400ポイントアップさせる!」

修道士は最後の手札を墓地へと送る。

すると、墓地から闇の霧が漂い出て、ダーク・クルセイダーを包み込んだ。

闇の霧に包まれたダーク・クルセイダーは雄叫びをあげた。

それと同時にダーク・クルセイダーの攻撃力が上がって行った。

準備は整ったと言いたげに、修道士はフッと笑った。

その笑みに、直哉の額から汗が流れ落ちる。

「バトル! ゴーズで終末の騎士を攻撃!」

「罠発動! 《次元幽閉》! ゴーズをゲームから除外する!」

大剣を振り上げ、直哉に斬りかかろうとするゴーズの前に、異次元へと続くゲートが現れゴーズを引きずり込もうとしている。

「そうはさせません! 手札から《黒翼蝶》を墓地へ送って効果発動! 自分フィールド上の闇属性モンスターを選択し、選択したモンスターはこのターン魔法・罠の効果は受けません!」




黒翼蝶
効果モンスター
星3/闇属性/昆虫族/攻500/守500
このカードは特殊召喚できない。
このカードを手札から捨てる。
そして自分フィールド上に存在する闇属性モンスター1体を選択して効果発動する。
このターンのエンドフェイズまで選択したモンスターは魔法・罠カードの効果を受けない。





しかし、ゴーズの前に現れたゲートは、吹き荒んだ闇の突風に掻き消されてしまった。

遮るものが消えた事で、ゴーズの持つ大剣が騎士を真っ二つに切り裂いた。

《グァァァァァ!!》

終末の騎士の悲痛な叫びが部屋中に轟く。

「クッ!」


直哉 LP4000→2700


「さらに、カイエンでダイレクトアタック!」

カイエンは大地を蹴り一気に直哉の目の前へと迫る。

そして、大きく横薙ぎに刃を振るった。

「ぐぁぁ!」


直哉 LP2700→1300


切り裂かれた胸を押さえ、直哉は膝をついた。

体感した事のない激痛が身体を走り抜ける。

激痛のあまり、悲鳴すら出せない。

痛む胸を押さえ、これが闇のデュエルなのだと、直哉は実感した。

痛みに悶える直哉を見て、修道士はまたもフッと笑いを零した。

「これで終わりです。ダーク・クルセイダーで止めです!!」

修道士は右手の人差指で勢いよく直哉を指差した。

その指示を聞き、ダーク・クルセイダーは大地から大剣を引き抜き、直哉の元へと向かって行った。

そして、その手に持つ大剣を振り上げ、直哉目掛けて勢いよく振り下ろした。

これが決まれば、直哉の敗北が決定してしまう。

「罠発動! 《異次元からの帰還》!! ライフを半分払い、ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り特殊召喚する!」




異次元からの帰還
通常罠(制限カード)
ライフポイントを半分払って発動できる。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。




部屋の天井に、巨大な異次元の出入り口が現れた。

そして、異次元より2つの光が飛び出し、振り下ろされた大剣から直哉を守るように間に割って入った。

光は徐々に形を成して行き、1つはガイウスに飛ばされた異次元の女戦士の姿になり、もう1つは巨大な獣の姿、鋭利な爪を持つエイリアン、ゼータ・レティキュラントの姿になってダーク・クルセイダーの刃から直哉を守るように立ちはだかった。

「チッ! 邪魔な。構わない! ダーク・クルセイダー! 女戦士を攻撃しなさい!」

異次元からのモンスターの登場に修道士は舌打ちをした。

しかし、迷うことなくダーク・クルセイダーに指示を出した。

その指示を聞いてダーク・クルセイダーの目がギラリと紅く輝いた。

そして、振り下ろす大剣を再び振り下ろし、ダーク・クルセイダーは女戦士を容赦なく斬り捨てた。

《キャァァァァ!!》

切り裂かれた女戦士の悲鳴が轟く。

そんな女戦士に、直哉は表情を歪ませ、すまないと心の中で謝った。

「この瞬間! 女戦士の効果発動! 女戦士とダーク・クルセイダーをゲームから除外する!」




異次元の女戦士
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、
そのモンスターとこのカードをゲームから除外できる。




光となって消えて行く女戦士は、最後の力を振り絞り、持っていた剣をダーク・クルセイダーに投げつけた。

奇襲に対応できず、ダーク・クルセイダーの胸に剣が突き刺さる。

そして、2体を光が包み込み、フィールドから消えてしまった。

「そして、相手モンスターがゲームから除外された事で墓地のゼータ・レティキュラントの効果発動! 俺の場にイーバトークンを1体特殊召喚する!」

直哉の墓地から、光の球体が勢いよく飛び出してきた。

光の球体は徐々に形を成して行き、直哉のフィールドに二足歩行の小さな未確認生物が姿を現した。

「チッ、私はこれでターンエンドです」




修道士 LP2600
手札0枚
フィールド モンスター《冥府の使者ゴーズ》《カイエントークン》
魔法・罠0枚




イーバトークンの登場に修道士は忌々しげに舌を打つ。

帰還によって強制的に召喚させられたゼータ・レティキュラントが再び光の球体になり、天井に空いている異次元のゲートの中へと戻って行った。

しかし、修道士は心の中で呟いた。

「(フッ、お互いに手札はゼロですが、フィールドのアドバンテージは私の方が有利! 彼がこの状況を覆すカードを引くなど、そんな都合よくいくはずがありません)」

闇の中から直哉を見つめ、修道士は笑みを浮かべた。

「俺のターン・・・・・・」

手札ゼロ、フィールドには攻守500のトークン1体のみ、魔法・罠のセットカードもなし、向かい合う修道士のフィールドには、攻撃力2700のゴーズが1体と攻撃力1400のカイエンが1体。

そして、自分のライフは1300。

どちらで攻撃されても直哉の敗北は免れない。

絶望的な状況に、カードをドローする直哉の手に震えが走る。

今までのデュエルとは違い、このデュエルで負ければ、自分は“死ぬ”。

初めて感じる死への恐怖。

恐怖が精神を汚染していき、直哉の全身を震えが襲った。

その時だった。

「直哉!!」

「ッ!?」

自分の後ろで叫ぶ雪鷹の声を聞き、直哉は後ろを振り返る。

「諦めるな!!」

「ッ!」

何気ない声援。

誰でも言える言葉。

でも、不思議と自分を包み込んでいた恐怖が消えていた事に直哉は気がついた。

「(そうだな・・・・・。そうだよな! 俺にはまだ、ライフが残ってる!)」

雪鷹の声援で、直哉の瞳に炎が灯る。

「フッ、何をしても無駄ですよ。貴方の手札はゼロ。フィールドには無力なトークンが1体。対する私のフィールドには、ゴーズとカイエンの2体がいます。どう足掻いても、貴方の勝利はあり得ませんよ」

そう言って修道士は直哉を嘲笑った。

しかし、その言葉が、直哉の中の闘士を更に燃え上らせた。

「俺のターン! ドロー!!」

覇気を感じさせる直哉の叫びが部屋に木霊する。

直哉の勝利を否定した修道士は固唾を飲んだ。

ドローした大勢のまま直哉は沈黙し固まった。

沈黙し固まる直哉の姿を見て、修道士は自身の勝利が確定したと思い笑みを零した。

「ハ、ハハハ、ハハハハハハ! やはり引けなかったようですね! これで、私の勝利です!!」

狂ったように笑いだす修道士。

そんな時、俯く直哉の口が、弧を描いた。

「魔法カード発動! 《天よりの宝札》!!」

「なッ!? なに!?」

直哉は引いたカードを天に掲げた。

直哉の言葉に、修道士の笑みが消え、焦った叫びが部屋に響き渡った。

闇が漂う部屋に天から光が降り注ぐ。

邪悪な闇を切り裂き、希望の光が部屋を満たして行く。

強烈な輝きに、修道士は腕で顔を覆った。




天よりの宝札
通常魔法
このカードはメインフェイズのはじめにしか使用できない。
互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードを引く。




両者の手札は互いにゼロ。

2人はデッキからカードを6枚ドローする。

「(クッ! 天よりの宝札には驚きましたが、依然として私の有利に変わりはありません。それに、この手札なら、彼などいつでも始末できますしね)」

直哉の驚異的な引きに修道士は一瞬驚くが、手札の6枚を見て闇の中で大きく口が弧を描いた。

しかし、直哉の口も弧を描いている事に、修道士は気が付いていなかった。

「行くぜ! 俺は、魔法カード《ブラック・コア》を発動! 手札を1枚捨て、フィールド上の表側表示モンスター1体をゲームから除外する! 俺は、ゴーズを除外する!」

「なに!?」




ブラック・コア
通常魔法
自分の手札を1枚捨てる。
フィールド上の表側表示のモンスター1体をゲームから除外する。




直哉がゴーズを指差すと、ゴーズの真上に、漆黒の球体が現れた。

球体は蒼い電流を走らせ、中で闇が渦を巻き蠢いていた。

球体は生きてるようにゴーズに近づき、蠢く闇がゴーズを飲みこもうとしている。

ゴーズは大地に剣を突き刺し吸い込まれまいと耐えるが、ゴーズの身体が宙に浮き、大地に突き刺している大剣が抜け、ゴーズは球体の中へと消えて行った。

「相手モンスターがフィールド上から除外された事で、墓地に存在するゼータ・レティキュラントの効果発動! 俺の場にイーバトークンを特殊召喚する!」

直哉のフィールドに新しいイーバトークンが現れた。

それも、“2体”。

「何故イーバトークンが2体も!? ッ! 成程。さっきのブラック・コアの時に!」

2体現れたイーバトークンに一瞬、修道士は驚愕の声を上げたが、直ぐに理解し直哉を睨みつけた。

修道士の言葉に直哉はニヤッと不敵に笑った。

「その通り! そして、俺は魔法カード《冥界からの宝札》を発動!」

直哉が冥界の宝札を発動した瞬間、傍観している雪鷹の口が弧を描いた。

やっとエンジンがかかって来たかと、雪鷹は心の中で呟き、微笑みながら直哉を見つめた。

「行くぜ! 俺は、2体のイーバトークンをリリースし、《異次元エスパー・スター・ロビン》を召喚!!」

2体のイーバトークンが天へと舞い上がり、天井に異次元へのゲートを開かせた。

再び開いたゲートより、漆黒の流星が直哉のフィールドに舞い降りた。

黒の粒子を振り払い、鐡の身体に纏う漆黒のマントを靡かせ、深紅の瞳が修道士を捉えギラリ輝かせ、左手に持つ黒い鞭を撓らせる。




異次元エスパー・スター・ロビン
効果モンスター
星10/光属性/戦士族/攻3000/守1500
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
他の自分のモンスターを相手はカードの効果の対象にできず、
攻撃対象にもできない。
また、このカードが墓地に存在する場合、
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを墓地から表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
「異次元エスパー・スター・ロビン」はフィールド上に
1体しか表側表示で存在できない。




「この瞬間! 冥界の宝札の効果発動! 2体以上のリリースを必要とするモンスターのアドバンス召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローする!」

デッキからカードを2枚ドローし、引いたカードを確認した直哉はよし、と笑みを浮かべた。

「バトル! ロビンでカイエンに攻撃! ビック・リパンチ!!」

ロビンは右手に拳を作り、天に向ける。

そして、ロビンは右手に力を込め、カイエンに向かって右手を勢いよく突き出した。

すると、突き出された右手の拳から巨大な漆黒の拳の幻影が放たれた。

幻影の拳は、何物にも阻まれること無くカイエンに届き、カイエンは悲鳴を上げながら吹き飛ばされ散って行った。

「クッ!」


修道士 LP2600→1000


カイエンを破壊した衝撃が修道士を襲う。

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!」




直哉 LP1300
手札4枚
フィールド モンスター《異次元エスパー・スター・ロビン》
     魔法・罠 セット2




「私のターン、ドロー! フフフ、後悔させてあげますよ。私の手札を増やしてしまった事をね!」

手札を見ながら修道士は不敵な笑みを浮かべた。

「私は、手札から魔法カード《サイクロン》を発動! 右のセットカードを破壊します!」

渦巻く疾風が吹き荒び、直哉の右側のセットカードに向かって行った。

何もできずそのセットカードは疾風の餌食となった。

破壊されたのは罠カード《光霊術-聖-》だった。

「そして、私は手札からD.D.クロウを2体墓地に捨て、貴方の墓地のゼータ・レティキュラント2体をゲームから除外します!」

修道士の墓地から再び烏が飛び出し、2羽の烏は直哉の墓地に飛び込み、2枚のカードを咥えて異次元へと消えて行った。

しかし、直哉は平常を崩さなかった。

それが気にいらなかったのか、修道士はチッと舌を打った。

しかし、修道士は手札を見て笑みを浮かべた。

微かに聞こえてきた笑い声に、直哉は何か来ると身構えをした。

「私は、《闇王プロメテウス》を召喚!」

大地から闇が溢れ、その闇の中で雷が轟く。

闇の風に吹かれ、血の様に紅いローブが闇の中で靡く。

血のローブを纏い、雷を轟かせ、闇の底より漆黒の王が姿を現す。




闇王プロメテウス
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守 800
このカードの召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する闇属性モンスターを任意の枚数ゲームから除外する。
このターンのエンドフェイズ時まで、この効果で除外したカード1枚につき、
このカードの攻撃力は400ポイントアップする。




「闇王プロメテウスの効果発動! 自分の墓地に存在する闇属性モンスターを任意の枚数ゲームから除外する事で、このターンのエンドフェイズ時まで除外したモンスター1体につき攻撃力を400ポイントアップする! 私は、墓地のD.D.クロウ3体と終末の騎士、ゴーズの5体をゲームから除外する! よって、プロメテウスの攻撃力は2000ポイントアップする!」

地を漂う闇がプロメテウスに力を与えて行く。

雷は紅く輝き、闇の王の咆哮が部屋に轟く。


闇王プロメテウス攻撃力1200→3400


プロメテウスの攻撃力がロビンの攻撃力を超えた。

「バトルです! プロメテウスでロビンに攻撃! タルタロスの業火!!」

プロメテウスの周りを漂う闇が紅く染まって行き、火の粉を辺りに撒き散らす。

紅蓮の炎となりし闇を操り、プロメテウスはロビンを指差した。

業火の大蛇はロビン目掛けて一直線に向かって行き、その大口でロビンを飲みこんだ。

炎に呑まれ、奈落の業火に焼かれるロビンの悲痛な叫びが木霊する。

そして、ロビンの消滅と同時に炎も四方に爆散していった。

散って行く火の粉と爆風が直哉を襲う。

「グッ!」


直哉LP1300→1100


「私はカードを2枚セットして、ターンエンドです」




修道士LP1000
手札2枚
フィールド モンスター《闇王プロメテウス》
     魔法・罠セット2




プロメテウスの周りを漂う闇が消えて行く。

それに伴い、プロメテウスの攻撃力も元に戻る。


闇王プロイテウス攻撃力3200→1200


「俺のターン、ドロー! リバースカードオープン! 《異次元からの埋葬》! ゲームから除外されているレティキュラント3体を墓地に戻す!」

直哉はポケットに入れていたレティキュラントのカードを3枚すべて墓地に戻した。

再び墓地にレティキュラントが戻った事に修道士は舌を打つ。

「そして、俺は墓地の終末の騎士と聖導騎士イシュザークをゲームから除外し、《カオス・ソーサラー》を特殊召喚する!」

直哉の墓地から光と闇の魂が飛び出し、直哉のフィールドに舞い降りた。

2つの魂は1つに重なり合い、フィールドに漆黒の魔法使いが姿を現した。

左手に闇を纏い、右手に光を纏う混沌の魔術師が妖しい微笑みを浮かべる。




カオス・ソーサラー
効果モンスター(制限カード)
星6/闇属性/魔法使い族/攻2300/守2000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを
1体ずつゲームから除外した場合に特殊召喚できる。
1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体を選択してゲームから除外できる。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。




「いつの間にイシュザークを・・・・。ッ! そうか、手札断殺の時に」

忌々しげに呟く修道士。

「カオス・ソーサラーの効果発動! プロメテウスゲームから除外する!」

カオス・ソーサラーは両手を天に掲げ、光と闇を混ぜ合わせ呪文を唱える。

「そうはさせません! 罠カード発動! 闇の幻影! カオス・ソーサラーの効果を無効にし、破壊します!」

再び吹き荒む闇の風。

呪文を唱えるカオス・ソーサラーが呻き声を上げ消えて行った。

「クッ、なら、俺は《異次元の女戦士》を召喚する! バトル! 女戦士でプロメテウスを攻撃!」

直哉のフィールドに光が溢れ、その光の中から、女戦士が勢いよく飛び出して行った。

飛び出した女戦士は右手に持っている剣を振り上げ、プロメテウスを真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれ、光の輝きに浄化され、闇の王は塵となって消えて行った。

「グゥ!」


修道士 LP1000→700


光の輝きに照らされ、修道士は苦しみの声を上げた。

そして、上半身が力なく項垂れた。

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!」




直哉 LP1100
手札1枚
フィールド モンスター《異次元の女戦士》
     魔法・罠セット2




「・・・・やがったな」

「ん?」

修道士の呟きに、直哉は耳を傾けた。

すると、修道士は豹変したように叫び声を上げた。

「やりやがったな!! 糞餓鬼!!」

「ッ!?」

先程とは違う修道士の口調に直哉は驚きを隠せなかった。

「俺のライフをここまで削りやがって、ぶっ殺してやるよ! 俺のターンドロー!!」

激昂した修道士は乱暴にデッキからカードをドローする。

闇の中から充血した眼が紅い輝きを放っていた。

「俺は、《ダーク・グレファー》を召喚!」




ダーク・グレファー
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1600
このカードは手札からレベル5以上の闇属性モンスター1体を捨てて、
手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てる事で、
自分のデッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。




修道士の場に漆黒に染まった嘗て英雄を謳われていた剣士が現れた。

その瞳は血に染まって様に紅く輝いていた。

「ダーク・グレファーの効果発動! 手札の闇属性モンスターを墓地に送り、デッキから闇属性モンスターを墓地に送る! 俺は、終末の騎士を捨ててネクロ・ガードナーを墓地に送る! バトル! ダーク・グレファーで女戦士を攻撃!

ダーク・グレファーは大地を蹴り、漆黒の剣を振り上げ、女戦士目掛けて振り下ろした。

女戦士は持っている剣で応戦するが、剣ごと切り裂かれてしまった。

悲痛な叫びを轟かせながら光となって散布して逝った。

散って行った光の欠片が直哉を襲う。

「クッ!」


直哉 LP1100→900


「女戦士の効果でダーク・グレファーをゲームから除外する! そして、俺のフィールドにイーバトークンを3体特殊召喚する!」

直哉の墓地から3つの光の球体が飛び出し、その光は徐々に形を成して行き、獣の様な容姿、鋭利な牙と爪を持ったレティキュラントの幼体が可愛らしく咆哮を上げた。

先程までの修道士なら、イーバトークンの登場にも平常を保っていたが、今の修道士には直哉のプレイングの1つ1つが癪に障るようで、額に青筋がドンドン浮かんでいく。

「チッ!! 邪魔な屑モンスターが!! 俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

血走って紅く輝く目で修道士は獣の様な唸り声を上げながら直哉を睨みつけた。




修道士 LP700
手札0枚
フィールド モンスター0
     魔法・罠セット2




「俺のターン、ドロー!」

突然の修道士の豹変に直哉は驚愕したが、直ぐに平常心を取り戻し冷静に手札とドローカードを確認する。

「俺は、魔法カード《強欲な壺》を発動! デッキからカードを2枚ドローする!」

強欲な壺の発動に修道士は何度目かの舌打ちをした。

そんな修道士を気にせず、直哉はドローしたカードを確認する。

「2体のイーバトークンをリリースし、《光神機‐轟龍》をアドバンス召喚する!」

直哉のフィールドが光に包まれ、大地から轟音を轟かせ巨大な機械天使が姿を現した。

黄金に輝く水晶を守るように包み込んでいる純白の装甲。

天使を想わせる2対の翼。

そして龍を想わせる長い胴体に鋭利な爪を持つ手足。

天使が作りし破壊の天使、轟龍がとぐろを巻き直哉のフィールドに降臨した。

「轟龍の召喚に成功したので、冥界の宝札が発動! 俺はデッキからカードを2枚ドローする! バトル! 轟龍でダイレクトアタック!! 光神の逆鱗!!」

轟龍は咆哮を上げ、修道士に向かって尻尾を振り上げ勢いよく振り下ろす。

「そうはさせるかよ! ネクロ・ガードナーをゲームから除外して攻撃を無効にする!」

修道士は墓地のネクロ・ガードナーを懐にしまう。

振り下ろされる轟龍の尻尾から修道士を守るようにネクロ・ガードナーの幻影が間に入り、轟龍の攻撃を自身の身体で受け止めた。

「俺はこれでターンエンドです」




直哉 LP900
手札4枚
フィールド モンスター《光神機‐轟龍》
    魔法・罠セット2




攻撃が防がれた事に直哉は動じることはなかった。

何故なら、直哉の目的は邪魔なネクロ・ガードナーを処理する事にあったのだから。

「俺のターンドロー! この瞬間! 罠カード発動! 《闇の報酬》!!」

「闇の報酬?」

自分の知らないカード名に直哉は首を傾げる。

「ゲームから除外されている自分のモンスターが闇属性のみの場合、デッキからカードを2枚ドローする! 俺がゲームから除外しているモンスターは全て闇属性! よって、2枚ドロー!」

闇の報酬の効果を見て、直哉は目を大きく見開いた。




闇の報酬
通常罠
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。
自分のゲームから除外されているモンスターが闇属性のみの場合、デッキからカードを2枚ドローする。




カードをドローした修道士はフッと笑みを零した。

そして、紅く光る眼で直哉を見据えた。

「更に! 罠カード発動! 《墓穴の呼び声》! このカードは、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にのみ発動できる! デッキから闇属性モンスターを3体まで墓地に送る! 俺は、ダーク・クルセイダーと黒曜岩竜の2体を墓地に送る!」

デッキから2体のモンスターを墓地に送り、修道士はニヤッと闇の中で笑みを浮かべた。

その事と修道士の墓地を見て、直哉の額に汗が滲み、不味いと心の中で焦り声を上げた。

「行くぜ! 俺の墓地に闇属性モンスターが3体のみの場合! こいつを特殊召喚する事が可能になる! 現れろ! ダーク・アームド・ドラゴン!!」

大地が大きく振動する。

地響きを轟かせながら、床を漂う闇の海から、巨大な風が浮上していきた。

力なく項垂れているそれは、両腕を大きく振るい自分を覆う闇を吹き飛ばした。

漆黒に染まったその巨体から刺々しい突起物がキラリと光る。

「グワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

解放された事を喜ぶようにそれは大きく咆哮を上げた。

部屋中が揺れ動く。

この場に居る3人の鼓膜に響き渡る。

漆黒の龍がその瞳に直哉を捉える。




ダーク・アームド・ドラゴン
効果モンスター(制限カード)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。
自分のメインフェイズ時に自分の墓地の闇属性モンスター1体を
ゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。




「罠発動!! 《奈落の落とし穴》!! ダーク・アームド・ドラゴンをゲームから除外する!」

「させるかよ! 手札から《闇の従者》の効果発動! このカードを捨てる事でこのターン自分フィールド上の闇属性モンスターは魔法・罠の効果を受けない!」

「何!?」




闇の従者
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻撃力0/守備力0
このカードの効果はデュエル中、1回しか使用できない。
このカードを手札から捨てる事で、自分フィールド上の闇属性モンスターは魔法・罠の効果を受けない。




表になった奈落の落とし穴のカードが色を失って行き、バラバラと崩れ落ちて行った。

直哉は苦悶の表情を浮かべる。

その表情を見て修道士は快感を覚えたような笑みを浮かべる。

「行くぜ! 行くぜ! ダーク・アームド・ドラゴンの効果発動! 墓地の闇属性モンスターをゲームから除外する事で、相手フィールド上のカードを破壊する! 俺は闇の従者を除外して轟龍を破壊する!」

ダーク・アームド・ドラゴンの背から漆黒の刃が勢いよく飛び出し、轟龍を真っ2つに切り裂いた。

音を立てて轟龍は崩れ去って行った。

「まだだ! クルセイダーを除外して、そのセットカードを破壊する!」

再びダーク・アームド・ドラゴンの背中から漆黒の刃が飛び出し、直哉のセットカードを切り刻んだ。

「最後に! 黒曜岩竜を除外してイーバトークンを破壊する!」

またも飛び出したダーク・アームド・ドラゴンの漆黒から刃が今度はイーバトークンを真っ2つに切り裂いた。

爆風が直哉を襲う。

煙が晴れると、直哉のフィールドはがら空きになってしまった。

それを見て修道士が下品な笑みを浮かべた。

「俺の勝ちだ!! ダーク・アームド・ドラゴンでダイレクトアタック!! ダーク・アームド・パニッシャー!!」

ダーク・アームド・ドラゴンは右腕を高らかに掲げる。

辺りを漂っていた闇がその右腕に集まって行く。

漆黒の光を放つ闇の巨腕を振るい、ダーク・アームド・ドラゴンは直哉目掛けて勢いよくその腕を振り下ろした。

これが決まれば直哉は敗北が決まり、闇のゲームのルールにより死んでしまう。

しかし、そんな状況でも雪鷹は焦る素振り1つ見せず静かに事の顛末を見届けている。

当人の直哉でさえ、焦る素振りを見せない。

巨腕がドンドン直哉に近づいて行く。

その時、直哉が動いた。

「墓地のロビンの効果発動! 相手プレイヤーが直接攻撃宣言をした時、このモンスターを墓地から守備表示で特殊召喚する!」

直哉へと向かって行くダーク・アームド・ドラゴンの巨腕の前に、漆黒のHERO、ロビンが光と共に現れ、攻撃から直哉を守ろうとしていた。

「チッ!! 邪魔な屑が!! 構わない! ダーク・アームド・ドラゴン!! そいつを殺っちまえ!!」

ロビンの再登場に修道士は忌々しげに言葉を吐き捨てる。

しかし、ダーク・アームド・ドラゴンはその巨腕を止めることなくロビンを再び葬った。

「ウワァァァァァ!!」

ロビンの悲痛な叫びが木霊する。

そして爆風が直哉を襲う。

「クッ!」

「俺はこれでターンエンドだ! さぁ、足掻いて見やがれ! どうせ無駄だろうがな!」

そう言って修道士は直哉を嘲笑った。

部屋に修道士の高笑いが木霊する。

「俺のターン、ドロー!」

しかし、直哉の瞳には未だ闘士が燃え盛っていた。

そして、ドローしたカードを見て、直哉の口が弧を描いた。

その様に修道士の笑みが止まった。

「俺は魔法カード《ブラック・コア》を発動! 手札を1枚捨て、ダーク・アームド・ドラゴンをゲームから除外する!」

「何!?」

2枚目のブラック・コアの発動に修道士は驚愕の声を上げた。

再び黒の球体が出現し、ダーク・アームド・ドラゴンを闇の中へと飲み込んで行った。

ダーク・アームド・ドラゴンの消失に修道士は唖然とした。

「アンタのモンスターがフィールド上から除外された事で、俺のフィールドにイーバトークンを3体特殊召喚する」

直哉のフィールドにイーバトークンが3体現れる。

リリース要員は集まった。

そう言いたげに直哉は微笑んだ。

「行くぜ! 俺はイーバトークンを2体リリースし、《銀河眼の光子竜》をアドバンス召喚する! 降臨せよ! 銀河眼の光子竜!!」

光に包まれ、2体のイーバトークンが天へと昇って行く。

2つの球体は1つに重なり合い、青色の閃光を放った。

青の光は闇を切り裂き、部屋に星たちの輝きを射し込ました。

蒼の球体が消えて行き、その中から蒼翼が大きく広がり、燦然と輝く瞳が修道士を捉えると、ダーク・アームド・ドラゴンの咆哮を遥かに陵駕する咆哮が部屋に轟く。

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」




銀河眼の光子竜
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードは自分フィールド上に存在する
攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースし、
手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、
その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。
この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。
この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、
このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターを
ゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。




銀河眼の眼光に威圧される修道士だが、自分の墓地に存在するネクロ・ガードナーがいる、そしてイーバトークンでは自分のライフを削りきれないと安心感を抱いていた。

しかし、そんな修道士の希望が崩れて行く音が聞こえてきた。

「そして魔法カード発動! 《死者蘇生》!! 俺が蘇生させるのは、アンタの墓地の“ネクロ・ガードナー”だ!!」

「・・・・・・へ?」

素っ頓狂な声を洩らす修道士を余所に、直哉のフィールドにネクロ・ガードナーが妖しげな笑みを浮かべながら現れた。

そして、直哉は笑みを浮かべ、修道士に告げた。

「これで、アンタの守りは完全に無くなった」

修道士の額を汗が流れ落ちる。

固唾を飲む音が部屋に木霊する。

「あ、あぁ、あぁぁぁぁ」

声にならない修道士の声が部屋に響き渡る。

そんな修道士の様を見て、直哉は微笑んだ。

「銀河眼の光子竜でダイレクトアタック!! 破滅のフォトン・ストリーム!!」

銀河眼の口がゆっくりと開いて行き、光が口内に集まって行く。

光を飲みこんだ銀河眼はて勢いよく光の閃光を解き放った。

青白い閃光が修道士を直撃した。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


修道士 LP700→0


衝撃で巻き起こった突風が修道士のフードを吹き飛ばした。

その事で修道士の顔が光に照らされて顕わになった。

その素顔は最初の口調に似合わずとても醜いものだった。

悲鳴と恐怖、涙や鼻水でグチャグチャになったその顔は、まさに惨めという言葉が当てはまるだろう。

「こんな、こんなはずじゃなかった! 話が違うじゃないか! 俺の相手は、雑魚のはずじゃなかったのかぁぁぁぁぁぁ!」

閃光の中で修道士は意味有り気な言葉を残し、消え去ってしまった。

修道士が立っていた所には、修道士が使っていたデュエルディスクとデッキが散らばっていた。

モンスターたちが消えた部屋の中で、雪鷹は修道士の使っていたディスクとデッキを拾い上げた。

その後ろで、直哉は緊張の糸が切れ、その場に座り込んでしまった。

「ハァ、ハァ、ハァ、生きて、るんだよな」

座り込んだ直哉は自分の両手を凝視した。

自分が勝利し、生きている事を再確認した。

乾いた笑みが零れる。

初めて体験した生と死を掛けた戦い。

デュエルが終わり、デュエルに勝利した途端に、全身を震えが襲った。

恐怖。

遊び感覚でいたデュエルで初めて死の恐怖を体験した。

もし負ければ、死んでいたかもしれない。

そう思うと、恐怖が直哉を支配していく。

しかし、直哉は拳を強く握りしめ、そして再確認した。

命をかけたデュエル、それでは手を抜けば本気で死んでしまう。

新たに直哉の心に決意の炎が灯った。

それを見ていた雪鷹も、心の中で覚悟した。

直ぐにでも自分に訪れる死の恐怖に対する覚悟を。

そう思いながら、元気な直哉の姿を見て雪鷹はホッと安心した。

そんな時だった。

《そろそろ行かなくていいの?》

雪鷹の傍でダルキーがそう言った。

その言葉で2人は、あっと声を上げ、当初の目的を思い出して部屋を飛び出して行った。

飛び出して行った2人を見てダルキーは溜息を吐き、出て行った2人の後を追って行った。



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息を切らせて2人がタイタンのいる部屋に戻ると、既にデュエルが中断され、フィールドに黒い塊たちが蠢いていた。

突然の事に全員がパニックになっていた。

「何やってるんだ! 逃げるぞ!」

パニックに陥っていた全員を直哉が一括する。

その一声で全員は我に返り、直哉の方を見た。

「た、助けてくれ!!」

腰を抜かせてタイタンはその場を動けずに助けを求めていた。

「チッ!」

仕方ないというように舌を打ち、直哉はタイタンの元へと駆けだして行った。

「直哉君!?」

「直哉!?」

駆け出して行った直哉を見て翔と隼人は目を見開く。

駆ける直哉の前に黒の塊たちが行く手を遮る。

そんな直哉をサポートするように雪鷹がダルキーを向かわせる。

ダルキーが近づき、黒の塊たちは怯えたように散り散りになって離れて行く。

道が開けた事で、直哉は一直線にタイタンの元へと駆けよる。

「掴まれ!」

「ッ!? あ、あぁ!」

直哉の救いの手に一瞬タイタンは目を見開くが、すぐにその手を取り、直哉と共に出口に向かって行った。

「待てよ! 直哉!」

走る直哉の後を、眠る明日香を背負った十代が追いかけて行く。

4人の前にまたしても黒の塊たちが行く手を遮るが、雪鷹のダルキーと十代のハネクリボーがその道を開かせた。

塊の群衆を抜け出した面々は、全速力で廃寮の外へと向かって行った。

走る脚で埃が舞い上がる。

けたたまし足音が廃寮内に響き渡る。

「あ! 外ッス!」

外の光を見つけ、翔は嬉しそうな声を上げる。

月の光が輝く出口に向かって全員は走り込んで行った。

廃寮を出てしばらくした森の中で、直哉たちは足を止めその場にへたり込んだ。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、皆大丈夫か?」

息を切らせながら、十代が全員の顔を見渡す。

「ハァ、ハァ、ハァ、大丈夫ッス」

走りつかれその場に大の字になっている翔が肩で息をしながら答えた。

「俺も、なんだ、な」

途切れ途切れに、座り込んだ隼人も答える。

「問題ない」

「右に同じく」

全員が息を切らしている中、早くに回復した直哉と雪鷹も答える。

体力の回復が早い事に翔と隼人が少し驚いた。

「そ、それより、なんでそいつを助けるんスか!? 直哉君!」

翔は直哉の傍らで座り込んでいるタイタンを指差し叫んだ。

指を差されたタイタンは身体を大きく跳ねさせ、何も言えず口ごもってしまった。

「別に、理由なんてない」

「へ?」

直哉の言葉に、雪鷹以外の全員が素っ頓狂な声を上げる。

その全員の反応に直哉は面倒臭そうに頭を掻いた。

「こいつがやった事は確かに許される事じゃない。でも、あの局面でこいつを身捨てていい理由にはならない」

「直哉君・・・・・」

直哉の言葉に、翔たちは先ほどまでの自分を叱責したいと心の中で思った。

「すまない」

唐突にタイタンが十代たちに頭を下げた。

突然の事に十代たちは目を見開き、タイタンを凝視した。

「私は、元々マジシャンをやっていた。しかし、スランプに陥り客足を落としてしまい、自暴自棄になって私はイカサマデュエルをやり始めた。初めてやった時に大成功してしまい、味をしめてもう一回と繰り返して行くうちに、完全にこの世界に染まってしまっていた」

タイタンは己の過去を淡々と語り出した。

十代たちはタイタンの話をただ黙って聞いていた。

「今回も依頼をもらい、この島で遊城十代を倒してくれと頼まれた。しかし、今回の事で身に沁みた。私は今日でこの世界から足を洗う事にする」

迷惑をかけてすまないとタイタンは十代たちに頭を下げた。

犯罪から足を洗うと決意したタイタンに十代たちは嬉しそうな表情を浮かべる。

そして、タイタンはつけていた仮面を取り、素顔を十代たちに見せた。

その素顔は、とても優しそうなおじさんだった。

月が照らす森が立ち並ぶ道。

罪を償うと決めた男とそれを応援する少年たちを見ながら、直哉と雪鷹は自分たちが出会ったイレギュラーの事を思い出していた。

『こんな、こんなはずじゃなかった! 話が違うじゃないか! 俺の相手は、雑魚のはずじゃなかったのかぁぁぁぁぁぁ!』

修道士が最後に言ったあの言葉。

話が違う。

一体、誰が自分たちの事を話したのだろうかと、2人は天を仰いだ。

そして、そんな2人が見上げる満月に、2人をこの世界に送りこんだ女の姿が映り出す。

観世音となのった純白の女の姿が・・・・・・。

To be continued
 
 

 
後書き
いかがでしたか?

今回のオリキャラ修道服の男。

キャラクターの声のイメージは、子安武人さんです。

こう言ったオリジナルの敵は、今後も登場する予定です。

そこで、読者の皆様に、こう言った性格の敵が見たいというアンケートを募集します!

皆様な感想待ってますね! 
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