ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
十九話:また、会いましょう
モモ救出から一夜が明けて、いよいよ今日はビアンカちゃんとお別れです。
町を回ったときに目を付けておいたお菓子屋さんで、サンチョへのお土産も、しっかり買いました!
サンチョは自分で作るのも上手いんだけど、研究熱心だからね!見慣れない料理とかお菓子とか見ると、顔つきが変わるんだよね!
これを研究してもらうことによって私のおやつタイムが更に充実……って、自分のためみたいじゃないか!
サンチョが!
喜んでくれるんです!!
「パパスさん、ドーラちゃん!あんたたちに限って心配はいらないだろうけど、気を付けて帰るんだよ!」
「本当に、世話をかけたね。村の皆さんにも、よろしく伝えておくれ」
ビアンカママンとダンカンさんが、和やかに見送ってくれます。
対して、ビアンカちゃんは。
「ドーラ!元気でね!私のこと、忘れないでね!」
目がウルッウルです。
ちょっと間違うと完全に泣きますね、これ。
涙で感動的なお別れというのも悪くは無いんだが、これを十年間引きずるわけなので。
できれば、笑顔でお別れといきたいものです。
「わたしは、わすれませんよ!ビアンカおねえさんこそ、まちで、たくさんのおともだちと、いっしょで。わたしのことなんか、すぐ、わすれちゃうんじゃないですか?」
ちょっと拗ねた感じで言うのに、ビアンカちゃんが反応します。
「なっ!私のほうが、二つもおねえさんなのよ?ドーラが覚えてて、私が忘れるわけないでしょ!」
「わたしは、もっとちいさかったのに、おぼえてましたから!としは、かんけいないです!」
「……それでも!私が、ドーラを、忘れるわけないでしょ!」
「それなら、わたしだって!ビアンカおねえさんを、わすれるわけないです!」
言い合ってるうちに涙がどっかにいった様子のビアンカちゃんが、ちょっと黙って苦笑します。
「……もう!初めは、すごく可愛くて、守ってあげたいって思ったのに!生意気なんだから!」
将来に備えて、徐々にシフトしていきましたからね!
必要に駆られた部分も大きいけど!
「……うん。私は、絶対に、忘れないから。ドーラも、本当に、忘れないでね?」
「はい!もちろんです!」
「それじゃ、これ。お気に入りのリボンだけど、ドーラにあげる。付けてあげるね!」
ビアンカちゃんが、自分の髪を結んでいたリボンをほどき、私の髪に結んでくれます。
……ん?
私に、結んでくれるの?
「片方だけ残っても、困るわね。モモちゃんにも、付けてあげるね!」
髪を両サイドでおさげにしていたもう片方のリボンもほどき、モモの首にも結んでくれます。
そうか、二本あったね!
この子も賢いからそんなの無くても覚えてそうな気はするが、野生に返ったらどうなるかわからないしね!
別れ際にむしり取るなんて無茶な展開にも、しなくて済むね!
「モモちゃんとお別れするのも、さみしいけど。モモちゃんはドーラのほうが好きみたいだし、村には他の子供がいないのよね?ドーラと、一緒にいてあげてね!」
「ニャア!」
おとなしくリボンを結ばれていたモモが、キリリとした表情でビアンカちゃんにお返事します。
……幼女と小動物に、心配されるとか……。
いいんですけどね、別に。
愛を、感じるよね、うん。
「ありがとうございます!だいじにしますね!」
例の宝玉は記念にはできないので、これを記念の品として、本当に大事にしますね!
「うん。私も、ドーラにもらったムチと盾と、ヘアバンド。大事にするからね!」
「はい!わたしも、おそろいのヘアバンド。だいじにしますね!」
ビアンカちゃんは、返してくれようとしたんですけどね。
折角なので、押し付けておきました!
きちんと手入れすれば、長く使えるものだからね!
ビアンカちゃんなら、十年もたせてくれそうだよね!
話の区切りがついたのを見て取って、パパンが声をかけてきます。
「ドーラ。名残惜しいだろうが、そろそろ行くか」
「はい!」
サンチョが待ってるし、ダンカンさんたちは宿のお仕事もあるからね。
あまり引っ張りすぎるのも、良くないね。
パパンの後に着いてモモを引き連れ、アルカパの宿を出発します。
「ドーラ!元気でね!また、会おうね!」
折角引っ込んでた涙をまた滲ませて、ビアンカちゃんが手を振ってます。
笑顔で、手を振り返します。
「ビアンカおねえさん!ないたら、キレイなのが、だいなしですよ!わらってください!」
ビアンカちゃんの顔が、泣き笑いのようになります。
「泣いてないわよ!ホントに、生意気ね!」
「ごめんなさい!ビアンカおねえさん、それじゃ、また!」
「うん、またね!」
たぶん、十年後に。
また、会いましょう!
昼間なのでしっかり起きている門番さんにも見送られ、アルカパの町を出ます。
町を出たところで、パパンが口を開きます。
「ドーラ。村までは、そう遠くも無いが。今日からは、少し戦ってみるか」
おお!
そういや、そんな話もしてましたね!
パパン監督の下で戦闘の経験を積めるなら、それはありがたい限りですけれども!
「はい!おねがいします!」
頭で納得したからって、そう簡単にいくものかどうか。
あまり期待はし過ぎないようにしましょう!
スパパパン!といい音を立てて、魔物たちがスライスされてます。
太刀筋がいいから、音が違うよね!
ベチャッ!とか、グチャッ!とか、言わないもんね!
パパンが、気まずそうに振り返ります。
「……すまない、ドーラ」
うん、大丈夫。
わかってたから。
「だいじょうぶです!まものがでるのは、いっかいだけじゃ、ないですから!」
トラウマっぽくなってるものが、そんな簡単に解消されるわけが無いっていうね!
「……わかってはいるんだがな。体が、勝手に」
「わたしは、だいじょうぶです!むりにとめて、おとうさんがけがをするよりは、いいです!」
この辺の魔物に攻撃されたところで、パパンが怪我するとも思えないが。
かすり傷から毒くらいなら、受けるかもしれないよね!
ドーラちゃんのフォローにも、まだ複雑そうな顔のパパン。
目の前で戦わせなければ、たぶんまた脱け出すわけですからね!
愛娘が!
色々と葛藤が発生しているらしいのが変化の少ない表情からも見て取れますが、こうなるのがわかっていた以上、私のやるべきことはひとつ!
パパンを出し抜いて、魔物を攻撃する!!
私もだいぶ気配とかわかるようにはなってきたけど、パパンにはまだまだ及ばないわけで。
遠距離攻撃のブーメラン持ちとは言え、パパンを出し抜くなんてのは、並大抵のことでは無いわけですが。
パパンの、トラウマ克服のため!
必要な事実の積み重ねの一環として!
やらねば、なるまい!!
「……すまない、ドーラ」
「……いいんです、おとうさん」
出し抜けませんでした。
村に、着いてしまいました。
……簡単にはいかないと、思ってたけどさ!
パパン、速すぎ!
出し抜けねえっつの!!
私も結構、強くなったと思ってたのになあ。
まだまだか、やっぱり。
「……まものとは、たたかえなかったけど!けはいをよむのの、れんしゅうが、たくさんできました!」
実際、いい経験にはなりました。
……この経験を生かして、次は、次こそは!
パパンの目の前で、魔物を、倒してみせる!!
と決意も新たに、軽い敗北感を噛み締めつつ、気持ちしょんぼりしてるパパンと、なんかまたキリッとしてるモモと一緒に、家路につくドーラちゃんなのでした。
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