駄目親父としっかり娘の珍道中
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第29話 子を叱るのは親の務め、親を叱るのは子の義務
何と言うか、流石の新八でも表現し難い状況が目の前にあった。折角アースラの緊急戦闘形態により時の庭園の迎撃システムと外周を張っていた強固な結界をどうにか打ち破り内部へ侵入出来るようになった。
しかし、折角の好機を新八が作ったと言うのに、肝心の銀時達と言えば、巨大なシェイカーに直に振らされた状態に陥っていた。
全員がほぼグロッキー状態になっており、戦う前から瀕死の状態にほぼ近い状態になっているのは間違いない。
「あの……何か、すみませんでした」
反射的に新八は謝罪の言葉を述べた。原因はどうあれ、こんな状況に陥れたのは他ならぬ自分と言っても過言じゃないのだから。
まぁ、新八自身もちょっと調子に乗っちゃったのは言うまでもなかったりするのだが。
「あの……だ、大丈夫ですか? 皆さん。これから乗り込み駆けるんでしょ? 最終決戦するつもりだったんでしょ? 何か、その前から既に瀕死なんですけど。もう激戦を終えた後みたいになってんですけど」
「舐めんじゃねぇよぱっつぁん。仮にも主人公であるこの銀さんがそう簡単にくたばる訳ねぇだろ」
そうは言うが、既に銀時の顔は真っ青になってる上に足も震えまくりである。
とても大丈夫とは言い難い。まるで、既にラスボスと戦った後のパーティーさながらの状態と言えた。
「この天然パーマの言う通りだ。もうすぐこのアホ臭い戦いが終わるっつぅのに、呑気に寝てられるかってんだ」
「私も同じネ! あの腐れババァに一発鉄拳ぶち込むまで死んでも死ねないネ!」
その後も続々と起き上がるボロボロなメンバー。口では大層な事を言い放ってはいるが実際はかなりズタボロだったりする。
本当に大丈夫だろうか?
ラスボスとの激戦を終えた後、禄に回復もせずに隠しダンジョンの強豪ボスに挑んだ無謀なパーティーを彷彿とさせる光景でもあった。
「と、とにかく……皆さんが大丈夫って言うんでしたら大丈夫ですよね。でも、どの道此処じゃ僕達の力って半減されたままですよね。幾ら管理局の人達の支援があったって、それにも限界がありますよ」
「その心配なら大丈夫よ、新八君」
「え?」
新八の疑念を打ち砕くかの様に、ようやく気持ち悪さから回復したリンディが声を掛けてきた。
と、言うか……良くあの揺れの中彼女は勿論他のリリカルメンバーは無事だったと心底疑問に思える。
まぁ、無事だったら無事だったで構わないのだが。
問題は其処じゃない訳だし。
「大丈夫って、どう言う意味なんですか?」
「今私達が居るのは貴方達の居る江戸でも貴方達がやってきた海鳴市でもない世界。言ってしまえば狭間の世界なの。此処では私達の魔法も使えるし、貴方達の力も本来通り使える筈なの。だから貴方達も本来の実力を出して戦えるから安心して頂戴」
「そ、それって! 聞きましたか銀さん。僕達此処でなら何時も通りに戦えるみたいですよ!」
目の輝きを取り戻した新八がはしゃぐように言う。それを言うよりも前に銀時達は体を動かして既に準備万端と言った仕草をとっていた。
「本当だ! よくよく考えてみたら今まで体にあったダルさが綺麗に吹っ飛んでらぁ」
「体から力が漲ってくる感じがするネ! これなら心置きなく戦えるアルよぉ!」
銀時や神楽は勿論真選組のメンバーも皆同じだった。誰もが本来の力を取り戻し活き活きとした表情を見せ始めている。
今まで抑えつけられていた力の憤りが一気に爆発する感覚を感じまくっていたのだ。
更に言えば此処でなら心置きなく戦えると言うその開放感がまた彼等には嬉しい響きだったのだろう。
元々配慮や手加減が苦手な連中の集まりだ。そう言うしがらみが解かれた時点でやる気100パーセントを通り越して120パーセントまでぶっちぎっているのは間違いなかったりする。
「うっし! 良いかてめぇら。これから俺達はあの腐れババァの元に殴りこみを掛けるぞぉゴラァ!」
「な、殴りこみなんですか? 普通に其処は強制捜査とかって言って貰えると僕達もやり易いんですけど」
「堅い事言うなよぉ執務官さんよぉ。此処は俺等に合わせろって。強制捜査なんて生温い方法じゃあの腐れババァの膿は落とせねぇんだよ。綺麗に洗い流せねぇんだよ。頑固汚れなんだよ。長年染み付いた換気扇の油汚れ並に落ち難いんだよ」
最終的にプレシアを頑固汚れ呼ばわりしてしまう銀時。作品が違うだけで此処まで人を侮辱出来るのだから相当凄い訳であって。
「そんな訳で、普通に逮捕して普通に裁判掛けて、普通に刑を執行するだけじゃあの頑固汚れは落ちねぇんだよ。あの頑固汚れを落とすには俺達の徹底的な洗浄方法を用いないといけない訳」
「なる程」
「いや、其処は納得しちゃ駄目だと思うよクロノ君。ってか、君も意外と空気を読んでるようで読んでないよね。確実にKY路線まっしぐらだよね!?」
危惧する新八には悪いが、クロノは元々KYの疑いが強いのでその編は心配しても無駄だと思われる。
既に手の施しようがないのだから。
「そうは言うけどさぁ、じゃあんたらは具体的にどうやるつもりなんだい?」
「良い所で質問をくれたなぁ犬耳娘」
「おい、あんた仕舞いにゃ頭からガブッて行くよ。あんた等が買ってる巨大犬みたいに頭から噛み付いてやるよ」
睨みを利かせて脅しを掛けるアルフなのだが。銀時は別に応えてない。
幾ら凄みを見せてもあんまり彼等には効き目が薄いのだ。
「はぁい、さっきから危ない視線でこちらにアプローチを掛けてくる盛りまくった雌犬は放って置いて、これから作戦会議に入りまぁす。殴りこみに参加する奴らは全員集合~~」
「誰が盛りまくった雌犬じゃゴラアアアアアアアアアア!」
最終的には盛りまくった雌犬呼ばわりされる始末。普段なら強気でそれなりに強い筈のアルフなのだが、生憎相手が銀時だったが為に凄みが全く感じられない。
「ちょっと待てぃ! 私は別に盛りなんかついてないからねぇ!」
「あっそ、じゃ既にどっかの野良犬としけこんだ後って奴? お盛んだねぇ。見境無しなんだねぇ」
「一辺ぶっ殺すよマジで!」
「うっせぇなぁ。これ以上てめぇ一人に尺使ってられねぇんだよ。今度ギャーギャー騒いだら首輪つけて甲板に括りつけるぞゴラァ」
徹底的に犬扱いしまくる銀時。どうやら銀時自身別にナイスバディな女キャラを見ても別に発情しないらしい。
まぁ、元の世界だと女絡みで碌な目にあってないので仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「あのぉ、さっきアルフが質問してた答えは結局どうするつもりなんですか?」
「あぁ? 犬耳娘の次は淫獣かよ。まぁ良いや。それを決める為にも今は……」
銀時が視線を移す。其処に居たのは一人未だにダークゾーンに陥っている少女が居た。
「おい、何時までブラック入ってるんだ。いい加減機嫌治して話に加われクソガキ」
「いや、無理ですよ銀さん」
新八がフォローを入れるのも無理ない。銀時が言っているのは紛れも無いフェイトの事なのだ。
そのフェイトは、先ほどプレシアに真相を言われた後絶縁されてしまったのだ。
幼い子供にとってそれほど辛い言葉はない。今まで敵として対峙してきた相手なのだが、それでも新八は彼女を責める気になれなかったのだ。
だが、銀時は違っていた。
「慰めの言葉でも掛けて貰いたいのか? 母親に絶縁されて傷ついた可愛そうな娘の心を癒す為に両手で抱き締めて甘い言葉でも掛けてもらいたかったのか?」
「………」
「何時まで他人に甘えてるんだクソガキ。悪いが俺はてめぇに優しい言葉も甘い言葉も掛けてやる気なんざサラッサラねぇぜ」
「厳しいんだね。銀時は……母さんに見捨てられて、身寄りのなくなった哀れな人形である私を、助けようともしないんだね?」
「必死に足掻いてる奴なら、俺は手を差し伸ばすさ。だが、てめぇは全く足掻こうともしてねぇ。そんな奴に手なんざ誰も貸さねぇよ」
「え?」
その言葉に、フェイトは顔を持ち上げて銀時を見た。まるで死人みたいな目をしていた。そんなフェイトを、銀時は見ていた。
何時もの、死んだ魚みたいな目ではなく、真剣で、真っ直ぐで、ギラついていて、輝いている生きた人間の目だった。
「てめぇはまだ自分でどうにか出来る位置に居るんだ。まだ立ち上がれる状態なんだ。なのに、てめぇは只石に躓いて転んだだけで俺達に起こして貰おうと哀れに泣き叫んでるだけだ。何時まで甘えてるつもりだ? なのはに甘えて、クソババアに甘えて、今度は俺に甘えるのか?」
「そ、それは……」
「躓いたんなら、いっその事前のめりに倒れちまえ。顔面から地面に倒れ込め。そして立ち上がれ! そしたら、てめぇの顔についてる泥位なら、俺が落としてやる」
「ぎ、銀時……」
「俺はてめぇの事なんか嫌いだし、てめぇの母親も嫌いだ。だが、てめぇはてめぇの母親をどう思ってる? 只の鬼婆だと思ってるのか?」
銀時の問いにフェイトは、首を横に振った。それを見た銀時が、静かに微笑んだ。その答えを、待っていたかの様に。
「そうだな。例え回りが何と言おうと、回りがどれ程あの女を蔑んで罵倒しようとも、お前にとっちゃたった一人の母親だな。だったら、お前がすべき事はたった一つしかねぇじゃねぇか」
「たった一つ……それって、一体何なの?」
「なぁに、簡単な事さ。てめぇがあの鬼婆を叱ってやるんだ」
「私が、母さんを……叱る?」
いまだに銀時の言いたい事が理解出来なかった。子が親を叱る。
普通なら絶対に口から出ない言葉だ。
だが、それを銀時は迷う事なく言い放ったのだ。
「親が子を叱るのは当然の事だ。子供ってのは、経験も浅いし、常識もない。何が良い事で何が悪い事かの判別も出来ない青びょうたんだ。そんなクソガキを叱るのは親の務めなんだよ。だが、それじゃ親は誰が叱れば良い? もし親が間違いを犯したら、誰が親を叱るんだ? 誰が親に正しい道を教えてやれば良い?」
「正しい、道を……教える?」
「そうだ、親が間違った事をしていたら、それを叱るのが子供の義務だ。親を叱れるのはそのガキしかいねぇんだ。クソな親を叱れるのはクソガキしか居ねぇ。あの鬼婆を叱れるのはこの世で只一人、てめぇを置いて他に居ねぇんだよ」
銀時の言葉はフェイトの胸に深く深く突き刺さった。今まで自分を虐待し続け、そして最後には無残にも捨てて行った母を、自分が叱りに行く。
そんな事をして良いのだろうか?
「決めるんなら早くしな。強制はしねぇ。だが、俺達は少なくともあの女を叱りに行く気なんざさらさらねぇ。悪いがあの女が俺達の進路を妨害するってんなら……俺は容赦なくあの女を殺す!」
「か、母さんを!」
「悪いが俺も其処まで他人に気を回せる程度量の広い男じゃねぇ。自分の娘守るだけで手一杯なんだ。他人の親に気を回すなんて器用な事出来ねぇよ。だからお前が決めろ。お前のお袋を叱るか? それとも見捨てるか?」
銀時が助けようとしているのはなのはだけだ。自分の大切な娘を助けようとしているのだ。
そして、彼が助けようとしているその中に、プレシアは含まれてはいなかった。
もし、プレシアが銀時の助けようとしている進路を妨げる事となった場合、銀時は一切容赦する事なくプレシアを切り殺すだろう。
フェイトにはそれを黙認する権利もあった。見捨てられた以上、もうプレシアは彼女にとって親ではない。全くの他人同然だ。
この艦の中で銀時が彼女を殺す様を黙って見届ける事も出来る。
だが、そんな事フェイトに出来る筈がなかった。例え今まで自分の事を良い様に利用してきただとしても。あんなに道具の様に切り捨てた女だとしても、フェイトにとってはたった一人の母なのだ。
その母を見捨てる事など出来ない。
となれば、答えは自ずと見えてきた。
「私、母さんを見殺しになんて、出来ない」
「そうかぃ、だったらどうするつもりだ?」
「私が、私が母さんを叱りに行く! 誰が何と言おうと。私が母さんを正して見せる」
「へっ、決まりだな。来いよ、お前も作戦会議に加われ」
今まで銀時が掛けてはこなかった優しさが其処にあった。男ではない言葉だった。
大きくて、優しくて、少し辛気臭いような、要するに父親の言葉だった。
そうだ、この男は父親なのだ。今更ながらにフェイトは思い出した。
彼女には母親の思い出はあっても父親の思い出はない。
ほんのちょっぴり、父親が欲しいな。そう思うフェイトであったりした。
「う~っす、待たせたなてめぇら。そんで、話の方は何処まで進んだ?」
「あ、旦那ぁ。今丁度話を纏めようとしてたところでさぁ」
銀時とフェイトの目の前には殆どのメンバーが勢揃いし、会話を進めている場面であった。その中に二人も腰を降ろして加わる事となった。
「それで、内容は何? どうやって内部に入るかって事? それとも戦力分析?」
「違いまさぁ。おやつは300円にすべきか、それとも500円にすべきかって議題でさぁ」
「はあああああああああああ!?」
いきなりフェイトは絶叫した。信じ難い話だったからだ。作戦会議とか聞いたから何かと思えば持参するおやつの予算を決めていたそうなのだ。
「因みに俺は500円派ですがねぃ。こちらの執務官さんと土方さんが300円って五月蝿くて中々決まらない所なんでさぁよ」
「あんだよぉ。お前家の執務官さん垂らし込んで頭数に加えるなんざセコイ真似してんじゃねぇよ。おやつは500円で決まりだろうが。察しろやこのボケェ」
「ふざけんじゃねぇ。古今東西おやつってのは代々300円って相場が決まってるんだ。そのお陰でこうして遠足や社会化見学の際に無事故で帰れると言う暗示が掛けられてるんだよ。それを無視して何が500円だ。冗談じゃねぇ。俺は絶対300円ってのは曲げねぇからな!」
「縁起とか暗示とか、何そんな迷信じみたこと信じてるのぉ? 馬鹿なの、お前馬鹿なのか? そんなの一昔前のどっかの馬鹿が《これこう言う風に言いふらしたら流行るんじゃね?》っ的なノリで作ったのに違いねぇんだよ。そんなのに騙されてる時点でてめぇは馬鹿なんだよ。此処は断然500円に決まりだろうが」
どうやらおやつの予算を決める事で結構もめているようだ。しかし、フェイトからしてみれば果てしなくどうでも良い議題だったりする。
「ちょっとちょっと! 貴方達状況分かってるの? これから時の庭園に乗り込むんだよ! 最終決戦に臨むんだよ! それなのに何呑気におやつの予算決めてるの? 有り得ないでしょ! 普通リリカル的な話だったらこのまま乗り込んで戦いに望むってのが筋道じゃないの?」
「やれやれ、これだからリリカルメンバーはいけねぇや。こうやって場の空気を和ませて緊張を解すのが、俺達銀魂流のやり方なんでさぁよ」
「そうネ。何のおやつも持たずに最終決戦に臨むなんて、やくそうも持たずにダンジョンに向う序盤の勇者並に無謀な事ネ」
「おやつじゃHP回復しないから。大体序盤って言ったって2~3レベルになれば主人公回復魔法覚えるからもう其処でやくそうの出番終わりだから! もうやくそう頼る必要ないでしょ? これ自体意味ないのよ、分かる!?」
どうやら銀魂メンバーにとっておやつと言うのはやくそうに匹敵する重要な物らしい。が、魔法が主流のリリカルメンバーにとってはやくそうはあんまり重要な代物じゃないようでもある。
「はいはい、お肉はおやつに入るんですかぁ?」
「馬鹿かてめぇは。お肉はおやつじゃねぇ。それは弁当の類だ。おやつにしたいんだったらドッグフードにしろ」
「旦那ぁ、おやつの時間にドッグフードをぼりぼり食われても返って萎えるだけでさぁよ」
「だそうだ。何か別の奴にしろ」
とか、他にも様々な議題が提案されては議論されていく。が、誰も疑問に思わない辺りフェイトは頭がおかしくなる錯覚を覚えた。
「皆ちょっとおかしいよ! 何で誰もツッコミしないの? 何で誰も疑問に感じずにこうして無駄な議論をしているの? 何でこんなどうでも良い事に白熱出来るの? 私もう頭が変になっちゃいそうだよ! 頭が痛くなってきたよ」
「心配しなくてもてめぇは元々頭のネジが2~3本ぶっ飛んでんだから今更少しおかしくなっても心配ねぇよ。もう少し自分を見直せこの変態女」
「頭のネジが2~300本吹っ飛んでる白髪天パーに言われたくないわよ! 皆ちょっと考えてみてよ! こんなのおかしいよ! こんな議論する価値なんてこれっぽっちもないわよ! 皆もっと真面目にやろうよ!」
大声で皆に向かい叫ぶフェイト。それを聞いた途端、回りが静まり返ったのを感じた。
疑問に思ったフェイトは皆を見る。其処に居た皆は、誰もが笑顔でフェイトを見ていた。
「どうやら、心配はなさそうだな」
「安心したよ。もしかしたら塞ぎこんでるんじゃないかと思ってたからさ」
「え? あの、どう言う事?」
意味が分からなかった。全くもって意味が分からない。
理解出来ていないフェイトの頭を銀時が手を乗せながら答えてくれた。
「分からないか? 皆お前を心配して、こうして芝居を打ってくれたんだよ。大体殴りこみに行くってのに作戦なんざチマチマしたの要らねぇんだよ」
「そ、それじゃ……さっきの議論ってのは……もしかして」
「そうだよ。お前を試す為に全員で打った芝居だったんだよ。さっきの怒号を見る限り、本当に吹っ切れてたみたいだな」
どうやらフェイトを試していたようだ。あそこでフェイトが本気で叫ばなかったら、きっと銀時達はフェイトを縛り上げて連れて行かなかっただろう。
何とも回りくどいやり方でもあった。
しかし、それが銀魂なりのやり方なのであろう。
そう、フェイトは思えてしまった。
「よし、全員揃った事だし、これより俺達は時の庭園に殴りこみをかけるぞ!」
「ちまちました小細工なんざ不要だ。目の前に壁が現れたら叩き壊せ! 邪魔な敵が居たらぶちのめせ! 何も考えず、只前だけ見据えて走り抜けろ! それが殴りこみってもんだ!」
「良いじゃん。そっちの方があたしもやり易くて良いよ。回りくどいやり方は頭が痛くなるからね」
皆が満場一致の思いであった。既に作戦など不要だったのだ。これだけメンバーが揃えば作戦なんてあってないような物だ。真正面からぶつかり、そして粉砕するのみだ。
そんな無茶苦茶な事が出来る奴等こそがこの侍と言う奴等なのだろう。
「銀時、母さんを叱るって事も忘れないでね」
「それはお前の仕事だ。俺達が出来るのはお前の露払い位なもんだよ。だから、締めはお前がやれ! お前がお前のお袋さんの尻を叩いてやれ」
「いや、何で尻限定? 何で叱るって事になったら母さんの尻が出てくるの?」
「馬鹿野郎。古今東西叱るってのは大概お尻ぺんぺんが基本だろうが!」
「何所の世界に母親のお尻を叩く娘がいるの? 普通いないわよそんな情けない親!」
「何言ってんだてめぇ。自慢じゃねぇがこの俺、坂田銀時はなぁ、なのはが5歳の頃にあいつに尻を叩かれた経歴があるぞ! 輝かしい経歴だぞゴラァ!」
「全然輝かしくないわよ。寧ろ汚らしい経歴よそれ! 今すぐそんな経歴どぶ川に捨ててしまえこの馬鹿親父!」
結局元通りになってしまった。纏まりがなさそうにも一見見えるこの光景。しかし、それでも皆心は纏まっているのだ。
それが、この二つの世界の交わりにより出会えたメンバー達の固い絆と言える代物なのだろう。
そして、その過程で出来た最強のパーティーが、今最後の戦いに望む。
果たして、銀時達の運命や如何に?
そして、おやつは300円が良いのか? それとも500円が良いのか?
「まだその議題引っ張ってたのぉ!?」
その点については、皆様のご想像にお任せします。
つづく
後書き
次回【殴りこみをする際は必ずノックをしましょう】お楽しみに
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