駄目親父としっかり娘の珍道中
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第28話 バトルってのは何でもかんでもド派手にやれば良いってもんじゃない。空気を読んで節度を守って正しくルールに乗っ取ってやりましょう
初めからプレシアの書いた絵図通りに事が進んでしまった。プレシアが移動ポイントを指定してきたのも、フェイトを要求してきたのも、初めからジュエルシードを手に入れる為に他ならなかったのだ。
しかも、フェイトの事など眼中にないかの様に。
その上、本来なら返してくれる筈だったなのはも結局はプレシアの手元にある状態だ。
完全にしてやられてしまったのだ。
「あんのクソババァ! よくも俺達を嵌めやがったなぁ」
「銀さん、落ち着いて下さい! 此処で暴れたって意味ないじゃないですか!」
プレシアの行いに完全に激情した銀時が暴れ狂う。それを必死に新八が押さえ込んでいた。今の銀時は自分自身で抑えられない状況に陥っているのだ。
血の繋がりはないが大事な一人娘をあろう事か交渉の材料にされた挙句、結局返して貰えなかったそれに対する激しい怒りが、銀時の中を支配していたのだ。
「落ち着け、この腐れ天パー。てめぇの怒りは俺達も同じだ」
「んだぁ、このマヨラー!」
「だがなぁ、こんな所で無駄なエネルギー使ってどうする? そう言うエネルギーは、あの性悪女の顔面ぶっ叩く時にでも使いやがれ」
「ちっ、てめぇに言われるまでもねぇ。今すぐあの薄気味悪い天空の城に殴りこんであの性悪女の尻に○○○○○○ぶち込んでやらぁ!」
「おいいいぃぃぃぃ! 何とんでもない発言してんだてめぇは! これ一応健全な小説だからなぁ! そう言う発言は18禁小説でしか出来ねぇっての頭に入れておけこの馬鹿野郎が!」
銀時が一体何を叫んだのか?
それを知るにはライトノベルを愛読するお子様にはまだ早いネタだったりする。
知りたい人はご自分でお探し下さい。
「だから言っただろうが。あの女は私達の要求なんか初めから呑む気なんてないってさぁ」
「上等アル! 私等に喧嘩売った事地獄の底で死ぬほど後悔させてやるアルよ!」
「神楽ちゃん、それ聞き方間違えるとプレシアさん殺す気だよねぇ。撲殺するつもりだよねぇそれ?」
青ざめる新八が居た。間違いなく此処に居る銀時達ならやりかねないと思ったからだ。
あそこまで神経逆撫でされた挙句約束ボイコットされたのだから当然その怒りのボルテージは最高潮に達しているのは言うまでもない。
下手するとこのまま単身時の庭園に乗り込んでプレシアを撲殺し兼ねない連中が勢揃いしているのだ。
「ちょいと待って下せぃなぁ旦那ぁ。そんな簡単に殺しちまったらつまらないでしょうがぁ」
「お、沖田さん?」
「そう言うのは死ぬ寸前までネチネチ痛めつけて苛め抜いてからゆっくり嬲り殺しにした方が楽しいもんですぜぃ」
「今すぐこの小説から出てけええええええええ! 何言ってるんですかあんたは! これ以上そんな発言すると確実に何処か偉い人達に僕達消されますよ!」
新八の言う事も最もであった。
本来この話でクロスしているリリカルのお話と言うのはギャグ成分は少なめで魔法と少女とバトルがメインのちょっぴり萌え~な感じのお話だったのだ。
それがこの銀魂とタッグを組んでしまったが為にギャグとカオスと変態が織り交じったとんでも小説になってしまったのだ。
その上リリカルなキャラをそんな大それた目に会わせよう物なら確実に何処か偉い人達に消される危険性がある。
そう新八は危惧していたのだ。
「上等じゃねぇか! 今すぐあの腹黒女とっ捕まえて生爪全部剥ぎ取ってやる! その上で歯を全部抜き取って三日三晩ぬるま湯に漬け込んでふにゃふにゃにした挙句火あぶりにして晒し首にしてやらぁ!」
「もうそれ主人公の言う台詞じゃねえええええええええ!」
確かにその通りであった。そんな感じでほぼ全員が怒りのボルテージ最高潮な中、只一人テンション最低値の者が居た。
「……」
「大丈夫かい? フェイト」
ユーノがそっと気遣う。あれから未だにフェイトは一言も口を利かないのだ。本来なら自分の母親の事を此処まで罵倒されたら、確実に逆上してデバイスを振り回していた筈だ。
だが、今のフェイトはそんな事全くする素振りを見せない。完全に死人みたいな顔をしていた。
「顔色が悪いみたいだな。少し休んだ方が良いんじゃないか?」
「何で?」
「ん?」
「何で、母さんはあんな事をしたの? 母さんはあんな酷い事をする人じゃなかった。私の知ってる母さんはもっと優しかった筈なのに、何で……何であんな酷い事をしたの?」
「……」
フェイトは叫んだ。まるで、目の前に突きつけられた現実から逃げるように涙を流して叫んだのだ。
あの時の母の行いを未だに受け止められなかったのだ。
気持ちは分かるが、しかしこれは現実。曲げようも逃れようもない現実なのだ。
認めるしかない。辛い事かも知れないが、これは認めるしかないのだ。
【ご機嫌よう。管理局のお犬さん達】
突如、目の前のモニターが映りだし、其処にあのプレシアが映り出した。
「か、母さん!」
「てめぇ! よくもまぁ俺達の前に顔を出せたもんだなぁ! その度胸だけは褒めてやるぜ!」
悲しみに満ちた目で見るフェイトとは対照的に、銀時は憤怒の想いでプレシアを睨んだ。
だが、そのどちらもプレシアには痛くも痒くも感じなかった。
【貴方達のお陰でこちらは労せずジュエルシードを全て手に入れられたわ。有り難うね、感謝しているわよ】
「ふざけんなぁ! 誰がてめぇの道楽の為に集めたってんだよ! それより、約束だろうが。家の娘返せ!」
【残念だけど、その約束なら無効になったわ】
「何だと!」
突如踵を返してそう言い張るプレシア。その発言に銀時はギョッとなった。
「どういうこと? プレシア・テスタロッサ! これでは約束が違うわ!」
【当然よ、最初から約束なんて守るつもりはなかったんだから。それに、折角手に入れた基調な素材をむざむざ手放す訳がないでしょ?】
「素材……だと?」
意味深な発言だった。ジュエルシードを素材と言うのにはいささか疑問を感じる。
まさか……
【おおよそ推測は出来てるでしょ? 貴方の娘よ。あの子は実に良い素材だわ】
「てめぇ、家の娘をてめぇの道楽に使うってのか?」
【道楽じゃないわ。これは私の人生全てを賭けた実験なのよ! そう、私の愛する娘を取り戻す為のねぇ】
「娘だと?」
その発言を聞いた途端、銀時は声高く笑って見せた。周囲が動揺をするが、本人は気にしてはいない。
「変な実験ばかりして頭までおかしくなったのかこの腐れババァ! てめぇの愛する娘なら此処に居るじゃねぇか?」
後ろに居るフェイトを指差してそう言う。だが、それに対しプレシアもまた声を高くして笑い出した。
【貴方こそ頭おかしくなったんじゃないの? 誰がそんな出来損ないの人形を娘と思う物ですか?】
「え?」
「出来損ないの……人形?」
【良い機会だわ。フェイト、貴方に良い物を見せてあげる】
自慢げにそう言うと、突如プレシアは立ち上がり映像の場所を変える。それは、無数のカプセルが陳列している部屋であった。
まるで何処かの実験室の様な場所であった。
そして、その部屋の最奥には一際大きなカプセルが置かれており、その中には一人の少女が入れられていた。
その少女の顔や姿形を見て、誰もが己が目を疑った。
其処に居たのは、紛れもなくフェイトその者だったのだ。
「フェ、フェイトォ! 何で? え、嘘! 何で?」
「おいおい、何の冗談だよこりゃ? 何でフェイトが二人居るんだ? お前まさか双子だったのか?」
【違うわよ。この子の名前はアリシア・テスタロッサ。私の愛娘よ】
「銀ちゃん。全く意味分からないアル。もう少し頭の弱いちびっ子に分かるように説明して欲しいアル」
「だそうでぇす。プレシア先生~。もう少し俺等みたいな馬鹿にも分かるように説明して下さいコノヤロー」
さすがにこれだけじゃ何がなんだかさっぱり分からない。事の真相を確かめねばならない。
【良いわ、教えてあげる。プロジェクトF。管理世界の者なら知ってる言葉の筈よ】
「プロジェクトFATE……まさか!」
【察しが良いわね、艦長さん。そうよ、其処に居るフェイトは私がプロジェクトFで作ったアリシアのクローン。いえ、出来損ないの失敗作なのよ】
「そ、そんな……」
フェイトの顔が蒼白しだしていく。信じ難い現実を突きつけられたのだ。無理もないだろう。
【本来ならアリシアを作る筈で作ったのだけど、似ているのは顔だけ。記憶を入れても全くの別物。貴方は私を常に苛立たせてくれたわ。でも、もう貴方は必要ない。この21個のジュエルシードと、あの子の【命】を使って、私はアリシアを取り戻すわ】
「てめぇ、たった一人の娘を取り戻す為に其処まで外道に落ちたってのか?」
【アリシアを取り戻す為なら私は鬼にでも外道にでもなれるわ。世界の一つや二つ滅ぼしたって構わない。私にとって、アリシアが全てなんだから】
最早何を言っても無駄であった。既にプレシアは人の身であって人でなかったのだ。
今の彼女は人の皮を被った悪魔そのものだったのだから。
【フェイト、貴方に一言言ってあげるわ】
「え?」
【私はねぇ、初めから貴方の事が……大嫌いだったのよ!】
「!!!」
【もう貴方は用済みよ。何処へでも消えなさい。最も、貴方達全員、此処で死んで貰うけどね】
その一言を最後にモニターは消え去った。その直後であった。
時の庭園から無数の何かが飛来してきたのだ。
遠くからなので良く分からなかったが、それが明らかにやばそうな代物なのは明白な事だった。
「防御結界! 急いで!」
リンディの声とほぼ同時にアースラの周囲に薄い膜の様な物が形成されていく。
これが所謂防御結界なのだろう。その結界の外で先ほど飛び出してきた無数のそれがぶつかり爆発した。
どうやらミサイルの類のようだ。初めから此処で管理局ごと自分達を亡き者にする算段だったのだろう。
益々腹黒い女である。
「ちょっとぉぉぉ! どうするんですか銀さん? このままじゃ僕達揃ってお陀仏ですよぉ!」
「黙ってろ! くそっ、あのクソババァ。とことん俺達を嵌めやがったなぁ……こうなりゃ直接乗り込んでぶっ飛ばしてやる!」
「って、どうやってあの中に乗り込むんですか? 此処からじゃ飛んで行くってのも無理ですよぉ?」
確かにそうだ。アースラと時の庭園とはかなり距離が開いているし、此処まで激しい弾幕の中を縫っていくのは流石にきつい。
正しく万事休すであった。
「いよいよね……こうなったら、アースラの奥の手を使うしかないわね」
「か、母さん! まさかアレを使う気なんですか?」
「此処で使わなくて何時使うつもりなの?」
クロノとリンディの意味深な会話が続く。一体何を言っているのだろうか?
「おい、二人して何話してんだ? 何かこの状況を打開出来る方法とかあんのか?」
「管理局の技術力を舐めて貰っちゃ困るわね、銀さん。こんな事もあろうかと想って、密かにアースラを改造しておいたのよ」
「おいおい、支給品を勝手に弄くって大丈夫なのか?」
「無問題! 見せてあげるわ、アースラの真骨頂を!」
大層嬉しそうな顔をするリンディ。しかし、何処かその笑みに不安を感じてしまう江戸のメンバーだったりするが、そんなの何処吹く風だ。
この状況をどうにか出来ると言うのなら何でも良い。今はわらにでも縋りたい思いなのだから。
「エイミィ、至急緊急指令を発令して! これよりアースラの緊急戦闘形態を起動するわ!」
「了解! 緊急指令! 全所員は直ちに所定の位置へと移動して下さい。これよりアースラは緊急戦闘形態へと移行します。繰り返します!」
何故かエイミィまでノリノリになり始めている。一体二人の言うその緊急戦闘形態とは何なのか?
疑問を抱く一同。その時、突如ブリッジ内が激しく揺れだした。
「な、何だ? 地震かぁ?」
「ぎぎぎ、銀さぁん!」
「どうしたぱっつぁん!」
「アースラが、アースラが……へへへ、変形してるぅぅぅ!」
「なぁにぃぃぃぃぃ!」
一部しか見えなかったのだが、正にその通りだったのだ。航行船だった姿から一変し、艦橋部分が移動しブイ字型のウィングとなり、ブリッジが移動し頭部となり、それを中心としてアースラに太い両腕と両足が姿を現す。
その姿こそ正しく鋼鉄の巨人その物であった。
「おいいいぃぃぃぃぃ! 何だよこれ? 何これ? あれか? マ○○スのぱくりか? 幾ら何でも無理ありすぎるだろうがこれぇぇぇ!」
「ホホホホホ! 見た? 聞いた? ビックリした? これこそ私が密かに内臓しておいたアースラの奥の手! アースラ緊急戦闘形態。その名も【アースラロボ】よぉ!」
「ネーミングセンス最悪! しかもダサい名前だし! ってか、何でそんな自信満々? 何でそんな嬉しそうな顔してんの?」
気のせいかリンディのテンションが最高潮になっている。心なしかとっても嬉しそうに見える。
しかも、艦長席に座っている筈のリンディの両腕には一昔前にファミコンか何かで使ったようなパンチングコントローラーみたいな代物が取り付けられていた。
「さぁ、アースラロボの実力。その目に焼き付けなさぁぁぁい!」
「何か完全に別キャラになってるんですけどぉぉぉぉ! 凄く嬉しそうなんだけど。何あの人? ハンドル握ると性格変わるみたいな奴? このままだとこの小説もタイトル変わるんじゃね? 【機動戦士アースラロボ】とか? それとも【超時空航行船アースラ】とか? そんな感じのタイトルになるの?」
一抹の不安を胸にリンディは駆る。それに呼応し、アースラロボも突撃してきた。
向ってくるミサイルなど物ともせず唸る豪腕をそのまま時の庭園に叩きつけて来たのだ。
巨大な拳は時の庭園の間近で急停止した。どうやら向こうも結界を張っているようだ。
「ふふん、小癪な真似を。そんなガラス張りみたいな結界。アースラロボが粉砕してあげるわ」
「最早どっちが悪役か分からなくなってるんですけどぉぉ! あれ、これ俺達が悪役なの? 俺達が悪い方なの? 結局俺達どっち側なんだよぉぉぉ!」
もう完全に立場が逆転している感じであった。ブリッジではとても嬉しそうにリンディが両手を交互に打ち込んでいるし、外ではそれに連動してアースラロボが両拳を時の庭園に叩き込んでいる。
しかし、これならばあの強固な結界を破れるかも知れない。そんな一縷の希望が見え始めてきたのだ。
しかも、この形態だと防御能力も増しているらしくミサイル如きでは話にならない。
これは正に勝利フラグ確定じゃね? ぶっちぎりで勝てるフラグじゃね?
等と勝ちを予想し始めるメンバーだったのだが、此処に来て問題が発生してしまった。
「うっ!」
「か、艦長!」
なんと、突如リンディが顔を青ざめて蹲り始めたのだ。一体どうしたと言うのだろうか?
「か、母さん! どうしたんですか?」
「おい、大丈夫か? 一体どうした?」
「き、急に激しく動いたものだから……気持ち悪くなっちゃって」
「どんだけ不健康なんだよお前のお袋さん! 普段からあんな甘ったるい茶ばっか呑んでるからそうなるんだよぉぉぉ!」
「あんたに言われたくないよこの糖尿病寸前侍!」
どうやら普段からあんまり運動の類をしなかった為に急に激しい運動をした為に訪れた吐き気に見舞われたようだ。
これではとてもアースラロボの操縦など出来る筈がない。操縦者を交代せねばならないようだ。
「急いで交代して下さい! このままでは良い的です!」
「分かりました。僕がやります!」
意を決しユーノが名乗り出る。先ほどまでリンディが座っていた艦長席に座り、操縦をしようとした。
が……
「て、手足が操縦桿に届かない……」
如何せんユーノはお子様体型だ。なので大人のリンディが扱っていた操縦桿に届く筈がない。手足が短すぎたのだ。
「何やってんだよこの役立たず! お前此処で役に立たなくてどうすんだよ! だからお前は世間から淫獣って呼ばれてるんだよ!」
「ず、ずびばぜん……後は宜しくお願いじまず」
余程悔しかったのか、大粒の涙を流して退散するユーノ。
「しょうがない。此処はあたしがやるよ!」
選手交代で今度はアルフが搭乗する。が、その突如画面全体にデカデカと【エラー】の文字が刻まれだす。
「え? 何々? 私何もしてないけど?」
突然起こった事態に慌てだすアルフ。すると、そんなアルフの目の前に説明文章が舞い降りてきた。
《ペットの操縦厳禁、犬猫の操縦厳禁》
「あたしゃ犬じゃない! 狼じゃボケがぁ!」
「どっちにしても使えないじゃねぇか! てめぇも役立たずじゃねぇか!」
どうやらアルフが狼の使い魔な為にアースラロボが拒絶反応を示したようだ。以外とデリケートなロボットらしい。
突如、激しい振動が起きた。爆発の振動だ。
「急いで! ミサイルが背後に命中しまくってる! このままじゃアースラロボでも危ないから!」
「よし、此処は局長の俺に任せろ!」
今度は近藤が席に座った。流石に大人な体なので手足が届かないと言う事態はないようだ。
操縦桿に手を合わせて、アースラロボの操縦を一手に引き受ける。
「行くぞ! 侍の戦い振り、特と見るが良い!」
カッコいい台詞を吐き、構えを取る。普段から戦いなれた構えだ。
しかし、そこで近藤はある事に気付く。それは、アースラロボが丸腰だと言う事にだ。
「あり? ねぇ、このアースラロボに武器ってないの?」
「えと、実はこの形態も試作段階なんで……まだ武器は実装されてないんです」
「うっちょぉぉぉぉん! それじゃ戦えないよぉん! 俺の名刀虎鉄っちゃんの切れ味を見せたかったのに駄目じゃぁぁん!」
「良いからさっさと降りろこの駄目ゴリラ!」
結局近藤も使い物にならなかった。そんな近藤を蹴り落とし、銀時が座ろうとしたが、其処へ土方が乱入しだす。
「待てこの腐れ天パー! それは俺が操縦する!」
「退けニコチンマヨラー! てめぇに任せたらまた同じ目に遭うだろうが! 俺が操縦する!」
「誰がてめぇなんかに任せられるか! 此処は俺がやるべきだ!」
「いいや、俺だ!」
「いいや、俺に決まってるだろうが!」
操縦者を決める争いを始める両者。しかし、その両者ともアースラロボの腕の操縦桿を握り締めたまま喧嘩を始めている。その為、外ではアースラロボが必死に自分のボディを殴りまくっていると言う世にも奇妙な光景が映っていたのだ。
「ちょっとおおおおおお! アースラロボ壊す気なの貴方達いいいいいいいいい! もうあんた達のせいでアースラロボのダメージ限界率が90%突破しちゃったじゃない!」
「うぞぉ! もう壊れる寸前じゃないですか! いやだああああ! こんな所で死にたくないぃぃぃぃ!」
かなりやばい状況に陥ってしまった。折角アースラの緊急戦闘形態になり形勢逆転出来ると思っていたのだが、此処に来て馬鹿を曝け出したメンバーの為に逆にとんでもない窮地に立たされてしまったのだ。
「おいおい、このままだとマジでやばいんじゃねぇの? 一体誰のせいだよ。此処まで追い込んだ張本人ってのはよぉ」
「正直に名乗り出るってんなら介錯つきの切腹で勘弁してやらぁ。さっさと名乗り出て来い」
「てめぇらだろうがああああああああああ!」
ちゃっかり他人事として片付けようとした銀時と土方に向かい新八の飛び蹴りが炸裂する。
其処へ空かさず神楽が銀時に、沖田が土方に激しいストンピングの嵐をお見舞いした。
二人が必死に泣き叫んでいるがこの際気にしない事にしておく。
「えぇい、こうなったら破れかぶれだ!」
覚悟を決めた新八が操縦席に座る。そして、アースラロボと一体化した時、その動きは瞬く間に変わった。
先ほどまで鈍重な動きを見せていたアースラロボが一転、まるで某宇宙世紀の機動兵器を思わせる動きを見せたのだ。
正しく蝶のように舞い蜂のように刺す動きを見せていた。
無数のミサイルがまるで鈍足な亀にも想わされた。
しかし、そんな某機動戦士並の動きを戦艦がするのだから、当然中はとんでもない事になっている。
座席に座っている面々ですら結構やばい状況なのだ。座っていないその場立ちがメインの江戸メンバー達や他のメンバー達は正しく巨大なシェイカーの中に入れられた感覚を味わう羽目になった。
うぎゃああああああああああああ! やめてとめてやめてとめてえええええ! マジでヤバイ!このままだとリバースしちゃうううう! あ、俺も出すかも、おえぇ! 目が、目がああああ! 死ぬ、マジで死ぬうううううう!
等などと、巨大なシェイカーの中に入れられて、プロ並のシェイクをされてると錯覚させるには充分であった。
しかし、幾ら回りが何と言おうが今の新八には手を抜く訳にはいかない。
少しでも手を抜けばミサイルの雨霰に見舞われて爆散するのがオチだ。
「もう少し耐えてて下さい! 銀さん、皆、後少しですから!」
そうは言うが、新八は今必死に考え込んでいた。どうやればあの結界を破れるのか?
今のアースラロボの耐久力では恐らくミサイル一発でも危ない。馬鹿達が散々らやらかしたせいでとんでもない事態になってしまった。
それに、まだ時の庭園を纏っている結界は分厚く強固だ。何とかあれを一撃で破らねばならないのだ。
「エイミィさん、アースラロボの残りエネルギーはどの位ですか?」
「後もって数分が限界って所だよ! 早く勝負を決めないと本当に不味い!」
「分かりました。こうなったらいちかばちかで行きます!」
新八の言い分には何かあると、皆が悟った。アースラロボが天空へと飛翔する。
其処で一旦動きを止める。無数のミサイルにとってそれは格好の獲物でしかない。
一斉に其処へなだれ込むミサイル軍勢。
それこそ、新八の狙いだった。
「アースラロボの全エネルギーをお願いします!」
「う、うん! エネルギーバイパスを直結させたよ! 後はお願いね、新八君!」
「了解、最大パワアアァァァ―――!」
ペダルを目一杯踏み込み新八は叫んだ。突如、アースラロボの背中にあるブイ字型のウィングから光り輝く翼が生えた。その翼を纏ったアースラロボはまるで光の速さの如くミサイルの中を縫って突き抜けたのだ。
ミサイル達が標的を見失った時には既に遅かった。
ミサイル同士が互いにぶつかり合い爆発を起こす。其処へ更に別のミサイルが激突し爆発。更にその後へと言うのが幾重にも続く連鎖爆発が起こった。
そんな事など一切気にする事なくアースラロボは時の庭園目掛けて突っ込んだ。
光の翼を背に乗せて、両の拳を突き出しそのまま真っ直ぐ、何の迷いもなく時の庭園へと突っ込んだのだ。
周囲を纏っていた結界はガラス細工の如く粉々に砕け散り。アースラロボの巨体は時の庭園に密着する形でその機能を停止した。
無論、停止したのはアースラロボだけじゃない。時の庭園の迎撃システムもそれの影響でやられたらしく、一発もミサイルが発射されない。
絶好の機会だった。この機を逃せばもう突入する手立ては失われる。
「や、やりましたよ銀さん! とりつけました!」
「そ、そう……よくやったよぉ……流石は、ぱっつぁんだねぇ」
新八の目の前に映るは、散々シェイクされボロ雑巾の様になっていた仲間達の姿であった。
その光景を見た新八は一瞬物凄い気不味さに支配された。
そして、一言、皆に向かいこう言ったのである。
「何か、すみませんでした……調子に乗っちゃって」
と……。
つづく
後書き
次回【子を叱るのは親の務め、親を叱るのは子の義務】お楽しみに
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