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八条学園怪異譚

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第三十五話 座敷わらしその三

「ううん、物凄く長いわよね」
「今も一緒だし」
「一緒にいるってことはそれだけ絆を築いてきたってことよ」
 茉莉也は微笑んでこう話した。
「それでなのよ」
「先輩も座敷わらしさんとですか」
「一緒にですね」
「結構長くいたから」
 彼女にしてもそうだというのだ、このことは。
「それがよ、ちょっと身体が変わったらそれで終わりになったのよ」
「ううん、それって寂しいですよね」
「考えてみたら」
「わかるでしょ、そのこと」
「はい、わかる様な」
「そう思います」
「全くねえ、赤ちゃん出来るからって」
 それでだというのだ、茉莉也は今は難しい顔で語る。
「それでお別れってね、挨拶をする暇もなかったのよ」
「あっ、本当に身体が変わって」
「それでだったんですね」
「そうなのよ」
 こう二人に答える。
「それって凄く寂しいでしょ」
「はい、言われてみれば」
「かなり、ですよね」
「本当に、この前まで見えていたのよ」
 茉莉也は心から残念そうだった、その顔で二人に語っている。
「保育園の傍通ったら子供達と遊んでてね」
「それがお赤飯食べたら、ですか」
「見えなくなったんですね」
「本当に急よ、話は聞いてたけれどまさかって」
 見えなくなるとも思っていなかったのだ、茉莉也はその頃までまさか自分は、と考えていたがそれが、だったのだ。
「私もって。けれどこれでね」
「自分も例外じゃない、ですね」
 聖花がここでこう茉莉也に言った。
「それがわかったんですね」
「ええ、そうなの」
 茉莉也は大人びた顔にもなった、こうした顔にもなるということか。
「誰も例外じゃないの」
「同じなんですね」
「人間ならね」
 自分だけ、ということはないというのだ。
「それがわかったわ」
「そうですか」
「私もそうだし」
「私もですね」
「やっぱり私も」
 聖花も愛実もわかった、二人にしてもなのだ。
「だから眼鏡とヘッドホンが必要なんですね」
「私達にしても」
「そう、誰もが大人になってね」
 それでだというのだ。
「座敷わらしを見ることが出来なくなるの」
「誰もが、ですね」
「本当に」
「まあ。あの博士は例外かも知れないわね」
 茉莉也はここで博士のことについても言及した。
「百五十歳超えてるとかいう噂だし」
「仙人ですよね、あの人」
「あれっ、魔法使いって話もあるわよ」
「錬金術もやっておられるのよね」
「前は陰陽道がどうとか言っておられたわよ」
 二人もまた博士についてあれこれと話す。
「ええと、何ていうか」
「例外の人よね」
「あの人博士号も幾つも持ってるわよ」
 このことも話される、とかく超人的な博士である。 
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