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万華鏡

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第三十四話 トラックその三

「大学出て八条運輸に入って」
「旦那さんも八条グループの人なんですか」
「そうよ、大学の先輩だったのよ」
 この先生も八条大学出身だ、つまり旦那さんも八条大学出身である。
「サークルが同じでね」
「そこで知り合って、ですか」
「一緒になったんですか」
「そうなのよ、それでだけれど」
 先生はさらに話す。
「旦那今は課長だけれど今もね」
「自分でトラック運転するんですか」
「そうされてるんですか」
「そうなのよ」
 その辺りの事情も話すのだった。
「現場が好きでね」
「というかトラックが、ですよね」
「そうでしょね」
「まあそうなるわね」
 こう話すのだった。
「旦那の家は自動車の修理工場でね」
「っていうか車尽くしですね」
「何かそんな感じですね」
「旦那は生粋のカーマニアなのよ」
 最早生まれた頃から定められていた、そこまで達する程のだというのだ。
「それでなのよ」
「運輸会社に就職して」
「それで今もなんですか」
「そうなの、私も車好きだし」
 自身もカーマニアだからこそ言う、先生のこの辺りの事情も影響している。
「だったらね」
「ううん、カーマニア同士の夫婦ですね」
 男子生徒の一人がここでこう言った。
「まさに」
「そうね、とにかくね」
「先生はトラックも好きなんですね」
「他には工事現場の作業車もいいわね」
 そうした車にもロマンを感じるというのだ。
「ああいうのもね」
「ううん、本当に生粋のカーマニアですね」
「そういうの大好きなんですね」
「息子もミニカーが好きでね」 
 今度は我が子もだった、親の嗜好は影響するというがこの場合もそうであるらしい。
「もう一杯集めてるわ」
「代々カーマニアですか」
「凄い感じですね」
「息子は特に救急車が好きなのよ」
 揃えているミニカーの中でもとりわけだというのだ。
「あれがね」
「何か渋いですね」
「というか独特ですね」
「普通の乗用車も好きだけれど」
 とりわけだというのだ。
「ワゴン系が好きで特に救急車なのよ」
「ワゴンですか」
「そっちがなんですか」
「確かにワゴンは便利よ」
 先生はワゴン車も肯定している、それもよしというのだ。
「我が子ながら目の付け所がいいわ、ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「男の子ならスポーツカーといって欲しいわね」
 そちらが一番の好みであって欲しいというのだ。
「そう思ってるのよ」
「スポーツカーですか」
「それって先生の趣味なんじゃ」
「私スポーツカーも好きなのよね」
 先生自身このことを隠さないで言う。 
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