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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第17話 綺麗な思い出でも他人が持ってると意外とジェラシー

 目の前には二枚式の大きな扉が聳え立っている。大きさからして大人数人分位には相当する程の大きさに見えるだろう。赤み掛かった木目調の洒落たノブ式の扉である。
 ドアが洒落ているのだから当然周囲のそれも中々小洒落た作りとなっていた。
 一面大理石にも似た作りの壁で彩られておりその作りは、さながら中世の城を連想させられる。
 一見するならば其処は優雅できらびやかな場所だと言う思いを持てるだろう。
 だが、その思いも窓の外に映る光景を目の当たりにすれば一瞬の内に消し飛んでしまった。
 薄いガラス張の窓の外から映るもの、それは不気味に蠢く謎の空間だった。紫色だったり、時には赤色だったりと、とにかく安定した色ではないのは確かな事でもあり、その空間がある事で、此処が少なくとも地球ではないと言う事が立証される事になる。
 此処は何処ともつかない異なる世界を浮遊する巨大な建造物。外観はそれこそ巨大な岩の塊のそれと酷似してこそいるが、内面はこれであった。
 恐らく外部からの発見を避ける為用いたカムフラージュと思われる。
 時の庭園。
 誰が呼んだかは分からない。が、とにかく其処はそう呼ばれている場所だった。
 そして、その場所の奥に位置する木目調の扉の前にフェイト達は立っていた。

「あ~あ、とうとう来ちゃったよ」

 フェイトの右隣には未だに不服そうな面持ちでアルフが立っていた。背中まで届くロングの綺麗な髪の上から強引に頭を掻き毟る。彼女自身髪の痛みとかは余り気にしているようではないようだ。
 そんなアルフに対し軽く笑みを浮かべつつ、フェイトは自分の腕で今持ち上げているそれを見た。
 フェイトが両手で持っていたのは一人の少女だった。年は自分とほぼ同じ位。栗色の髪をし、余った長さの髪を両端で束ねた年相応の可愛らしい髪型をしている。
 その少女、なのはは今、深い眠りの底に居た。厳密に言えば意識がないと言っても過言ではない。
 フェイトが放った凶刃ごとその魔力を吸収してしまった結果、なのはは未だ目覚めぬ状態に陥ってしまったのだ。
 しかも、顔全体が真っ赤になっており、かなりの高熱を発している。体は日に日に弱りだしており、このままでは後数日が山だろうと予測される。
 大変危険な状態だった。何とか手を打たねばならない。
 しかし、現状でフェイトにも、アルフにもそれを打開する術はなかった。なのはの発熱の原因は分かっている。彼女の体内にはフェイト達が血眼になって探し回っているある物が納まっている。
 ジュエルシード。
 それを使用した物の願いを歪に叶えてしまう負の遺産。危険な代物。言い方は様々だが、現状で人々がそれを有効活用する術はない。
 だが、それをフェイト達は集めていた。何故集めているのかは分からない。彼女自身が使用する為か? それとも他の誰かが使用する為か?
 その真偽が、此処で明らかになるのはおよそ確実とも言えた。

「それじゃ、行って来るね」
「あぁ、気をつけてね」

 アルフをその場に一人残し、フェイトは扉を押し開け、中に入っていく。フェイトが中へと入ったのを見てかどうかか、扉はゆっくりと閉まった。
 木目調らしく接続面が擦れる歪な音を立てながら、最後には完全に扉は閉められ、フェイトとアルフは扉を跨いで分断されてしまった。

「……」

 何時に無くフェイトは固い表情を浮かべていた。固唾を呑み、冷や汗を流しながらも、一歩一歩前へと進んでいく。
 入った部屋もこれまた豪勢な作りであった。一面大理石とも思える壁で象り、その周囲を照らすように蝋燭が灯されている。
 しかし、その明かりも掠めるかの様に天井から眩い光が降り注がれている。
 部屋の広さはそれなりにあり、恐らく20畳は軽くあると推測出来た。
 その部屋の最奥に位置する場所。取り付けられた豪勢な椅子。王が座るべき場所。玉座に一人の女性が座っていた。
 紫の長い髪をし、その髪と同じ口紅を使用し、はだけた胸が特徴的とも言える黒いドレスを纏った女性が其処に居た。
 その女性の目元には疲れを表せるかの様に隈や皺が寄っており、その女性の顔色もまた、健康的な女性とは程遠い状態であった。

「た、ただいま……母さん」
「挨拶は良いわ。それよりも……」

 親子の再会を女性は一蹴する。その言葉を放ちつつ、女性は玉座から腰を上げて、数歩フェイトの前に歩み寄る。大人の女性なだけあり背の高さはフェイトの倍はある。その背丈でフェイトをじっと見下ろしていた。
 その視線は何時に無く、いや、先ほど以上に不機嫌な物となっていた。

「その子は……一体誰?」
「あの、この子は……その――」

 フェイトは答えに渋った。まるで、実の親に叱られ、必死に言い訳を考えている子供の様に、フェイトは視線を泳がせながら答えられずに居た。その態度がまた、女性には癪に障った。

「はっきり答えなさい! 貴方が連れて来たのだから何かしら理由があるのでしょう?」
「はい、母さん……実は、この子の中に、ジュエルシードが寄生しているんです」
「……それで?」
「え?」

 思いがけない返答にフェイトは驚いた。一瞬にして先ほどまで考えていた返答の内容が綺麗さっぱり消え去っていくのを感じた。一面真っ白な闇と化した脳内では、とてもこの女性の問いに答える事は出来ない。
 そんなフェイトの事などお構いなしにとばかりに、女性は質問を続けた。

「それがどうしたと聞いているのよ。寄生したから何? それならば取り出せば良い事じゃないの。何故そんな事をせずわざわざ此処に連れてきたの?」
「その……この子を……助けたいんです」
「フェイト……貴方は自分が何を言っているか分かっているの?」

 女性の言動は相変わらず冷たかった。放たれる言葉の一言一言がフェイトの心に突き刺さり、凍てつかせて行く。
 辛く、痛く、苦しい言動が女性からはひっきりなしに放たれた。その言動に対し、フェイトは何一つ言い返す事が出来なかった。
 まるで、蛇に睨まれた蛙の如く、成すがまま、言われるがままであった。

「分かっています。自分が何を言っているのかと言う事を……でも、でも私は、この子を……なのはを助けたいんです!」
「それがどれだけ無駄な時間を費やす事になるか、貴方分かってるの?」

 その女性に人一人の価値など無価値に等しかった。目の前で死に掛けている子供が居たとしても眉一つ動かさない。氷の様な冷たい表情が彼女の心情をそのまま表していた。
 
「仮にその子を助けたとして、その子が貴方に何をしてくれるの? 辺境の星でたまたま出くわした子供如き助けたところで、私達には何も返って来ないわ。只無駄な時間を費やしただけになる。貴方、その費やした時間を母さんに返してくれるの?」
「母さん、でも私は――」
「取り出しなさい」
「え?」

 無慈悲にその言葉は放たれた。フェイトの願い、フェイトの言葉、フェイトの意志など、それらを全て無視した上で、女性は言い放ったのだ。

「今すぐ、その子に寄生しているジュエルシードを取り出しなさい。今なら起動する前に摘出出来る筈よ」
「駄目……なんです。もうジュエルシードはこの子の体内にくまなく根を張ってしまって……無理やり取り出そうとしたら、なのはは死んじゃうかも知れないんです!」
「だからどうしたと言うの? たかが子供の一人や二人死んだ所で、私は痛くも痒くもないわ」

 女性にとって子供一人の命よりも今こうしている時間の方が惜しかった。今、女性にとっては一分一秒でも惜しい状況なのだ。故にこうして話している時間すら女性には惜しく思えた。

「分かったのなら今すぐ取り出しなさい。貴方なら出来る筈よ。この大魔導師プレシア・テスタロッサの娘である貴方なら」
「でき……ません……」
「なんですって?」
「出来ません! そんな事をしたら、本当になのはが死んじゃったら……そんなの、私は嫌なんです! だから、お願い母さん。この子を、なのはを助けて下さい!」

 その場にフェイトは跪き、プレシアに哀願した。大粒の涙を流し、必死にプレシアに願い出る。だが、娘の涙を前にしても、プレシアの表情は崩れることはなかった。
 嫌、寧ろ先ほどのそれに増し、今度は激情の意志が加わりだした。

「フェイト、貴方には失望したわ……私は貴方に言った筈よ。全てのジュエルシードを回収して来なさいと。なのに、貴方はその地でこの子と遊び呆けていたと言うのね? しかも、その子を救う為に私の力を使えと……貴方は何処まで母さんを困らせれば気が済むの?」
「か、母さん!」

 震える声でフェイトは言う。そんなフェイトの前で、プレシアは持っていた杖の形状を変えていく。長い杖だったそれは瞬く間に姿形を変え、長い鞭の様な姿へと変貌する。
 その鞭が撓り、鋭い一撃がフェイトの右頬に叩きつけられた。

「あづっ!」

 痛みに声をあげながら、フェイトは叩かれた方向とは反対方向へと倒れこむ。その際に抱えていたなのはを手放してしまいその場に置き去りとなってしまった。
 そんななのはの事など無視しつつ、プレシアは倒れたフェイトの前に歩み寄った。
 見上げたフェイトの目に映ったのは、激情に歪む母の顔であった。

「どうやら貴方はまだ躾が足りないようね? これ以上母さんの手を煩わせない為にも、此処でちゃんとしつけておく必要があるわ」

 そう言うと、倒れて動けないフェイトの背中に向かい容赦なく、躊躇無く鞭を振るった。
 乾いた音と共に纏っていた漆黒のマントは破れ飛び、その中にあった黒いインナースーツも切り裂かれる。
 裂かれた箇所からはフェイトの肌が露見し、鞭の軌道と同じ痣が浮かび上がる。そして、フェイトの顔は苦痛の表情に歪んだ。

「お願い……です。どうか、なのはを……助けて――」
「まだそんな事を言うの? 貴方は……」

 フェイトの切ない願いを無碍に踏み躙るかの様に、プレシアは何度もフェイトの背中に鞭を叩き付けた。長い鞭が撓り、背中に叩き付けられる度に、部屋中に乾いた音が響き、フェイトの苦痛の声がその後に連なって響いていく。
 だが、フェイトの願いは変わらなかった。何度鞭で叩かれようとも、何度罵声を浴びせられようとも、フェイトは必死に願った。
 友達を、なのはを、助けて欲しいと……

「いい加減物分りも良くなるだろうと思ったけど……これ程までとはねぇ」

 軽く息を整えながら、プレシアは眼下に移るフェイトを見下ろす。彼女が纏っていたマントもインナースーツも、既にズタボロとなっており、傷だらけになったフェイトはまともに立ち上がる事すら出来ない状態となっていた。
 それでも、尚もフェイトはプレシアを見上げると、こう言うのであった。

「お願いです……なのはを……なのはを助けて――」
「黙りなさい!」

 プレシアの激情は更に増した。声を荒立て、眼下にいるフェイトの顔を蹴り飛ばす。蹴られたフェイトは無造作に転がり、やがて止まる。そして、そんなフェイトに近づき、今度は先ほど以上に力を込めて鞭を叩き込んだ。

「貴方がこうして無駄な時間を費やしている間にも、母さんは困っているのよ! それが何で分からないの? 貴方は母さんが嫌いなの? 母さんよりもあんな子供が大事だと言うの? 答えなさい、フェイト!」
「ちが……います! 私は、母さんの為に……でも、それでも! 私は、なのはを助けたいんです! なのはは、私にとって初めて出来た大事な友達なんです! だから、だから……」

 ボロボロに傷つきながらも、それでもフェイトは必死に頼み込んだ。しかし、そんなフェイトの願いなど聞き入れる気はプレシアには毛頭なかった。無慈悲に、無情に、無感情にプレシアは鞭をもっていた手を振り上げる。再度フェイトに向い鞭を叩きつけようとした時、足に違和感を感じた。

「ん?」

 何かが自分の足を掴んでいる。そんな感覚に気付いたプレシアは足元に視線を映す。
 其処には、一人の少女がプレシアの足を掴んでいたのだ。
 フェイトとそう変わらない幼い体ながらも、必死にプレシアの足にしがみ付いていたのだ。

「離れなさい。何のつもりなの?」
「な……のは……」

 次第に弱っていく体でありながらも、なのははプレシアの足にしがみつき、フェイトを助けようとしていた。その光景を前に、フェイトは只涙を流す事しか出来なかった。

「フェイトと良い、貴方と良い。何故貴方達はそうも私を苛立たせるの?」

 足元で掴んでいたなのはの背中をプレシアは力任せに掴み、そのまま面前に持ち上げた。
 自分の面前になのはを持ち上げ、その顔を伺う。真っ赤な顔をし、息も荒く、かなり弱っているのが見て取れる。そんな状態だと言うのにフェイトを助ける為にとなのはは体を張って止めに入ったのだ。
 それが、プレシアには何よりも苛立ちを感じさせた。

「もう良いわ。フェイト、貴方がやらないのなら私が取り出すわ」
「え? だ、駄目母さん! そんな事したらなのはが……」
「そんな事知らないわ。私が欲しいのはジュエルシードだけ。他に何も要らないわ! まして、こんな小娘の命なんて、私には何の価値もないのよ!」

 そう言い放った後、プレシアは自分の腕に魔力を纏わせる。髪の色と同じ色の魔力光を纏った手を大きく広げると、その手をなのはの胸に当てた。
 当てた手は音をあげながらなのはの体内へと押し入っていく。その音はとても痛々しく、不気味な音を奏でるのであった。

「あぐ、うああぁぁぁ!」
「お願い母さん! もう止めて! これ以上やったら、本当になのはが死んじゃうからぁ! お願い、殺さないでぇぇぇ!」

 泣き喚くフェイトの事など気にする事なく、プレシアは確実になのはの体内に埋まっているジュエルシードを目指した。その手が深く体内へと入っていく度、なのはの体には激痛が走った。
 その激痛に対し、なのはは只、叫ぶ事しか出来なかった。弱り切り、抵抗する事の出来ない体では、その叫びすらも弱弱しく聞こえてきた。
 
「安心しなさい。例え貴方が死んでも、ジュエルシードは有効に使わせて貰うから」

 不気味な笑みを浮かべながら、プレシアは自分の手が固い何かに当る感触を覚える。金属にも似た感覚。どうやら辿り付いたようだ。
 プレシアは迷う事なくその金属感を強く握り締めた。後はその金属を体外へと取り出すだけである。その過程でこの子が死んだとしてもそんな事知った事ではなかった。
 だが、その直後であった。突如として掴んだ筈のジュエルシードが激しい光を放ち、プレシアの手を拒絶し始めたのだ。

「な、何!?」

 突然の予想外の出来事に驚くプレシア。光は益々強くなっていく。まるで、プレシアに対し早く手を離せ、と言っているかの様に。
 それでも、プレシアは手を離そうとしなかった。尚も強引にジュエルシードを引き抜こうとする。しかし、体全身に根を張ってるだけありその力は強大であり、中々引き抜けない。
 その間にも、光はやがて突き刺すような痛みへと変貌していく。このジュエルシードは間違いなくプレシアを敵視しているのだ。害敵と判断したジュエルシードが無理やりにでもプレシアを排除しようとしている。
 がプレシアも負けてはいない。更に手に魔力を込めて引き抜こうと力を込める。
 互いが一進一退の攻防を続けた。正にその時だった。
 突如激しいスパークと共に、プレシアの脳内に何かの映像が流れ込んでくる。
 一面真っ白だった光景は徐々に晴れて行き、其処に映し出されたのは何処か古臭い町であった。

(何? これは……まさか、この子の記憶?)

 薄暗い町並みから察するに、どうやらその町は夜であったようだ。そして、とある二階建ての建物の外階段。その位置に突如不可思議な発光が発せられる。
 何もない場所から突然光が発せられ、その光が止むと、其処には一人の赤ん坊が姿を現していた。
 
(この現象……そう、この子もまた……『アレ』に巻き込まれた子だった。と言うのね……それにしても――)

 プレシアの目の前に映し出された映像。それは異なる世界に飛ばされた赤ん坊のなのはが坂田銀時と言う男に拾われた頃の光景だった。
 その光景は誰が見ても幸せな親子の光景に見えた。その光景がプレシアには快く映らなかった。
 本当の親子である筈の自分達がこうも辛い思いをしていると言うのに、全く血の繋がりのないこの二人が親子として幸せな時を生きている。その光景がプレシアにはとても歯痒く見えた。

(憎らしいわね。私達がこうも苦しんでいると言うのに、この子達は私が得る事が出来なかった時を享受している。本等なら私達がそれを受けられる筈だったのに……本当に憎らしいわ)

 プレシアの中に沸々と芽生える感情。それは嫉妬であった。
 本来自分達が得られる筈であった幸せな時。その時を全く関係のない筈のこの二人が享受している。その光景がとても憎らしく見えたのだ。
 その映像を見たプレシアは、そっとジュエルシードを掴んでいた手を離し、そのままなのはの体から腕を取り外す。
 元々魔力を使って体内へと入っていた為になのはの体に外傷はない。だが、プレシアの手が離れた直後、まるで糸が切れた人形の様になのははそのまま動かなくなってしまった。

「な、なのはぁ!」
「安心しなさいフェイト。この子は死んでないわ」

 先ほどの激情の意思から一変するかの様に静かな口調でプレシアはそっとフェイトの方を向く。
 その表情も先ほどの激情は消え去り、元の冷たい表情へと変貌していた。

「か、母さん……」
「フェイト、残念だけど母さんにもこの子は治せないわ。この子を治す方法はたった一つしかない。それは、全てのジュエルシードを集める事。そうすれば、この子を助ける事が出来るわ」
「ほ、本当ですか?」

 問い掛けるフェイトに対し、投げ渡すように手に持っていたなのはをフェイトに向い投げつけた。力なくフェイトはそれを受け取るとそのまま仰向けに倒れこんでしまった。

「行きなさいフェイト。その子が大事なら、一刻も早くジュエルシードを回収なさい。でなければ、手遅れになってしまうわよ」
「は、はい! 行ってきます。母さん!」

 弱弱しくも、固い決意を固めたフェイトは、震える足でなのはを抱えて立ち上がる。
 だが、傷つき、疲れ果てたフェイトになのはを抱える事は出来なかった。

「アルフ、其処に居るのでしょう?」
「うっ!」

 扉の外で声がした。言われた以上出るしかない。渋々アルフは部屋の中に入って来る。そして、眼前に映る傷ついたフェイトを見たアルフは、驚愕と同時にプレシアに対し怒りの表情をぶつけた。
 しかし、プレシアはそんなアルフの怒りなど全く気にする事なく、フェイトに向い顎を動かす。

「この子を連れて早く地上に戻りなさい。そして、一刻も早くジュエルシードを集めてきなさい」
「五月蝿いよこの鬼婆! あんた自分の娘になんてことしたんだい!」
「急ぎなさい! でないと、その子が手遅れになってしまうわよ」
「なっ!」

 その一言だけでアルフの中にあった怒りは萎んでしまった。急がなければなのはは手遅れになってしまう。もう、残された時間は余り多くない。
 そう宣告されたのだ。それを聞いたアルフは、多少不満ながらもプレシアを無視し、両脇にフェイトとなのはを抱えて部屋を後にした。
 その光景を見送ったプレシアは、一人不気味な笑みを浮かべていた。

(まさか、こんな所であんな拾い物をするとは思わなかったわ……かつてより行われていた違法手段。その手段に選ばれたあの子……もしかしたらフェイト以上に使える存在になるでしょうね……どの道、今の私には良い拾い物となったと言う訳ね)

 誰もいなくなった部屋でプレシアは一人不気味に笑った。あの時、プレシアが見た映像は何だったのか? 彼女が言う違法手段とは一体?
 そして、これから先に起こる戦いはどうなっていくのか。それを知るのはまた次回の話になる。




     つづく 
 

 
後書き
次回【何事もアフターケアーは大事】お楽しみに 
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