ソードアートオンライン VIRUS
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ウィルスの説明
ログアウトした四人は急遽、優の部屋に集まっていた。ここにいないシュートは携帯のスピーカーで話しに参加している。
「それで、優さんとシュート君が追っていたあの黒くて長いノイズの走ったものは何?ウィルスって言ってたけど、コンピューターウィルスなの?」
「ああ、簡単な話しそういうことだ。ただし、あのウィルスには意思があって何かをしようとしている。まあ、それがわからない以上どうすることも出来ないけどな」
「優はなんでそんなことを知っているんだ?」
「俺がSAOの中に閉じ込められていた時にあいつらの親玉たちが俺の仮想体(アバター)にいたからだ」
それを聞いて三人とも驚きの声を上げた。
「今は夜だから静かにしろ。それで、他に何か聞きたいことは?」
「ゲツガ……いや、優さんがそんなあの事件に巻き込まれてるのには驚きましたが、その親玉たちは何か他に言っていなかったんですか?」
「特にないな。あいつらは俺にあまり話しかけてこなかったしな」
さすがにALO事件のことまで言うのはやめておく。
「だから俺もあいつらが今、何をしようとしてるのかなんてのもわからない。でも、それを阻止しなきゃならないことぐらい分かる。あいつらのVRMMOでの能力はおかしすぎる。それにお前らみたいに感染者を増やそうとしてるから更に厄介なんだ」
「そんなことが今VRMMOで起こってるなんて……」
「だけど、それなら何で警察に言わないんだ?そうしたほうが早く済むんだろ?」
「そのほうがいいと思ったけど実際警察って言うよりもちょっとそっち関係の奴に話しはしてる。それともう一人、知り合いに詳しい奴がいるからそいつにナーヴギアを渡して解析してもらってるが今のところは収穫はなしだ」
「その知り合いって誰なんですか?」
「裏の人間かな。まあ、それ以上は言えない。あっちにもいろいろと事情があるし、あんま俺はあいつと話したくないんだ。個人的に気に入られてるだけで俺は好きじゃないからな」
「……わかりました。それで今のところは解析で何もないんですか。他に何か情報とかないんですか?」
「他か?たぶんだけどあいつらの組織図みたいなものはかけるぞ」
そう言って紙とペンを出して書き始める。
「まず一番上に親玉、マスターって言う奴がいてその下に七体の幹部みたいな奴がいるらしい。まずはチェンジャー、コントロール、レストア、パス、後三体はわからん」
「何かパソコンに関係ある用語ですね。チェンジャーはたぶん変換、コントロールは操作、レストアは復元、パスは……接続、かな?」
シュートが意外にパソコンに詳しいことに少し感心する。自分も少しは用語については今度勉強したほうがいいだろう。
「そうなのか。それで今回出てきたウィルスはこのレストアから作られたって言ってたからここでまた分岐する」
そしてレストア下のところにシードと書く。そしてその下に純に入っていたウィルスを書く。ほかにもシードの横にも黒ローブの男と書いた。
「これが大体の図だな」
「ちょっとすいません。僕は見えないんですけど……」
「仕方ないだろ。通話だけなんだから」
文句の言うシュートにそう言って純と美奈に見せる。
「ねえ、これがシュート君に入ってたのだよね?それでこれがお兄ちゃんに入ってたの」
まずシュートに入っていたシードを指差したあと、純に入っていた名前のないウィルスに指を指す。
「でも、この黒ローブの男って何?」
「それは気になる。俺も知らんぞ、こんなやつ」
二人は黒ローブの男に指を指した。
「ん、ああ。こいつはこのBFOにウィルスを送った張本人だ。シュートはこいつに感染させられたんだ。で、俺もこいつに会ったが俺と何か関係があるっぽい」
「関係があるっぽい?つまりお前はこいつを知らないのか?」
「ああ、何か相手のほうはわかってるみたいだったが俺はあいつの姿を見たことないし、つぶれたような声で元の人物を特定するなんて無理だったな。それにアバターはそれぞれの場所で姿が違うんだからわかるはずがないだろ?名前が表示されるなら別だが、名前も表示されないし」
「そうだよね~、でも、これだけわかってるなら少しは何かできることもあるかもしれないね」
「奈美の言うとおりだな、さすが俺の妹!」
そう言って相変わらずの兄の過度なシスコンを若干引きながら逃げ回る奈美。しかし、そのなかで紙に書いてある黒ローブの男を眺めながら考える。
(自分と関係ある奴なんてな……あいつはあれだけの何か恨みがあるならSAO時代のやつか?それだとレッドか?)
そんなことを考えるが自分を恨んでいるやつで相手も詳しいやつなんていなかったと思う。
「ゲツ、優さん」
「シュート、さんは要らない。お前の歳聞いたら同年代ってわかったんだし。それにあっちでも敬語使わなくっていいって言っただろ。俺は敬語は少し苦手なんだ」
「……わかったよ、優。それで、黒ローブの男についてなんだけど、優はわかってるの?」
「特に……SAOでもかなりの数のやつに逆恨みされそうなほど幸せなことはあったのと討伐があったがそっちのほうじゃなさそうだ」
「それは聞きたいんですが内容があれなんで聞かないでおきます。たぶん、その中の誰かという可能性が」
「あるかもな。確実とはいえないけどな」
そして奈美を追いかける純の首を掴んで倒すと、再び話し合いを開始する。
「まあ、そんなこんなでお前らはウィルスの正体を教えたんだし、これからは協力してもらうことになる。まあ、協力って言っても、対抗策すらまだない状態だからウィルスを見つけ次第、俺に連絡。それと、あまり集まる機会がなくなると思うから、お前らもALOにログインしてくれ」
「ちょ、優。それはさすがに!こっちだってお金の問題とかあるんだから」
「そこのところは何とかするから安心してくれ。うちのメンバーは大丈夫だな?」
「もちろん。ALOかー、少し興味が合ったんだよねー」
「奈美が行くなら行くぜ。でも、あれって確かもう出来ないんじゃないか?」
確かに今はALOはもう出来なくなると噂が立っている。
「それは大丈夫。こっちの知り合いが新しい会社が買い取って運営するって送られてきたから」
「正直、優さんの知り合いがすごすぎて何もいえない……」
「お前はなんなんだよ……」
純と奈美は少しあきれたような感じの表情をこちらに向けていた。
失敬なちょっと知り合いがパソコンに詳しかったり、するだけで特にないぞ。
「シュートはこっちから送るから安心しろ」
「わかったよ。でも、僕のリアルネームは高木弘人って名前があるんだからそっちで呼んでほしいよ。リアルでの会話ではそういうの禁止だろ?」
「了解、わかったよ。弘人。それじゃあ、説明はこんぐらいだ。後は、各自わからないことがあったら言ってくれ。それと見つけ次第連絡も忘れないでくれ。つっても俺はしばらくはログインしないけどな」
「なんで?」
「あっちに行く準備」
「ああ、もう行くのか」
「そういうわけ。こっちで会えないときはあっちで会うことになるな。そん時に俺の知り合いを紹介してやるよ」
「頼むぞ。優」
「お願いね、優さん」
「頼んだよ、優」
そして各自そう言って部屋から出ていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どこかの一室、そこでは解体されたナーヴギアにいろいろな器具がつながったパーツが転がっている。
「まさか、優がこいつをもってきてくれるとは思わなかったぜ……これがありゃ少しはあいつらについてわかるだろうしな」
そしてパソコンの画面にはいくつものロードするウィンドウが開いている。そしてその処理が一つ一つ終了していく。
「さてと、優の中にいた奴らは何かこん中に残してるかな」
そして最後のウィンドウが消えると新しいウィンドウが展開される。
「ラッキー!他のナーヴギアよりもかなりの高度なプログラムの文字列が使われてるじゃねえか。これがあいつらの手がかりか……どんなやつかはお前らを解析してやるから待ってろよ」
そして嬉々した表情でキーボードを打ち始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻、一つの真っ暗な空間に二人の男がいた。片方はうっすらとしか見えず、顔などはわからないが体系で中肉中背の男だとわかる。もう片方は黒ローブを着た男だ。
「戻ったか……結果はどうだったんだ?」
「シードはゲツガに捕獲されたが体内に潜ることに成功、もう一体は消滅だ。シードは体内に潜りこんだがなぜか消滅してる。だが、あいつはウィルスを取り込んだわけだから感染者になったのは変わりない」
「そこまで出来たなら上出来だな。ゲツガに会って、傷のほうはどうだ?」
「ああ、あのときの傷が疼きだしたよ」
そして黒ローブの男は狂ったように口元をゆがめた。
「そうか……今回は手を出せなかったが次は安心しろ。今度はあいつを攻撃していい許可は出た。そして、お前に与えたその武器も使えるようにしてある。今度会った時は、それでやればいい」
「そいつは助かる。ようやく、ようやくだ……あいつへの復讐が出来る……こんな状態にしやがって……お前にも俺と同じことをしてやるから覚えていろよ……ゲツガ!」
黒ローブの男はそう叫んだ。
それを見たもう片方の男はやれやれという感じで首を振った。
「成功させたらそれでお前は自由だからな。しっかりとやれよ」
「ああ、契約を忘れるなよ、パス」
そして黒ローブの男はノイズを出現させるとその中に消えて行った。
「……まあ、あれだけ単純だからこっちもやりやすいんだがな。だけど、ウィルスを体内に取り込んで塗り替えた……いや、消え方からして食われた?……ゲツガにはまだ何かあるのか?」
くくく、とパスは笑った。
「これからは楽しくなりそうだな」
そしてパスもノイズを発生させるとその中に消えて行った。
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