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戦国異伝

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第百三十一話 二人の律儀者その八

「あと味噌も」
「それは変わりませんな」
「はい、殿はいつも味噌を食しておられます」
「あの焼き味噌ですな」
「あれがなければ食が進まぬ程で」
 信長は無類の味噌好きだというのだ、その中でも焼き味噌が特にだというのだ。。
「それで、でございます」
「左様でありますか」
「徳川殿も味噌は」
「はい、好きです」
 家康は味噌についても微笑んで答える。
「あれもまたよいですな」
「味噌を食すると頭が冴える様な気がしますな」
「ですな、どうも」
 それを感じるというのだ。
「野菜に付けて食べるのもよいですし」
「近頃味噌も多く出回る様になって何よりでござる」
 これまで味噌は高いものだったのだ。信長の好きな焼き味噌に至っては金が落ちるとまで言われていた程だ。
「ですから」
「ですな、実はこの度の出陣にもです」
「味噌が用意されているのですか」
「はい、兵の一人一人に味噌をやっております」
「何と、兵達にもですか」
 そのまだ高い味噌をだというのだ。
「また大盤振る舞いですな」
「兵達は厳しく制していますが」
 織田の一銭切りだ、信長はこうしたことにはとかく厳しいのだ。
 だがそれと共になのだ。
「飯は美味いものを食わせております」
「左様でありますか」
「出来る限り白米を用意しておりますし」
 行く先に事前に手配もしているのだ。
「飯を炊く村の者にはその前に飯をこちらで送り手間をかけさせただけの褒美も渡しております」
「民への気遣いも忘れませぬな」
「これは五郎左殿が配されました」
 織田家の中でも屈指の気配りの彼がだというのだ。
「全て」
「あの方がですか」
「そうされました」
「ふむ、そうなのですか」
「美味い飯はいいものですな」 
 蜂須賀は笑ってこのことも話した。
「戦の場に向かう途中でも」
「確かに。飯が美味いに越したことはありませぬ」
「だからこそです」
 それでだというのだ。
「事前に飯の手配をしておるのです」
「ではその決まった時に飯の場所に行くのですか」
「そうしたことも決めています」
 蜂須賀は家康にこのことも話した。
「全て」
「ううむ、徹底していますな」
「それで越前まで行きそのうえで」
「攻め入りますか」
「そうなっております」
「わかり申した。いや、そこまで考えておられるとは」
 話を聞き終えた家康も感服した、そのうえで話してくれた蜂須賀に対して感服した顔でこう述べたのであった。
「それがしも参考にさせてもらいます」
「徳川殿もですか」
「当家は質実剛健です」
 質素なことでも知られている、徳川家は強いだけではないのだ。
「しかしそれと共にです」
「そうした気配りも入れられていきますか」
「これまでそうしたことは考えたこともありませんでした」
 家康にしてもそうだった、だからこそそれを考えた丹羽と認めた信長に感服したのだ。
 そしてそれと共にあることにも気付いた、それは何かというと。 
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