転生とらぶる
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魔法先生ネギま!
0316話
近衛を抱きかかえている陰陽師の女と、俺やネギと同い年くらいの白髪の少年。普通に考えれば陰陽師の女の方を警戒するだろう。現にネギや神楽坂は陰陽師の女の方へと鋭い視線を向けている。……まぁ、近衛を抱きかかえているというのが大きいのだろうが。
だが、俺は違う。俺の中の念動力が、がなり立てるかのようにあの白髪の少年に向かって警鐘を鳴らしているのだ。奴はやばい、危険だ、と。これ程の危機感を覚えるのはいつ以来だ? 下手をしたらアインストに感じたものと同レベルの危機感。
「……ネギ、神楽坂。あの陰陽師の女は任せてもいいか?」
「え? うん。もちろんこのかさんを助ける為にそうするつもりだけど……アクセル君は?」
俺の言葉に頷きながらも、不思議そうにこちらへと視線を向けてくるネギ。その隣では神楽坂も同じく俺の方へと視線を向けている。
「俺はあっちの白髪の相手をする。……いいか、何があっても絶対にお前達はあの白髪には手を出すな」
「ちょっ、何でよ。そんなに強いの?」
「ああ。……下手をしたら本気を出した時のエヴァ並の強さを持ってそうだ」
「……マジ?」
思わず尋ね返してきた神楽坂だが、ネギもまた信じられないといった視線を俺へと向けている。
それはそうだろう。この2人はエヴァと模擬戦を行ったのだ。そこで全力ではないにしてもそれなりに力を解放したエヴァとやり合っている。それだけに俺の言葉の重さを感じ取ったのか。
「残念ながらな。いいか、下手に手を出すとそっちにまで奴が攻撃を仕掛ける可能性がある。奴の相手は俺に任せて、お前達は近衛を取り戻す事に集中しろ。桜咲は……まぁ、話し掛ける機会があったら言っておけ。さすがに桜咲程の腕になれば奴の危険性は見抜くと思うがな」
「わ、分かった」
「アクセル、その、怪我しないようにね」
「ああ。そうだったらいいな」
こうして話している間も、白髪の少年から視線を外すような真似はしない。俺の中にある念動力が全力で奴の危険性を訴えているのだ。
「ふっ!」
一瞬で足に魔力を集中し、瞬動で白髪との距離を詰めて胴体……というよりは心臓目掛けて拳を振るう。陰陽師の女は気が付いていない。白髪も同じく。このまま一気に渾身の力を込めて心臓をぶち破る!
インファイトLV.9のスキルと、人外の身体能力を使った現状で出来る最大レベルの渾身の一撃。その拳を白髪の心臓目掛けて突きだし……
「ちぃっ!」
拳が敵の左胸に命中する直前にゾクリとナニカを感じ、放たれた拳を強引に手元へと戻して白髪との距離を取る。
「へぇ、気が付いたんだ。君、なかなかやるね。瞬動に関しても入りも抜きもスムーズだ」
無表情ながらも、どこか感嘆するように呟く白髪。
その声を聞きながら俺の背筋には冷たい汗が浮き出ていた。白髪の左胸の部分、即ち心臓のある場所には黒い金属質の円錐状の物体が浮かび上がっていたのだ。恐らくあのままこいつの心臓を殴りつけていたら俺の手はこの物体に拳を貫通させられていただろう。
だが、驚くべきはその魔法が行使されるまでの速度だろう。無詠唱にしても魔法発動まで多少の時間は必要な筈だ。少なくても俺はそうだ。しかしこの白髪は殆どタイムロス無しで魔法を使って見せたのだ。
「……お前みたいな凄腕がこんな所に出て来るとはな。さすがに予想外だ」
「フフ、僕としても君レベルの使い手とこんな土地で会えるとは思ってなかったよ」
お互いに笑みを浮かべつつも、相手の隙を探りながら距離を取る。
「な、なんや。あの新入り信じられん程の使い手やないか。それにあのガキも……」
陰陽師の女の呟くような声が聞こえて来るが、こっちとしてはそれ所ではない。一瞬でも目を離せば即座に命を落としかねない使い手。そんな相手に対して隙を見せる余裕なんてある訳がない。
だが、スライムや空間倉庫、念動力のようなこの世界以外のスキルを使わないでこの白髪とどこまでやれる? 一応近右衛門との契約としてはこの世界の技術以外は使わないとなっているが、さすがに自分の命が掛かっているのにその契約を守って死ぬのは御免なのでいざという時には破らせて貰おう。だが、まずは……
意識を集中し、SPを練り上げて口を開く。
『魔法の射手、炎の7矢!』
通常よりも大量のSPを消費して生み出されたその炎の矢は、既に赤というよりもより温度の高い青みがかった炎へと変化していた。
「へぇ、何かアレンジを加えてるのかな? 普通の炎の矢とは違うようだけど」
「それは自分で食らって確かめてみるんだ……なっ!」
その言葉と共に、炎の矢が7本、白髪へと向かって飛んでいく。ただし普通なら一直線に飛んでいくはずのそれは、ファントムを使いこなしてきた俺のイメージによりそれぞれが異なる軌道を描いている。
「器用だね。けど」
相変わらず無表情で感心するように呟く白髪だが、回避すらせずに黙って自分へと飛んでくる炎の矢を眺めて……否、観察していた。
その様子に不審な物を感じつつも、まずは一当てしてみない事にはどうにもならないと判断。そのまま青く燃えさかる炎の矢を突っ込ませる。だが……
「……何?」
白髪に向かった炎の矢は、まるで何かにぶつかったかのように砕け散ったのだ。
何だ? ……いや、そうか。エヴァが常時展開しているという魔法障壁の類か!?
「……ふむ、魔法の威力も予想外。まさか魔法の射手如きで僕の障壁が軋むとは思ってもみなかったよ。これはちょっとそっちの戦力を過小評価してたかな? けど、次は僕の番だね」
そう呟くと、瞬動の類だろう。その場から消え失せ……っ!?
咄嗟に身体を半身にして捻る。次の瞬間には白髪の放った掌底が空気を削るようにして俺の顔のすぐ側を通り過ぎた。
「はぁっ!」
顔の横にある伸びきった白髪の腕。その肘関節を砕かんと左の拳を突き出す。
「っと」
だが、それすらも咄嗟に肘を曲げる事で回避される。だが、それだけで終わると思うな!
曲げられた腕の肘関節。再度そこを狙い、右腕で鷲掴み……握り潰す!
次の瞬間、白髪頭の右肘がゴキュッという聞き苦しい音を立てて砕ける。
「……え?」
その声を上げたのは俺ではない。当然白髪でもない。月詠と名乗った剣士と斬り合っている桜咲でもない。……ネギだ。
「ちょっ、アクセル!? 何もそこまでしなくても!」
神楽坂もまた、どこか慌てたようにそう叫ぶ。
だが、あいにくと今はそれ所じゃない。
「まさか肘関節を砕いても顔色一つ変えないとはな。……お前、生身か?」
「さて、どうだろうね。敵である君に情報を与える必要は無いと思うけど」
お互いにお互いの一挙手一投足を観察しながら距離を取る。そしてそこから始まったのは純粋な体術を使った格闘戦だった。とはいえ、こちらから攻撃した場合は魔法障壁がある為に、俺の狙いは基本カウンターだ。精神コマンドの直撃を使えば障壁は無効化出来るだろうが、切り札をそう簡単に使う訳にもいかないだろう。
繰り出される白髪の左手一本による拳や掌打を紙一重で回避し、そこにカウンターを合わせる。だが相手もそれは理解しているらしく、カウンターにカウンターを合わせてくるのだ。それを回避し、白髪の足を刈るようにして回し蹴りを放つと、地面を跳躍してそれを回避。そのまま俺の首を狙って回し蹴りを放ってくる。
そんな戦いをどれだけ続けただろうか。1分や2分という事は無いだろうが、5分には届かないだろう。
俺の喉を狙って放たれた白髪の拳を紙一重で回避し、そのまま接近。顎目掛けて肘でかちあげるような一撃を放つ。だが、相手もそれを察知していたのか後方へと跳躍してふわりと地面へと降り立った。
「ふむ、このままだと勝負が付かないね」
「……かもな」
白髪の言葉に苦い溜息を吐きながら頷く。
「君も理解していると思うけど、身体能力では君の方が上だ」
「で、技術はお前の方が上、か」
そう、この白髪は驚くべき事にインファイトLV.9を持っている俺より近接戦闘の技術が上なのだ。俺が有利にやり合えているのは、純粋に身体能力の差と最初に白髪の右腕を使えなく出来たのが大きい。
「君の戦い方には、どこか違和感があるんだよね。……君、生身での戦いは専門じゃないんじゃないかな?」
「さて、どうかな」
「まぁ、いいさ。千草さんが何で僕を連れてきたのかも分かったし、君というイレギュラーな存在の実力も確認できた。今日は来た甲斐があったね。……ちなみに、名前を教えて貰えるかな?」
「……アクセル・アルマーだ。お前は?」
「フェイト・アーウェルンクスというんだ。この地にいる限りはこれから何度かぶつかると思うけど、よろしくね。千草さん、退くよ」
白髪……否、フェイトが千草とかいうサルの着ぐるみを着ていた女へと声を掛ける。
その様子をチラリと確認し、ネギと神楽坂の側まで瞬動で移動する。
「うわっ、あんた瞬間移動でも出来るの!?」
神楽坂が驚きながらこちらを見ているが、その手には何故か巨大なハリセンを持っており、近くの地面には近衛が寝かされていた。恐らく俺とフェイトが戦っている間に再度取り戻したのだろう。
「待ちいや、新入り。まだお嬢様を取り返してないんや」
「けど、僕も右肘が砕かれたからこれ以上彼の相手をするのはちょっと厳しい。月詠さんは向こうの神鳴流との戦いに熱中しているようだし、千草さんの式神も消されてる。……この状態で彼等とやりあうのはちょっと難しいんじゃないかな」
「……確かにそうかもしれへんな。しゃあない、ここで無理して傷を広げるのは面白くないし、退こか」
「賢明な判断だ。月詠さん、退くよ」
「えー、しゃあないですなぁ。では先輩、今夜はこの辺で失礼しますねー」
月詠が最後の一撃とばかりに桜咲にその手に持っている2刀で斬りつけると、片方を受け止めてもう片方を回避する桜咲。そしてその打ち合った衝撃を利用して月詠はフェイトの側へと着地する。
「じゃあ、今日はこの辺で失礼するよ。また後日」
フェイトのその言葉と共に、周囲に霧が発生し……風が霧を吹き飛ばした時には3人の姿は既に消え去っていた。
本来なら追撃を掛けるなりなんなりしたかった所だが、何せこっちは魔法学校を卒業したばかりのネギに、パクティオーカードの魔力供給で何とか戦えている神楽坂。そして気絶している近衛とその護衛の桜咲の4人だ。……あ、一応カモもいるから4人と1匹か。この中で純粋に戦力として数えられるのは桜咲だけだろう。この状態で追撃をしても藪蛇以外のなにものでもない。
「……退いたか。いや、この場合は退いてくれたというべきか」
俺の言葉に頷く桜咲。
「そうですね。月詠やあのフェイトとかいう少年はまだまだ余力を残している感じでしたし、あの2人にとっては今回の襲撃はあくまでも様子見、こちらの戦力把握のようなものだったのでしょう」
「だろうな。油断出来ない相手なのは間違い無い」
この修学旅行で感じてる危機感。それはあのフェイトによるものか? それ程に奴から感じた危機感は強い物だった。……だが、それだけではないというのも半ば確信としてあるのだ。
そんな風に物思いに耽っていた俺を我に返したのはネギの声だった。
「アクセル君、幾ら何でもあれはちょっとやりすぎじゃないかな?」
「……あれ?」
「うん、その……あのフェイトって人の右肘を、その……」
「そうそう、私もそう思うわ。幾ら何でもやりすぎでしょ」
ネギの言葉に同意して頷く神楽坂。
それだけで2人が何を言いたいのかが分かってしまった。フェイトの右肘を砕いた件だろう。その様子に思わず溜息を吐きながら口を開く。
「……お前達、もしかして戦闘をこの前のエヴァとの模擬戦を前提にして考えてないか? あれはあくまでも模擬戦であって、本来戦いというのは血生臭いものだ。倒せる時に徹底的に倒しておかないとこの戦いを生き延びるのは厳しいぞ」
そう、俺が感じている危機感が本物であった場合、相当に血みどろの戦いとなる可能性が高いだろう。
俺のその言葉に、どこか納得出来ないような神楽坂とネギだったが桜咲は特に表情を変えずに話を聞いていた。
「ん……」
だが、丁度その時。まるで話を遮るかのように今まで気絶していた近衛が目を覚ました。
「お嬢様!?」
先程までの冷静ぶりが嘘のように、慌てて近衛へと近寄る桜咲。ネギと神楽坂も取りあえずこちらの話は脇に置き近衛へと駆け寄る。
「このか、大丈夫!?」
「このかさん」
「あれ、せっちゃん……ウチ、へんな夢をみてたんよ。おサルさんに誘拐されてそれをせっちゃん達が助けてくれるんや」
近衛のそんな言葉を聞き、優しく微笑む桜咲。
「もう大丈夫ですよ、お嬢様」
そしてそんな桜咲の笑顔を見て、こちらも心底嬉しそうに微笑む近衛。
「良かったー。ウチ、せっちゃんに嫌われてる訳やなかったんやね」
「え? その……失礼しました! わ、私はこのちゃ……いえ、お嬢様をお守り出来ればそれが幸せです。いや、その、つまり……失礼します!」
まるで逃げるようにその場を去る桜咲。
そんなこんなで俺とネギの問答は有耶無耶になるのだった。
後書き
名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
ギアス(灰色)
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
???
撃墜数:376
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