武で語るがよい!
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六式vs御神流
士郎さんの仕事へと介入した、俺と高町さんは店内に居る3人と協力し
早々と仕事を終える事が出来た。
仕事が終った士郎さんは俺ら4人お礼の言葉を言い、店を閉め
その後は…約束の件で一回家に帰らないといけないという事で、士郎さん、高町さん、俺は高町家へ行く事になった。
因みに…久川先輩と谷井さんは二人揃って、俺達とは逆方向に進んでいった
久川先輩曰く、二人で散歩らしい……まぁ、世間的にはそれをデートというんだがな。
と、話が逸れたな…
3人で高町家を目指し、到着した後、士郎さんに導かれるままに俺と高町さんは道場へ……
道場は中々に広く、個人所有にしてはかなり大きい造りをしていた。
そして、その道場内には士郎さん以外にもう一人の人物が居た
高町恭也さんだ―――
士郎さん曰く、審判として恭也さんが選ばれたらしい
恭也さんは御神流の免許皆伝者で、実力もあるから採用したとのこと。
もちろん、ジャッチは公平におこなうそうだ。
高町さんは『私も見たい!』と言って、一度道場を出てから道場の隅へと移動した
外に出た後の高町さんの肩に、スクライアが乗っている事を察するとスクライアを連れて来たようだ。
そして…ふと気づくと、士郎さんが木刀を2本持った状態で既に待機しており
いつでも始めれる体制に入っていた。
「神田君、準備はいいかい?」
と、士郎さんからの声が投げかけられる。
その声は武者震いのせいだろうか? 少し震えていた。
俺自身の準備はもちろん大丈夫だ。
何日も前から今日の事が楽しみで仕方が無かったし、六式や覇気にも磨きを掛けた。
後は全力で士郎さんと戦うだけ……なのだが、不満というより懸念かな?
そういった感情が沸いているのが分る…
その感情の原因は士郎さんが持っている得物とこの道場にある。
得物が木刀……これは正直言ってアウトだ。
俺の六式の技の一つ……鉄塊を使えば、俺を攻撃した瞬間に木刀が砕ける。
なにせ鉄塊使用時の肉体の強度は鋼の中核に勝るほどなのだから。
そしてこの建物……半壊する恐れがある。
嵐脚―――以前も話したが、今の俺の嵐脚の威力は一軒家ぐらいなら倒壊できる
士郎さんに向けて放つのだ、威力調整は当然するが…力んだのが建物へって事もありえる。
「いや、ちょっといいですか?―――」
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俺の言った変更点について、士郎さん達は疑問に思いながらも承諾した。
そして今居るのは、士郎さんが管理している山の麓に位置する場所……。
ちなみに風景は、丸く広がった平地を木々が囲っている場所だ。
士郎さんと恭也曰く、なんでも御神流の修業場なんだとか。
後、得物については刃を潰した小太刀を使用するそうだ。
俺は『真剣でいいですよ?』と発言したが……危ないと怒られた。
というより、士郎さんは今の得物を使うのは少し不満のようだった。
まぁ、それも無理も無い話しだ。
いくら刃を潰したからって、鉄は鉄だ…
当たり所が悪ければ、怪我じゃすまない……それに俺が素手で戦うと聞いて、かなり顔を顰めていた。
「本当に大丈夫なのかい? 神田君。
君は素手だし、やはり……木刀のままでいいんじゃないかい?」
「……俺も父さんと同意見だ。
君の頼みでも、流石に素手では危険すぎるぞ」
「いえ…大丈夫ですよ、お二人とも。
あんな木刀なんて使ってたら、勝負なんて一瞬でつきますし……つまらないです」
木刀が折れました。
なんて事で決着がついたら、興醒めもいいところだ。
お互いにそんな決着は望まないし、迎えたくも無い。
「しかし……」
だが、士郎さんは未だに釈然としない。
こんな調子では、折角色々と変更してもらった意味が無い。
ならば仕方ない……発破を掛けるか。
そう思い…誰も居ない木々に体を向け、右足を大きく回す…。
「―――嵐脚!」
足から繰り出されるのは、横幅2mの斬撃…
その斬撃によって木々の5、6本は倒れていき”ドゴーォン!”という効果音を立てる。
「まさか……」
「父さん、今のは……」
「何、今の……」
「きゅう……(何にが起こったんだ……)」
木々が倒れた後れ、静かになったこの場から士郎さん達の声が漏れる。
高町さんとスクライアは呆けるだけ……
だが…士郎さん達は俺が何をしたのか、わかったようだ。
「鎌風をよび起こせる速度の蹴りがあれば、斬撃を出す事が出来る…
これが俺の六式の一つ、嵐脚です」
「……ここまでの脚力を……一体君はどうやって…」
「それは……修業したからとしか、言えませんね。
それよりも…今のでわかってもらえたと思います……木刀では俺に対抗できないとね」
木刀の原料は100%と言っていいほど、木で出来ている。
その木をあんな風に切り裂き、倒してしまうのだ……もう、木刀でやるとは言うまい。
「あぁ、確かにね。
君に木刀で挑むのは無理だったね……一つ聞いてもいいかい?」
「? ええ、どうぞ」
「君が道場ではなく、外でやりたいと言ったのは……道場の為かい?」
「ええ、そうですよ。
幾分か威力は調整しますが……少なくとも、道場のそこら一帯に切り傷が出来ますからね」
「ははは、そうかい。
子供に気を使わせてしまうとは、僕もまだまだだね」
そう言って、士郎さんは修業場の真ん中の方へと移動していく。
どうやら士郎さんはやる気満々のようだ。
「嵐脚を見た後で、やる気が上がるって……バトルジャンキーだな、あの人……ん?」
特に何も無い、ただの独り言を俺が呟いた時だ。
後ろから袖を”グイグイ”と引っ張られる感覚がしてくる。
ふと…後ろを振り向けば、そこには何かを心配した表情の高町さんが居た。
「どうしたの? 高町さん」
「あの……神田君。
今の技……お父さんに使わないよね? だって、あんなの……」
高町さんをよくよく見ると顔色も悪くなってる。
体も声も少し震えいるのがわかる……。
ここ数日間、高町さんの表情を色々と見てきたが……こんな高町さん、始めて見た。
「今の嵐脚は、士郎さんに発破を掛ける為に強めにやった…。
実際にあの威力を士郎さんにぶつける訳じゃない……だから、その辺は安心してくれ」
「で、でも!―――」
「ストップだ、なのは」
高町さんの声が大きくなった時だ。
恭也さんが高町さんの肩に手を置き、高町さんに静止を促す。
「なのはの気持ちも解からなくもない。
だが思い出せ、俺が何のために審判をやるのかを……」
「……怪我が……無いようにするため…」
「そうだ。
お互い全力を出すから、無傷とは言えんが……安心しろなのは。
それに…なのは、父さんに言ったろ? 『がんばって勝ってね』って」
「あぁ……」
高町さんは何かに気づかされたように、声を出す。
次第に顔色も良くなり、体の振るえも止まっていた。
ただ…対戦相手が居る中で話す内容の話ではないよな?
士郎さんに勝てってことは、逆に俺は負けろってことなんだから。
「な? だから、父さんの応援してやれ」
「うん!」
ふっ……なるほど。
これがアウェーでの試合というやつか……。
もうこの兄弟の会話をこれ以上聞くのはアレなので、俺も士郎さんの元へと歩む。
「すまないね。
家のなのはが、我が儘言って」
「いえ、いいですよ別に…。
それに…我が儘言えるのは子供の特権ですから」
「ははは、子供の君がそれを言うとはね」
嵐の前の静けさ……というヤツだろうか?
戦う前のほんの些細な会話をする俺と士郎さん。
俺が天気予報しなら、今はこう答えるかな? ……大荒れの予感だと
「―――そろそろ、始めますか?」
「―――あぁ、そうだね。
―――なのはも安全なところにいるし……恭也」
「は、はい。
それでは、試合を始めます、試合―――始め!!!」
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俺と士郎さんの試合開始時の距離は、およそ7メートル……。
普通は殴る斬るの攻防をする距離ではない……だが!
「嵐蹴!!」
試合開始直後に俺が放ったのは、嵐蹴…。
その攻撃範囲は横幅は2m……ちゃんと威力は加減してあるのでご安心を。
「ふっ……」
「あッ!? お父さん!」
外野である高町さんから焦りの声が聞こえてくる。
それも無理も無い、なぜなら士郎さんは俺の嵐蹴に自ら接近しているのだから。
「……斬」
嵐蹴に駆けると同時に、2本の小太刀を使い……嵐蹴を引き斬る。
「な!?」
予想外の事態に思わず声が出る。
というのも、嵐蹴をこんな風に防ぐとは思ってなかった。
精々回避するか、攻撃を逸らすぐらいだと思っていたからだ。
だが…いつまでも呆けてはいられない。
なぜならば…士郎さんは俺との距離を縮め、その距離は2メートルもない!
「斬!」
「部分鉄塊……腕!」
士郎さんが左上、そして右横に振るう小太刀を俺は腕で受け止める。
部分鉄塊……これはただ単純に鉄塊で硬化させるのを全身ではなく、部分化したものだ。
――ガキィーン!!
と、鉄と鉄がぶつかる音が響く…。
「……くッ!」
そして、士郎さんから苦痛の顔が見て取れる…。
恐らく…俺の硬化した腕の強度が予想外で、小太刀から反動が来たのだろう…。
ならば……。
腕にに力を込め、小太刀を弾き、士郎さんを一時的に無防備にする
―――ギギィ! キン!
「しm――」
そして…右手に拳を作り、士郎さんの腹へと打ち込む!
その速度は指銃と同速の……超ヘビーィー級のパンチだ。
「獣厳!!」
「ぐッ! 神速!!」
速い! 避けられた!
決まったと思った一撃は、士郎さんの技によって避けられ……消えた
いや……俺の後ろにいる!
「虎乱!」
「剃!!」
士郎さんから繰る出される攻撃が出る前に、俺は剃で5メートルほど距離を取る。
士郎さんの攻撃は空を切り、空振りに終った。
「……強いですね…士郎さん」
距離が開き…相手の出方を窺う為に両者にらみ合ってる中、俺は言葉を発する。
『強い』……まさにこの言葉がシックリくる。
パワーは有るし、先ほどの神速という技なんて俺の剃と同速だった。
「……ははは、君もね」
そうお互い言って、にらみ合いながらも口元は少しだけ笑っている。
お互い実力が高い事を確認し合い、好敵手に会えた喜びに笑い合っているのだ。
もう何秒なのか? それとも何分なのか?
というにらみ合いの均衡は……唐突に終りを告げる。
「神速!!」
「剃!!」
士郎さんを目で追い、それに対応するかのように俺も高速で移動する
正面に来たと思ったら既に後ろにいる……そんな攻防戦を俺と士郎さんは繰り返す。
「斬!」
「獣厳!」
後ろを取り、すかさず攻撃に転じる。
まさに、一回でも隙を見せたらやられる……そんな状況だ。
しかし、このままでは埒が明かない…。
お互いに隙を見せる可能性は低い……そして何より、体力面では恐らく俺が劣る。
士郎さんは大人、俺は子供……長期戦は不利か…。
なら……。
「鉄塊!」
士郎さんが後ろへ回り、攻撃する刹那、全身の体を硬化させる。
そして…両肩に刃が当たり、またもや鉄と鉄がぶつかり合う音が響く
―――キィーン!
だが、最初の音に比べると音は小さい…。
恐らく…小太刀を寝かせ、衝撃を逃がしいるのだろう。
たった一回の鉄塊でここまで反応できるとは……まったく、とんでもない人だよ。
でも、そんな士郎さんでもこれは読めないでしょ!
俺は両肩の小太刀が引き戻される前に……掴む!!
「な!?」
そして…その場でジャンプし、足を立てた状態で膝を曲げ、力一杯空気を蹴る!
「月歩!!」
「ぐぅ!?」
背面体当たり……。
今度の攻撃は士郎さんの腹に入った。
そして…当たった衝撃で士郎さんは吹き飛ばされ、土煙を上げながら受身を取る。
……あれで受身を取れるとはたいしたものだ。
士郎さんにとっては予想外の攻撃だったはずだし。
何より…鉄塊状態での体当たりだ……もはや、車がぶつかって来たのと変らんはずなのに。
「お兄ちゃん! お父さんが!?」
「いや……まだ勝負はついていない」
自分の父親が吹き飛ばされた事に対し、高町さんから叫び声が聞こえる。
その言葉には『もう、やめさせて』という悲願が込められているのだろう。
しかし、恭也さんはそれを認めない。
なぜならば士郎さんはまだ構えている……あの目はまだまだやる気の目だ。
「……神速…二段重ね……」
「なっ!? 父さん!」
士郎さんがそう呟いた時だ、恭也さんから慌てた声が響く。
何だ? 何なんだ? という疑問が驚愕に変るのに……時間は掛からなかった。
というのも…士郎さんが消えたのだ……。
士郎さんと俺との距離は8メートルだったはず……
いくら神速の高速移動を使ったからって、俺の目で追えない筈がない。
現にさっきまで捉えていたのだ、ついていけてたのだ……それが、なぜ急に。
「―――これは少し痛いぞ? 神田君」
「ッ!?」
現れた……目の前に。
しかも、もう攻撃モーションに入ってる。
しかし、今の士郎さんの構えは見る限りでは右ストレートを放つ構え。
なぜ? なぜ小太刀を使わない!?
鉄塊状態の俺に拳なんて自殺行為を、なぜ!?
様々の思考が刹那の内にどんどんと溢れていき……混乱する。
そして…この混乱こそが、最大のミスだった。
「―――徹!!」
「ぐぅ、がはぁ!」
士郎さんが打ち込んだ拳は俺の腹を捕らえ、そして吹き飛ばす。
吹き飛ばされた俺は痛みのあまり、受身が取れず無残に”ゴロゴロ”転がる。
打ち込まれた拳は、鉄塊状態の俺にダメージを与えた……いや、ダメージを徹したというべきか……あの技はワンピースで言えばインパクト・ダイヤルみたいな効果を持ってる。
簡単にいえばあれは……防御不可。
クソ! あの時は回避特化の紙絵を選択するべきだったか!
「神田君、大丈夫か!」
「神田君!」
「きゅ、きゅー!」
未だに地面に倒れ伏す俺に近づく、声と足音が聞こえてくる。
その声の主は恭也さん、高町さん、スクライアの順だ。
俺を心配してくれているのだろう……しかし、このまま近づかれば間違いなく俺の敗北で終る…。
……そんなのは…嫌だ!!
「来るなァ!!」
「「「ッ!?」」」
腹の内で何かが暴れているような痛みが走る。
だが…それでも俺は立ち上がる、負けたくないから…
「神田君! 父さんの徹をまともに受けたんだ!
もう…まともに戦えるはずがない、審判としてこれ以上h―――」
「やれますよ……士郎さんは俺の攻撃を受けても戦った。
なら…同じく攻撃を受けた俺が、戦えない道理はない!!」
今ならわかる。
俺は自分の努力してきた事を他人に越されるのが嫌な…負けず嫌いだ。
俺は相手が出来て自分が出来ない事が嫌な…負けず嫌いだ。
負けるのが嫌な…負けず嫌いだ!
「しかし、これ以上まともに入れば―――」
「だったら! もう、攻撃を受けなきゃいいんでしょ?
次、俺が何か攻撃を食らえば……その時は俺の負けでいいです」
今の俺の目は……一体どんな目をしているのだろうか?
負けを嫌う子供の目だろうか? はたまた悔しがり、対抗する眼つきか……。
いや…今はもう、どうでもいい。
何と思われようとも、今は……あの人に勝ちたい。
「……いいだろう…来い、神田君」
「あはは……、ありがとうございます」
士郎さんの言葉に自然と笑いが込み上げる。
もらった一撃で、腹部は痛い……でも、不思議と今は痛まない。
これは……嬉しさが、痛みを超えたからなのだろうか?
「な、何言ってるんだ!? 父さん! それに神田君も!」
「恭也、解かってやれ。
今の神田君の心境を……勝ちたいと思っているその心を」
恭也さんは士郎さんの言葉に反応し、俺の目を見る
そして、表情を徐々に顰めていく。
「あぁ~分った!!
でも、神田君が危なくなったら直に止めさせるからな!」
「すまんな、恭也」
「ありがとうございます、恭也さん…」
そして…再び最初の位置に戻り、両者にらみ合う。
またもや、相手の出方を窺う均衡状態へとなる。
でも……今回は前とは違う。
もはや士郎さんに先手は譲らない。
どんな攻撃も放たれる前に潰す。
―――見聞色の覇気発動。
さぁ、士郎さん……ここからが本番だ―――
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