武で語るがよい!
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応援と翠屋
今の時刻は朝の9時……普段ならもう学校の授業が開催される時刻だ
だが…そんな時間になっても俺は川沿いの土手をのんびりと歩き、空を眺めている。
空は澄み切った青空が広がり、とても綺麗だ……。
……え? お前学校はって?
今日は土曜日……当然学校はお休み、定休日だ。
……え? じゃあ、どこ向かってるかって?
そりゃー……
『それでは今から、翠屋JFC 対 桜台JFCの試合を始めます……礼!!』
……『『『『『よろしくお願いします!!』』』』……
……グラウンドでしょ?
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と、いう訳で今俺は目的地であるグラウンド目指して歩いている(まぁ、もう直着くが…)
目指す理由は、何日か前にサッカーの試合の応援をしに行くと約束したからだ。
確か…高町さんと一緒に下校し、友達になった日にだったと思う。
高町さんと友達になったあの日から、俺と高町さんは学校で話すことが増え
今では友達として良い関係を築けている。
そして…高町さんと友達になった事により、高町さんの友達であるバニングスさん、
月村さんとも話す回数が増え、以前よりも仲は良くなった…
でも…2人とは仲が良くなった程度で、まだお互いを友達としては見ていない状況だ。
ジュエル・シードに関しては今は5つ集まってる。
その5つのジュエル・シードは全て発動前のだったから、大事には至っていない。
そのジュエル・シードの探索の時間充てはと言うと……
藤田達と遊んでいた時間を探索の時間に充て、高町さん達と協力してきた
藤田達は藤田達で部活動に集中したいと言っていたので、良い時間割りができた。
と、まぁ……ここ数日間の出来事といえばこのぐらいだろうか?
後他に有るとすれば……バニングスさんが俺に『明日の応援に遅れるんじゃないわよ!』
と言ってたぐらいかな?
「ん? おッ! 神田君、良く来てくれたね」
ん? 気づけば士郎さんの声が聞こえてくる…。
どうやら回想をしている間に到着したようだ……。
「おはようございます、士郎さん」
「あぁ、おはよう神田君」
土手の階段を下り、士郎さんが居るベンチに駆け寄る。
だが…その際、士郎さんの影から金髪の同級生がひょっこりと出てくる
まぁ、金髪だけでじゃなく、茶髪や紫髪も居るのだが……。
「ちょっと神田! アンタ3分遅刻よ!」
そう言って、こちらに”ビシッ”と指を突き立てくるバニングスさん
怒るのは別にいいんだが……試合中に大声を出すのはどうかと思うのぞ?
「ア、アリサちゃん……今は試合中だから、応援以外の大声だしちゃダメだよ」
「すずかちゃんの言う通りだよ、アリサちゃん……」
月村さん、高町さんの順にそれぞれバニングスさんを注意する
うむ、2人はマナーを心得ているようだ。
「ぐッ、そ、そうね……すずかとなのはの言う通りだわ」
バニングスさんは自分の失態を認め、反省している。
まぁ…そもそもの原因は、俺が遅刻したからなので強く言えんのだが。
「ゴメン、ゴメン。ちょっと、朝ごたついててね。
それよりも……おはよう、三人とも」
「「おはよう、神田君」」 「ふん……おはよう」
高町さんと月村さんは普通に挨拶を返すのだが……
バニングスさんはそっぽを向いて挨拶をする……どうやら少々ご立腹の様だ。
「あはは……まぁ、取り合えず応援しに来たんだし…応援しよっか?」
「うん」
「ほら、アリサちゃん…一緒に応援しよ?」
「はぁ……そうね、すずか……私達、応援しに来たのよね。
神田…アンタ遅れて来たんだから、しっかり応援しなさいよね」
「了解、三人に負けないように応援をがんばるよ」
女の子3人と男の子一人……。
どういう状況であれ、男が応援の声出しで女の子に負ける訳にはいかんな。
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「「「がんばれ~!」」」 「梶田先輩!! その調子ですよォ!!」
と…調子こいて、いつもの以上に声を出す事29分……正直もう疲れてきた…
高町さん達に負けないように気張ったが……限度を間違えたようだ。
ビィ――!!
ここで前半戦の終了を告げるホイッスルが鳴る…。
今の状況は翠屋JFCと桜台JFCの得点は共に0点……後半戦が見物の試合になってきた。
休憩時間に入り、選手がゾロゾロと帰ってくる
そして大半の選手が俺の元へと駆け寄る…、監督である士郎さんではなく、俺にだ…
なぜ俺なんだ? 士郎さんの所に行って戦略とか、相手の弱点とか聞きに行くだろ、普通。
「なぁ、お前って神田だよな? 数日前にうちとの練習試合に出てた」
「えぇ、そうですよ、先輩。先日の試合に出てた、神田ッス
士郎さんから翠屋JFCの試合が有ると聞いて、今日は応援に来ました」
一人の先輩が声を掛け、俺はそれに答える。
というか……アンタ達、俺を囲むのをやめてくれ……カツアゲされてる気分だ。
「そっか! お前、応援に来てくれたのかぁ!」
「なんだ、なんだ、かわいいとこ有るじゃんか!」
「わ、ちょ!? 撫でなくても!」
一人の先輩が俺のわしゃわしゃと頭を撫で、さらにもう一人が……と、人数が増える
傍から観たら…微笑ましいと思うヤツも居るかもしれんが……俺的には助けてほしい。
だって四方八方から手が伸びて来るんだぜ? こっちとしてはもうやめて欲しいのだが…。
―――そして後半戦開始、直前……
「ほら、神田。
後半戦が始まるわよ? さっさとベンチから立ちなさい!」
「いや、ちょっと……俺を休憩させてくれよ、バニングスさん。
俺…さっきのインターバル中、ほとんど揉みくちゃにされてたんだぜ?」
今俺の言った事は本当の事…
最終的に士郎さんが戦略の伝達をするまで、あの状態は続いたのだ。
「それはそれ、これはこれよ。
選手達が頑張ってるんだから、私達も頑張らなきゃダメでしょ!」
おぉ……なんとも正論な事を言ってくるんだ、バニングスさんは…。
彼女の言う通り、選手達が頑張ってるのに俺が休むのは……ダメだよな?
そう思い…俺はベンチから立ち、高町さん達の応援に加わる。
「先輩ー!! ファイトォー!!」
:
:そして、30分後
:
:
ピィ――!!
『試合終了! 終了! 2対0で翠屋JFCの勝ち』
審判の高らかなホイッスルの音の元、試合の終了と勝敗が宣言される
勝ったのは……翠屋JFC…。
後半で勝負がついたのは、士郎さんがインターバルの最後に伝えた戦略が成功した事
そして、ゴールキーパーの久川先輩の活躍が有ったからだろうな……。
「わーすごい、すごい! 勝っちゃた!」
「当然よ、なのは! 私達が応援したんですもの」
「ア、アリサちゃんたら……」
グラウンドに居る翠屋JFCの選手達は勝利に喜び…
こちらのベンチの応援組みも歓喜に包まれている。
だが、生憎と俺はお疲れ気味……。
皆ほどの高いテンションを出す気力がない。
「……勝った、よかったぁ」
「はぁ…神田。
アンタ…応援したチームが優勝したんだから、もう少しテンション上げれないの?」
バニングスさんは呆れ顔で俺を見てくる。
あのなバニングスさん、当然俺も嬉しいさ……応援したチームが勝ったんだから。
でもな? それでも俺はこう思うんだ……休憩したい―――と
:
:
:
:
:
:
試合も終り、士郎さんの案内で俺達は翠屋へ移動した…
そして、今は祝勝会が開始されようとしている時である。
……『『『『カンパ~イー!!』』』』……
―――ゴクッ、ゴクッ!
「クゥ~! 疲れた時のオレンジジュースは最強だな」
「いや、アンタ……何で私達と一緒の席に居るのよ?
アンタ、翠屋の中に居る選手達に呼ばれてたじゃない」
そう言って、ジト目で見てくるバニングスさん……。
彼女の言うとおり、今俺は高町さん達が居る翠屋のテラス席に座っている。
翠屋JFCのメンバーの全員は店内で祝勝会中……先ほど乾杯も聞こえてきたし
あちらも飲み物を飲んだり、食べ物を食べている頃だろう。
で、バニングスさん…なぜここに俺が居るかって? そんなの決まってるじゃないか?
「試合の時のインターバル中、ずっともみくちゃだったからさ…
祝勝会でも、もみくちゃにされる可能性があったから避難してきた」
「はぁー、アンタ、私達を避難所みたいに言うじゃないわよ。
というか、男ならあのぐらい甘んじて受けなさいよ」
「いや……応援で疲労した体にあれは勘弁して欲しい。
てか…そもそも、何で俺がもみくちゃにされている時に助けてくれなかったのさ」
俺の記憶が正しければ、この3人組はインターバル中俺と選手のやり取りを傍観してた。
少しぐらいは止めに入ってもいいと思うんだ……。
「それは…あれよ、男の友情に水押さすのもどうかと思ったのよ」
……バニングスさん…それ、俺の目を見て言ってくれないかな?
何で露骨に目を逸らしながら言うのさ。
「にゃはは……仕方ないよ神田君、あの人数は流石に…」
「うん…あの人数は私達じゃ、どうしようもないよ」
『どうしようもない』って…月村さん、その中心に居た俺の気持ちを察してくれ。
……ちょっと怖かったんだぞ?
「まぁ、もういいじゃない? 終った事なんだし。
それに…アンタ、いつまでも過去の事をウジウジ言うと男らしくないわよ」
「ぐッ……分ったよ。 もうこの話はおしまいにするよ」
「ふん、わかればよろしい」
そう言ってバニングスさんは、勝ち誇った様な顔をする
何か……負けてもいないのに敗北感があるのはなぜだろうか?
まぁ、いいけどさ……。
―――カラーン♪
「おや? 神田君、ここに居たのかい?」
と、ここで店の中に居た士郎さんが翠屋から出てくる……。
「はい、やっぱり応援組みは応援組みでって思ったんで……」
「あはは、なるほどね」
士郎さんはこちらの席に近づき、はにかむ…
相変わらず笑顔が良く似合う人だ。
「お父さん、お店の方はいいの?」
「ん? あぁ、大丈夫だよなのは。
皆の料理も出し終えてるし、今日は祝勝会が終ったら店を閉めるからね」
「え? 祝勝会が終ったら店を閉めちゃうんですか?」
「そうだよ、すずかちゃん。
今日は……午後から大切な約束があってね」
そう言って、士郎さんは俺を見てくる。
その顔は……どことなく嬉しそうで、闘志に燃えている顔だった。
そして…そんな士郎さんの顔を見て、自分の頬が自然と釣り上がっているのがわかる。
「―――楽しみにしてますよ? 士郎さん」
「―――あぁ、僕も楽しみにしてるよ……神田君」
互いから発せられる闘気に、辺りは静かになる。
バニングスさん達は会話を止め、ただただ俺達を静観している。
そして…静かになった事で、店の中の声も自然と聞こえてくる
『あれ? 士郎さんどこ行ったんだろう? なぁ、お前知ってる?』
『いや、知ねーぞ?』
会話からして、士郎さんを探しているようだ。
「……ふぅ。
じゃあ…僕はそろそろ店の中に戻るよ、選手達が探しているみたいだからね」
「……ええ、そのようですね。
お仕事、がんばってくださいね?」
「ははは…ありがとう、神田君」
そう言って、互いに小さく手を振り合う。
そして、士郎さんは翠屋の店内へと消えていった……。
「ちょ、ちょっと神田!? 何なのよ今の!」
「う、うぅ……2人がちょっと怖かったよぅ」
辺りの空気が戻り、バニングスさん達は声を上げる。
バニングスさんは疑問を抱き、焦りながら質問し…
月村さんは小さな恐怖を抱き、少し気落ちしている。
「す、すずかちゃん、大丈夫?」
そんな状況下の中で、一人だけ何ともないのは高町さんただ一人。
流石は剣術の家の子といったところか。
「まぁ…お互いに力んだってだけだよ、バニングスさん。
それと……ごめんね、月村さん。 配慮が足りなかったよ」
「う、うんうん。
私は別に大丈夫だから……でも、何で2人共あんな雰囲気になったの?」
「そ、そうよ! すずかの言う通りよ!
私達、アンタと士郎さんが喧嘩するんじゃないかって思ったのよ!」
バニングスさんは俺に人差し指を向け、声を荒げる……どうやら、少し勘違いをさせてしまったようだ。
「ごめん、ごめん…。
ちょっと…士郎さんとの約束が有ってさ、その関係でお互い力んじゃたんだ。
だから…別に俺と士郎さんの仲がどうこうって訳じゃないから、安心してよ」
「約束? それって……士郎さんが言ってた大切な約束の事よね?
アンタ、一体何の約束したのよ? 士郎さんがあんな風になるなんてよっぽどよ」
「う、うん。
私も始めて見たよ、アリサちゃん……なのはちゃんはどうだった?」
「えっと……実は、私も最近知ったんだよねぇ……にゃはは……」
月村さんからの質問に対し、照れくさそうに頬をポリポリと掻きながら高町さんは答える。
高町さんの回答を聞き、俺は『少し意外だなぁ…』と考える。
というのも…家族と一緒に暮らしているはずなので、何回も観ていると思ったからだ。
「約束の内容は単純だよ。
俺と士郎さんがただ戦うだけさ……これでOKか?」
特に隠すこともないので、さらりと約束の内容を伝える。
しかし、俺の言葉にバニングスさんと月村さんは首を傾げるだけ……なぜだ?
「? いや、ちょっと待ちなさいよ。
戦うって、アンタ……一体何で戦うのよ? アンタと士郎さんでやる事って言えば……」
「……もしかして、サッカーとかじゃないかな? アリサちゃん。
ほら…神田君ってサッカー上手だし、士郎さんもサッカーの監督さんやってるよね?」
「あぁ! なるほどね! 流石はすずかね」
「えへへ……。
最近、推理小説を読み始めた御かげだよ、アリサちゃん」
……いや、大いに間違ってるぞ? 2人共……。
だから…そんな『解った!』って感じに手を”ポン!”と重ねないでくれバニングスさん。
そして…嬉しそうに笑わないでくれ、月村さん……君の推理間違ってるからさ。
「いや…捻らなくてもいいんだって、2人共。
戦うってのはそのままの意味だよ。ほら、武道家や剣術家が試合したりするアレのこと」
このまま『サッカーで戦う約束をしている』みたいな誤解を招くと、ややこしい事に成りそうなので二人に真実を告げる……。
「「………………は?」」
「? どうした、2人共?
そんな、鳩が豆鉄砲食らった様な顔して」
今の二人の顔は、まさに俺が今言った通りの表情をしている。
……念の為言っておくが、別に二人が鳩顔とかではないからな?
「えっと……神田君?
予備知識が無いまま、お父さんと戦うって言われても……普通はこうなるよ?」
「え? そうなの?」
「うん。
私も…お父さんから神田君の事、色々聞いてなかったらこうなってたと思うの」
なるほど。
そういえば…バニングスさんと月村さんには俺の実力を聞かせた事は無かったな。
「えっと……説明要る? 二人共?」
「あ、当たり前よ! どういう事なのよ!?」
「(コク! コク!)」
バニングスさんは荒ぶり。
月村さんは首を上下に振る。
どうやら、説明がいるようだ。
:
:
:
:
:
:
「―――という訳だよ、二人共」
俺が今回説明した事は……
・俺が武道をしている事
・士郎さんと戦う理由
と、まぁ…以前、高町さんに言った事を二人に説明していた。
ちなみに、この二人には六式という名前は紹介したが、技については説明していない。
というのも…六式の技に問題がある、空を飛べる? 高速移動? Etc.……
六式は魔法ほどではないが……それでも、一般論からすれば異常な事には変わりない。
なので六式の事は普通の打撃系の武道……という事にしてある。
六式の表面上の説明を受けていた高町さんは、最初こそ『あれ?』という状態だったが、
次第になぜ本当の事を言わないのかを察し、口を挟んでくることは無かった。
空気が読める子は本当に助かるねぇ……。
「まぁ、大体は解ったけど……アンタ、本当に強いの?
『ただ見栄張ってるだけ』って落ちじゃないでしょうね」
「いや、大丈夫だって……。
少なくとも、そこら辺の一般人よりも強いから」
まぁ…一般人に限らず、武道系やってる人とかにも負ける気はせんがな。
「えっと……一般人って、大人の人も?」
「大人にでも勝てるよ、月村さん
てか、一定以上の実力がないと士郎さんに挑戦しないって」
「そ、そっか……。
で、でも…神田君って士郎さんに勝つ気なの? 私は正直無理だと思うんだけど……」
そう言って、月村さんは不安げに言葉を発する。
多分、月村さんは士郎さんの実力を知る機会があったのだろうな…
そして、俺と士郎さんを比較して『勝つのは無理』という結論に至ったのだろう。
だが…その結論は所詮、月村さんの頭の中に居る俺と士郎さんを比べただけのこと
本当の俺の実力を計算に入れていない、ただの想像だ。
「やるからには勝つさ……。
それに…俺はこの分野に関しては、自分の負ける姿なんて想像した事無いしね」
「そ、そうなんだ……」
月村さんは苦笑いをして、言葉を返す。
どうやら…俺の言葉に対し、どういう対応をしていいか分らないようだ。
「はぁ……その自信はどこから来るのかかしらねぇ」
「それは勿論日々の努力からだよ、バニングスさん」
「ふぅ~ん…努力ねぇ……まぁ、いいわ」
バニングスさんは俺を見た後視線を外し、そう答える
大方また『アンタが努力?』みたいな事でも考えたのだろう。
と、そんなバニングスとの会話が終り、空を少し眺めいた時である。
店内から少しだけ声が聞こえてくる。
『―――パン! パン! もうそろそろお開きにするぞ、みんな。
食器やグラスはそのままテーブルに置いといて大丈夫だから』
……『『『『は~い、ありがとうございます、士郎さん!』』』』……
士郎さんが手を叩く音、そして声を聞き祝勝会が終るのだと悟る
―――カラーン♪
そして…数分もしない内に選手達は翠屋から出て、各々帰宅していった
最後に店に残ったのは士郎さんとゴールキーパーである久川先輩、そしてマネージャーの
谷井さんである。
窓越しに見る限り、どうやら2人は食器の片付けを手伝っているようだ。
ここで補足しておくが、あの2人は原作ではジュエル・シードの暴走に関与しいる
まぁ、関与といってもただ巻き込まれただけなのだが……
久川先輩がジュエル・シードを谷井さんにプレゼントし、谷井さんが発動させてしまたという流れだ。
そして、そのジュエル・シードの発動は今日起こる……。
だから…久川先輩に翠屋へ移動する際、それとなく質問しておいた
『翠色の石みたいなの持ってませんか?』とね。
結果は持っていなかった……一応、見聞色の覇気で確認したから間違いない。
恐らくだが、長野から以前もらったジュエル・シードが今回の分だったのだと思う。
確か長野が『サッカー部の部室近くで拾った』って言ってたし、それに久川先輩ってうちの学校のサッカー部のキャプテンだし……本来は久川先輩が拾うはずだったのだろう。
原作との歪みの事をその時考えたが、良い方向への歪みなのでとくに気にはしていない。
「あら……皆帰っちゃうわねぇ…。
この後、パパとお買い物の約束あるし……私もそろそろ帰ろうかしら?」
「そうだね……。
私もお姉ちゃん達と約束あるし……」
「ほえ? そうなんだ……。
じゃあ、私達もお開きにしよっか」
「ええ」 「うん」
バニングスさんと月村さんは、家族との約束がある為もう帰るようだ。
「あ、そういば神田。
月曜日に士郎さんとの試合の結果を教えなさいよ。
『やるからには勝つ』なんて言ったんですもの、楽しみにしてるわ」
俺を含めた全員が席を立った際、バニングスさんから声が掛けられる。
その顔はニヤリと笑っている……どうやら、俺の敗北を話題におちょくる気らしい。
「ああ、任せとけって。
俺は有言実行派の人間だ」
「ふ~ん、じゃあ月曜日楽しみにしてるわ」
そう言って、より興味を持った目でこちらをひと見た後、
バニングスさんは月村さんの隣へと移動する……どうやら、帰り道は一緒のようだ。
「またね、アリサちゃん、すずかちゃん」
「また月曜日に学校でな、二人共」
「ええ。
じゃあ、また月曜日に会いましょ、なのはに神田」
「ばいばい、なのはちゃん、神田君」
お互いに手を振り合い、別れの言葉を掛け合う。
そして、バニングスさんと月村さんが見えなくなった辺りで手を振るのを俺達はやめる。
「神田君はこれからどうするの?」
「そうだな……。
店内の片付けを手伝おっかなぁ……三人じゃあ時間掛かりそうだし」
「うん! じゃあ、一緒にお手伝しよっか。
3人よりも、5人の方が早く終るもんね!」
高町さんは笑みを浮かべながら翠屋のドアの前へと移動し、カラーン♪ という音をたて
ながらドアを開ける。
どうやら、高町さん自身も士郎さん達を手伝う気だったようだ。
俺は高町さんが支えているドアへと近づきながら、窓越しに見える士郎さんを見て
『後、少しか……』と数時間後に起こる戦いに、俺は再び心が躍るのだった―――
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