久遠の神話
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第四十七話 アメリカ軍人その九
「何しろカレーは海軍からはじまっているからな」
「それとコーヒーもですね」
「そうだ。カレーにコーヒー、肉じゃが、後はビーフシチューもだ」
工藤はこの話は既に高橋に話している。洋食は海軍の士官食からはじまっているものが多いのである。
「海軍からはじまっているからな」
「そうでしたね。カレーは栄養をバランスよく摂りやすいですし」
色々な食材を入れるからである。
「野菜も肉も」
「そういうことだ。だからだ」
「ううん、カレーも面白いですね」
「カレーはいい料理だ」
工藤はこうまで言う。
「だから今週も金曜日はカレーだ」
「地連の食堂で召し上がられるんですね」
「そうするつもりだ」
「無論私もだ。いや、この地連の給養は空自さんだからな」
一佐はここでも笑顔で言う。
「美味いものを食べられて嬉しいよ」
「本当に陸自さんって料理が酷いんですね」
「うちに美味いものはないよ」
こんな言葉さえ出る始末だった。
「イギリス人の料理よりはましかも知れないがね」
「そこまで、ですか」
高橋はそれぞれの自衛隊の違いをおおよそだがわかってきた。今の彼等はそうした話をして平和な中にあった。
だがそうでもない場所もあった。一人の剣士がうず高く積まれた金ののべ棒を前にして満足している面持ちで言った。
「これでよし」
「その黄金をですね」
「祖国に捧げる」
その剣士はこう声に対して言う。
「そして私もまた」
「その祖国の為にですね」
「戦う」
そうするというのだ。
「だから私はこの国に来たのだ」
「日本にですか」
「他の剣士達には何の怨みもない」
剣士は素っ気無く言う。
「まだ誰とも面識はない」
「ですがそれでもですね」
「戦いそして倒す」
剣士としてそうするというのだ。
「必ずな」
「そして最後の一人まで生き残り」
「祖国が永遠に世界のリーダーであること願う」
「永遠ですか」
「かつてそう願った者はいるか」
「永遠というのはなかったです」
祖国を世界の盟主にすると願った者はいたがそれでもだというのだ。
「数百年はありましたが」
「ローマ帝国か」
「唐帝国、モンゴル帝国、そして大英帝国」
「そうした国々か」
「中には皇帝になる者が自ら剣士として戦ったこともあります」
「チンギス=ハーンか」
「カエサルもそうでした」
そうした人類史の英雄達の名が挙げられていく。
「彼等は元々非常に優れた英傑でした」
「それに剣士として勝ち残り」
「そして自分達の国を世界の盟主としたのです」
「しかしだったな」
「永遠には望みませんでした」
それはなかったというのだ。
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