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SHIN プリキュア

作者:ジサボケ
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第一話 光の戦士

歩いて帰る帰り道、その日はたまたま一人だった。友達がいないわけではない。色々あって、たまたま一人で帰ることになったのだ。ちょっと寂しい。けれど心地よさも感じる。何にも縛られないこの感覚は、いわゆる自由というもののミニチュア。誰もが求める幸せの、かけらの様な時間。本当の幸せはこれを100倍濃厚にした時に訪れる。たぶん、そう。いや、どうだろう。正直分からない。幸せって何だろう。

私は何で生きてるんだろう。真剣に、ちゃんと考えてみる。そして思った。
「アニメ・・・見るためかな。」
え、お前あの名作を見てないの?マジで?それ人生半分損してるよ。そんなことを言うやつがたまにいる。そして決まって、お前の人生の半分はアニメか、というツッコミが入る。しかし、最近つくづく思う。私、人生の半分、いやそれどころか7割くらいはアニメに注いでるかもしれない。本当に、そんな感じがする。残りの3割は何だろう。たぶん、ただ死にたくないから生きる、とか、生きたいから生きる、とか、理由にならない理由がそれなのだろう。
果たしてそれでいいのだろうか。この世界は何のためにあるのか。私は、何のために生まれて何をして生きるのか、答えられないなんて
―ゴツン!
著作権を犯すギリギリのところで、奴は現れ、私の額に直撃した。

分かるかな、あの痛さ。ほら、上に障害物があるなんて思わなくてさ、思いっきりジャンプしたら案の定、頭にクリーンヒットみたいな。火が出るっていうか星が出るっていうか、とにかくガツンと何かにぶつかって一瞬起きた事態の収集がつかなくなるあの感じ。私はそれに近い攻撃を喰らった。自分の人生について考えていたら、いや、考えていたときに限ってその打撃を喰らった。人が集中しているときに受ける攻撃というのは、いわずもがな相当痛い。実際に相当痛かった。本当に、何が起きたのかと思った。事の次第を整理しようと、目を開けて、尻餅をついた体を起こした。そして私の頭にダメージを与えた存在が人なのであればキレる。人でなければぶっ壊す。そんな気持ちで周りを睨んだ。
「はぇ・・・?」
私は事の次第を整理しようと、目を開けて尻餅をついた体を起こしたのだが、おかしい。私の頭の中はさっきよりもぐちゃぐちゃになった。混乱というかパニックというか。パニッシュというかパトラッシュというか。ラディッシュのようなバディっす、みたいな。おい田中、お前バディは?え、先生何言ってるんですか、ここにいますよ。どこだ?ここですよ。まさかお前。はい、そうっす。これが俺のバディっす。ラディッシュのようなバディっす。田中、お前が言っていることはおかしい。何でですか?それは、ラディッシュのようなバディではない。バディがラディッシュなんだ。まごうことなきラディッシュなんだ。つまりお前は、何を言ってるんだ?さあ。さあ?はい。はい・・・?私の中の田中と先行が脱出しても何も得ないラビリンスにハマってしまう。何でって、当然でしょ?だって今目の前にいるのは、
「・・・?」
目の前にいるのは・・・、何だ?何だこれ。これっていいうか、生き物?意味が分からない。生まれてこの方14年、一度も見たことが無い生き物のようなぬいぐるみのような謎の物体。それが、そう、確かに浮いてる。たぶん、こいつが私のおでこに飛んできた物体の正体。わたしに言葉に出来ない痛みを与えた物体の正体。そんで、それが何か凄い見てくる。意味が分からない。いや、分かってはいけない気がする。
そう思った瞬間私は、走った。
「ななななんで逃げるメイイイイ!?」
「ぎゃああああ喋ったああああ!!」
そして奴は猛スピードで追ってきた。ある日少女が森の中で遭遇した熊はトコトコとその後を追ってきたと言う。しかし今私が追われている謎の生物はそんな甘いもんじゃない。なんたって浮いてるのだ。地面との摩擦などゼロなのだ。浮力が体力の消費と引き換えならこちらにも勝算があるだろう。しかしおそらく、その算段は今回意味を成さない。なぜなら奴は叫んでる。叫びながら追ってきている。明らかにその浮力は体力とは無関係。息の上がる様子など皆無。つまり奴のスピードは、落ちない。
「止まってくれメイイイイ!!」
無理だ。
「頼むメイイイイ!!」
嫌だ。
「メイイイイイイ!!!」
最後の「メイ」は「おい」のようなものか?そんな余計な事を考えてしまった、その時だった。
―ドン!
また何かにぶつかった。今日はよくぶつかる。先生、今日この日を、ぶつかる記念日に制定し国民の祝日としましょう。田中、お前は休みたいだけだ。そしてやはり、私の中の田中と先行が不毛な言い合いを始める。次は何だと顔を上げる。そして目に飛びこんでくるそいつの正体。それは、
「あ・・・あ・・・。」
化け物だ。私なんて一捻りでやっちゃうんであろう、化け物。もう本当に意味が分からない。夢でも見てるのだろか。そうか、夢か。きっとそうだ。だったら、
「別に・・・死んでもいっか。」
その時すでに化け物の、車一台ぶんはありそうな拳が私に降りかかっていた。でも逃げない。どうせ夢。
―うんん、夢じゃなくても逃げなかったかも。だって私の生きる意味なんて・・・。
「伏せて!!」
―ズドンッッ!!!
爆発音がした。そしてどうやら私は死んでいない。この夢か現実か分からない世界で、私は死ななかった。目を開けて前を見る。今度は尻餅をつかなかった。そして私の目に飛び込んできたのは、ぶっ倒れる一体の化け物と、一人の女の子・・・?
「あなたどうして逃げなかったの?大事な命、無くなっちゃうよ?シープ!この子を安全な場所に!」
何だか偉そうにされてしまった。いや、命の恩人だから偉いのだろうけど・・・何とも言えない気持ちとあまりの出来事の連続に、私は黙りこくっていた。そして先ほどシープと呼ばれていた白い生き物が、私の視界を妨げる。
「逃げるシプ。」
えっ・・・そんな声も出ないうちに、私はどこかへ連れて行かれた。テレポートだ。時空を越えて物体を移動させる技、テレポート。これはそう、確か何かのアニメで見た。だから知ってる。知ってるよ。知ってるけどさ・・・思考回路はショート寸前、いや、もうショートしてたのかも。怒涛のメルヘンな出来事は、私の体力を想像以上に奪っていたのだ。
「あれ、寝てるシプ。」

私の体は、この世のものとは思えないほどフカフカなベッドに移され、その後2時間最高の睡眠を取った。
 
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