DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
第41話:多角的視野ッス
(海上)
ウルフSIDE
「あれ……お前は何について怒ってるの? リュカさんが不倫している事か? それともリーダーのお前に媚諂わない事か?」
俺はてっきりまともに会話をしないリュカさんに怒りを覚えたのかと思ったのだが、シン君から出てきた言葉を聞くと違う様な気がしてくる。
「べ、別に媚諂わないから怒ってるんじゃありません! いい大人が起こす騒動では無いと言ってるんですよ!」
おかしな論理だな……
「いい大人だから起こす騒動だったろ……男が女とヤってるとこを見られ、女の姉が騒ぎ出す……子供はダメだろ、こんな騒動を起こしちゃ。まぁこのままいくと、俺も起こしそうだけどね(笑)」
俺は大人だけど、女2人が子供だからなぁ……
「何を言ってるんですかウルフさん! 貴方はあのトラブルメーカーの肩を持つんですか!?」
「肩を持つとか、そんなんじゃなくて……」
意外に潔癖症なのか? いや……俺とリューノの仲を知っても騒がなかったし、男女の事柄に厳しい訳ではないだろう。
「……はぁ、よし分かった! 今回の騒動の件を冷静に分析してやろう」
「ぶ、分析されるまでもありません……十分に解っていますから!」
めんどくせー……リュカさんがちゃんと説明しないからこうなるんだ!
何時もあやふやにして誤魔化すから……
「良いから聞け。確かに今回の騒動はリュカさんの手癖の悪さが原因だが、誰も彼を責める事は出来ないんだよ! 出来るとしたら、この場に居ない奥さんだけ……」
「そ、それはどういう意味ですか?」
「じゃぁ聞くが、既婚者の男が未婚の女性を口説き、性行為をするのは違法か?」
「……いえ」
う~ん……どうにも気に入らない様子だ。
「そう、違法じゃない! 不道徳ではあるが、何ら罰せられる事……責められる事はない!」
「で、ですが……」
言い募ろうとするシン君に右手を翳して止める。
「今回の事で、リュカさんに罵声を浴びせる権利を有するのは、各々の家族だけ……リュカさんの場合、妻と子供達……ついでに愛人ズ。ミネアさん側は姉のマーニャさんだけ。実際マーニャさんは怒鳴ってたけどね……」
ここまで説明しても不満顔だ……
「あの騒動の発端はリュカさんとミネアさんでも、原因はマーニャさんなんだ。彼女があれ程の大声を上げなければ、大勢のギャラリーは集まらなかったし、密かに終息させる事が出来たんだ」
「ではウルフさんはマーニャさんが悪いと言うんですか!?」
……そろそろブッ飛ばそうかなコイツ。
「そうじゃなくて、誰の所為でもないんだって言ってんだよ! 嫌な想像をさせるが……お前の母親が、父親以外の男とヤってる現場に遭遇する。お前はどんなアクションをする?」
「そ、そりゃ……怒ります。多分、男の方に対して怒ります」
「そうだ……仮に母親に対して怒るんでも、家族としての態度はそれで良い! でもシン君や他の皆は、リュカさん・ミネアさんの家族じゃないだろ。“不道徳な連中”と蔑む事は出来ても、声を荒げて説教する権利は無い!」
何となく理解出来てきたのか、唇を噛んで俯くシン君。
「勿論、他人でも怒って良い場合が存在する……」
「え、それは!?」
え~……聞かなきゃ分からないの?
「おいおい……そりゃ恋人が寝取られた時だよ」
俺が笑いながら言うと、強く顔を顰める。
まぁ、俺も笑ってる場合じゃないんだけどね……マリーからすれば、彼氏を姉妹に寝取られた事になってるし。
「お前あれだろ? リュカさんの事を知りたくて、勇気を出して話しかけた……そうしたら不真面目な事を言ってはぐらかされ、その事にイラついたんだろ!?」
俺はシン君の頭を軽く撫で、労る様に話しかける。
すると少し涙目になりながら“コクン”と頷き俺を見詰める。
あぁ……ティミーさんが年下だったら、彼みたいに可愛い存在として優しく出来るのに……
一応年上で、俺よりも地位が上で、世界を救った実績があり、圧倒的に俺より強い……
だから厄介なんだよ!
まぁ今はシン君の事を考えよう。
「あの人と会話をしたいのなら、まともな答えが返ってくる事を期待しちゃダメだ。巫山戯合いながら、その中にまともな事柄を織り交ぜて会話できるようにならなきゃ……」
「えぇ……何だか難しそうですねぇ……」
「何だかじゃなく、とても難しいぞぉ……しかもあの人は常に相手を推し量っているから、言葉のキャッチボールが出来ないと、まともに相手してくれなくなる」
「……厄介な人だなぁ。どうしてウルフさんは、リュカさんを師事してるんですか? 現状では納得いかないんですけど……」
だよね~……俺も時々そう思う!
「う~ん……一言でも百言でも説明するのは難しいな! あの人の凄さは、目の当たりにしてみないと分からないからね……」
そう……一緒に行動して、初めて解るのがリュカって人物なんだ。
「はぁ~……あんな事を言ってしまった俺は、もう嫌われているだろうし、手遅れですよね?」
「そんな事はないぞ! 俺も最初の頃はシン君みたいな態度をとったときがある。でも今は問題なく接してくれている……そんな心の狭い人じゃないから」
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫だ! 俺が一緒に行ってやるから、リュカさん達と共におちゃらけてみようゼ! あの人色に染まれば、あの人の事が少しは見えてくるから……『人としてヤバイんじゃね』と思う事もあるけど、間違いなく楽しいから!」
言い終えるや、俺はシン君の手を取りリュカさんの下へ直行する。
娘達を従え、歌を歌っている師匠の下へと……
この時代の勇者の胃は、この俺が守ってやらないと!
ウルフSIDE END
(船上)
アリーナSIDE
船尾方でクリフトと二人、お喋りを楽しんでいると……
中央付近からリュカの歌声が聞こえてきた。
相変わらず綺麗で巧い歌に、クリフトと共に聴き入ってる。
クリフトの胸に耳を当て、リュカの歌に合わせて心臓の鼓動を楽しむ。
彼の手が私の頭を優しく撫で、更に強く抱きしめてくれる。
最高の一時だ……
だが心地よい時間とは短く終わるモノで、音楽を奏でる中央付近にモンスター達の気配が!
クリフトの瞳を見詰め互いに頷き合い、ダッシュで中央付近へ駆け付ける。
そこは勿論戦場だった!
進行方向右側からは『首長竜』が船に半身を乗り上げ、皆に向かって火の玉を吐き出す!
しかしミネアのバギマにより火の玉は打ち消され、逆に切り刻まれている。
そしてトドメはブライのヒャダルコ。
左側の甲板には、『トドマン』が2体乗り込んでおり、シンとマーニャ相手に戦っている。
敵の怪力を、剣や盾を使い受け流すシン……マーニャはギラを連発し、トドマンにダメージを与えている。
そこへクリフトがスクルトを唱え参戦!
防御力が上がったシンは敵の力を物ともせずに、強烈な一撃を浴びせトドマンを1体倒しきる。
出遅れた私は颯爽と踏み込み、ある程度ダメージを負っていたもう一体の敵を蹴り飛ばす!
会心の一撃だった……遙か彼方の海面に飛んでいったトドマンは、そのままあの世へと旅立ち戦闘は終結する。
「すげー嬢ちゃんだな……あの巨体をあそこまで蹴り飛ばすとは!」
私の蹴りを見て驚いてたのは、ウルフと呼ばれるリュカの弟子(部下? 義息?)だ。
きっと私の強さに惚れ惚れしたのだろう。
「本当に女かよ……」
だがしかし、続けて出てきた言葉に私は激怒する。
「な、何だと!?」
振り返り奴を睨みながら腕まくりをし、臨戦態勢になる私。
すると奴も剣を抜き、私の方に近付いてくる。
即座に間合いを詰めた私は、拳と足を駆使し連撃を試みる……が、全てをアッサリ躱され私は無防備状態になってしまった!
その瞬間“ザシュ”という音と共に、私の後方で何かが切り落とされた。
咄嗟に振り返り、自身の無事を確認する私……
だが何処にも怪我は無く、私が切られた形跡はない。
では何を切ったのか?
慌てて周囲を見渡すと、ウルフの足下に『突撃魚』と呼ばれる魚状のモンスターの死骸が……
「撤回する……やっぱり女の子だ。戦闘が終わると直ぐに気を緩め警戒を怠る。お姫様だなぁ……」
どうやら彼は、海面に漂っていた敵の気配を感じており、戦闘が終わったと思い込んで隙だらけになった私を助けてくれた様だ……
く、悔しい……
私はコイツに言い返せないでいる。
「い、一応お礼は言っておく……わ。あ、ありがとう」
悔しかったけど……認めたくなかったけど、助けられた事は事実。
だからウルフが私の横を通り過ぎる瞬間、お礼だけは言ったのだが……
(さわさわ)「きゃぁ!」
突如私のお尻を触り、振り返りもせず言い放つ……
「お礼は今貰った(笑)」
と、お尻を触った手をヒラヒラさせながら言い放った!
く、くそぅ……
確かに弟子だ……コイツはリュカの弟子に違いない!
ムカツクところも、強いところもリュカにそっくりだ!
頼りになるところまで一緒なのだろうか?
アリーナSIDE END
後書き
リュカさんはウルフの行動をニヤニヤしながら眺めてます。
ちょっと嬉しいんでしょうねぇ。
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