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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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兄としての矜持

「じゃあ、向こうの部屋に戻るか」

「そうだね。さすがに本題に入らないと」

「・・・・・・その前に」

「?」

シノンたちが疑問符を頭の上に浮かべるが、説明をしている暇はない
足に力を入れて速度をゼロから一気にトップスピードまで持っていく
向かうのは扉
瞬歩と呼ばれる歩法を維持しつつ扉を手前に引くと雪崩をうつようにキリトとアスナ、それにリズベットが倒れ込んできた

「さて、言い訳があるなら聞いてやるが?」

「俺はスグが心配で……」

「修羅場が見たかったのよ!」

「あはは……ごめんね?リン君」

「よし、素直に謝ったアスナは許す。だが、キリトとリズ。特にリズは許さん。あとで覚悟しとけよ?」

キリトとリズベットの顔色がサーっと青くなっていく
折檻するとは言っても数分くらい空中遊歩(強制)させるだけなんだが、なにをそんなに青ざめることがあるのだろうか?

「それで、結果としてどうなったの?」

「経緯や事情なんかは省くが、三人とも俺の彼女になるということで落ち着いたぞ」

「修羅場は?」

「リズの期待しているものはなかったな。特に揉めることなく終息した。全く、俺にはもったいないくらいの性格のいい彼女たちだよ」

軽く笑いながらそう言うとアスナとリズベットは微笑んで祝福してくれた

そうアスナとリズベットは

「リン……スグと付き合いたかったら俺を倒してからにしろ!」

「キリト、うるさい黙れ」

実はシスコン、キリトである。なんでも長い間妹である直葉と距離を作っていたらしい。しかしSAO、ALOを経てその関係にあったことを後悔し……シスコンっぷりが天限突破そうだ(直葉談)

それで恋愛事の機敏に疎いキリト元来の性格と相成って、漫画や小説の中でもなかなかお目にかかれない娘に依存する父親のごとき反応を見せている

ちなみに周りのキリトを見る目はとても冷たい

「はぁ……それで俺はどういう反応をすればいいんだ? 妹さんをください義兄様とでも言って欲しいのか?」

「リンに義兄様なんて言われる筋合いはない!」

この時点でリズベットは盛大に吹き出し、腹を抱えて笑い始めた
そんなリズベットの様子も目に入らないのかキリトは怒気を纏って俺だけを見ている

「じゃあ、どうすればいいんだ……」

「俺と戦え!」

……めんどくさい

「リン君……完膚なきまでに殺っていいよ」

「あはは……さすがに今回は弁護できないかな」

「リン、頑張ってね」

「戦うの?リンの勇姿、バッチリ見てるからね!」

「修羅場! 修羅場!」

五者五様の反応をどうもありがとう
正直無視して布団に潜り込んで寝たいところだが、こんなに後押しの台詞をもらったら引くに引けないか……

「しょうがない。相手をしてやる」

「そうこなくちゃな。リーファは俺よりも強いやつにしかやらない。例えそれがリンだとしても!」

「はいはい、わかりました。で、どこでやるんだ?」

一人ヒートアップしていくキリトにため息をつく
軽く流しても全くへこたれた様子もない

「この家の前の通りでいいだろう。じゃあ、行くぞリン」

キリトはそう言うと答えは聞かないとばかりに俺の手を取って引っ張っていく
抵抗する意味もないので大人しくついていく

そんな俺にシノンが顔を赤くし、左右をせわしなく見ながら声をかけてきた

「リン、その……もし勝てたらなんだけど……私からなにかあげるね」

「あ、ああ……わかった」

「リン! なにを無駄な口を叩いてるんだ? 早く行こうぜ!」

「……殺す……」

無駄口ときたか。さっきまでやる気はなかったが関係ない

期待にお応えして全力で相手をしよう

「ルールは全損でいいんだな?」

「当然だ」

家の前の通り。だいたい十メートルほどの間隔を空けてキリトと向かい合う
デュエルの申請が飛んできたので承諾。オプションから全損モードを選択した

SAOでは圏内PKにしか使われないシステムだけあって妙な感覚に襲われる

軽く頭を振るってそんな感覚を追い出すと俺は腰に吊り下げていた二本の剣を抜いた

「キリトと戦うのはいつ以来だったか?」

「クリスマスくらいじゃなかったか?」

腑抜けたキリトを強引にデュエルに誘ったのが最初だったか?
最初は剣すら構えずただ斬られるだけだったキリトを斬ってはポーションを口に突っ込み、斬ってはポーションを口に突っ込みを繰り返していたな。懐かしい

「ああ、あの時のようにはいかないぞ?なんたってリーファのためだからな!」

前半はよかったのだが後半のせいで台なしである
もう少し様子を察せるようになろうな?

「はぁ……そうか。だがまあこっちとしても期待されてるからな」

右手の剣を肩に担ぎ、左手の剣をわずかに前に突き出す、使い慣れた俺独特の構え。手の中に鋼糸を潜ませ、仕込みは上々

戦いは始まる前に八割方終わっているって言ったのは誰の言葉だったか

「覚悟はできたか?」

「リンを倒す覚悟ならな」

「その意気はよし。だが……勝ってから言うんだな」
野次馬が俺とキリトの回りを囲み、即席のスタジアムができあがる
カウントは進む。俺は回りの喧騒を意識から消してキリトだけに集中する

そしてカウントがゼロになるのと同時に俺とキリトは地面を蹴った

初撃は俺からだった
瞬歩で一気に懐に潜り込み、事前に溜めをつくっていた左手の剣を突き出す

熟練者でなければ、熟練者でも初見ならば何も気づくことなく落とされていただろう一撃
最速の歩方からの最短かつ剣技の中でも最速かつ防御のしにくい突き

とはいえ、キリトはこれくらいで落ちるほど軟じゃない

「ぜやぁぁぁ!」

気合い一閃。後ろに下がりながら放たれた斬撃に突きが打ち落とされる

「せぇぃっ!」

続け様に放たれた地を砕かんばかりのキリトの剛剣を右手の剣で払い流す

キリトが剛なら俺は柔
キリトが力なら俺は技

俺が踏み込んでキリトに打ち込もうとすれば、キリトは力で技術ごと薙ぎ払おうとし、キリトが俺を力で押し潰そうとすれば、力を反らし力を利用して俺が躱す
どちらも二刀流なので速度は普通の二倍

キリトが気合いの篭った声で剣を振る。俺は無言で剣を振るう

相反する属性の俺とキリトという歯車が噛み合い、一つの戦場となる

もちろん、このまま膠着状態が続くことは俺にとってもキリトにとっても好ましくない
俺もキリトも状況を打破しようと試みるも小手先の技術ではどちらの攻撃も相手の体勢を揺らがせることなど不可能な領域に達してしまっている

ならば、お互いに行き着く答えは一つであった

一旦距離を取る

「さて、第二ラウンドだ!」

「はいはい。ここまで来たんだから付き合ってやるよ」

口ではそんなことを言ってるが、内心かなり喜んでいる自分がいる
以前シノンに言われた戦闘狂という言葉が浮かび、苦笑い

再び駆け出したのは同時だった
ただ違ったのはお互いの剣が淡い光を纏っていたことだ

「そぉぉいぃ!」

キリトの大声にブーストされたような剣と俺の無言の剣が激突し、纏っていた紅い光が火花のように散った

片手剣突撃系剣技ソニック・リープ
発動が早く、射程も長い。相手との距離を詰めるのに優秀な技だ

属性は火が三割。物理が七割

メジャー故に俺もキリトも同じ技を繰り出していた

即座に俺はスキルコネクトで技を繋ぐ

片手剣五連撃オリジナルソードスキル、ブリーズ・スクラッチ
名前の通り軽い斬撃を不規則に重ねる技である
その利点はとにかく速いことだ
ノックバックは少ないものの、元々受け流す方が本職な俺にとってはノックバックはあまり重要ではない

「くォッ!」

ソニック・リープの短い硬直が終わったキリトは最後の二撃をギリギリで弾く

そして、弾いたあとキリトの剣が鈍い光を帯びた

それを迎撃すべく次に俺が発動したのは
片手剣四連撃オリジナルソードスキル、サーキュラー・オービット

手首を基点に剣を回転させるオリジナルソードスキル。相手の攻撃を回転に巻き込み、弾くことに特化したものだ
属性は水五割、物理五割

金属と金属のぶつかり合う音ともにキリトの繰り出した剣技が逸らされ、篭ったエネルギーがベクトルを変え無意味な空気中に散っていく

「はぁぁぁ!」

気合いと共にキリトはスキルコネクトを成功させる
いつかはできるとは思っていたがこのタイミングで成功させるとか、これだから主人公は……

嫉妬に沈みそうになる意識を落ち着けて俺もスキルコネクトで技を繋ぐ

片手剣六連撃オリジナルソードスキル、ミスト・スプリット
これもサーキュラー・オービットと同じく相手の攻撃を弾くことに特化している。異なるのは連撃数と属性、そして技の重さだ。サーキュラー・オービットが芯をしっかりと残して、そこを基点に相手の攻撃を弾くのであれば、ミストス・プリットは基点を作らずむしろ相手に合わせて変化させることで相手の攻撃を逸らすという目的で作ったソードスキル

属性は水八割、物理二割

オリジナルソードスキルシステムは本当に痒いところに手が届くものだな

さて、そろそろ決めようか

そう心で決め、口早に呪文のスペルを唱える
俺のスペル詠唱を聞いてキリトが顔色を変えるがキリトも俺と同じくソードスキルを使用中だ
中断はイコール命取り。俺のように思考を分割し、スペルを唱える技術も持っていない
つまり、キリトには座して待つしかできることがない

そして、ソードスキル同士の打ち合いが終了するそのすぐ前に詠唱を終え、魔法は発動した
発動した魔法の名前は風属性魔法のウィンドストーム
基点を決めて、そこから半径一メートルの竜巻を発生する魔法である
魔法的な攻撃力が付与されてはいるものの所詮は風。ある程度固い装備を相手が身につけていればまずダメージが入らない不遇な魔法らしい
そもそもハリケーンや台風が多大なる被害を発生させるのは、風そのものではなく、風によって巻き込まれた塵や砂、石などの固形物が原因である
ちなみに鎌鼬も原理はほぼ同じである

ここまで説明してなにが言いたいのかと言うと、ないなら加えればいいだけの話だということだ

ウィンドストームが発動すると同時に地面の中(・・・)に潜ませておいた鋼糸をキリトに纏わり付かせた

もちろん、キリトほどの筋力があれば古びて硬化してしまった輪ゴムのようにちぎれてしまうが、それは計画通り
今回使った鋼糸は単純に一本が一つのアイテムというわけではない。五センチほどの小さな鋼糸を無数に繋げた集合体なのである
つまり、一部が耐久度がゼロになって消滅しても、一気にすべてが消えてしまうということはない

さらに鋼糸を地面から引き上げたときに地面から投擲用の武器として使える石や土の塊がかなりの数舞っている

結果としてウィンドストームは鋼糸の切れ端や塵を巻き込み、キリトに襲いかかった

とっさに目を塞ぐキリト。目潰しが存在しないこの世界では悪手としか言いようがないが、そもそも現実世界を生きている生物にとって、目は防御の存在しない生身の、弱点のような箇所。情景反射として防御しようとするのは当然の理

もちろん、高速戦闘中の明確な隙を逃す俺ではない

「ふっ!」

短い吐息と共に左右の剣で同時(・・・)にソードスキルを発動させる

新システム外スキル、シンフォニー
両手で寸分違わぬタイミングでソードスキルを発動させることで本来なら不可能なソードスキルの二重発動が可能になるシステム外スキルだ

ちなみに使えるのは俺だけではなくシノンも使える

俺よりも先に使用できるようになったの追記しておこう

俺が今回発動した二つのソードスキルの名前は
片手剣八連撃オリジナルソードスキル、スターバースト・ストリームAと、片手剣八連撃オリジナルソードスキルスターバースト・ストリームBである

名前からわかるようにあのデスゲーム、ソードアート・オンラインで俺とキリトにのみ与えられたユニーク(?)スキル、二刀流の最上級十六連撃、スターバースト・ストリームを再現したものだ

キリトが驚愕の表情を浮かべて応戦しようとするがもう遅い
顔を押さえ、視界を塞いだこととスキルコネクトに失敗し
スキル後硬直をまともに受けたキリトに満足に防御しているような時間は存在しなかった 
 

 
後書き
キリトVSリンでした

いつの間にかキリトの実力を上回っていたリンです

そしてまたシステム外スキル、シンフォニー初登場
キリトがなぜこっちじゃなくてスキルコネクトを作ったのか……
結構疑問に思う蕾姫でこざいます

親の心子知らずという諺がありますが逆もまた然りだということを最近の親は忘れがちな気がします
今回はその兄妹版でした
親の気持ちもわからなくはないんですけどねー。オタクだのなんなのけなしている人はいますが、趣味の一つですよ?他人に迷惑をかけないし、どこに後ろ指を指される理由があるのかサッパリわかりません
愚痴を語るとめちゃくちゃ長くなりそうですし、私と議論したければLINEでどうぞ
IDつきで感想かメッセ飛ばしてくれれば招待しますので

あ、普通の感想もお待ちしています。ではでは 
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