サザンウィンド
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第四章
私達もそれなりにスタイルに自信がある、けれどそれは普段の節制の賜物で今の彼女達みたいに自然のものではなくて。
それで苦笑いになってこうも言った。
「羨ましいわね」
「若い娘達?」
「ええ、そう思わない?」
「思うわよ」
彼女もこうした返事だった。私の予想通りの。
「本当にね」
「そうよね、やっぱり」
「私、いや私達にもあんな頃があったのよね」
「誰にもあったのよ」
誰でも若かった頃はある、私達は今そのことを振り返った。
そしてそのうえでこうも言ったのだった。
「ああした頃はね」
「ええ。懐かしい時代よ」
「懐かしいっていうのがもうね」
「歳取った証拠よね」
「全くね。けれどね」
また私から彼女に言った。
「ここで見ているだけじゃ何にもならないから」
「これからどうするかよね」
「そう。何処に行くの?」
「ステーキも食べたしね」
その時も実は飲んだ。ただしステーキなので一緒に飲んだのはビールだった。
そのステーキとビールの味を思い出しながらこう言った。
「ちゃんとカロリー消費しないといけないから」
「歩くにしてもね」
「何処を歩くかね」
「何処に行くの?」
私はまた尋ねた。
「一体」
「あそこ歩く?砂浜」
彼女が指定した場所はそこだった。今その若い娘達がこれまた若い子達と奇麗な肌と身体を露わにさせてはしゃいでいるその砂浜に入ろうというのだ。
「昨日と同じ場所だけれどね」
「昨日は飲んで今日はよね」
「そう。歩かない?」
こう私に提案してくる。
「そうしない?」
「そうね。日差し対策も完璧だし」
今も麦わら帽子にサングラスにズボンとレッグウォーマーで完全装備だ。勿論クリームも忘れていない。
その完璧な武装のうえで私も頷いた。
「見ているだけで楽しめるし」
「沖縄の海って奇麗だからね」
「ううん、奇麗なら」
彼女と話していてふとこう思った。
「もっと見ていたいわね」
「もっとって?」
「だから。舟に乗って珊瑚礁見に行かない?」
沖縄の珊瑚礁をだというのだ。
「そうしない?」
「あっ、珊瑚礁」
「そう、首里城もいいけれど」
「それは明日の予定だから」
そこに行くことはもう決まっていた。沖縄なら、だった。
「実は今はこれといって予定入れてなかったけれど」
「だったら余計にね」
「そうね。じゃあ珊瑚礁に出て」
「歩いてカロリー消費はその後でもやれるから」
そうしないと後が怖いのもアラサーだ。三十を超えると新陳代謝が落ちてすぐに脂肪がつく、油断するととんでもないことになる。
だからそれは旅先でも忘れられないにしても楽しまないといけない、それでも今はまだだった。
「海を見ましょう」
「それじゃあね」
こうしたやり取りをしてだった。私達は近くの波止場の舟、観光で珊瑚礁に出るその舟に乗って珊瑚礁に向かった。周りの海も本当に奇麗だった。
彼女は下にあるそのサファイアを溶かした様な海を見ながら私に言ってきた。
「この頃の本土の海と大違いよね」
「そうよね。神戸でもね」
私達のいる町でもだ。
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