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サザンウィンド

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第三章

 二日酔いを解消するとホテルの朝御飯、沖縄ではなく洋食のそれを食べてから外に出た。今日は沖縄の町を歩いた。
 時々見るアメリカ兵を見て彼女はこんなことを言った。
「大きいわね」
「そうね、体格いいわね」
 私も彼女の言葉に頷く。
「やっぱり」
「自衛官の人達よりもね」
「こういうのって食べてるものの違いかしら」
「そうじゃないの?お肉メインだから」
 アメリカでは、というのだ。
「だからよ、多分」
「お肉ね」
「それで今ふと思ったけれど」
 彼女はここでこんなことを言い出した。
「どう?お昼はステーキにしない?」
「沖縄はお肉が安いからよね」
「そうよ。沖縄はステーキでも有名なのよ」
 美味しいものばかりだ、実は私はかなりステーキが好きだ。
 だから彼女の申し出は嬉しくて笑顔で答えた。
「じゃあ紹介してね」
「ええ、今から行くわよ」
 町でショッピングをして沖縄の土産ものの中で気に入ったものを買った。その中には会社の上司や同僚へのプレゼントもある。
 彼女はちんすこうを買ってこう私に言った。
「これは後で私達も食べるけれど」
「会社にも持って行ってね」
「そう、課長にも皆にもね」
「あれっ、課長甘いものいけたの?」
「いけるわよ」
「そうだったの。日本酒とかビールが好きなのに」
「あれでケーキとかも食べるのよ」
 私に対してちんすこうのケースを持ちながら話す。
「実はね」
「ふうん、そうなの」
「だからこのちんすこうも大丈夫よ」
 買って食べてもらってもだというのだ。
「じゃあ買うわよ」
「うん、それじゃあね」
「まずはこれ買って」
 そしてだった。
「町の中を適当に歩いてお昼になったらね」
「その時によね」
「ステーキよ」
 満面の笑顔で私に言ってくる。
「いいわね。食べるわよ」
「うん、それじゃあ」
 まずは買い物を済ませてそれから実際に二人で沖縄、那覇の町中を歩いた。二日酔いはもう消えていたので随分と楽だった。
 それでお昼まで旅先の散策を楽しんでからステーキを食べてまた海に出る。けれどやはりここでは泳ぐことはなかった。
 今はただ青い海と白い砂浜を見てこう言っただけだった。
「高校生とか。入社したての頃はね」
「よく海に行ったわよね」
「あの頃はね」
 つまり十代や二十代の頃の話だ。私達にとっては遥かな昔の話になっている。
「夏になるといつもね」
「水着になって泳いだわね」
「若い頃はね」
 アラサーの言葉なのは自覚している。
「こんな日差しの中でも普通にしていたわ、私も」
「私もよ。若いからできたのよ」
「シミ、ソバカスの心配がなくて」
 今となっては過去の話だ。本当に。
「できたわね」
「ええ。けれど今はね」
「夢物語よ」
 私から言った。
 目の前の海の中でも砂浜の上でも水着の若い娘達がはしゃいでいる。中学生に見える娘もその胸も腰もいやらしい。 
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