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八条学園怪異譚

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第三十三話 踊る本達その十一

「広島だけれど」
「先輩jは広島のお酒が好きなの」
「仲のいい広島の娘に勧められてなのよ」
 花子さんはいぶかしむ二人に話した。
「それでよ」
「ううんと、広島からうちの学園に来た人ですか」
「そうした人ですね」
「そうよ、今女子寮にいる娘よ」
 二人の予想通りだった、八条学園は日本全国はおろか海外からも生徒が来る学校だ、広島から来る娘もいるのだ。
「喋り方が酔うと完全に広島弁になるのよ」
「あっ、不良漫画でも出て来る」
「ああした感じね」
「そう、愛実ちゃんよりも小柄で垂れ目の可愛い娘よ」
 外見の話にもなる。
「黒髪をおかっぱにしてね、スタイルも結構いいわよ」
「何でスタイルも知ってるのよ」
 話を出された愛実が怪訝な顔で問うた。
「あんたが」
「だっておトイレで着替えることもあるじゃない」
 トイレは個室だ、だからそこで着替えることもあるからだ。
「だからそこで見たのよ」
「その先輩のスタイルも」
「結構胸大きいわよ、それで酔ったのを見たのは寮でね」
「あっ、うちの女子寮煙草は駄目だけれど結構お酒には寛容だからね」
「それでなのね」
 八条学園だけではなく学園のある八条町全体のことだ。八条町では飲酒条例が独特で中学生から飲むことが出来るのだ。
 それで学生寮でもである、おおっぴらではないが飲むことが出来るのだ。
「それで寮のおトイレで聞いたのね」
「その先輩の方言」
「そうよ、広島の娘はこれまで何人もいたけれどね」
 その先輩だけではなかったというのだ、これまで学園に来た広島の娘は。
「その中でもその娘の広島弁は本当にナチュラルで」
「ナチュラルな広島弁だったのね」
「そうだったの」
「そう、それでお酒が大好きで」
 話がそこに戻る。
「あの娘にも勧めてね」
「先輩このお酒が好きになったのね」
「広島のお酒が」
「他には焼酎も好きよ、あの娘」
 今度はこの酒だった。
「鹿児島のね」
「ひょっとし今度は広島の先輩に勧められたの?」
「そのせいで?」
「そう、だからなのよ」
 焼酎の場合も同じだった、それは。
「あの娘焼酎も飲むのよ」
「ううん、何ていうかね」
「先輩って何でも飲むのね」
「飲めればいいっていうところはあるわね」
 飲んべの特徴の一つである、特に茉莉也の様な大酒飲みの。
「実際にね」
「やっぱりそうなのね」
「美味しければどんなお酒でもなのね」
「ただしアルコール濃度が弱いお酒はね」
 そうした酒はというのだ。
「あまり好きじゃないのよ、幾ら飲んでも酔いが遅いからってね」
「まあねえ、一日三升は飲んでるみたいだし」
「それだけ飲む人ならね」
 二人もこの辺りはわかった、そこまで飲む人間ならアルコール濃度が低い酒はだ。
「ビールとかじゃね」
「物足りないわよね」
「標準は日本酒よ」
 アルコール濃度は大体十五パーセントである。 
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