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万華鏡

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第三十二話 呉の街その八

「ヤクルトはそのままヤクルトのジョワとかだよね」
「そっちになるわよね」
「それよね」
「中日は。竜なんて架空の存在だからな」 
 食べられる筈がない、しかしだ。
「名古屋だからな」
「きし麺?」
「ミソカツ?」
「味噌煮込みうどんか?」
 四人に応えながら言う。
「そっちか?」
「名古屋だからなの」
「それなの」
「で、横浜は横浜だから」
 このチームはどうなるかというと。
「中華街か」
「焼売とかラーメンとか?」
「あと炒飯?」
「そういうの?」
「焼売か、やっぱり」
 美優がそれだろうかと言ったところで言ったのは里香だった。
「横浜は昔ホエールズだったから鯨じゃない?」
「鯨か」
「そう、鯨のベーコンなり大和煮なりね」
「何か随分高いな」
 お好み焼きや味噌煮込みうどんと比べるとだ、勿論ヤクルトとは比較にならない。
「横浜だけな」
「それはそうよね」
「鯨なあ、嫌いじゃないけれどな」
 美優は微妙な顔になって言う。
「高いんだよな」
「昔は安かったらしいけれどね」
「今はかなり高いよな」
「色々言う人がいるけれどね」
「そんな連中無視すればいいのにな」
 美優は鯨を食べることに文句を言う国や組織のことはこう言い捨てた。
「捕鯨邪魔してきたら自衛隊の船に沈めてもらってな」
「何か過激ね」
「けれどそう思うだろ」
 美優は真顔で琴乃に問い返す。
「琴乃ちゃんもな」
「それはね、鬱陶しいと思うわ」
「他人の食うものに口出しするなっての」
 ここで美優はお店の人を呼んだ、そして五人分の注文を終えた。 
 それからまただ、四人にこう言うのだ。
「他人に迷惑かけない限り何を食ってもいいだろ」
「そうよね」
「鮪食うなとかな、馬鹿言えよ」
 このことにも文句を言う美優だった。
「じゃあ何を食えってんだよ」
「お肉とか?」
「とっくに食ってるよな」
 こう景子に答える。
「牛も豚もな」
「鶏肉もね」
「羊も山羊もな」
 美優は山羊の肉も話に出した。
「あれもな」
「山羊ね」
「あれね」
「山羊って美味いだろ」
 こう四人にも言う。
「あれ沖縄以外じゃ食わないけれどさ」
「そうなのよね、山羊ってね」
「日本じゃね」
 四人も美優の言葉に応えて言う。
「あまりね」
「食べないわよね」
「だろ?美味いのにな」 
 それでもだというのだ。 
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