ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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番外編:或る飛龍の物語
或る飛龍の物語《2》
前書き
二話目です。
「ふむ……ここが黄金林檎の生る森か」
ハザードはイグシティのはずれの森に来ていた。
この最奥部に、黄金林檎がなり、それを双頭の大鷲が守護しているという。
「面白い。やってやろうじゃないか」
ハザードは背中の黒水晶の大剣を抜き放った。
*
出現したモンスターは小動物系のものが多かった。
シカやリス、鳥などと言った小柄なものが多く、あまり攻撃的でもなかったので大した戦闘もなく最奥部までやってくることができた。
「ここが最奥部か……」
そこは、暗い森の中に挿した一筋の光とでもいうべき場所だった。
密集していた木々は一切存在せず、中心に巨木が一本立つのみ。
そしてその上空に―――――一体の、大鷲。
「ギャオオオオオオオオオオオオン!!」
「カロロロロロロロロロロロロロッ!!」
双頭の大鷲は二つの頭でそれぞれ鳴き、ハザードの方へを急降下してきた。
「く!?」
攻撃を避け、再び上空を仰ぎ見ると、モンスターにネームタグが出現していた。
《The Sea-Eagle-double-headed Furesuvuerugu》――――双頭の大鷲、フレスヴェルグ。
北欧神話において、世界樹の上空にいると言われる伝説の大鷲――――。
「ギュオァアアアアアアン!」
「カロロロロロロロロロロ!」
フレスヴェルグは二つのくちばしを大きく開くと、そこから突風のブレスを放射した。
「くぅ……」
回避しても回避しても、二つの頭からのブレスは迫ってくる。
「っ!そこ!!」
ハザードの大剣が黒いエフェクトライトを宿す。
OSS、《エルド・ディゴ》。
OSS――――《オリジナル・ソードスキル》とは、SAOシステムのALO導入の際に消滅したユニークスキルの代わりに追加された、文字通り《自分だけの剣技》だ。
作成方法は簡単。ウィンドウから《OSS作成》を選択し、自分だけのソードスキルを使うだけ。
しかし、この作成時には『既存ソードスキルにはない、かつ本来システムアシストなしでは不可能な動きを、システムアシストやパラメーターのブースト一切なしに普通のソードスキルと同じ速度でやらなければならない』のだ。しかも単発剣技はあらゆるモーションが既に既存のソードスキルとなってしまっている。普通はほぼ不可能で、5連撃もあれば大技。
OSSは一代コピーに限りほかのプレイヤーに《継承》が可能だ。そのためOSSを記録した《秘伝書》は、現在のALOで最も高価なアイテムになりつつあるのだ。
現在このALOでもっとも連撃数が多いのは、シャノンのOSSである《ホーリー》。常人にはほぼ不可能な二十三連撃のソードスキルで、本人も『使用できるのはたぶん一日一回』と言わせしめる大技だ。
ちなみにその次に多いのはかつて、今はもういない《絶剣》の異名をとった少女が使っていたソードスキル、《マザーズ・ロザリオ》。十一連撃で、現在は《閃光》アスナが継承している。
その次に強力と言われているのはセモンのOSS、《ソウテン》。9連撃のOSSだが、現在は彼ではなくコハクが使用している。なぜならあのソードスキルは槍スキルで、セモンが彼女のために作り上げたOSSだからだ――――半年前の彼女の誕生日に贈った――――。
そして、ハザードのOSS《エルド・ディゴ》は、OSSでは本来ありえない単発剣技だ。
これはハザードが兄の茅場晶彦と共にスキルやモンスターのデザインをしたため――――実は《太陽剣》のスキルはハザードが考案した、『本来あるはずのないスキル』だった――――、ソードスキルの動き全てを暗記しているからだ。
微妙な打ち込み系ソードスキル同士の動きの誤差を計算し、抽出した唯一無二の動き。
それを圧倒的なスピード、威力で打ち出すこのスキルの完成には二カ月を費やし、このスキルは現在ハザードのスキルの中で最強クラスのものとなっている。
果たして、重厚なOSSは、フレスヴェルグの胴体に突き立った。
「よし!」
しかし直後に、ハザードは今のソードスキルを選択したことを心の底から後悔することになる。
フレスエルグに突き立った刀身。しかし、フレスヴェルグは動じない。むしろ、肉を切らせて骨を断つ、とでも言わんばかりに双のくちばしを開き……
ブレス攻撃を、超至近距離からハザードにブチ込んだ。
「な……」
死亡はしなかったものの、ハザードは大きく空へと舞い上がり――――――――
「なぁああああああああ!?」
アルヴヘイムの大地へと、まっさかさまに落ちて行った。
ここから、この物語が始動する。
ハザードの運命を大きく変える出来事の幕開けだった。
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或る飛龍の物語
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「ぐはぁ!?」
ゴムンッ!!という聞いたこともない様な鈍い音と共に、ハザードは地面の上に落下した。
「痛ぅ……ここは、どこだ?」
あたりを見回す。
今自分が落下していたのは、半ばコケで埋もれた石畳だった。石畳はしばらく先まで続いていた。
あたりは樹木で覆われ、さわさわと涼しげな音を立てていた。
「こんな場所が……ALOにあったのか。まるでアインクラッドだな」
ハザードはメニューウィンドウを開くと、画面からマップを呼び出して現在の自分の所在地を確認しようとした。しかし……
「……マップに出現しない、だと?」
そう。
今ハザードが立っているエリアのマップは《ERROR》表示が出ており、所在地どころかアルヴヘイムの何族領なのかすらわからない。
「仕方ない。プレイヤーを探すしかない、か」
ハザードは立ち上がると、当てもなく歩き始めようとした。
と、その時。
ハザードの耳に、かすかだが音が聞こえた。
「(この音は……ピアノ?)」
音のした方向に向かって歩いていくと、だんだん音は大きくなっていく。
そして、遂に音源に辿り着くと―――――
急に開けた場所に出た。
そこには純白のグランドピアノと、
その前に座ってピアノを弾く、オレンジ色の髪の少女がいた。
後書き
ハザード編第二話です。
ハザード編のヒロインが登場ですねぇ。
セモ「やっほ、作者」
セモン?おお、もしかしてここに来るのは初めて?
セモ「どうだったかな……なんか前に一回来たような気も」
まぁいいか。
セモ「と、言うわけで、次回からはハザードの代わりに俺がここを担当するよ」
それでは次回も
セモ「お楽しみに~!」
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