【新約】魔導循環~Magical circulation~
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Δεύτερη ιστορία/Και εξαίσια μαγεία τέχνασμα/Νέα και μάγος
機巧魔術と言うのは、《旧魔術師》からしてみれば狂気の沙汰、禁忌中の禁忌である。
今彼らが使っている魔術を定義したかつての魔術師たちは、文明の進化を嫌い、古来からの《正当な》魔術を伝えることを望んだ。
当然のように古来に機械技術など存在するわけがない。
《時計塔》にすむ《旧魔術師》たちは機械を嫌い、機械を魔術に組み込むことを長年禁忌としてきた。
しかし、だ。
《新魔術師》は現代の機械化社会に慣れ切った一般人たちだ。すなわち、彼らからしてみては『機械のない社会』はまっこと不便なものなのである。
だから、彼らは魔術を機械と組み合わせることを始めた。
《六門魔術(前述)》のなかでも紹介したように、魔術回路にかかった術式を自らに反映させる《逆流》の応用技術、《完全神導体》というものが存在する。
これは魔術回路と、体内魔術回路……すなわち使い手のつながりを強めることでもある。
これを応用してくるられたのが、《機巧魔術》だ。
この魔術は、魔術回路を最初から機械でできた人形に搭載している。
《六門魔術》にも、このような手段をとる《傀儡術》というものが存在するが、こちらは人形を魔術師自身の魔力だけで動かさなければならない。
それに対し《機巧魔術》は、魔術回路が最初から人形に搭載されている。すなわち人形を魔術師二人分の魔力で動かすことができるのだ。
だがしかし。
この《機巧魔術》には最大の弱点が存在する。
それが、《魔力不活性調和の法則》だ。
これが非常に厄介なのだ。この法則は、簡単にいえば『一つの体内魔術回路で使用できる魔術は一度につき一つだけ』というもの。
天然の魔術回路を保持する《旧魔術師》たちにはない問題だ。彼らは一つの魔術回路からいくつもの魔術を同時にうつことができる。
それに対し、《新魔術師》の人工魔術回路は『一つの魔術回路につき一つの魔術しかうてない』………。これは、戦力的にはかなりまずいことなのだ。
たとえば、旧魔術師には『複合属性魔術』という《六門魔術》の使い手がいる。というか、比較的熟練度の高い《旧魔術師》ならだれでも使える。
これは火、水、風、地、光、闇の六門魔術元素を組み合わせて、それぞれの効力を高めたり、デメリットを消しあったり、まったく新しい魔術を編み出すことができるものだ。
しかし《新魔術師》にはこれができない。つまり使用できる魔術のバリエーションにおいて、《旧魔術師》達にはるかに劣るわけだ。
魔術と魔術の打ち合いになったとき、最も重要とされるのは『手数の多さ』。これに劣る《新魔術師》達は、何らかの別の方法でこれに対抗しなくてはならないのだ。
しかし。ここからが《新魔術師》たちの凄い所なのだ。
機巧魔術で生み出された人形たち……《オートマトン》と呼ばれる……はそれぞれが別々の魔術回路を持っている。つまり、使い手とは違った魔術の魔術回路を搭載することができる。
ここで活躍するのがかの《完全神導体》だ。これは『オートマトンの魔術を自分に反映できる』という応用ができる。
つまりこれを使うことで、自身のものとは違う魔術を使用できる、というわけだ。
《旧魔術師》は『手数の多さで攻める』ことを得意とする。
それに対し、《新魔術師》は『仲間内のチームワークで対抗する』ことを得意とするのだ。
これもまた、《旧魔術師》と《新魔術師》が不倶戴天たる理由の一つなのである。
***
何度も記述している通り、《新魔術師》はとある男の作りあげた《人工魔術回路》を使って創られた新しい次代を担う魔術師達である。
《旧魔術師》が《新魔術師》の魔術を《間違った魔術》として大きく非難・否定しているのに対し、《新魔術師》たちが《六門魔術》を否定しているかというとそうでもない。
逆に、《新魔術師》達は《六門魔術》を日常的に使用しているといっても過言ではない。
前述の《機巧魔術》もさることながら、単体での戦闘にも普通に《六門魔術》を使用する(これは《六門魔術》が魔術の基本としていかに重要視されているかということの表れであると考えられる)。
しかし《人工魔術回路》には、《魔力不活性調和の法則》のほかに致命的な欠点が存在する。
それこそが《魔力容量》である。
これが曲者なのだ。
《旧魔術師》たちの持つ天然魔術回路に対して、錬金術によって作られたいわば形だけの魔術回路では、大量の魔力を有する上位魔法の魔力に耐えることができないのだ。
つまり、彼らが使用できるのは《白魔術》だけ。儀式魔法をはじめとする上位の《黒魔術》には対応していないのだ。
この戦術・戦力的な圧倒的不利を、《新魔術師》達は強固なチームワークと、概念に束縛されない自由な発想による応用で覆してきた。
そして、今日まで《旧魔術師》と《新魔術師》の戦いは続いているのである。
後書き
機巧魔術についてはMJ文庫の『機巧少女は傷つかない』の設定をモデルにしています。
今回は《機巧魔術とは》《新魔術師とは》の二つを掲載しました。
ここでアンケートです。
次回から本格的にストーリーモード(?)に突入するわけですが、ヒロインを無邪気形にするか、ツンデレ系にするかで迷っています。
皆様のご意見をお聞かせください。
感想いただけると嬉しいです。
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