【新約】魔導循環~Magical circulation~
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prologue
魔術、というものを知っているだろうか。
魔術回路と呼ばれる何らかの媒体によって、自身の魔力を《カタチ》に変えて、小さな小さな《奇跡》を起こす秘術。それが魔術だ。
魔法と魔術は違う。それは似て非なるものであり、同じようでしかし根本的に異なるものなのだ。
魔術が起こすのは《小さな奇跡》。魔法が起こすのは《世界の物語》の記憶。それが起こす奇跡は魔術の比ではなく、奇跡としての質もまた比べ物にならないものであるのだ。
人に魔法を扱うことはできない。人は奇跡を起こせない生き物だからね。
さて、そんな魔術にも魔法にも共通する一つの要素がある。
それが《魔術回路》と《魔力》だ。
《魔術回路》は、簡単にいえば《奇跡のカタチ》を決定するものだ。それは何か形をもったものでもいいし、呪文のような形のないものでもいい。
その魔術回路に、《魔力》を流し込む。すると、魔術回路に込められた《奇跡のカタチ》が具現化し、目に見える形で表れる。
見てみたい?仕方ないな。いちばん簡単なものを実演してみよう。
魔術の中でもっとも簡単なものは、形のある媒体を使った魔術だ。この物語を読んでいる君たちが住んでいる世界からしてみれば、《アジア》と呼ばれているあたりで昔から使われている形の魔術かな。もちろん、それだけではないよ。必ずしもかの国ものではない。ほかにも使う国はある。
で、媒体を使ったもので最もわかりやすいのは《武具》を使ったものだ。たとえばここに杖がある。何の変哲もない杖だ。これだけでは魔術回路も何もあったもんじゃない。だから、これに魔術回路を付与する。
実質のところ、付与する方法は《呪文の詠唱》だ。根本的にはこの《呪文》こそが魔術回路の最大の条件だ。
魔術回路の条件。それは《音》だ。音こそが魔術を発揮させるトリガーとなる。
で、それを手助けするのが《魔術回路》というわけ。
呪文というのは、魔術回路の本質の開花を促す補助でしかないわけだ。だから僕のように熟練した使い手なら、本来は詠唱は一言、その魔術の《真の音》をつぶやくだけでいい。けど今日は君たちに魔術を見せなきゃいけないからね。全部を手順を踏んでみせるよ。
魔術回路を構成する要素。一つは先ほども言った《音》だ。もう一つは《思念》。つまりはイメージだ。これを《音》によって解放する。
実はもう一つあるのだけど、これは今僕が使う魔術とは関係がないからね。説明は後にする。
で、これらを形にするのが《詠唱》だ。詠唱をブーストするための媒体がこの杖だ。アジア人は概して魔力が低いから、こういったものでブーストしないと魔術が弱いものになってしまう。
では使ってみよう。
『I world destroying conflagration, I accuracy of the great fire, Hairy lent its luster to me.
We are what determine the fire of thy.
We are those that seek thy day.
Fadira-Kaz Burogedo.』
(彼が術式を組み上げたげた瞬間に、杖に真っ赤な火球が出現し、射出されたそれは白い壁を真っ黒に焦がした。壁は直後に寄り集まって元の白い状態に戻った(!)。)
わかったかな?これが魔術だ。
ほかにも魔術回路を掘り込んだカードやプレートなどを使ったり、烙印魔法と言った刺青を使った魔法や、生贄を必要とする儀式魔法、そもそも媒体を必要としない物もあるがね。
ああ、そういえばもう一つ魔術回路を使うにあたって重要なことがあった。それを説明しないとなぜこの物語があるのかわからなくなってしまうからね。
魔術回路は、人の体の中に必ず必要なんだ。
《回路》だからね。循環するものでなくてはならない。君、人間の体内で循環している代表的なものはなんだと思う?まちがえてもいいから言ってみて。
(彼はあなたの隣に座っている少年に指を指した。少年はおずおずと「血?」と言った。)
そう、正解だ!血液。それが通っているのは血管だ。体内魔術回路はそれと似たようなものだと考えてくれ。これは遺伝する。代を重ねれば重ねるほどにそれは強固で強力なものになっていくんだ。で、これだが、これは誰でも持っているわけではない。
体内魔術回路は、魔術師としての家系に生まれた者たちにしか手にできない。しかもこれがなければ体外で紡ぐ魔術回路は始動しない。
これが魔術が使えない由縁。『魔力がない』、『体内魔術回路がないために魔術回路を形成できない』と言うものだ。
その男は魔術師だった。彼は魔術師でない人にも奇跡を知ってもらいたくて、魔術師でない人たちのために錬金術で疑似的な人口魔術回路を作ったんだ。
錬金術。それは簡単に言えば『魔術によって行われる化学』だ。これによっていくつもの魔法が解明され、魔術に転換されてきた。
その中でも特に有名なのが『物体の等価交換』と『黄金錬成』だね。彼はそれを組み合わせて、魔術師の体内魔術回路、通称『第二の心臓』を模したものを作成することに成功したんだ。
しかし、これが争いの火種になる。
当時、魔術師にしかできなかったことを魔術師ではなかった人々は成し遂げるようになった。
現代科学に通ずる彼らの方が腕前は良く、真に魔術師だった者たちは次第に社会の片隅に追いやられてしまったんだ。
彼らは《旧魔術師》《新魔術師》と呼ばれ、争った。
《旧魔術師》達は魔術最大の秘術でもある《降霊術》によって、なんと異界の悪魔を呼び出した。彼らに関する説明はまた今度。
とにかく、彼らの力で《旧魔術師》は飛躍的に強くなった。
対する《新魔術師》達は魔術師最大の禁忌とされてきた《現代機械と魔術の融合》という最も効率的な手段を編み出した。
これによって《新魔術師》は今まで到達しえなかった魔法科学技術を手に入れたんだ。
《旧魔術師》と《新魔術師》は、どちらが今後、真に魔術師と呼ばれるべきものなのか、誇りをかけて戦った。
これは、その戦いの物語。
さぁ、始まり始まりだ。
後書き
どうでしたか?
感想もらえるとうれしいです。
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