万華鏡
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第三十二話 呉の街その二
「姿勢を正し目を瞑り歯を食いしばりね」
「八条高校でよかったよな」
「今の時代でね」
生徒達は先生の話を聞いてこころからこう思った。
「いや、本当に」
「心からよかったわね」
「体罰はしないから安心してくれ」
先生もこのことは保障する、地獄のトライアスロンはしても。
「とにかく悪いことはしない、時間厳守」
「それですね」
「夜の町は危ないからね」
先生はこのことも釘を刺す。
「気をつけてね」
「えっ、江田島って危ないんですか」
「広島って」
「神戸も油断出来ないけれど何処もだよ」
先生はむっとした顔で言い切った。
「特に広島はね」
「あっ、ヤクザ屋さんですね」
「そういう人達いますね」
「チンピラやゴロツキもいるんだよ」
そうした存在が厄介なのだ、世に言う小悪党程やることは悪質であり下衆なものだからだ。先生が言うのはこうした輩だ。
「だから明るいうちにここに帰って来て」
「それで、ですね」
「このホテルで」
「飲むんだよ」
そうするというのだ。
「わかったね」
「じゃあ飲むのはここだけにして」
「そうします」
「そう、じゃあわかったらね」
先生は生徒達に言う、そうしてだった。
彼等に門限と風紀のことを誓わせたうえで解散とさせる、生徒達はそのうえでそれぞれの行きたい場所に行くのだった。
琴乃達は一旦湊まで行きそこからフェリーで呉に行った、行く時と同じ海を渡りそのうえで呉まで着くとだった。
呉の町は暑かった、琴乃は駅前の百貨店の向こうに見える青空と白い雲を見てそしてこう言ったのだった。
「江田島より暑くない?」
「ああ、沖縄とはまた違った暑さだよ」
美優がその琴乃に応える、五人共その色は違うが上は半袖のブラウスやティーシャツであり下はズボンである。
履いているものは靴だ、その格好である。
「この町暑いよな」
「江田島より暑いわよね」
「同じ広島県なのに暑さ違うって何でだろうな」
「島と町の違い?」
「そうじゃないかな」
「江田島は山も多いから」
ここで里香が暑がる二人に話す。
「それでだと思うわ」
「あっ、そういえば江田島って山も多いわよね」
「そうだよな」
「神戸もそうだけれど山の上から下まで風が降りるから」
里香は二人にさらに話す。
「それでなのよ」
「呉って町だし」
「山あまり見えないな」
少なくとも江田島とは全く違っていた、このことは確かだ。
「それに人や車も多いし」
「だから江田島より暑いんだな」
海を渡ってすぐでもでだ、そうした事項が重なって暑さが違うのだ。
景子は行き交う人々を見ながら他の四人にこう言った。
「じゃあ今から何処行くの?」
「宇野先輩に聞いたけど」
里香は景子にも話す、その広島人の先輩である。
「呉に来たら自衛隊とね」
「いや、自衛隊は江田島にあるから」
景子は自衛隊と聞いて笑って返した。
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