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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第12話 魔人の復讐は失敗するようです



Side 愁磨


「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」



大聖堂を埋め尽くしている天界軍が、一気に俺とノワールに押し寄せてくる。

それを見た『神』達は、決着が着いたと思っているのだろう。

此方を見て薄ら笑っている。


「羽虫が、良い気になるなよ!!『()ぜよ』!!」


俺が唱えると、前の天使が内側から爆発する。

これは単なる言霊の一種だ。しかし、発動には神通力を使っている。 

名の通り、神の力の一端を使っている為、天使では太刀打ちできない。

それを見た周りの天使達は動揺し、『神』達は目を剥く。


「さぁ。どうする天使共。

俺が必要なのは、あそこの二人の命だけだ。

あの二人を差し出し助かるか、差し出さず皆殺しになるか。どちらを選ぶ?

ああ、しかし、だ。武器を捨てても見逃してやる。さぁ、どうする?」


俺の言葉に天使達は一瞬逡巡する顔をする、が―――


「その様な者の言葉に踊らされるでないわ!!

さっさとそやつを押し潰せ!!!」


幼女の声に、天使達は再び構え、突進してくる。


「―――哀れなもんだな。自分の意思を持てぬ者は死んでいろ。『アトロポ――」

「シュウ。待って。」


俺が『アトロポスの剣』で掃おうとした所、ノワールから声がかかる。


「…………手早くやれよ。あまり待たんからな。」

「……ありがとう、シュウ。………皆、ごめんね………!!」


バサッ!!とノワールに翼が生え、闇色の輪を背負う。


「許せとは、言わないわ……!『封神八十七式裂光流星乱舞』(ガンマ・レイ)!!!」


唱えた瞬間、無数の光の球が周りに形成され、レーザーが放たれる。

これはノワールの固有魔法『封神八十七式裂光流星乱舞』。

光により圧縮された反物質を、細いレーザーの様に複数打ち出す神級魔法。


「ぐあぁあ!!」「馬鹿nゲボァ!!!」「ぎぇ?!」「グオァ!!!?」

「ヒィィ?!」「ギュバ!?」「ぶげぇ?!!」「ヒデブ?!」「ギャ!!」


天使・大天使の張った障壁を無視し、無数の光は軍を蹂躙して行く。

それを見ながら、ノワールは目に涙を浮かべている。

「……まだ、行くか?」

俺はノワールの頭に手を置き、聞く。

「……ええ、行くわ。

それに、こうなってしまったのは、私にも責任があるから。」


どうして責任を感じているかは分からないが、無理をしている様子も無い。

瞳は覚悟を抱いたままだ。

「行くぞ、ノワール。武器を捨てた奴は見逃せ。」

「分かっているわ。―――来て、『明星の彗星』。」


俺はアトロポスとジャッカルを、ノワールは3m以上ある槍剣を召喚し構える。


「恨みは無いが、邪魔するなら容赦はしない。……wish to god(神に祈りな)!!」

「……め、ね―――。…行きます!!!」

俺とノワールは、天使達に突っ込んで行った。


Side out


Side クルセウス


「「「「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」」」」


一体、この場で何が起きている・・・・・?!

最強の天界軍が、たった二人の侵入者によって蹂躙されておる。

非力な人間と、裏切り者の手で!!!


「死ねええええええええ!!!」「はぁぁぁあああああ!!」

「『敵対天使の存在、消去(デリート)』!!!」


「ちぇりゃああああああああ!!」「おおおおおおお!!!」

「フッ!!はぁぁぁぁぁ!!」


ルシフェルの槍剣は美しい弧を描き、二人の天使を切り裂く。

――が、人間の攻撃を受けた天使は、文字通り『消えて』おる。

人間の正体不明の攻撃に天使達が逃げ惑っておる。

天使達が、百戦錬磨の天界軍の兵が、一人の人間の攻撃に怯えておるだと!?

此奴は一体何者だ?!人間では無いのか?!


「狼狽えるな!智天使隊!対魔王級用集束魔法、用意!!!」


指揮官により智天使隊――魔法主体で戦う天使――へ命令が出る。

逃げようとしておった天使達が隊列へ戻り、智天使達は集束を開始。

力天使――白兵戦主体の天使――達は陣を組み、詠唱中の智天使を守る。



「シュウ!あの攻撃は不味いわ!!何とかしないと!!」

「ハッハッハ、了解了解。」


本当になんなのだ、あの人間は?!

あの、伝説のルシフェルでさえ焦っている一撃に、

なぜあの様な態度が取れるのじゃ!?


「「「「「霊冥へと導く破邪の煌めきよ 我が声に耳を傾けたまえ
  
       聖なる祈り 永久(とわ)に紡がれん おお、光りあれ!

     その御名のもと この穢れた魂に裁きの光を降らせたまえ」」」」」

「ごめんな~。別に撃たせても良いんだが………。」


詠唱の邪魔をする軌跡さえ見せずに、

人間はあの奇妙な剣を振り被る。


「目標、侵入者!!『神十字の断罪』(グランドクロス・ジャッジメント)、放―――!」

「連れの心臓に悪いからさ。『敵の準備中攻撃、消去(デリート)』!!」


軽く、剣を一閃させると、完成間近の集束魔法が、消された。


「―――な、なに!?」


指揮官の天使が、完成すると思っていた魔法が消えた事に、声を上げる。

そして―――


「うーん、やっぱ、流石に多すぎるな。ノワール。殲滅するから下がってろ。」


人間が、ごく軽く言った。


Side out


Side 愁磨


最初は俺達が無双して、逃げだす奴は粗方逃がそうと思っていたのだが、

存外、こいつ等はしぶとかった。

ならば、遠慮しているだけ時間の無駄だ。


「うーん、やっぱ、流石に多すぎるな。ノワール。殲滅するから下がってろ。」


俺はノワールを下がらせ、巻き込まれない様促す。



「『形態付加:≪救世主の盾≫』!行くぜ!!」


俺は空中へと舞い上がり、呪文を唱える。


「悔い改めよ不浄の大地!!罷り通るは大天使の光輪!!」


俺の周りに四つの球が現れ四方に飛び、光で繋がり、輪の形になる。


「光あれ!!幸あれ!!裁きあれ!!」


輪が回転し球状になり、それを中心に、十字型に光球が四つ現れる。



「昇天!!『大天舞讃歌』(ル・セイクリッドメアリー)!!!!」

ドッギャアアアァァァァアアアアアァァアアアアアァァァアア!!!


球から無数の光の柱が落ち、天使達を閉じ込め、内部で蒸発させる。

が、それでもまだ半分以上生き残っている。


「まだまだぁぁぁ!!!≪『救世ノススメ』稼働≫!!来い、雷帝(イシュテルテ)!!!」


俺は、十三騎士の一人の力を借りる。

しかし、その借り物の力は―――、救世主の力は、雷帝を遙かに上回る。

背に現れた金髪、金色の神衣を着た仮面の男性、雷帝から声がかかる。


≪一度だけ、我の力を貸そう。紛い物とは言え、救世の力を持つ少年よ。≫


雷球が現れ、手を翳すと、中から雷が十字に溢れだし、力が高まって行く、

キィィィィィィィィィィィと風切り音が鳴り、

ドン!!

手の中の雷球が広がり、中心の球に俺達が取り込まれる。


「≪天をも貫く我らの(いかずち)!!!!≫」


俺は力を放つ様に、手をⅩ字に振り下ろす!!!


「≪『聖逆十字反天雷烈波』(クロス=クルセイド・リバースデリンジャー)!!!≫」

ドン!!!!!ォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオ!!!


直径10mの雷光が、残っていた天使達を一掃するように放たれ、

光線に当たらなかった者は、迸った余波の雷で焼き付き、絶命した。
           
そして俺は、残っている11人に向け、言い放つ。


「後はお前らだけだぜ、『神様』!!尻尾巻いて逃げんなら今だけだぜ?」


と、あの爺、クルセウスが前に出て来た。


「余程驕りが過ぎる様じゃな、人間!!天使に勝ったからと言って

良い気になるでないぞ!!天界の最高戦力は我等『神』じゃ!!!!」


ガシャガシャガシャ!!と武器を構える『神』達。


「―――そうか。悪いが、俺が復讐したいのは爺と幼女だけだ。

他は用が無いから無力化させて貰う。が、一つ良いかね?」

「この期に及んで、何を聞くと言うのですか、人間。」


と、弓を構えた碧髪の女性が答える。・・・惜しいなぁ。

ギリギリ熟女の域なんだよなぁ。っと、違う違う。


「『神』って12人じゃなかったのか?一人足りない様だが大丈夫か?」

―――コッコッコッ

「―――それは私の事ですか、人間よ。」


と、奥から歩く音と共に、女性が現れる。

薄褐色の肌と黄金の瞳、桜色の唇。

炎を思わせるような、軽くウェーブしたロングの髪と、鎧。

そして手には、炎の紋様が刻まれた大剣を持っている。

と、その女性を見たノワールが、愕然とした表情で呟く。


「ミカ、エル………。あなた、なの……………?」


ノワールの言葉に、『ミカエル』と呼ばれた女性が、一瞬眼を閉じ、答える。


「その通りです。お久しぶりです、ルシフェル様。4000年ぶり、でしょうか。」


ミカエルの言葉に震えているノワールに、俺は聞く。


「ノワール。知り合いか?」

「…………かつて、私が…、大天使長だった頃の、私の副官よ。

そして、私が投獄される時に、最後まで……私を、信じていてくれた子よ。」


ああ、成程。そう言う事か。


「……ねぇ、シュウ。わ、私……、その……。」


こればっかりは、しょうがないよなぁ・・・・・・。


「はぁ。…30分だ。それでケリを着けろ。和解するにしろ、殺すにしろ、な。」

「…ありがとう、愁磨。…待っててね。」


お礼を言いながら、ノワールは、服の裾をちんまりと掴んで来る。

・・・・やめろッッ?!俺のシリアスが飛んでしまう・・・・

いや、待て、ノワール萌えぇぇぇぇ!!!と、

シリアス、どっちが大切だ?決まっている!!

ギュッ。

「言っておくが、死ぬ事だけは許さんからな……。」

「ええ、分かっているわ。………んッ…。」

「…ん、ふ……。……言って来い、頑張れ。そして帰って来い、ノワール。」


―――シリアスに決まってんだろ?今は、な。


「…Yes、mymaster.そっちこそ、頑張ってね。」

「ああ。『非対象者選択:≪ノワール≫≪ミカエル≫』


広がれ、(Распространение,)『うんめいのうつくしきせかい』(Судьба красивые ад)


俺は、双方に邪魔が入らない様に、世界を塗り替える。


「さぁ、11人の哀れな神達よ。 『闘争の始まりだ』(Начало борьбы)。」

「ほぉ?天界で固有結界を作れるとは、中々やるのう。

しかし、人間如きが作った世界が、神が作った世界に勝てるかの?

見せてやると良い、ヴラコニル。」


クルセウスに促され、白短髪の青年が前に出て来る。

・・・恐らくは、固有結界創造能力持ちなんだろうが。


「了解した、クルセウス殿。

喜べ人間。人間と神の違いを見せてやろう。」


こいつは、―――ダメだ。爺側だ。


「見ろ!これが僕の、『神の箱庭』(ミネグラキィ・プトセウ)だ!!!」


バン!!と床を叩くヴラコニル。だが、当然、なにも起こらない。


「……ブッ!!ククククク、で?

何時までそのカッコイイ姿でキメているつもりだ?」


ヴラコ(ryの今の姿は、まさに「イタイ」ってところだ。


「な、に?なぜ、なぜ僕の世界に変わらない?!馬鹿な、こんな事有り得ない!?」

「簡単なこったろ、神様。

お前如きの世界より、俺の世界の方が存在が上なんだよ!!」

「な、馬鹿な事を言うな?!

人間が作った世界如きに、僕の世界が負けるはず無いだろうが!!?」


こいつは、こいつ等は気付いていない。大前提から間違っている事に。


「お前等の間違いを訂正してやろう。

一つ、俺の世界は、『作った』んじゃ無く、『創った』んだよ。

二つ、お前等は自身を『神』だと言っているが………違う、だろう?」


ニヤリ、とヴラコの顔を睥睨してやる。


「な、なにが違うと言うんだ?!僕たちは『神』だぞ?!

全天使の頂点で―――」

「お前等は『神』の名を冠しているに過ぎん。お前等は『神』じゃあ無い。

『神』の称号を自分たちで付けた、ただの強い『天使』なんだよ!!!」

「そ、それがどうした……。僕は、僕は強いんだぞ…!?

そうだ、僕は強いんだ!世界さえ作れたら、こんな奴……!!」

「その世界が作れないんだろうが、ド三流。」

「あふっ。」


ドッ、と膝を付くヴラコ。そうだったと言う事を思い出したのだろう。


「ハイ、一人目終了~。『消えろ、≪天使≫』。」


俺は『アトロポスの剣』を一閃させ、ヴラコを消し去る。


「―――さぁ。次は誰だ?」

「くっ!?こうなたら全員でかかるぞ!!グレゴリアス、アルトクラン、

ダルタニアン、カタルシス、エクリウル、プルネウラは囲んで叩け!!

アリアとウェルセウス、レイジアークは儂と遠距離から攻撃するんじゃ!!!」


「引き受けた。」「任せてよ。」「ガッハッハ!一丁、暴れるか!!」

「…しょうがないね。」「参ります!!」「いっくよぉーー!!」


と、全く統一性が無い返事をしながらも、既に陣を組んで俺を囲む前衛陣。

(・・・・こいつ等は、居ても『問題無し』、か。いや、一人だけアウトか。)

俺は、『答えを出す者』でとある答えを出す。


「『対象:『黒髪橙眼(グレゴリアス)』『青髪金眼(アルトクラン)』『金髪金眼(ダルタニアン)

緑髪藍眼(エクリウル)』『桃髪桃眼(プルネウラ)』結晶内へ封印』」


対象にした者の足元から、封印用の闇色の結晶が生成され、飲みこんで行く。

これは、創造で創り上げた『絶対捕縛封印の棺』。

地獄で生成される闇結晶に、『対象を封印する結果を持つ』を『付加』したモノ。

これから逃げられるのは『因果を超える速さを持っている』か、

『封印される結果を破壊する』事だけ。


「「「「な?!」」」」「ほぇ?」


全員(?)が驚きの声を上げるが、次の瞬間には結晶に取り込まれていた。

残っているのは後衛3人と、『カタルシス』と呼ばれた男。

深紫の髪で前髪が胸まであり、髪の切れ目からは、髪と同じ色の目が見える。

そして、手には鈍く光る、全てが黒い短剣。


「これはこれは驚いた。まさか『神』の称号を持つ者達に、

逃げる間すら与えず封印してしまうとは。しかも、此処は『封印地獄』の様ですね。

人間が地獄を創れる程の力を持つなど、本来あり得ないのですが……。

―――ああ、そうか、そうですか。

貴方は『創造主神』の力を頂いたのですね?違いますか?」


と、学者然とした『神』が言う。

ああ、やっぱりだ。こいつが『一番面倒な相手』だ。


「よく分かったな、天使。

序に言ってやるなら、俺と契約した天使はノワール……

お前達が言う所の、『元大天使長ルシファー』だよ。」


俺の言葉に他の『神』は最早驚きの声すら上げれない。

が、こいつだけは、この『神』だけは、嬉しそうに手を叩きながら叫んでいる。


「ヒ、ヒャハハハハハハハハハハハ!!凄い!凄いですよ貴方は!!

あの、伝説の大天使長と契約し、主神の力をも手に入れたというのですか!?

ならば貴方は、伝承でしかなかった『魔人』なのですね!?

素晴らしい!!素晴らしいですよ!!!

ああ、これで私の目的に一歩近づける!!!」


『答えを出す者』で、こいつの目的とやらを導き出す。

――――っと。これはこれは・・・やっぱりこいつは、俺の目的に必要な存在だな。


「ほう?『お前が創造主神の座に座る』と。いやいや、実に狂っていて素晴らしいな。」


俺が言うと、ピタ!とカタルシスが止まる。

そして、狂気の代わりに出て来たのは、純粋な殺気と畏怖。


「これはこれは……。

その目的は資料どころか、一度たりとも言葉にしていないはずなのですがねぇ…。

本当に貴方は面白い。ですから、此処で死んでいただきますよ?」


チャキ、と短剣を構えるカタルシス。

こいつ相手に、余裕は出していられない。そう、俺の勘が告げている。

ガシャ、と『アトロポスの剣』を構えながら最後の問いを聞く。


「どうしてお前みたいなのが『神』になれたか不思議でならないよ。」

「簡単ですよ。品行方正に働き、

洗礼でそれなりの力を頂ければ『神』になんて誰にでもなれます。」

「洗礼?なんだそりゃ?」

「天使が自分の幼名を主神に捧げ、能力を貰う儀式の事ですよ。

序に教えて差し上げますが、これを『神契約』、貴方の行ったのを『魂契約』と呼びます。

『神契約』で捧げるのは名前のみ、しかも自分の仮名ですから、

主神から頂ける力は『魂契約』より格段に落ちますが。」


と、長々と説明してくれた。


「実はお前、良い奴?」

「ククク、違いますよ。私の目的を知っているという事は、

その方法も知っているのでしょう?」

「ああ、知ってるさ。」

「なら聞く必要は無いでしょう。

まぁ、貴方のせいで使える魂が大分減ってしまいましたが、

問題ありません。それ以上の器の魂が二つも来たのですからね。」


こいつの用いる方法とは、大勢の魂を使い、主神の力を掻き集める事。

さっきまで得心いかなかったが、こいつが説明してくれた『魂契約』で分かった。


「そろそろ我慢できなくなって来ましたので、早く始めましょうか。

『神』級大天使第4位、『死』のカタルシス。獲物は『死神の鎌』(デスサイズ)。」

「…魔人、『創造者』愁磨・P・S・織原。獲物は『創造物』。

所で、鎌じゃねえよ!!ってツッコミはアリか?」

「この武器の姿は千差万別。私の得手が短剣と言うだけです。

それでは、ちゃっちゃと死んでください!!」

「ハ!相手にはなってやるよ!――まぁ、適当になぁ!!」


ドンッ!!と全力で俺が突っ込んで行くが、奴は魔法で俺に牽制を入れてくる。

短剣だから接近戦主体の奴だと思っていたから、不意打ちを食らった気分だ、っと!!


「『敵の攻撃消去』!!『消去』!!『消去』ぉぉぉ!!!」
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!


俺はアトロポスで何度も魔法を消し、『ジャッカル』で幾度となく撃ち落とす。

・・・なぜ、『アトロポスの剣』を何度も使えるかと言うと、

『形態付加』でアーカードの力を、俺自身ではなく、

『アトロポスの剣』に付加したからだ。


これにより、『アトロポスの剣』は、アーカードの魂約340万と

同じ数使える様になった。

しかも、先程倒した天使達や、過去倒した賞金稼ぎの魂も喰っているので、

合計した魂の数は、1000万を超える!!!


「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ………。」


戦闘開始してからの奴は、詠唱とは別に、何か言っている。

――不味いな。『答えを出す者』によると、奴の武器の能力は『概念を殺す事』。

つまり、奴に俺の『アトロポスの剣』が何をしているか分かられると、

アトロポスの力を相打ちにされてしまうのだ。まぁ、良くて相殺、なのだが。


「『ノルニルの旋律(うた)』起動』」


それでも俺は、その前に決着を着ける為、『死天使』の能力をつかう。

これは、『未来を見る力』。だが、見えるのは自分以外の事象なので、

あくまで戦闘用だ。(詳しくは違うが。)

高速戦闘では、『答えを出す者』よりこちらの方が都合が良い!!


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


俺は叫び、魔法を連発しているカタルシスに突っ込んで行き、


「『カタルシスの存在、消去』ッッ!!!!」


『アトロポスの剣』を、振り下ろす!!


「チッ!『魔人の剣』を殺しなさい『死神の鎌』(デスサイズ))!!!」


カタルシスも『死神の鎌』の能力を解放し俺の剣を受けるが、どちらもなにも起きない。


「どうやら、貴方の剣も、私の剣と同じ様ですね!?」

「一緒にするんじゃねえよ!!『敵対天使の≪(つるぎ)≫消去』!!!」

「ならば、『槍になりなさい』!!」


と、短剣を槍に変えて受けようとするが・・・・・


「無駄だ!!!」

「な、ガハぁああああ!!!」


『死神の鎌』を消し去った『アトロポスの剣』は、そのままカタルシスを叩き切る。


「グブッ!な、なぜ、ですか…?

貴方が消そうとしたのは『剣』では無いのですか……?」


口と体から血を噴き出しながらカタルシスが聞いてくる。


「冥土の土産だ、教えてやる。

俺が消したのは『剣』じゃなく、お前の『攻撃方法』だ。

ついでに言うなら俺が消していたのは、そのモノの『因果』だ。」

「フ、フフフ、ガハ!!ゲフ!?ガハ、ガハ!!

フフフフフ、なんと出鱈目な。私では手も足も出ないのは当然ですか……。

では…、ああ、そうだ。もう一つ、よろしいでしょうか…?」

「まぁ、いいぜ。俺に可能な事ならやってやらんでも無い。」

「貴方の…居た、地獄の一階層上の、『無血地獄』。

そこに、……私と同意見の者、が居を構えています……。」


―――『無血地獄』。『血が流れる事の無い地獄』。

此処の住人は、血を見ないと生きていけない様な者達。

その罪の重さは、推して知るべしって所だ。


「ok、そいつ等を皆殺しにすりゃいいんだな?」

「ええ。私と同罪なのに…、私だけ死んでしまう…のは、気に入りませんからね。」

「ああ。全員お前と一緒の地獄に送ってやるから、安心しろ。」

「フフフ、天界人は、死んだら魂ごと消えるので…、それは無理ですね……。」

「分かってるよ。皮肉だ。」

「ああ……。貴方と話しているのは、存外…、楽しかったですよ。

それでは…、さようなら……。――――――。」


最後に呟き、それまでの死神めいた表情が嘘のように綺麗に笑い、

パシュゥ、と光の粉になって散り消えようとする。

俺はその空間に『停止』をかけ、消滅を防ぐ。


「フン、『神』の恥さらしが!!

主神様に弓引くから、人間なぞに殺されるのじゃ!!」


そう、クルセウスが叫ぶ。奴を、恥さらしと呼ぶ。


「役立た「黙れ」―――?!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


俺はこれまで全く解放していなかった魔力を、爺にぶつける。


「奴への侮辱は、俺が許さん。」


奴は、最後に俺にこう言った。『天界(ここ)を、お願いします』と。

カタルシスの真の目的は、『天界の調律』。

現在の天界はクルセウス・アリアによる派閥が最も力を持っている。

『天界人以外をゴミとしか見ていない』派閥だ。


カタルシスはそれを取り除き、天界をあるべき姿に戻そうとしていた。

問題なのが『神』中最強たるクルセウスの排除と、賛同する天使・天界人の排除。

軍の『神』以外の5割以上が、クルセウス側(この神殿に居た天使全員)

だと言うから驚きだ。


そこでカタルシスは地獄の犯罪者を使い、賛同する者を殺し、

『魂契約』により強大な力を得、クルセウスを倒そうとしていたのだ。

これを俺が知っている事を、あいつは知っていた。

それでも、最後まで言わなかった。

信念を持つ奴は、きちんとした仲間が居れば道を踏み外したりしない。

故に、あいつの手伝いをしたいと思った。

そしてその為にも、俺の目的の為にも―――――――


「な、なにを言っておる?!

あやつと貴様は敵同士じゃろうが!!それを何故庇う?!」

「お前に教える必要はない。もう良いから、口を開くな。

悲鳴以外で口を開くな。貴様に懺悔などさせない。

痛みを植え付けてから、更なる痛みがある事を教えてやろう。」

「クッ?!ほざくな人間がぁぁぁ!『神の雷』!!」


奴が腕を振り下ろすと、俺の上から雷が落ちてくる。

俺はそれを奴への突進で躱す―――が、雷が俺の上から座標を変えずに落ちて来た。


ドガアアアアアアァァアアアアァアア!!!


「フハハハハハ!!思い知ったか人間が!!

儂の雷は、神の雷の能力!!

振り下ろされたが最後、如何に動こうが、如何に守ろうが、狙われた対象に

直接、神の裁きが落ちるのじゃ!!

これを防げるのは主神様と、雷神たる儂以外に、存在せぬ!!!」

   
落雷によって、濛々と煙が立ち込める。
          
クルセウスは勝利を確信し、言い放った。


「―――ク―――、ククククク。」


煙の中で、影が笑う。


「な・・・・、に・・・・・・・・・?」

「ククククク、そのセリフは最っっっっ高だ。

しかし訂正するなら、お前の雷は『神の雷の能力』じゃない。

神から貰った、『雷の能力』だ。」


そして、煙から影が出てくる。出て来たのは俺と、雷喰蟲のリル。


「そしてこいつは、本当に『神の雷の能力』を得た雷帝をも喰らった魔物だ。」

「そ、そんな馬鹿な、有り得ん……!儂の雷を受けて死んでいないだと!?」

「なにが馬鹿か。今言ったろうが。お前の偽の神の雷如きでなど死なないと。

さぁ、断罪の時間だ―――の前に。お嬢さん方、少々お待ち頂けますかね?」


ガシガシィ!!と

振り下ろされた2mはあろう鉄扇と、糸で作られた大剣を受け止め、

使い手の残っていた『神』の二人に言う。


「チィィ!!!切り裂け、『神虎』!!」(パチン!


幼女が指を鳴らすと、四体の虎の霊が現れ、

俺の四肢に噛みつき食い千切ろうとする。

恐らくこいつ等が、あの時俺の四肢をぶっ飛ばした奴等だろう。

あの時は認識すらできなかったモノが、今の俺の前では、無力。


「絡め取り引き裂きなさい、『雹糸』!」


糸使いのレイジアークと呼ばれた、氷色の髪をショートボブの少女が、

灰色のつり目で俺を睨み、大剣にしていた糸を俺の全身に絡みつけ、

引き裂こうと渾身の力を込め、引っ張る。



「『対象:『アリア』『レイジアーク』結晶内へ封印。』」


俺はそれを気にした風も無く、二人を結晶に閉じ込める。


「しまった!」

「くっ!?」


気付いた二人が逃げようとするが、そんなスピードでは足りない。


「シッ!!」


と、俺が僅かに止まった隙に矢を放って来る碧髪碧眼の女性。


「無駄だ!『対象:『ウェルセウス』結界内へ封印』!!」

「あらあらぁ~。」


さっきの鋭さは何処へやら、間延びした声を残し、封印された。


「『アリア以外の結晶内の外界可視・可聴を無効』。」


俺は二人が入った事を確認すると、

幼女以外の『神』に確認できない様に結晶内の視界を塗潰し、

音を認識できなくする。


「さ、これでもう此処で起こる事に手出し出来るのは、俺とお前だけだ。

非常に残念なのは、時間が無いから手早くしなければいけない事だ。」


戦闘開始から10分は経っている。

ノワールの方は、もしかしたらもう終わっているかもしれない。


「まだだ!まだ儂はぁぁぁぁぁぁぁ!!」


俺に、何度も何度も雷を落としてくるが、全てルリが喰らい尽くす。


「なぜだ、なぜ当たらないのだ?!」

「…ああ。ルリが喰うのは魔力そのものだからな。

魔力ごと無くなるんだから能力とか関係ないだろ?

――『断罪の磔』(サバト・オブ・クリスト)。」


ドォン!と地面から十字架が出て、クルセウスを鎖で磔にする。


「主神じゃないが、本物の『神』と同じ様に処刑されるんだ。光栄に思え。」


ドン、ドン、ドン、ドン、ドンドン!!カシン、ドンドンドン!!

両手足と脇腹に、『ジャッカル』で13mm炸裂鉄鋼弾をぶち込む。


「がああぁあぁぁぁあぁぁああああああああああああ!!!!」


傷を再生させ、精神を治し、幾度も幾度も撃ち抜き、マガジンを変える。


ドン、ドン、ドン!!カシン、ドン、ドンドンドンドンドン!!

カシン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドンドン!!カシン、ドンドンドン!!!

ドン、ドン、ドン!!カシン、ドン、ドンドンドンドンドン!!

カシン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドンドン!!カシン、ドンドンドン!!!

ドン、ドン、ドン!!カシン、ドン、ドンドンドンドンドン!!



繰り返す度、5回。計6回撃ち込んだ所で、貯めていたマガジンと弾が無くなった。

・・・・まだ、銃弾の放たれる音が耳に響いている。


クルセウスを見ると、荒い息をつき、呆然とした状態になっている。

自分の状態が分からないのだろう。・・・少々やり過ぎた。


「さて、爺。『人間を迫害しないで、改心する』と約束するなら、

それを外してやっても良いぞ。」

「………ほざけ、人間風情が。調子に、乗るでないぞ。」


・・・・・純粋に驚いた。まさか、此処までされて意見を変えないとは。

しかし、こいつの思想は元老院の爺共と同じだ。故に、こいつは排除する。


「そうか。ならいいや。『クルセウスの力の一切を剥奪』。

『開け、地獄の門』。」


爺がなにも出来ない様に、力を人間と同じにし、本来の『地獄』への門を創造する。


「な、これは?!や、やめろ!!

ワシは神じゃぞ!!こんな事をしてただで済むと・・・!!」

「安心しろ。お前はもうただの人間の爺だ。」

「な、なに?!そ、そんな訳があるか!!」

「ククク、そんな事があるんだよ。じゃあな。閻魔様と仲良くやんな。」

「ま、待て!!い、今なら許さんでもないぞ!!

じゃ、じゃからやめろ!!」

「残念♪お前、俺の目的に邪魔過ぎるんだよね~。」

「な、何を言っているんじゃ?!」

「お前に教える必要はないな。じゃぁな!!」


ドゴォ!!と、磔にしたまま、十字架ごと地獄に蹴り飛ばす。


「に、人間がぁ!!覚えていr「もうお前の出番は終わってるんだよ!!」」


バァン!!と扉を閉める。

さて。残っているのは幼女だが、どう言う返事を寄越すやら。


「『アリアを封印している結晶を解除』。」


結晶の前まで行き、封印を解除すると、中から幼女がドサ、と倒れて来た。


「おおっと。

…気絶して「いやぁ!!離してええええええ!!!」……ないな。」


(流石にあの光景見たらこうなるわな。って、クルセウスがおかしいのか。)


俺は幼女に精神・体力回復魔法をかけ、爺と同じ質問をする。


「さて幼女。

俺はお前にバラバラにされた経験があり、ぶっちゃけ言うと

グ――(18禁だよ!!)――したい所なんだが「ごめんなさい!!」」

「違うの!あれは思わずやっちゃったの!

クルセウス様から色々言われてたから、体が勝手に……!!」


ふ―む、真実4 嘘2 恐怖4って所だな。

『勝手に』は本当で、『クルセウス云々』ってのが半分嘘だな。

ってか、口調が・・・・・。そこらへんも爺の指示だろうな。


「まぁ、嘘付いているのは見逃してやろう。さて、お前にも質問に答えて貰おう。

『人間を迫害しないで、改心する』と約束するか?しn―――」

「します!!約束します!!だから、だから……!!!」

「よろしい。が、それではダメだ。きちんと、自分の言葉で言うんだ。」

「あ…。わ、私は、もう二度と、人間さんを、虐めたりしません…うぅぅぅ……。」


よし、これで強制執行の条件は完了したが・・・・・・・。


「(うっわ―――・・・なんだ、これ?この子態度変わり過ぎじゃね?)」


何かの策略かと思い『答えを出す者』で答えを出してみると―――


「(あー―、そう言う事か・・・・・・。

尊大だったの、完璧爺のせいだった訳か。俺、幼女相手になんちゅう事を・・・・。)

あーー、アリア、ちゃん?ごめんな。俺、やり過ぎちゃって。」

「いぃえ゛、私が最初にあなたの、の、

手足を、『神虎』で噛み切らせ、ちゃったのが

わる゛いんですぅぅぅ!!ごめんなざい゛ぃぃぃぃぃ!!!」

「いや、まあ、確かにそうなんだけど。

俺もこんな小さい子相手に大人げ無かったと思って来た所で……。」

「びえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」



うおおおおおおお!!性質(タチ)悪いぃぃぃぃぃぃぃ!!

俺より実年齢高い性格極悪のロリババァと思ってたのに、

実は爺の洗脳せいでそうなってただけのただの幼女だってんですからね?!

どうしたらいい?!

慰めりゃいいのか?!いや、俺にそんな資格あんのか!!?ねえだろ!!


「うえええええええええっ、うぐ、えぐ、あぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」


っだあああああああああああああああ!!と、取り合えず今はしょうがないだろ?!


(ソロ、ソロ、ポン。)「あ、あの、ごめんな?もう怒って無いから、な……?」

(ギュウウウウウッッ!!)「う゛あああああああああああああああああああああああああああ!!

ごべんなざいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

わたし、わたしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


恐る恐る手を頭に乗せると、背骨がミシミシ、と音が鳴るほど強く俺に抱きついて来た。

武器の攻撃より攻撃力あるんだが?!ってゆーか悪化した!!


「ぜ、『全結晶の封印解除』、『カタルシスの復元開始』!!」


仕方なく、俺は最後のカードを切る事にした。

パリィィィン、と結晶が割れ、中に居た8人が出て来て、

『停止』をかけていたカタルシスの肉体が復元され、元の姿に戻る。


「うわ、まぶし……貴様!!よくも!!!」「よくも閉じ込めてくれたな!!!」

「あれ、なぜ私は生きて……。」「カタルシス?!貴方死んだはずじゃ!!?」

「あれ?死神のニイチャン、なんで生きてんの?」「侵入者はどうするのぉ?」

「あれぇ?クルセウスおじいちゃんとアリアちゃんが居ないよ?」

「おおお、一体何が……。」「クソ!!人間、貴様一体…!!!?」


武器を構える者もいるし、仲間(?)が生きている事に驚いているのもいる。

しかし、今は…………。


「助けてくれえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」

「あ゛あああぁぁあぁあああぁあ゛ああああああ゛ぁ゛ああああ゛あ゛ああああ!!!」


「「「「「「「「「…………は?」」」」」」」」」


※戦闘開始後14分、『神』の犠牲二人。

残った者  助けを乞う者、その胸で泣き叫ぶ者、その両方を見て呆然とする者×9。


愁磨の復讐は、全く恰好がつかない様で終わったのだった。


Side out


 
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