DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
第28話:信じる心とは……
(船上)
アローSIDE
オイラ達は灯台の最上階で闇の炎の番をしていたモンスターを倒し、やはり灯台内に保管してあった『聖なる種火』を使い、元の灯台へと戻した。
リューラも番をしていたモンスター達との戦いに参加し、パーティー戦闘を身を持って憶えたらしく、更に頼れる剣士に成長した。
今まではオイラやトルネコが役に立たなすぎて、一人で戦う事に慣れきってしまっただけなのだ!
だからオイラやトルネコ(特にトルネコの方)が悪いのであって、リューラに罪はないのだ!
まぁこのウルフって人は、その点を解っているらしく、戦闘が終了した時は優しく褒めてくれてた。
それにしても、このウルフって人は凄い!
灯台を元に戻し外に出ると、瞬間移動魔法のルーラを唱え、オイラ達全員を瞬時にコナンベリーに運んでしまった!
オイラはウルフのアニキを尊敬しちゃってます!
そして饅頭と合流したオイラ達は、準備万端状態の船……エピカリス・ネネ号に乗り込み、大海原へ出港した。
饅頭が船名を告げた途端、『ほぅ……“魅力的なネネ”とは、隅に置けませんねトルネコさん!』って、瞬時に意味を理解するウルフのアニキ……
強いし博識だし、本当に格好いいぜ!
更に凄いのがアニキの絵の巧さだ。
出港の為、オイラを始め皆が準備を手伝ったのだが、それが終わり饅頭が金の力で雇った水夫等に船の事を任せると、奴等の邪魔にならない所に座り込み、町で買ったスケッチブックを広げて絵を描き始めた。
もう色々尊敬しまくりのオイラは、アニキの側に近付きスケッチブックを覗き込む……
するとそこには2人の美少女の姿が。
時折向ける視線の先に、リューノと会話するリューラの姿があり、2人の事をスラスラと描いているんだよ! しかも檄ウマ!
アニキの絵の巧さにも、リューラの美しさにも見とれていたオイラ。
気が付くと周囲にはギャラリーが……
頼り無いのに勇者だからってだけでリーダーのシン……半裸なのに平然としているネジの緩そうな女マーニャ……色んな意味掴み所がない不気味な女ミネア……
みんな口々にアニキの絵の巧さを褒め称えている。
流石アニキだ……何をやっても一流の男なんだ!
だが一流とは縁遠い男が、空気を読まずに近付いてくる。
それはホフマン……先程まで饅頭から商売の極意とやらを聞いていたお人好し男だ。
アニキが絵を描いている事は一目瞭然なのに、目の前に立ち興奮気味に話しかけてくる。
「ウルフさん、凄い情報を仕入れましたよ!」
「ふ~ん……」
無駄にテンションが高いホフマンに対し、まるで興味なさそうに流すアニキ……
何より凄いのは、もうリューラ達を見ないでも絵を描き続けられる所だ! 記憶しちゃったの?
「ふ~ん…って、反応薄いな!? 聞いて下さいよ、本当に凄い情報なんですから!」
「別に聞かないなんて言ってないだろ……俺は此処にいるのだから勝手に話せよ」
シビレる! 無駄に暑苦しい男に対して、ここまでクールに対応出来るなんって。
「あ、あのですね……今、我々は『ミントス』と言う町に向かっているのですが、其処に住む『ヒルタン』と呼ばれる老人が、若い頃に世界中を回って手に入れた宝の地図を持っているらしいんです!」
「……………」
「……あの、聞いてますウルフさん?」
「聞いてるよ」
一度もホフマンに視線を向けることなく、スケッチブックの絵を描き進めるアニキは、にべもなく言い捨て軽くあしらう。
「こ、これは是非とも宝の地図を譲って貰い、その宝を探し出しましょうよ!」
人間というのは金が絡むと異様にテンションを上げる生き物だ……
しかし全ての人間がそうではない。
ウルフのアニキは、ホフマンの話を聞いても顔色一つ変えやしない!
「はぁ~……ホフマンさん。俺達は貴方に信じる心を渡しましたが、人を信じる事とバカみたいに情報を鵜呑みにする事は違いますよ。貴方の将来の夢は、父親の様に自分の宿屋を持ち、世界中に展開させる事なのでしょう! だとしたらもう少し知恵を付けないと、何れ誰かに全財産を騙し取られますよ!」
「な、何ですか藪から棒に……こ、この情報は信憑せ「トルネコさん!」
アニキにキツイ事を言われたホフマンは、大分狼狽えながら情報の確かさを説明しようとしていたのだが、やっと顔を上げてくれたアニキの饅頭を呼ぶ声に阻まれてしまう。
「な、何でしょう……?」
おずおずとオイラ達の前に姿を現す饅頭……
スケッチブックを閉じ立ち上がったアニキは、ホフマンを押し退け饅頭の側に近付く。
「ホフマンさんを使い宝の地図で俺を懐柔しようとするのは止めてください!」
「な、何を言うんですかウルフさん!?」
「そ、そうですよウルフさん! 俺はトルネコさんに貴方を懐柔しろなんて言われてませんよ!」
確かに……何であの話がアニキの懐柔に繋がるんだ?
「はぁ~……解った解った、今説明してやっから!」
ホトホト疲れた様子でオイラ達全員を一瞥するアニキ……
やっぱりアニキはかっけー!
「いいか、仮に宝の地図が本物だとして、何で見ず知らずの俺達が譲り受けられると思うんだ? ホフマンさん、貴方はトルネコさんに『これは是非とも実質的リーダーのウルフさんに伝えて、宝の地図を譲り受けられる様に話した方が良いですよ』とか言われたんだろ!」
「え!? 俺とトルネコさんの会話を聞いてたんですか?」
本当にそんな会話があったのかよ!
すげーなアニキ!
「ホフマンさん……人を信じる事と、他人が言った事を鵜呑みにするのとは違うぞ! 貴方は物事の本質を見ようとしない……以前は“人は皆、裏切り者だ”と思い込み、個々の人間の本質を知ろうともしなかった。今は言われた事をただ鵜呑みにして、その情報の意味や何故教えてくれるのかを考えようとしない。それは人を信じているのではなく、その人の事を考える事を放棄しているにすぎない!」
「そ、そんな……」
アニキにキツイ事を言われたホフマンは、顔面蒼白で立ち竦む。
一体以前に何があったのかは解らないけど、コイツは前からこんなヤツだったんだろう。
「トルネコさん。貴方の考えは判ってます」
「わ、私の考え!?」
きっと饅頭は楽して儲けようと考えてるんだと思う。
「リューラは多くを語らない娘だ……きっと父親の事は『凄く強くて、格好良くて、優しくて、面白い人』以外、何も言ってないでしょう」
「えっと……はぁ……」
「だから貴方はリューラの行動や持ち物から推測した事だと思います」
「す、少しは……」
きっと少しじゃないと思う。
「貴方の推測を当てましょう。きっとリューラの父親は、何処ぞの大貴族だと思った事でしょう。リューラの世間知らずなところや、装飾品の貴重さ……腹違いで居る複数の兄妹の事」
「そ、その通りです……」
「本人に会うまでは詳しい事を説明するのは避けますが、リュカさんは貴族じゃありません。まぁ近い物はありますけど、あの人が自由に使う事の出来る金は少ないです。取り入っても旨味は少ないですよ」
「え、そうなんですか!?」
本当にそんな事を考えてリューラの手伝いをしてたのかよ……
最低な饅頭オヤジだな!
しかも最も危険な事はリューラが自分で解決してたからな……
「俺の事はどう考えました? 腰に剣をぶら下げてるから、脳味噌まで筋肉の馬鹿剣士だと思ったんじゃないですか? 宝の話を持ちかければ、ホイホイと手の平で踊ってくれる単純馬鹿だと考えたんじゃないですか!?」
「い、いえ……そ、そんな事は……その……」
こ、これも正解かよ……
饅頭の腐れ加減も凄いが、アニキの人を見る目も凄いなぁ……
そんなに会話はしてないだろうに……何を基準に判断してんだろうか?
「言っておきますが俺は頭脳派です。幼い頃より魔法を専行してきて、魔法戦であればまず負ける事は無いと自負してます! しかしながら剣術は初めて数年で、とてもではないが一人前とは言えないレベルです」
「そ、そうなんですか……!?」
色々な事実を知りガックリ項垂れる饅頭。
お前……その態度は全てを認める行為だぞ。
まぁアニキが全てを明るみにしちゃったから、今更取り繕っても意味はないけどね。
「ホフマンさん。解りますか……トルネコさんが貴方に宝の地図の情報をくれたのは、俺が単純馬鹿だと思ったからですよ。親切心でなく下心大有りなんですよ!」
「お、俺は一体何を信じれば良いんだ!?」
饅頭の隣で同じように項垂れるホフマン。
腹黒と脳空がアニキの前で蹲る……
うぜぇ~……
「コイツ等うぜっ……」
顔を顰めたアニキが、横を向いて呟いた言葉だ。
多分蹲る2人には聞こえてない……真後ろのオイラには丸聞こえだけどね。
「はぁ……ホフマンさん。人を信じるという事は、同時に疑うという事なんです!」
「え!? でもそれって正反対の事では?」
う~ん……疑いながら信じる? それとも信じながら疑うのか?
「違います。初対面の人間を疑うのは当然です……ですが以前の貴方の様に『人なんて信じられない!』とアピールするのではなく、『私は貴方を疑ってませんよ』と見せるのです。そうする事で相手も全てでは無いにしろ本心を晒してくるはずですから……そうしたら貴方も少しずつ本心を晒し出す。互いに少しずつ本音を語り合える様になり、最終的には心から信じ合える関係を築くんです」
はぁ流石アニキは良い事言う……
オイラには半分も理解出来なかったけど、良い事言ってるのだけは解る。
その調子で饅頭も改心させてくれよ……
「トルネコさん……今のままリューラの父親と合流すると、地獄の様な目に遭いますよ。他人を利用して自分だけ利益を得ようとする根性。あの人はそう言う事が大嫌いですからね!」
「ど、どんな目に……!?」
「さぁ……それは俺にも解りません。でも今の内から危険を伴う行動に率先して参加し、仲間との一体感を作り上げておかないと、リュカさんは俺以上に鋭い人ですから、出会って直ぐに人柄を理解されちゃいますよ」
アニキは饅頭に向けて薄ら笑いを浮かべると、リューラの父親の事を説明する。
オイラも怖くなってきたよ……
リューラの父ちゃんってどんな人なんだろう?
アローSIDE END
後書き
ちょっとウルフの凄いところを書いてみた。
彼は秀才なんですよ。
周囲の人物が極端に凄いだけで、彼自身も凄いんです……見えないかもしれないけど。
ページ上へ戻る