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久遠の神話

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第四十六話 また一人その七

「手に入りますね」
「それで俺はな」
「そのお金で、ですか」
「家族の入院費、治療費を稼いでな」
 それでだというのだ。
「残ったのは生活費なんだよ」
「そうされてるんですか」
「ただ。そんなに金はかけてないからな」
「あれっ、そうなんですか」
「ああ、店で買ったのを料理してると案外安くつくんだよ」
 少なくとも外食するより予算はかからない、この辺りは言うならば主婦の生活の知恵である。
「だからよくそうしてるんだよ」
「安いんですか」
「金田正一さんみたいに極端にしないとな」
 言わずと知れた四百勝投手だ。食べ物に気を使い当時日本では食材が揃わなかった参鶏湯や牛肉も高価だった頃だがすき焼きで肉や野菜、高麗人参等の漢方薬を口にしていた。その為食費がかなりのものになっていたのだ。
 だが普通に食べ物に気を使っていればどうか、中田が言うのはそうしたことだった。
「滅多にな」
「お金はかからないですか」
「高麗人参とか特にな」
「あっ、漢方薬の」
「普通は食わないからな」
 こう言うのだ。実際に彼も。
「そうそうな」
「ですよね。あれ高いですよね」
「まだ安くなったみたいだけれどな」
 それでも漢方薬の最高峰だ。安くない筈がない。
「金田さんって普段からな」
「そうしたものを食べていたんですね」
「薬膳料理な。そういうのとか食べてたんだよ」
「バランスよくたっぷりとですか」
「それだけ身体に気を使ってたからな」
 それでだというのだ。
「四百勝できたんだろうな」
「それで、なんですか」
「ああ、それでだよ」
 そこまでの実績を築くにはそれなりのものがあるというのだ。
「つまりはな」
「凄いですね」
「凄いだろ、まずは何ていってもな」
「いいものを食べる、ですね」
「全てはそれからなんだよ」
 中田は笑顔で上城に話す。
「いいものを食う。それからだよ」
「じゃあ僕も」
「君もいいもの食えよ」
「インスタントラーメンとかは」
「食べてもいいけれどな」
 何を食べるな、やそういったことは言わない中田だった。
「けれどそれでもな」
「ちゃんと考えて食べろってことですね」
「インスタントラーメンの場合はさっきも言ったけれどな」
「野菜を入れてですね」
「それもたっぷりとな」
 そうして食べろというのだ。
「そうすればいいんだよ」
「本当にバランスよく食べないと駄目なんですね」
「それもたっぷりとな」
 この二つを両立させないと駄目だというのだ。
「あと俺は煙草も吸わないしな」
「あっ、そういえば」
 上城も言われてそのことに気付いた。中田は酒は飲むが煙草は吸わない、それも一本として吸わないのだ。
「中田さん煙草は」
「あれは絶対にやらないんだよ」
 中田はこうまで言う。 
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