ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第1章
旧校舎のディアボロス
第23話 友達ができました!
前書き
再びイッセーとアーシアの話しです。
「峠最速伝説イッセー!」
「速いです!?速いです、イッセーさん!」
俺はあの後、アーシアを連れて近くのゲーセンに来ていた。
『WIN!』
今、俺がやっているレーシングゲームの俺の勝利を告げる文字が画面に映し出される。
「凄いです、イッセーさん!」
「へへへ。今度はアーシアがやってみろよ」
「えッ!?私ですか!出来ますでしょうか?」
「まあ、やってみようぜ」
「は、はい!」
今度はアーシアがレースに挑戦する。
「ひゃあぁっ!?危ないです!?きゃあぁぁぁ、回ってしまいますぅぅぅっ!?」
「ああぁ……」
結果、他の車にぶつかりそうになり、慌てて避けたら壁にぶつかり、さらにスピンしてしまう。
『LOSS!』
アーシアの敗北を告げる文字が画面に映し出される。
「ううぅ……」
「初めてだから仕方ないよ。俺も最初からあんなに速かった訳じゃないしな。アーシアも慣れれば速くなるさ。今度は…」
俺はアーシアを励ましつつ、他のゲームの方に向かおうと、いろいろ廻る。
すると、アーシアがクレーンゲームの前に張り付いていた。中の景品を見てみると、人気キャラクターのラッチューくんの人形があった。ネズミが元のかわいいマスコットキャラだ。
「ラッチューくん、好きなの?」
「えっ!?あの…そ、その……はい……」
俺の問いにアーシアは恥ずかしそうに頷く。
「よし、俺が取ってやるよ!」
「えっ!?で、でも……」
「良いから、良いから」
そう言い、俺はコインを投入した。
「こう見えても、帰宅部の頃は松田と元浜、たまに明日夏とで近所のゲーセンを駆け抜けたものさ!」
「わあぁ!」
よっしゃぁ!一発ゲットだぜ!
「ほら、アーシア」
「ありがとうございます!このラッチューくんはイッセーさんとの出会いが生んだ宝物です!」
あはは、大袈裟だなぁ。
「よし、次はあっちに行こうぜ!」
「はい!」
ー○●○ー
「あ~、さすがに遊びすぎた……」
「そ、そうですね……」
俺達はゲーセンで遊んでクタクタになっていた。
「でも、こんなに楽しかったのは生まれて初めてです!」
「本当、アーシアはいちいち大袈裟…ぐっ!?」
くそ、フリードに付けられた傷が痛みだしてきた!
「……あの時の怪我ですね?」
「……ああ……」
折角の楽しい雰囲気をぶち壊しちゃったな。
俺は街路樹にあるベンチでアーシアに傷の治療をしてもらう。
しっかし、本当に可愛いよな。
俺は熱心に治療をしてくれているアーシアの顔をまじまじと見つめてしまう。
「確か、足も?」
「え!?あ、ああ!」
足の傷の方も治療してもらう。
「どうですか?」
「え~と?おお!なんともない!あは!足も治ってるよ!」
さっきまで痛みが走っていたのにもう全然なんともなかった。
「凄ぇよ、アーシア!」
「うふふ」
「それって神器だよね?」
「はい。神様から頂いた素晴らしい力です」
そう言い、最初は微笑んでいたが徐々に顔を崩し、目元に涙を溜めていた。
「……ごめん。嫌な事を思い出させちゃったかな?」
「……いえ…うっ……」
その後、落ち着いたアーシアから聞かされた。
アーシアは生まれてすぐに親にヨーロッパにある教会の前に捨てられたらしい。アーシアはそこで拾われ、育った。ある日、傷付いた子犬が教会に迷いこんで来た。その子犬は死に掛けていて、教会の人もお手上げだったらしい。アーシアはそれでも諦めずに祈り続けたそうだ。すると奇跡が起き、子犬の怪我が治った。その時にアーシアは初めて神器の力を使ったのだろう。その光景を見た教会関係者はアーシアを聖女として崇め、たくさんの傷付いた人々を治療したらしい。アーシア自身も人々の役に立てるのを嬉しかったみたいだ。
でもある日、アーシアの前に傷付いた男性が現れた。その男は悪魔であった。しかし、アーシアはその悪魔を放っておくことができず、その悪魔を治療した。そして、その光景を見た教会関係者は彼女を異端視する。
『悪魔を治療する力だと!』
『魔女だ!』
『悪魔を癒す魔女め!』
教会関係者は悪魔も治療出来る力を持つアーシアを異教徒として追放した。
人々を癒す聖女から悪魔を癒す魔女になってしまったのだ。だがアーシアが何よりもショックだったのは彼女を庇う人が誰一人いなかった事らしい。
そして、行き場の無くなったアーシアを堕天使が拾ったと言う訳である。
「でも、私は神への祈りを、感謝を忘れた事はありません。ましてや、あの方達がみんな、あの様な事を……」
俺は正直なんとも言えなかった。
彼女の歩んで来た人生はあまりにも悲惨だった。
「きっと、これも主の試練なんです。私、夢があるんです」
「夢?」
「お友達とお花を買ったり、本を読んだり、お喋りしたり、一緒に遊んだりすることです。私、友達がいないですから……」
笑ってはいるが、その心は一体どれだけの悲しみで満ちているのか想像できなかった。
おい!神様よぉ!なんでこの子を助けてあげないんだよ!?こんなにもあんたに尽くしているのに!?そうかよ、だったら!
俺はその場から立ち上がる。
「イッセーさん?」
「友達ならいる!」
「え?」
「俺がアーシアの友達になってやる!」
「ッ!?」
「って言うか、もう俺達友達だろ?だってほら、喋ったり、一緒に遊んだりしただろ?まあ、花とか本はなかったけど、これじゃあダメかな?」
「っ!いえ!いえ!いいえッ!」
また泣き出しちゃったけど、今度のは悲しみから来るものじゃないって確信できた。
「でも、イッセーさんにご迷惑が……」
「悪魔もシスターも関係ねえよ!」
「私、嬉しいです!」
そこには今までの中で最高の笑顔があった。
「それは無理よ」
「っ!?」
そこに無情な言葉が投げ掛けられた。
後書き
このイッセーの友達宣言は好きなシーンの一つです。
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