ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第25話 脱兎の如く
~第2層・ウルバス~
キリトと別れたリュウキはそのまま主街区のウルバスに向かった。
そこは直径300mほどのテーブルマウンテンを外周部だけ残して丸ごと堀りぬいたような街だ。南のゲートから中へ入ると、その街特有のBGMで包まれる。次の街次の街で様々なBGMがあるが、大体は似たような感じだ。
だが、層と層のBGMには格別に違うものがある。
なんといえばいいか言葉は中々見つけられないが、『新しい層にきた!』と言う事実を新たにさせるのだ。到達感、達成感の類を擽られるのだ。
「まぁ……βの時に来たから、別に今更そうでもないが」
そんな気持ちもリュウキにとっては、そこまででも無い様だ。β時代に少なくとも16回程は経験しているから、と言うのもあるだろう。
そして、リュウキはあたりを見渡した。
当たり前だが、プレイヤーは誰一人としていなかった。それもそうだろう。つい数十分前に第1層のBOSSを倒してきたばかりだから。
今現在、この層にいるプレイヤーといえば、キリトくらいのもの。後は有効化アクティベートをすれば入ってくるだろう者たちだけだ。そして、有効化はたとえ自分でしなくとも、各層のフロアBOSSが滅べば2時間後自動的に有効化される。
だから、自分でしなくてもいいのだが……。
「まぁ……また、情報独占、とかなんとか……っていわれるもの嫌だしな。……遅れでもすれば 間違いなく疑われるからそのあたりはしっかりしないと……か」
リュウキはそう呟いた。だが、厳密に後1時間以上は時間がある。……あの時BOSS攻略に参加していた連中は全員リュウキが2層に来ている事を知っている。そして、有効化をするともあの時に宣言したのだ。
その上で、実行しない……と言う事は、先刻のように、大勢の恨みや反感を買うだろう。付け狙われ、恨み事を事あるごとに言われ……、更には襲撃もされるかもしれない。
流石それは、嫌を通り越す事だ。
「さて……」
リュウキは転移門……と言うより、ただの石積みのアーチだが、それを見つけると、右手を伸ばした。
すると、その場所に鮮やかなブルーの光があたりを照らし出した……。そして、数秒たった後 転移し かなりの人数のプレイヤーがこの場所へ集まってきた。それに合わせて、NPCたちの演奏があたりに響き渡る。
だが、もうそこにはリュウキはいなかった。
「あれ……? ここが開いたって事は誰かが有効化してくれたってことのはずなんだけど……誰もいないな?」
「だよな? なんでだ?」
そんな会話、そしてきょろきょろとあたりを見渡すプレイヤーが増えてきた。言動と行動で元βだと言うのがわかる。
そして、あのBOSS戦には参加していないと言う事も。
リュウキは、転移門前広場にある宿屋の屋上で見下ろしていたから、誰が来るのかよく判る。
「……そういえば、βのときもあったな。開通記念……NPC達の演奏を奏でるのが。……最後に見物をしていたのは確か、8層……だったか?」
以前も言ったがあのβテストの時は、再度BOSS戦に挑戦と言う変わった仕様もできるようになっていた。開放されたのはリュウキの16層までだが、そこまで来るプレイヤーは殆どいないのだ。
なぜならば、あの時に、連中に言ったとおり、上の層に来たところで直ぐに死んでしまうからだ。
自らの強さレベルに合わない層だから仕方がないだろう。
1000人中のベテランMMO経験者の連中が唯一ギリギリいけそうな場所が、キリトが主戦場にしていた第6層。ゆえにβの時は集まってきて、NPC達と一緒に騒いでいたのは6層目までだったと記憶している。
「……まぁ 騒がしいのは得意じゃないから良かったのかもしれないけど」
NPC達が奏でる音楽、BGMを懐かしみながらも、特にそこまで興味のないリュウキはそのまま街中へと向かって言った。
そして、転移門に背を向け そろそろフィールドへ、と向かおうとした時だった。転移門が再び光ったかと思えば、 “ビュンッ!!”と言う風切り音が離れていたのにも関わらず、聞こえてきて 見覚えのあるプレイヤーがかなりのスピードで街の南へと走り去っていったのだ。
「………ん?」
確かに速い、だが 眼で捉えられない程の動き……と言う訳ではなかったから、リュウキは今のが誰なのか、はっきりと判った。それだけなら、別段驚きはしない。
だが、驚いたのはそのプレイヤーの後を追って走って行く2,3人のプレイヤーを見かけたからだ。傍から見れば、いや 傍からでなくとも、見れば一目瞭然だ。
リュウキは、屋上から見下ろしながら、考える。
「……それにしてもなんで《アイツ》が追われてるんだ? ……まぁ 何かしたんだろうけど」
リュウキはそう呟く。
そう、追われている。それが一番しっくりとくる表現だ。別に街中で襲われても別に危険もない筈だが、逃げている。なぜだろうか、その事がリュウキは、いやに気になっていた。
その追われている相手もそうだ。
「………様子を見にいってみるか。」
リュウキは向かう方角を変更し、その連中を追っていった。
どうやら、街の外にまで逃げているようだ。つまりは、圏外に。
「まさか、いきなりPKなんて事はしないよな……」
若干の不安が過る。
厄介な相手だと言う事は判る。……けれども、死なれるのは困る。
一応リュウキは、戦う事も視野に入れた準備をして、外へと向かっていった。
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