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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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実は原作通りのもあった。






 二〇××年、東京都中央区銀座午前一時五十分。

 そこは死地となっていた。

「……酷すぎるな……」

 俺は溜め息を吐いた。

 銀座の至るところに人間の無惨な遺体が放棄されていた。

「遺体収容は警察の仕事やけど、自衛隊も必要やな」

 俺は首が無い民間人の遺体を担架に載せる。可哀想にな……。

「行くぞ水野」

「了解す」

 部下の水野三曹と共に担架を持ち上げて収容所へと向かう。

「しかし摂津三尉、あの敵は何なんでしょうね?」

「……分からんな(ほんまは知ってるけどな)」

 首元に三等陸尉の階級章を付けた俺はそう呟いた。

「ともかく収容していこうや。もしかしたら生存者がいるかもしれんしな」

「そうですね」

 二人の自衛官は交代まで遺体の収容をした。



ピリリ。

「はい、もしもし?」

 休憩中に携帯電話が鳴って俺は電話に出る。

『遺体収容御苦労さんだな』

「おぅ、それより標準語で喋んなや。今は俺と電話しているやろ?」

『ハハハ、毎日毎日党の豚共に頭を下げてるからな。やってられへんわ』

 電話先で男が笑う。

「それでよ……やっぱあのゲートか?」

『……恐らくな。北条総理だから特地への派遣法が決められるやろう』

「……政治は頼むで木戸?」

『此方は任せろ。特地は摂津に任したからな』

 そこで電話は切れた。

「……まさかあのゲートの世界とはな」

 俺は出されていた紙コップに注がれているお茶を飲んだ。

 味は烏龍茶のようだな。

 そろそろ説明に入るけど、俺の名は摂津樹(いつき)や。

 陸自の三等陸尉をしている。まぁ上の会話を見ている限り、俺と今電話をしていた親友の木戸孝は転生者になる。

 俺と木戸は前世でも親友であり、木戸は政治家に、俺は自衛官になる予定だった。

 けど、たまたま大学に行くのに使うバスが事故に合ってしまい俺と木戸は即死。

 気がついたら俺は子どもの頃の姿になっていたというわけや。

 家族もいたから過去に戻ったと思っていたが、日本の政治家の名前が違っていたんやな。

 そんでよく聞いた名前やなぁと思っていたら木戸が「ゲートの世界やないか?」と気付いたわけや。

 『ゲート 自衛隊彼の地にて斯く戦えり』は大学に本があったのでよく読んでいた。

 後漫画も買ったしな。

 取りあえず俺と木戸は前世同様に自衛官と政治家を目指す事にした。

 いつ銀座の事件が起こるか分からんからな。

 そんなわけで大学を卒業後に陸自の幹部候補生を受けて見事に合格して三等陸尉になったわけやな。

 そして遂に今日、ゲートが開かれて奴等がやって来たわけだ。

「取りあえずは原作が始まったという事やな」

 俺はそう呟いて、再び遺体収容に向かったのであった。



 数日後、北条総理が国会で答弁をした。

「当然の事であるがその土地は地図に載ってはいない。「門」の向こう側はどうなっているのか? その一切が謎に包まれている。だがそこに我が国のこれまで未確認だった土地と住人がいるとすれば――そう、ならば強弁と呼ばれるのを覚悟すれば特別地域は日本国内と考えていいだろう」

 北条総理は国会でそう言う。

「今回の事件では多くの犯人を『逮捕』した。逮捕と言わなければならないのは我が国に捕虜に関する有事法令が無いからである。現在の法令に従えば彼等は刑法を犯した犯罪者――いやテロリストだッ!!」

 北条総理はテロリストを強調する。

「よって「門」を破壊しても何も解決しない。また「門」が現れるかもしれないからだ。そのためにも向こう側に存在する勢力を交渉のテーブルに力ずくでも着かせなければならない。相手を知るためにも我々は「門」の向こうへ踏みいる必要がある。危険、そして交戦の可能性があろうともだッ!!」

 北条総理の演説に野党は何も言わない。

「従って、日本国政府は特別地域の調査と銀座事件首謀者の逮捕、補償獲得の強制執行のために自衛隊の派遣を決定したッ!!」

 北条総理は力強くそう言ったのである。

 そして派遣される部隊は約三個師団で、幹部、三曹以上を中心に編成される事になる。

 これに対してアメリカ及びEUは協力を惜しまないと表明。

 ロシアや中国、韓国等は門は国際的な管理下にと表明した。

 派遣部隊はゲートに入ったのであった。




「空気が美味いなぁ……」

 俺は防御陣地を作りながら言う。

「三尉、奴等は来ますかね?」

 水野三曹が持って来た布袋に土を入れている。

「来るだろうな、奴等は必死に取り返そうとするはずだ。このゲートをな」

 俺はそう言って布袋に土を入れる。

「そうですね」

「ま、今は陣地の構築をしようやないか」

「はい。本当は施設科じゃないんですけどね」

「文句を言うな」

 俺はそう言って土嚢を積み上げていく。

「日が暮れるまでに後三つも作らないとあかんからな」

「分かっていますよ」

 水野三曹はそう言って黙々と作業をするのであった。





――帝国皇城――

「あえて言上致しますが、大失態でありましたな」

 一人の男が皇帝の椅子に座るモルト・ソル・アウグスタスに言う。

「帝国総戦力六割の喪失ッ!! この未曾有の大損害をどう補うのか?」

 古代ローマ人が着ていたような服を着ている男が皇帝に叫ぶ。

「陛下ッ!! 皇帝陛下はこの国をどのように導くおつもりかッ!!」

「……カーゼル侯爵、卿の心中は察するものである……」

 漸くモルト皇帝が口を開いた。

「外国諸侯が一斉に反旗を翻すのではと恐怖に夜も眠れぬのであろうが、危機のたびに我等は一つとなり切り抜けてきたではないか。二百五十年前のアクテク戦役のように」

 周りにいる議員達はモルト皇帝の言葉に傾ける。

「戦に百戦百勝はない。よって此度の責任は問わぬ。まさか敵が門前に現れるまで裁判ごっこに明け暮れる者はおらぬな?」

「ッ……」

 カーゼル侯爵は何も言わない。

「だが敵の反撃から僅か二日ですぞッ!! 我が遠征軍は壊滅し「門」は奪われてしまったッ!!」

 頭に包帯を巻いた議員が立ち上がる。

「パパパッ!! 遠くで音がすると我が兵が薙ぎ倒されるのだッ!! あんな凄い魔法は見たことないわッ!!」

 負傷したゴダセン議員は「門」の守備をしていた。

 しかし、「門」を潜り抜けた一〇式戦車を先頭にした特地派遣師団の攻撃で「門」があるアルヌスの丘は奪われた。

 ゴダセン議員は援軍の到着を待ってからアルヌスの丘に突撃をしたが、陣地構築していた派遣師団の攻撃を受けて壊滅したのだ。

 辛くもゴダセン議員は軽傷で戦場を離脱する事が出来た。

「戦いあるのみだッ!! 兵が足りぬなら属国の兵を根こそぎかき集めればよいッ!!」

 軍人ながら議員をしている者が叫ぶ。

「連中が素直に従うものかッ!! ゴダセン議員の二の舞になるぞッ!!」

「引っ込め戦馬鹿ッ!!」

「なにをッ!!」

 議員通しが喧嘩を始めるが、それを制するようにモルト皇帝が立ち上がる。

 立ち上がったモルト皇帝に、喧嘩を始めた議員達は手を止めた。

「余はこのまま座視する事は望まん。ならば戦うしかあるまい。諸国に使節を派遣し援軍を求めるのだ。ファルマート大陸侵略を企む異世界の賊徒を撃退するためにッ!!」

 モルト皇帝の言葉に議員達は何も言わない。

「我等は連合諸王国軍(コドゥ・リノ・グワバン)を糾合し、アルヌスの丘を奪い返すのだッ!!」

「……陛下、アルヌスの丘は人馬の躯で埋まりましょうぞ?」

 モルト皇帝の決定に、カーゼル侯爵は顔をしかめた。





 アルヌスの丘付近には帝国が召集した連合諸王国軍が勢揃いしていた。

 集まった連合諸王国軍は約二十一ヵ国ほどであり兵力は約二十万であった。

 それを小さな丘から見ている王がいた。

「連合諸王国軍か……」

「さてデュラン殿、どのように攻めますかな?」

「リィグゥ公」

 エルベ藩王デュランにリィグゥ公国のリィグゥ公が声をかけた。

「アルヌスに先発した帝国軍によると異世界の兵は穴や溝を掘って籠っている様子。此ほどの軍をもってすれば鎧袖一触、戦いにもなりますまい」

「そうですな……(そのような敵、帝国軍なら簡単に打ち破れるだろう……)」

 デュランはそう思った。

『なぜモルト皇帝は連合諸王国軍など呼集したのか?』

 しかしデュランに答えは出なかった。

「リィグゥ公、戦いに油断は禁物ですぞ」

「ハハ、貴公も歳に似合わず神経が細かい。敵はせいぜい一万、此方は二十一ヵ国二十万を号する我等が合流すれば自ずと勝敗は決しましょうぞ」

 リィグゥ公はそう言って頭に兜を装着する。

「それではまた後で」

「それでは」

 リィグゥ公はそう言って去って行った。


 連合諸王国軍はアルヌスの丘に向かって前進していた。

「報告ッ!! 前衛のアルグナ王国軍、モゥドワン王国軍、続いてリィグゥ公国軍がアルヌスへの前進を開始ッ!!」

「うむ、帝国軍と合流出来たか?」

「それが……」

 伝令の兵士が困った表情をした。

「どうした?」

「それが、帝国軍の姿が一兵も見えませんッ!!」

「何ッ!?」

 伝令の報告にデュランは驚いた。

「後衛にはいないのかッ!!」

「いえ、後衛にはいません」

 後方を見ていた側近がデュランに言う。

「一体どういう事だッ!!」

 デュランの叫びに側近達は何も言えなかった。

 帝国軍がいないのには前進をした前衛も直ぐに気付いた。

「帝国軍は何処だッ!! 後衛にもおらんのかッ!!」

「は、伝令を飛ばしていますが帝国軍を見つけたような報告はまだ……」

 リィグゥ公の叫びに側近は弱々しく答える。

「まさか既に敗退――」

 その時、何かの音が聞こえてきた。そしていきなり爆発したのである。

「陛下ッ!! 敵の魔法攻撃ですぞッ!!」

「こんな魔法は見たことないわッ!! 敵の姿も見えておらんぞッ!!」

 リィグゥ公が叫ぶ。

「全隊亀甲隊形ッ!! 亀甲隊形ッ!!」

 リィグゥ公国軍は楯を上にかざす。

 しかし再び爆発が起きた。

「うわァッ!!」

 リィグゥ公は爆発の衝撃で吹き飛ばされた。

「うぅ……」

 リィグゥ公は傷だらけになりながらも立ち上がる。

 リィグゥ公が見たのは兵士達が次々と吹き飛ばされていく光景だった。

「……これは戦ではないッ!! こんなものが……こんなものが戦であってたまるかッ!!」

 そしてリィグゥ公も爆発に巻き込まれたのであった。

「な、何事だッ!? アルヌスが噴火したのかッ!?」

 それを見ていたデュランはそう言う事しか出来なかった。


シュパ……パンッ!!

 照明弾が撃ち上げられ、眩しくなるアルヌスの丘の周りには連合諸王国軍が展開している。

『ニッフィー3、ニッフィー3。敵を視認ッ!! 地面が三分に敵が七分、繰り返す地面が三分に敵が七分だッ!!』

 無線から偵察員から緊急連絡が入る。

「戦闘配置ッ!! 戦闘配置だッ!!」

「またかくそッ!! これで三度目で今度は夜襲かよッ!!」

 RPG系の本や雑誌、DVDを見ていた隊員達が罵倒する。

「文句言うなアホッ!! 急げ急げ急げッ!!」

 隊員達は見ていた本等を放り出して六四式小銃やミニミを持って陣地に入り射撃準備をする。

「流石に三度目はキツイですね摂津三尉」


「文句言うなよ水野」

 ミニミを構えた水野三曹がそう呟いた。

 陣地の周りでは退役したのを特地に持ってきた陸自の35ミリ連装高射機関砲L-90等が照準を連合諸王国軍に向ける。

 七四式戦車や一〇式戦車も射撃準備をする。

 一方、連合諸王国軍は昼間の戦闘でやられた仲間の死体を踏み越えて進撃している。

「慌てるなよ……」

 俺は撃ちそうな水野に言う。

「まだや……」

パンッ!!

『ウオオォォォォォォーーーッ!!!』

 再び照明弾が撃ち上げられた時、連合諸王国軍は一斉に突撃を開始した。

『撃ェッ!!』

 突撃する連合諸王国軍に陸自は一斉に射撃を開始してアルヌスの丘付近は戦場となった。


 そして一夜が明けた。

「……酷いもんやなぁ」

 俺は陣地を出て辺りを見渡す。あちこちに四肢を吹き飛ばされたり肉片となったりして戦死している連合諸王国軍兵士が地面に倒れている。

「摂津三尉、檜垣三佐から命令です。戦死した敵兵士の埋葬を行うそうです」

 水野三曹と片瀬三曹が担架を持ってやってきた。

「そうか、ならこの辺から片付けるか」

 俺は辺りを見渡す。この辺は四、五人の人間が折り重なって戦死しているけど何でこんな折り重なってるんだ?

「ま、それは後やな。そんじゃあ上から埋葬していくぞ」

 俺と水野は上から戦死者を担架に乗せて埋葬地に運んでいく。

 そして漸く五人目の戦死者を埋葬地へと運んだ。

「……ん? まだ戦死者がいたみたいだな」

 その戦死者は女性だった。地面に窪みがある事やしたまたま弾が身体に命中してこの窪みに潜ったんだろうな。

「運ぶぞ水野」

「了解です」

 そして女性の両肩を持った時……。

「……ぅ……」

 ……ん?

「……なぁ水野、今……」

「はい……」

「………」

 俺の言葉に水野は肯定し、片瀬は無言で頷いた。

 俺は心臓辺りの胸に耳を当てる。

ドクン……ドクン……。

「……生きてる……」

「三尉、この女性は軽傷しているだけです」

 傷があるか調べた水野がそう言った。

「片瀬ッ!! 衛生科の連中を呼んでこいッ!!」

「はいッ!!」

 片瀬が衛生科がいるテントまで向かう。

「それにしても激戦だったみたいやな……」

 生存していた女性は服がところどころ破れて、胸も左胸が見えていた。

「三尉、取りあえず何かを着せましょう。このままだと自分らは誤解されますよ」

「だろうな」

 俺は迷彩色のタオルで女性の胸を隠す。

「うぅ……」

 その時、女性が目を開けた。女性はボンヤリと俺を見ていたが、自分の胸を見た。

 ちなみに触ってないからな。タオルを巻いた状態だからな。

「~~~ッ!!」

 女性はいきなり叫んで俺にアッパーを……へ? アッパー?

「グハッ!?」

「せ、摂津三尉ッ!?」

 俺は水野の叫び声を聞きながら気絶した。


――日本東京、民自党本部――

「……それでは君はゲートがいきなり閉じる可能性があると言うのかね?」

 北条前総理大臣から後を引き継いだ本位民自党総裁――内閣総理大臣は木戸孝に聞いた。

「あくまでも自分の視点からです総理」

 摂津の親友であり、一年生衆議院議員ながら防衛大臣政務官の木戸はそう補足する。

「今のゲートは何が起こるか分かりません。幸いにもゲート先の特地には派遣の陸自と空自がいますが、あの日いきなり現れたゲートがいきなり閉じる可能性もあります」

「……確かにそうだが……」

「そこで、一応ながら自給自足の支援してみてはどうですか?」

「自給自足か?」

「はい、ゲートがもし閉じる時、地震や津波のような前触れがあるかもしれませんがもし前触れが無くいきなり消えた場合、派遣した隊員達は日本からの補給が途絶えて戦国時代へタイムスリップした映画のような結末になるかもしれません。ですが食料対策で水田や畑の耕しや石油の精製工場、武器弾薬の生産工場を作ればある程度の自給自足は出来るでしょう」

「しかしゲートが閉じる可能性が君の中であるならば特地から撤退して銀座のゲートを警戒した方が良くないかね?」

「確かに総理の意見は尤もですが、それでアメリカが納得しますか? 彼等は中近東で手一杯なため石油や鉄鉱石等の資源は欲しいはずです」

「……彼等のために自衛隊の隊員を犠牲にしろと言うのかね?」

「犠牲ではありません。眠っている日本をたたき起こす必要があります。その役目が特地の隊員達なのです」

「……分かった。水田や畑の耕しからを農水省の人間を派遣したり農家の人からアドバイスを貰うとしよう。石油や武器弾薬はそれからだ」

「ありがとうございます総理」

 木戸は本位に頭を下げて総裁室を出た。

「……木戸の事を理想郷主義者だとか言われていたが、現実主義者のようだな」

 本位はニヤリと笑う。

「木戸ならば今の日本を……」

 本位は後から続く言葉を言わなかった。






 
 

 
後書き
てなわけで転生者二人を加えた原作沿いの展開でした。
ちなみにヒロインは栗林、ヒルダ、ピニャ、ハミルトン、ロゥリィと考えてました。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m 
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