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ドン=ジョヴァンニ

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第一幕その十九


第一幕その十九

「この楽師達の音楽が聴こえるね」
「はい」
 マゼットはあえて表情を消してこの言葉に頷く。
「よく」
「私と共に行こう」
 ジョヴァンニは今度は彼も誘う。
「今から皆で」
「それでは三人で」
「村の皆も一緒に」
「勿論だとも」
 ジョヴァンニは二人の申し出ににこやかな顔を作って頷いてみせる。
「それじゃあ今から」
「はい、今から」
「皆で行きましょう」
 こうしてまず三人が向かいその後をジョヴァンニの召使達と物陰からぞろぞろと出て来た村人達が続く。その頃屋敷には仮面を着けた三人の男女がもう窓辺のところにいた。
「さあ、御二人共」
「ええ」
「ここですね」
 それぞれエルヴィーラ、アンナ、オッターヴィオである。三人はもうここに来ているのだった。
「ここです」
「ここがあの悪党の屋敷」
「ここだったのですか」
「もうすぐです」
 エルヴィーラは二人に顔を向けて告げる。
「あの悪党に天罰を与えてやりましょう」
「その通りです」
 オッターヴィオが彼女の言葉に最初に頷く。
「アンナ、僕はここで仇を討つことになる」
「危険が多いかも知れない」
 アンナはこのことを危惧していた。
「オッターヴィオ、気をつけてね」
「わかってるよ。僕は大丈夫だよ」
「エルヴィーラさん」
 エルヴィーラにも気遣う声をかける。
「貴女も」
「わかっております」
 エルヴィーラの声ははっきりとしていた。
「もうあの男のことはよくわかっていますから」
「そうですか。それでは」
「いよいよ」
「あれ、旦那」
 ここで窓が開いた。そしてその中からレポレロが顔を出してきて三人を見て言うのだった。
「あれ見て下さいよ」
「どうしたのだ?」
「ほら、あそこですよ」
 こう言って三人を指差して出て来たジョヴァンニに対して言うのだった。
「あそこにきれいな仮面の人達が来られてますよ」
「ふむ。それも面白いな」
 ジョヴァンニは彼の言葉を聞いてこう述べた。
「ではその方々も宴にお招きするのだ」
「あの人達もですか」
「そうだ。客人は多い方がより楽しくなる」
 派手好きのジョヴァンニらしい言葉であった。
「だからだ。それでいいな」
「わかりました。それじゃあ」
「あの声は」
「間違いありませんね」
「ええ」
 三人は窓辺から聞こえた声を聞いて頷き合う。
「あの悪党です」
「もう僕もわかりました」
「確実に」
「あのですね」
 レポレロは窓からその三人に声をかけた。
「宜しいでしょうか」
「はい」
「何でしょうか」
 三人は話し合いを止めてレポレロに対して応えた。
「私達に何か」
「あるのでしょうか」
「宜しければですが」
 こう前置きするレポレロだった。そのうえでまた三人に告げる。
 
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